追放された冒険者を案内する『追放処理班』のギルド職員、裏で『ざまぁ代行屋』と呼ばれていた件。〜お望みのざまぁプランはこちらですか?〜

TGI:yuzu

文字の大きさ
11 / 40
case2 連れ去られた幼馴染

同じざまぁを欲する者。

しおりを挟む
 
「ボクと一緒に帰ろう……カナリアちゃん」

 これは、ケージにとっての最後の声掛けだった。
 見方を変えれば、最後通牒だったのかもしれない。

「ボクは決闘に勝った。もうカナリアちゃんが、あの男の隣にいる理由はない。どうだ、違うかっ!?」

「……違うよ、ケージは何にも分かってない! 今までの私の苦労も、今の私の気持ちもっ! 勝手に味方ぶらないでよ、変に優しさを向けないでよっ、お願いだからぁ……っ」

 カナリアは、ケージから差し伸ばされた手を握らなかった。涙を流しながら首を振り、拒絶するばかりだ。

 屋敷に集まってから、二人は密かに落ち合った。
 最後に話がしたい、とケージが掛け合ったのだ。

 カナリアは凄く憔悴しきっていて、まるでケージの話を聞き入ろうとしなかった。涙に声を震わせ、目元を赤くしていた。

「(ダメなんだ、この手を握ってくれなきゃ……!)」

 これで何度目だろう。
 何度なく見た『夢』の結末。

 ───

 この現実は、『夢』で繰り返し起きている。
 この後の展開もある程度は認知していた。

 それでも、未来は変わるかもしれないと口を出さずにはいられなかった。分からなかったのだ、ケージがカナリアに拒絶される理由が何一つ浮かばなかった。

「ボクの何が気に入らないんだっ、それにどうして……そんな悲しい顔をするんだよ!」

「違う、違うっ! ケージは何も悪くない……っ、悪くないけど、もう私に関わらないでよ……っ!」

「クソっ、どうしてこうなるんだ。カナリアちゃんっ」

『先見』は未来を見通す『恩恵スキル』だ。
 未来を変える『恩恵スキル』じゃない。

 カナリアが協力的な姿勢を取ってくれるなら、まだ話は簡単だった。屋敷を二人で抜け出して、ここの事なんか忘れてしまえばいいと思っていた。

 だが現実はそう行かなかった。
 屋敷にいる限り、カナリアが死ぬという未来は避けられない。

 死の呪いは、パーティーの中で発動する。
 カナリアは、必ず毒を受けて死ぬ。

「分かったよ。そこまで言うなら、もう何も言わない」

「えっ……」

「もう口も聞かないし一生関わらない。でも、君だけはボクが命を賭して守ってあげるから……」

「待ってケージ。何の話を───」

 カナリアの対処がダメなら、最終手段だ。
 現場の立ち入りを拒めないなら、元凶を断つ他ない。

 カナリアの泣き顔から目を逸らして、ケージは立ち去る。



 殺しの元凶、犯人は分かっている。
 シスア・マイスター。

「何のつもりでボクを嵌めて殺すつもりなのかは知らないけど、そっちが殺す気ならボクが先に殺してやるッ」

 パーティーが開催される前。
 それまでに、決着をつけるんだ。

 □■□

 玄関付近に、ケージの姿が見えた。
 何らかの覚悟を決めた顔。彼に纏う空気が酷く重苦しくて心臓が掴まれる様な圧迫感があった。

「やはり、殺る気なのか」

 は晴れないだろうと、ある意味確信していた。

 でなければ、俺に夢の内容を伏せたりしない。
 あれは、全てを見通したからこそ「殺し」という結論に至った彼が、せめて俺を関与させまいと庇った。

 そうだと信じたい。

 殺す対象は、シスアだ。彼は、カナリアが毒殺される前にシスアを殺せば彼女が救われると思っている。

 しかしそんな事をすれば、牢に入れられ極刑に処させるだろう。カナリアへの殺人容疑でその結末を迎えたのに、あろう事か貴族本人を実際に殺したとなれば冤罪ですら無くなる。

 そんな未来は……あまりにカナリアが救われない。

「はあ。上手くいかないものだな」

 この展開はもう読めている。
 彼は今から、屋敷に入る前に地下の武器庫へと侵入する。

 そこには、ボディーチェック時に剥がされた武器が収容されているはずで、漏れなく彼も決闘時に使用した剣は取られていた。

 暗器等を忍ばせている可能性もあるが、きっとケージは俺が叩き込んだ最も信頼する武器を手にするはずだ。

 施錠された鍵は、ナンバー式南京錠。
 後をつけると、ケージは南京錠に手を翳していた。

 付近を気にしながら、ダイアルを回す。
 開いた。ゲージは番号を知っていた。

「『夢』で事前に調べたって事か? つくつぐチートな能力だな。相手にするとこれ程厄介とは」

 だが、幸い地下なら多少音がしてもバレない。
 一戦交えるなら、それに越したことはない。

 俺は背後を付ける。
 この尾行も、地下階段を歩く音でバレてしまう。

 地下はコンクリートで出来ており、硬い材質はよく音を反響する。コンコンと響く足音にピクリと耳を動かすケージ。

 だが、下へ下へと降りていく。

「(無視……いや、これは───)」

 
 まるで舞台はここでは無いと言う様に。


 俺が下まで降りると、ちょうどケージは剣を手にした所だった。全てが読み通り、そんな予定された未来の訪れを察したのかケージは酷薄の笑みを浮かべていた。

「やっぱり来たのか」

「それも、『夢』で見た内容ですか。俺が貴方の暗殺を阻止する様動くのも、予想通りだと?」

 パチパチパチ、ケージは感心したと手を叩く。

「見事だよ、代行屋。相当頭がキレるみたいだ」

「いえ。俺は優秀な傭兵が集めた情報という点と点を線で結んだにすぎません」

「推理とは、正に点と点を結ぶ行為その物を指すじゃないか。与えられた事実から、一つの推論を導く。なるほど、君は『ざまぁ代行屋』じゃなくて、名探偵だね」

 茶化す様にケージは笑った。

「いいだろう、認めるよ。確かにその通りだ。ボクはカナリアちゃんを助ける為に、貴族を殺す。偉そうにイビリまくる奴をぶち殺せるなら、それは"最大級のざまぁ"と言えるだろうっ!?」

 その為には目的と手段を選ばない。
 堕ちた人間は、簡単にそう言ってしまう。

「これは俺の持論ですが、殺しは絶対的な悪では無い。必要なざまぁを満たす為に、過去に仲間を殺した冒険者もいた」

「だったら───」

「でも、ケージ様のそれは必要とは言えない」

「仕方ないだろっ、ボクは何度もカナリアちゃんに逃げようって訴えた、でもカナリアちゃんは……ボクを選んではくれなかった。愛する女の子の為に、彼女を守る為に殺す事のどこが、必要じゃないって言うんだァァッ!!」

 ぐっ、と俺は拳を握りしめた。
 そうだ、本来なら彼は何も間違った事は言っていない。
 ただ、一つの勘違いを見逃していなければ。

「違います。ケージ様は、やはりカナリア様の事情を何も分かっておられない。カナリア様の理解者を名乗るなら、まずは落ち着いて彼女と話をするべきでした」

「何を言ってるんだ……」

「もう一度、話をすると約束して頂くまで俺はここを通すつもりはありません」

「うるさい。代行屋なら、命令だ。ここからはボクがやる」

「なりません。依頼内容に、シスア様へのざまぁ要望は含まれておりませんでした。また同じざまぁを欲する者として、俺が獲物をみすみす見逃すとお思いですか?」

 俺は拳を構えた。
 ケージは、剣のグリップを握り締める。

「後悔しても、遅いからね」

「いえ。勝つのは俺です、それは未来改竄を行おうと不変の真理です。貴方が俺の"敵"になるなら、容赦はしません。全力で叩かせて頂きます」

 額の汗がポトリと落ちた。

 瞬間、俺とケージは腕を突き出す。
 最後の戦いが始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ノアは、敵を弱体化させる【呪物錬成】スキルで勇者パーティを支えていた。しかし、その力は地味で不吉だと疎まれ、ダンジョン攻略失敗の濡れ衣を着せられ追放されてしまう。 全てを失い、辺境の街に流れ着いたノア。生きるために作った「呪いの鍋」が、なぜか異常な性能を発揮し、街で評判となっていく。彼のスキルは、呪いという枷と引き換えに、物の潜在能力を限界突破させる超レアなものだったのだ。本人はその価値に全く気づいていないが……。 才能に悩む女剣士や没落貴族の令嬢など、彼の人柄と規格外のアイテムに惹かれた仲間が次第に集まり、小さな専門店はいつしか街の希望となる。一方、ノアを追放した勇者パーティは彼の不在で没落していく。これは、優しすぎる無自覚最強な主人公が、辺境から世界を救う物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、 成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。 守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、 そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。 フレア。 彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。 二人の出会いは偶然か、それとも運命か。 無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、 そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。 孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。

処理中です...