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case3 異国日本からの転移者
異世界召喚の儀式。
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「よくぞ我が求めに応じ参られた。異世界の戦士よ!」
召喚の儀式。異世界に住まう人間は、特別な『恩恵』を携えてこの地へと舞い降りる。それは、軍事的側面から見れば他国を脅かす戦力の取り出すという事。それを国王は躊躇なく実行した。
部屋の地面を全て覆う程の巨大な魔法陣の上に、青白い光が明滅する。徐々に実体が形作られ、次の瞬間には見慣れぬ服装をした男女が次々と現れた。
「ここは……どこなんだ」
「え、なになに!? 誰かいるよ!!」
全身を覆うローブ姿の魔法師達が取り囲んでいた。状況がまるで掴めない、まるでアイマスクをして見知らぬロケ地へ連れ去られるどっきりの様だった。だが、転移した彼らは実際の所ただの学生。教室にいた全員が一斉に転移させられた。
「お前達は誰だ、俺達を元の場所に返せ!」
剣崎直哉は臆せずに叫んだ。サッカー部の部長を務めており、クラス内でも信頼は厚い。代表して話すべきだと本能のままに口を開いていた。
「無礼者、この者を誰と心得る!」
しかし、その威勢も妖しく光る刀身を見て簡単に消え失せた。首筋にあてがわれた刃先からぷくりと血が溢れる。人を殺せる凶器を見て、反抗する意志は搔き消えた。どうやら、ここは黙っていた方が賢明らしい、当然の判断だ。
「よい、この者達は異国から召喚した戦士だ、この世の常識を理解しておらぬもの不思議ではない」
暫くの間、彼らと国王は語り合った。ここが剣と魔法の世界であり、想像を絶するような超常現象、架空の生物が現実に存在するという事。
そして彼らが持つ強力な『恩恵』をこの国の為に振るって欲しいと。
言葉は、何らかの魔法が作用して伝わっていた。
脳内に直接響く、という表現が正しいだろうか。会話ではなく思念が直に伝達されている様だった。
「ぼ、僕こういう展開アニメとか漫画で見た事あるっ、異世界転移ってやつだ。ここに来る前にきっと女神かなんかに力を貰ってるはずだ、その力を使って魔王をぶっ倒すって流れだろ!」
クラスのオタク達が息を吹き返す。常日頃から抱いていた願望、異世界に行って無双する。儚い夢のような願いが、今現実になったのだ。
「まずは、君達の『恩恵』を《鑑定機》を使って調べてみる」
「やっほ~い、絶対強いやつひくぞ~!」
「楽しみでござるな」
「チーレム無双、ずっと俺のターン!! でゅふふっ!」
とはいえ、現実は非情である。
天は二物を与えずというが、イケメン、頭脳明晰、運動神経抜群と三拍子そろった男に限って強い力を得たりする。この場合でもそれは例外ではなかった。
「剣崎君の『恩恵』は……、こ、これは!」
魔法師達に動揺が走る。何らかの強力な『恩恵』を得た事は、火を見るよりも明らかだった。
「『剣聖』、剣を司る最上位の『恩恵』だ」
「きゃ~さっすが、直哉」
「あはは、たまたまだよ」
その他にも、クラスのカースト上位勢は、明らかに活躍しそうな『恩恵』を次々と引き当てていく。一方で日陰者の人間は『索敵』や『潜伏』といった、見栄えする『恩恵』ではなかった。偶然の結果とはいえ、女神を恨まずにはいられなかった。
そんな中、クラスでも一、二位を争う美少女白雪 奏の番が回ってきた。発光する板に手を翳して数秒待つ。通常、空中にステータスが表示されるはずだ。
だが。
「なぜだ……何も見えないぞ」
「どういう事だ、何が起きている?」
「え……なんか失敗しちゃった?」
クラスの空気を読み、愛想良く接してきた。意見は大多数の方を支持し、反発されるのを避けてきた。浮くのが怖いから、除け者にされたくないから。
それが日本人の処世術だ。
特に女性は空気に対して敏感だった。
「何も現れなかったぞ……」
「これはもしやすると、無能力者ではないか?」
「年齢は、17と聞いている。『恩恵』の自然発現も見込めないだろう」
「つまり、彼女は……」
その日、白雪は無能の烙印を押された。
折角召喚したにも関わらず、期待に応える事が出来なかった。即ち、王宮に住まわせゆっくりと『恩恵』の熟練度を上げる事も出来ない。
「追放だ。白雪 奏、直ちに王宮より出て行け」
この世は時に非情である。
世界に見放されたその少女は、
「……嘘」
現実を受け止めきれないでいた。
召喚の儀式。異世界に住まう人間は、特別な『恩恵』を携えてこの地へと舞い降りる。それは、軍事的側面から見れば他国を脅かす戦力の取り出すという事。それを国王は躊躇なく実行した。
部屋の地面を全て覆う程の巨大な魔法陣の上に、青白い光が明滅する。徐々に実体が形作られ、次の瞬間には見慣れぬ服装をした男女が次々と現れた。
「ここは……どこなんだ」
「え、なになに!? 誰かいるよ!!」
全身を覆うローブ姿の魔法師達が取り囲んでいた。状況がまるで掴めない、まるでアイマスクをして見知らぬロケ地へ連れ去られるどっきりの様だった。だが、転移した彼らは実際の所ただの学生。教室にいた全員が一斉に転移させられた。
「お前達は誰だ、俺達を元の場所に返せ!」
剣崎直哉は臆せずに叫んだ。サッカー部の部長を務めており、クラス内でも信頼は厚い。代表して話すべきだと本能のままに口を開いていた。
「無礼者、この者を誰と心得る!」
しかし、その威勢も妖しく光る刀身を見て簡単に消え失せた。首筋にあてがわれた刃先からぷくりと血が溢れる。人を殺せる凶器を見て、反抗する意志は搔き消えた。どうやら、ここは黙っていた方が賢明らしい、当然の判断だ。
「よい、この者達は異国から召喚した戦士だ、この世の常識を理解しておらぬもの不思議ではない」
暫くの間、彼らと国王は語り合った。ここが剣と魔法の世界であり、想像を絶するような超常現象、架空の生物が現実に存在するという事。
そして彼らが持つ強力な『恩恵』をこの国の為に振るって欲しいと。
言葉は、何らかの魔法が作用して伝わっていた。
脳内に直接響く、という表現が正しいだろうか。会話ではなく思念が直に伝達されている様だった。
「ぼ、僕こういう展開アニメとか漫画で見た事あるっ、異世界転移ってやつだ。ここに来る前にきっと女神かなんかに力を貰ってるはずだ、その力を使って魔王をぶっ倒すって流れだろ!」
クラスのオタク達が息を吹き返す。常日頃から抱いていた願望、異世界に行って無双する。儚い夢のような願いが、今現実になったのだ。
「まずは、君達の『恩恵』を《鑑定機》を使って調べてみる」
「やっほ~い、絶対強いやつひくぞ~!」
「楽しみでござるな」
「チーレム無双、ずっと俺のターン!! でゅふふっ!」
とはいえ、現実は非情である。
天は二物を与えずというが、イケメン、頭脳明晰、運動神経抜群と三拍子そろった男に限って強い力を得たりする。この場合でもそれは例外ではなかった。
「剣崎君の『恩恵』は……、こ、これは!」
魔法師達に動揺が走る。何らかの強力な『恩恵』を得た事は、火を見るよりも明らかだった。
「『剣聖』、剣を司る最上位の『恩恵』だ」
「きゃ~さっすが、直哉」
「あはは、たまたまだよ」
その他にも、クラスのカースト上位勢は、明らかに活躍しそうな『恩恵』を次々と引き当てていく。一方で日陰者の人間は『索敵』や『潜伏』といった、見栄えする『恩恵』ではなかった。偶然の結果とはいえ、女神を恨まずにはいられなかった。
そんな中、クラスでも一、二位を争う美少女白雪 奏の番が回ってきた。発光する板に手を翳して数秒待つ。通常、空中にステータスが表示されるはずだ。
だが。
「なぜだ……何も見えないぞ」
「どういう事だ、何が起きている?」
「え……なんか失敗しちゃった?」
クラスの空気を読み、愛想良く接してきた。意見は大多数の方を支持し、反発されるのを避けてきた。浮くのが怖いから、除け者にされたくないから。
それが日本人の処世術だ。
特に女性は空気に対して敏感だった。
「何も現れなかったぞ……」
「これはもしやすると、無能力者ではないか?」
「年齢は、17と聞いている。『恩恵』の自然発現も見込めないだろう」
「つまり、彼女は……」
その日、白雪は無能の烙印を押された。
折角召喚したにも関わらず、期待に応える事が出来なかった。即ち、王宮に住まわせゆっくりと『恩恵』の熟練度を上げる事も出来ない。
「追放だ。白雪 奏、直ちに王宮より出て行け」
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世界に見放されたその少女は、
「……嘘」
現実を受け止めきれないでいた。
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