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第3章 冒険者ギルド
第23話 魔族の戦い方。
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ラケナリアは今日、Eランク冒険者への昇格試験を受ける。正体を隠しているとはいえ、魔族が人族の試験を受けるなんて歴史的に見ても初めての事では無かろうか。
俺は少し離れた場所から闘技場の観客席で腰を下ろす。今まで通り、試験内容は対人戦。重傷を負わせるような魔法及び剣技の使用の禁止。相手はBランク冒険者の若い女性の様だった。
「見ててグラス。一瞬で片付けるわ~」
相手の前でそんな意気揚々と。
本当に大丈夫かあいつ。
「では構えて。初め!」
女性冒険者の方が先手を取る。素早く、そして隙のない動きでラケナリアへと吶喊する。様子を見るという狙いもあるだろうが、その判断の早さは一級品だ。
対するラケナリアは───。
「動かない?」
その距離は必中。
ラケナリアが腕を出した。
何があった。なぜ無抵抗なんだ……?
冒険者の剣の切っ先がラケナリアの肌を掠めた。
いとも簡単にその柔肌を切り裂く。
ラケナリアは苦痛に顔を歪めながらも、寧ろ好戦的に白い歯を見せてその場に留まった。その異様、その違和感をその場にいる全員が感じ取った。
だが俺は一つ思い当たる事があった。
ラケナリアは魔族だ。
その戦い方に違いがあってもおかしくない。
屈強な肉体が故に相手の動きを強引に止めて、力を以て制するという戦い方があるのではないか。
これは、魔族と人族の戦いだ。
魔力が熾る。
風が吹いた。
異様な気配に鳥肌が立つ。
「……ッ」
黒魔法。血液を媒体とした魔法行使。
なるほど、さっき一撃を敢えて被ったのはこれが狙いだったのか。ビリビリと音を立て、空気を震撼させる魔力の奔流。その絶望的な強さ、絶望的な威圧に相手冒険者は戦慄する。
ラケナリアが持っていた剣が黒く光る。
触れれば全てが消し炭にされそうな、濃縮されたエネルギーを片手にラケナリアが踏み込んだ。
「魔法【死の宣告】ッ!!!」
「ターイム!! 終了終わり終わりっ!」
後ろで控えていたリーリアが飛び出してきた。
そりゃそうだわな、骸になりかけてたよ相手。
「ぁ……ぁあ」
声を掠れさせて失禁している。
死にかけたんだ、あれは下手をすると心が壊れた恐れがある。メンタルブレイカーラケナリア。
魔族と人族を戦わせるのは控えた方がいいな。
□■□
「Eランク冒険者昇格おめでとうございます……」
「ええ。これでなんの問題もなくグラスと一緒に居られるわね! あー良かったっ」
あれだけの事をしておいて、何故そこまで余裕げ。というか自然体でいられるのだろうか。あの魔力は冒険者ギルドにいる人皆が気配を感じ取っており、"異常"だと言葉を残している。
「お二人の実力は既にBランクを超えたA級、相性次第ではもしかするとS急に届きうるかもしれません。そんな人に、生温いクエストを提供した所で不満が溜まる一方でしょう」
「「そうね」そんな事はないよ」
おい。
「ですから様子を見て、一度B級のクエストを案内させて頂きます。無理そうなら、すぐに帰ってきてもらっても大丈夫です」
「(いいんですか。規則的には)」
「(本来はダメですが、彼女があれだけの実力を有しておきながら、それを燻らせて置くのも問題です。というか、本当に彼女は何者なんですかっ!?)」
魔族です。居候の。
ここでもやはり、正直には答えられなくて良心を痛ませながらも心の中で謝っておいた。
「何をこそこそ話しているのかしら」
「なんでもない」
「そうやってはぐらかす時は、必ずやましい事を考えているってお母様がいつも言ってたわ。えっちな目で見ているのね」
「違う」
「なるほど、今夜どう料理してやろうか……ぐへへと考えているのね。分かるわ」
「違う」
というか、いつどこで得た知識だそれは。
人族の良くない文化を学んでいるんじゃなかろうな。
「仲良いですね」
リーリアが若干恨めしそうにこちらを見てくる。
ボケを回収しきれない今の状態のどこに嫉妬するというのだ。俺としてもこいつが何を言うか内心ヒヤヒヤしているのに。
「では、帰ってから確かめさせて貰おうかしら」
「おい。あんまり変な事言うなっ」
それだと同棲しているのがバレるだろうが!
「こほん。では、今回の依頼についてお伝えします。今回は第9地区のある鉱山に魔物が大量に発生した件についてです。討伐は勿論なのですが、お二人にはその原因の究明、調査をして頂こうと思います。達成条件はやや曖昧ではありますが、被害を予め抑止するという目的が第一目標です」
「つまり、経過観察した上で報酬額を受け渡すと?」
「いえ、一定額の報酬をお渡しし、その後達成報酬として成果に応じて随時お渡しする形になります」
ふむ。魔物が減少し、無事騒動を沈められたならば最大額の報酬が舞い込んでくる訳か。倒すだけじゃなく、魔物が大量に発生したその根本的な原因の究明。それには、調査に踏み込むだけの戦力と、ある程度の勘、そして余裕が必要になる。
高難易度になるのも納得だ。
「では、お願いします」
俺は少し離れた場所から闘技場の観客席で腰を下ろす。今まで通り、試験内容は対人戦。重傷を負わせるような魔法及び剣技の使用の禁止。相手はBランク冒険者の若い女性の様だった。
「見ててグラス。一瞬で片付けるわ~」
相手の前でそんな意気揚々と。
本当に大丈夫かあいつ。
「では構えて。初め!」
女性冒険者の方が先手を取る。素早く、そして隙のない動きでラケナリアへと吶喊する。様子を見るという狙いもあるだろうが、その判断の早さは一級品だ。
対するラケナリアは───。
「動かない?」
その距離は必中。
ラケナリアが腕を出した。
何があった。なぜ無抵抗なんだ……?
冒険者の剣の切っ先がラケナリアの肌を掠めた。
いとも簡単にその柔肌を切り裂く。
ラケナリアは苦痛に顔を歪めながらも、寧ろ好戦的に白い歯を見せてその場に留まった。その異様、その違和感をその場にいる全員が感じ取った。
だが俺は一つ思い当たる事があった。
ラケナリアは魔族だ。
その戦い方に違いがあってもおかしくない。
屈強な肉体が故に相手の動きを強引に止めて、力を以て制するという戦い方があるのではないか。
これは、魔族と人族の戦いだ。
魔力が熾る。
風が吹いた。
異様な気配に鳥肌が立つ。
「……ッ」
黒魔法。血液を媒体とした魔法行使。
なるほど、さっき一撃を敢えて被ったのはこれが狙いだったのか。ビリビリと音を立て、空気を震撼させる魔力の奔流。その絶望的な強さ、絶望的な威圧に相手冒険者は戦慄する。
ラケナリアが持っていた剣が黒く光る。
触れれば全てが消し炭にされそうな、濃縮されたエネルギーを片手にラケナリアが踏み込んだ。
「魔法【死の宣告】ッ!!!」
「ターイム!! 終了終わり終わりっ!」
後ろで控えていたリーリアが飛び出してきた。
そりゃそうだわな、骸になりかけてたよ相手。
「ぁ……ぁあ」
声を掠れさせて失禁している。
死にかけたんだ、あれは下手をすると心が壊れた恐れがある。メンタルブレイカーラケナリア。
魔族と人族を戦わせるのは控えた方がいいな。
□■□
「Eランク冒険者昇格おめでとうございます……」
「ええ。これでなんの問題もなくグラスと一緒に居られるわね! あー良かったっ」
あれだけの事をしておいて、何故そこまで余裕げ。というか自然体でいられるのだろうか。あの魔力は冒険者ギルドにいる人皆が気配を感じ取っており、"異常"だと言葉を残している。
「お二人の実力は既にBランクを超えたA級、相性次第ではもしかするとS急に届きうるかもしれません。そんな人に、生温いクエストを提供した所で不満が溜まる一方でしょう」
「「そうね」そんな事はないよ」
おい。
「ですから様子を見て、一度B級のクエストを案内させて頂きます。無理そうなら、すぐに帰ってきてもらっても大丈夫です」
「(いいんですか。規則的には)」
「(本来はダメですが、彼女があれだけの実力を有しておきながら、それを燻らせて置くのも問題です。というか、本当に彼女は何者なんですかっ!?)」
魔族です。居候の。
ここでもやはり、正直には答えられなくて良心を痛ませながらも心の中で謝っておいた。
「何をこそこそ話しているのかしら」
「なんでもない」
「そうやってはぐらかす時は、必ずやましい事を考えているってお母様がいつも言ってたわ。えっちな目で見ているのね」
「違う」
「なるほど、今夜どう料理してやろうか……ぐへへと考えているのね。分かるわ」
「違う」
というか、いつどこで得た知識だそれは。
人族の良くない文化を学んでいるんじゃなかろうな。
「仲良いですね」
リーリアが若干恨めしそうにこちらを見てくる。
ボケを回収しきれない今の状態のどこに嫉妬するというのだ。俺としてもこいつが何を言うか内心ヒヤヒヤしているのに。
「では、帰ってから確かめさせて貰おうかしら」
「おい。あんまり変な事言うなっ」
それだと同棲しているのがバレるだろうが!
「こほん。では、今回の依頼についてお伝えします。今回は第9地区のある鉱山に魔物が大量に発生した件についてです。討伐は勿論なのですが、お二人にはその原因の究明、調査をして頂こうと思います。達成条件はやや曖昧ではありますが、被害を予め抑止するという目的が第一目標です」
「つまり、経過観察した上で報酬額を受け渡すと?」
「いえ、一定額の報酬をお渡しし、その後達成報酬として成果に応じて随時お渡しする形になります」
ふむ。魔物が減少し、無事騒動を沈められたならば最大額の報酬が舞い込んでくる訳か。倒すだけじゃなく、魔物が大量に発生したその根本的な原因の究明。それには、調査に踏み込むだけの戦力と、ある程度の勘、そして余裕が必要になる。
高難易度になるのも納得だ。
「では、お願いします」
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