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本編
第6話 王城庭園カフェテリア(↘)
しおりを挟む「あんた、技師じゃないのかっ?!」
大きな怒鳴り声が、カフェテリアに響き渡った。。
先日修理した魔道具の具合が良いと、礼を言いに来てくれた相談者だ。
年配の男性で、亡くなった奥方が大事にしていたらしい。
孫が「大きくなったら、僕が直してあげるよ!」と言って魔道技師になる切っ掛けになった品らしい。
実際は、旧式すぎて部品が手に入らず、修理が不可能と言われたらしいが。
駄目元で持ってきたから、直って嬉しいと大喜びされた品だった。
「魔道具技師だと思って預けたのに、魔道具職人だとっ?!
騙しやがったなっ!
大事な大事なこいつを、詐欺師なんぞに預けちまったっ!
此処の奴らも、知ってて加担しやがったのかっ!
偽物の職員に王城の奴等が騙されやがって、此奴に何か細工されてたらどうしてくれる!
責任を取る・取らないって問題じゃすまされないぞっ!
おい、此処の責任者を呼べっ!
どう責任を取ってくれるんだっ!
正式に訴えてやるから、覚悟しろっ!!」
はぁ~参った・・・
一応、臨時だけど正式に職員なんだが・・・
確かに、職員なら魔道具技師だと思うよなぁ・・・
皆には、迷惑かけちまうなぁ・・・
何とか、俺だけの問題にしないとなぁ・・・
「はい、畏まりました。
訴えていただいて結構でございます。
但し、訴えるのは私個人にお願い致します。
魔道具課の窓口なのですから、技師だと思うのは当たり前です。
この件に関しましては、告知を怠った私の責任でございます。
誠に申し訳ございませんでした。」
俺は深々と頭を下げたが、彼は手元の水をブチ撒けてきた。
暫く頭を下げ続けていたが、静かになったので頭をそっと上げてみた。
彼はグラスを握りしめ、今にも投げつけようとするところを周りの者に止められていた。
押さえつけられた彼は怒りが収まらない様子で、しかし、なんとか怒りを納めようとしていた。
そして、大きな怒鳴り声で「覚えてろっっ!!」と叫んで、乱暴に扉を開閉し出て行った。
「あんた、魔道具職人だったのか・・・」
料理長に言われ、そういえば個人的な事はあまり話したことが無いなと気が付いた。
もう、潮時だ・・・
彼等には迷惑を掛けて悪いが、良い切っ掛けになった。
兎に角、此処を撤退しよう。
俺は、順番待ちをしている相談者たちに深々と頭を下げた。
「この度は、お騒がせして誠に申し訳ございませんでした。
わざわざ足をお運び頂いたのにも関わらず、こちらの不手際で急遽臨時窓口は閉めさせていただきます。
今件に関しましては、上司に報告の上対応が決まり次第ご連絡させて頂きますので何卒ご容赦くださいますよう宜しくお願い申し上げます。」
暫く頭を下げ続けたが、今度は厨房に向けて頭を下げる。
「ご厚意で場所を提供していただいたのに、騒ぎにしてしまい申し訳ございませんでした。」
俺は料理長他、料理人達に深々と頭を下げる。
そして、王城庭園カフェテリアから魔道省魔道具課臨時窓口を閉鎖した。
その足で、魔道具課長の元へ行き、口頭で報告した。
翌朝、朝食時に聞いたらしく、彼女がとても心配してくれた。
心配してくれる彼女は、可愛くて、可愛くて、泣きそうになった。
自分の所為で、楽しかった臨時窓口を閉鎖した事ではない。
こんなに心配してくれる彼女に、隠し事をしている事に対してだ。
今件は、窓口を閉鎖する良い切っ掛けになった。
どうせ、臨時窓口は今まで長く続かなかった案件だ。
俺が閉鎖してしまっても、やっぱり続かなかったかで済む。
それより、オレが此処から出ていく準備をしている事に対して彼女に隠している事。
きっと彼女に心配を掛ける。
でもきっと、夢の彼女のように前を向いて歩いて行ってくれる。
第一王女が帰らなければ、彼女がこの大きな国を背負っていかなければならない。
オレでは、彼女の力には成れない。
オレでは、彼女の隣に並ぶには力不足にも程がある。
彼女の力に、武器になる男が相応しい。
オレは、何食わぬ顔をして反省点を並べ上げ、今後の対策を立て、始末書に記入していった。
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2018年9月16日
アルファポリス投稿
もっちり道明寺♪作
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