二度目の世界で今度こそ俺は

終りと始まり

#07村での修行生活

「ふぁ～あ」

　山の麓で眠りから目が覚めた。
　眠い目を擦りつつ徐々に意識を覚醒させていく。

　四年と半年程経過しただろうか。
　最初のころは修行修行の毎日で、日々上達する魔法という力に、もっと修行をとリーナによくせがんでいた。
　リーナ自身も俺の成長を楽しみにしているようで、とことん付き合ってくれた。
　授業後の空いた時間も自分の修行にあてた。
　やった分だけ上達することが、どれだけ楽なことかは前世の世界で十分理解していたからだ。
　あの頃に戻れれば俺は勉強して有名な大学へ、もっとお金持ちに、なんてのは大概の大人は思ったことがあるだろう。
　今ではもう、火と風を上級まで、他の四属性と治癒魔法を中級までマスターした。
　召喚魔法も進めたかったが、召喚したいような魔物などが、人間の国家にいるはずも無く放置している。
　見た目の派手さで火の魔法を特に特化させるべく修行していたが、上級魔法を習うころに風の魔法にシフトチェンジした。
　教えるリーナが風を得意としているせいかもしれない。
　リーナ曰く、俺の魔法の急激な上達は、適正のお陰などではないらしい。
　魔法の適正なんかより、セレス様から与えられた膨大な魔力が、俺の魔法上達の鍵だった。
　簡単な話、魔力量が多ければ多いほど、より長く、効率よく鍛錬を進められる。
　一般の魔法使いが本気で魔法の鍛錬をしようにも、魔力がすぐ枯渇して一時間もしない内に魔力切れをしてしまうからだ。
　さらに魔力量というのは、魔力を使用すればするほど上がるが、上昇量は極めて低い。
　だからこそ魔法使いは知識や術の考案、応用などの考察など、研究や勉強といった知識による力の向上が一般的なのだ。
　恐らく魔力を回復させる回復薬などを膨大な費用を使い、多用すれば俺と同じ修行は可能だ。
　まぁ効率が良くても費用のかさみや、この世界ではよく分かっていない科学や自然への知識や理解が必要だろうが。
　
　上級魔法を覚えた後は、もう特に教えることも無いらしく、ここから先は独自の魔法を編み出すのと、村人との交流に時間を取るように言われた。
　実際この年齢のせいだろうか、村の人たちはとても優しく、いつも野菜や狩りで取ったウサギなどをを持たせてくれる。
　領主のリーナがエルフなのを蔑むような人もいないようで、むしろリーナは村人に良く話しかけてくれる良い領主という印象のようだ。
　独自の魔法の方は、リーナ自身も上級魔法を習得した後、長い時間をかけて、竜巻を起こし、雲を散らせる技を編み出したらしい。
　戦闘用でないとこがリーナらしいと言える。
　上級魔法以上の魔法を編み出すか、聖魔法士が編み出した魔法を最低三つ以上成功させることができれば、魔術協会に認められ、聖魔法士という称号をもらえるそうだ。
　この称号を持つ者は、国家間で名前を知られる位には有名になるそうだ。
　リーナにはこの聖魔法士を目指すように言われた。
　実際たった二年で上級魔法を使えるようになるのは、知られている限りでは例がないらしく、俺の力があればこの課題も発想だけの問題になるとリーナには言われている。
　俺が練習しているのは、理論は極めて簡単だが、実際使っていた者がかなり昔に数名いた程度しかいなく、現在では誰もが放置している魔術。
　飛行魔法だ。
　理論は凄まじい風をおこして自分の体を持ち上げ浮くという極めて簡単な考えだ。
　しかしこれだと台風のような風を起こし飛ばされているのを、コントロールしている形になる。
　聖魔法士クラスでなければ台風並の風など起こせない上、それを展開し続ける膨大な魔力、そしてその風のコントロールと理論としてはかなり厳しい。
　だが俺の場合は膨大な魔力量により、浮き続けるだけなら半日は体を持ち上げ続ける事が可能だ。
　あと俺に必要だったのは風の制御の練習だけだったのだ。
　俺はリーナに見せられるレベルになるまで、反復練習に励むことにした。

　あとは攻撃魔法だが、前世でアニメを作っていた俺にはかなりの模倣したい技の引き出しがある。
　やりたいことは色々あるが、とりあえず思い出したのが、何かのアニメで見た覚えがある魔法で、竜巻のような檻を作り、竜巻の中に風の刃をを発生させ捕らえながら切り刻む実にエグい魔法だ。
　名前が無ければ称号を得るための技の登録ができないようなので、「トルネードウォール」なんて恥ずかしい名前を付けてしまった。
　凄まじく厨二臭い上恥ずかしい。
　この魔法の便利なところは一旦発動させれば、こちらが止めない限り自立して五分ほど竜巻と風の刃が維持されるというところだ。
　今のところ魔力量だけでなんでも解決させてしまっているがこんなに簡単で良いのだろうか……。　

　魔法の練習は人気の無い山の麓まで飛行魔法で飛び、そこで攻撃魔法を練習するのが今の俺の日課になった。
　映像としてのイメージがあるため、攻撃魔法の方の修練は順調に進み、すでに完成していた。
　山での魔法の練習の後の昼寝から目覚め、そろそろ家に帰ろうと飛行魔法を使用する。
　山から村に向かって飛び始めたとき俺はようやく異変に気いた。
　町の方から空に向かって立ち込める黒煙。
　そして緑に囲まれていたはずの村が、真っ赤な炎に包まれていた。