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第233話 夢の楽園プレオープン
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夢の楽園ソープランドの落成式には、カザン王国のアリエッタ姫だけでなく、アシハブア王国やルートリア連邦の貴族が参加していました。
プレオープンとなる最初の二週間は、建築関係者やスタッフ、北西区の住民に限定してソープランドを解放することになっています。
落成式で、各国の重鎮を前にして挨拶をすることになったキモヲタ。最初は、全身カチンコチンとなって、口ごもってばかりでした。
しかし、ソープランドに導入した自分のアイデアについて語りはじめた頃から早口エンジンが点火します。
「……そこで我輩がサービスとして取り入れたのが、獣人娘による泡風呂サービスなのでござる! あのモフッモフの毛を弊社独自の高級ブランド『ラブラブソープ』を使ってフワッフワに泡立てた後、その全身を使って洗ってもらうことで身体の隅々までキレイにできるというサービスで……あっ、いや決していやらしい意味はござらんですぞ。獣人娘スタッフの皆様にはちゃんと水着も付けていただいておりますし、決してやましい意味があるわけでは……ふごっ!? ふごうごがっ!?」
途中でエルミアナに口をふさがれて強制退場させられたものの、なんとか挨拶の体面を保つことはできた……のかもしれないキモヲタなのでした。
泡風呂サービスは、温泉療養施設だけでなくレジャー施設(大人向け)にもあるのですが、その内容は両者でまったく別物です。
突然、キモヲタが大人向けの泡風呂のことを語り始めたので、エレナが慌ててエルミアナにキモヲタを強制退場させたのですが、聴衆たちは、
『オークがなんだか早口でまくしたててる……というか早く落成式終わってくれ』
くらいにしか思っていなかったので、特に騒ぎ立てる者もいなかったのでした。
~ 施設ご案内 ~
ソープランドの総合医療施設の白亜の建物は、午後の日差しを受けて眩い輝きを放ち、カザン王国とアシハブア王国の友好を祝っているかのようでした。
落成式の終了後、キモヲタはユリアスやシスター・エヴァと一緒に、アリエッタ姫の案内役を務めることになりました。
そもそもが人見知りで美人を前にすると緊張してしまうキモヲタ。できればアリエッタ姫の案内はユリアスたちに任せて、逃げ出したいというのが本音でした。
その逃亡を防いだのは、キモヲタが逃げ出さないように前後を塞いでいるエレナとエルミアナの存在だけではありません。
アリエッタ姫の美しさでした。
そのつややかな金髪は、窓から差し込む光を受けて柔らかな輝きを放ち、一瞬で目を奪われるほどの美しさでした。
瞳は深い青でありながらもどこか温かみがあり、施設のスタッフたち一人一人に目を合わせ、微笑みを浮かべ、そのたびに誰もが姫の優美な姿と振る舞いに魅了されるのでした。
この日のために用意されたのであろうドレスは、カザン王国の伝統と品格を象徴するもので、ラベンダー色の柔らかな生地に、銀糸で織り込まれた花模様が上品に輝いています。
ウエストを絞ったデザインはアリエッタ姫の細身の体躯を引き立て、スカートの裾は軽やかに広がり、歩くたびに軽やかに揺れてまるで舞ってでもいるかのようでした。
足元には淡い色の小さな靴が覗き、華奢な足首をちらりと見せる姿は控えめながらも魅力的です。
キモヲタが口ごもりながらつたない説明をする間、アリエッタ姫は小さくうなずき、ときおり興味深そうに問いかけをします。
その声は透き通るように柔らかで、聞く者の心を穏やかにする力がありました。彼女はどの部屋に入ったときも必ず足を止めて、目の前の光景を真剣に観察していました。
案内の途中で、中庭に咲く花々に目を留めた彼女は、一歩近づいてその花を愛おしそうに眺めました。エルミアナにつつかれてキモヲタがこの場所についての説明を始めます。
「こ、こちらの中庭には美しい花々で人々の心を癒すだけでなく、あちらにある薬草栽培温室では、や、薬草を育てているでござる。その……いろいろと」
キモヲタのつたない説明を最後まで静かに聞いた後、アリエッタ姫はフワッと暖かい風が吹くような笑顔をキモヲタに向けました。
「この場所が、カザン王国の民にとって復興の希望となるのですね」
花に手を添えながらつぶやいた彼女の姿は、医療施設の白い壁と相まってまるで一幅の絵画のようであり、キモヲタはアリエッタ姫が天上界の女神であるかのような錯覚を覚えるほどでした。
そんな感覚に陥ったのはキモヲタだけではありません。アリエッタ姫は、その美しさだけでなく、彼女の言葉や所作から滲み出る知性と慈愛によって、王国の象徴として誰からも敬愛されていることを、この場にいたすべての者が改めて感じたのでした。
こうしてアリエッタ姫が周りを魅了するのは、もともと王族としての彼女の本質の一部ではありました。しかし、キモヲタにその魅力な微笑を向けるのは、意図的に行っていることでもあったのです。
北西区の住民のためにソープランドを建設したキモヲタに対して、アリエッタ姫は好感を抱いていましたが、それ以上に彼の人脈に関心を持っていたのでした。
キモヲタはアシハブア王国の最有力貴族であるドルネア公の妻の命を救っており、その厚い信頼を獲得していること。また護衛艦フワデラとも浅からぬ縁があるらしいことをアリエッタ姫は知っていました。
カザン王国をルートリア連邦の楔から解き放ち、護衛艦フワデラとの同盟を画策している姫としては、なんとしてもキモヲタとの関係を深めていきたいと考えていたのです。
「北西区の人々に屋根だけではなく日々のパンやスープ、働く場まで与えてくださって、本当にキモヲタ男爵はカザン王国の恩人ですね」
アリエッタから華が開くかのような微笑みを向けられたキモヲタ。
「はわっ!? 王女殿下からそのようなおこ、お言葉をいただけるとは、ここここのキモヲタ、恐悦悦至極でござりまする!」
簡単に魅了されているのでした。
アリエッタ姫の魅了が、完全にキモヲタの心を篭絡しつつあったそのとき――
「この獣人風情が! 汚らわしいわね、近寄らないで!」
「下賤の者が私に触れるんじゃない! 斬って捨てるぞ!」
彼女の思惑を台無しにするような怒鳴り声が響き渡ったのでした。
プレオープンとなる最初の二週間は、建築関係者やスタッフ、北西区の住民に限定してソープランドを解放することになっています。
落成式で、各国の重鎮を前にして挨拶をすることになったキモヲタ。最初は、全身カチンコチンとなって、口ごもってばかりでした。
しかし、ソープランドに導入した自分のアイデアについて語りはじめた頃から早口エンジンが点火します。
「……そこで我輩がサービスとして取り入れたのが、獣人娘による泡風呂サービスなのでござる! あのモフッモフの毛を弊社独自の高級ブランド『ラブラブソープ』を使ってフワッフワに泡立てた後、その全身を使って洗ってもらうことで身体の隅々までキレイにできるというサービスで……あっ、いや決していやらしい意味はござらんですぞ。獣人娘スタッフの皆様にはちゃんと水着も付けていただいておりますし、決してやましい意味があるわけでは……ふごっ!? ふごうごがっ!?」
途中でエルミアナに口をふさがれて強制退場させられたものの、なんとか挨拶の体面を保つことはできた……のかもしれないキモヲタなのでした。
泡風呂サービスは、温泉療養施設だけでなくレジャー施設(大人向け)にもあるのですが、その内容は両者でまったく別物です。
突然、キモヲタが大人向けの泡風呂のことを語り始めたので、エレナが慌ててエルミアナにキモヲタを強制退場させたのですが、聴衆たちは、
『オークがなんだか早口でまくしたててる……というか早く落成式終わってくれ』
くらいにしか思っていなかったので、特に騒ぎ立てる者もいなかったのでした。
~ 施設ご案内 ~
ソープランドの総合医療施設の白亜の建物は、午後の日差しを受けて眩い輝きを放ち、カザン王国とアシハブア王国の友好を祝っているかのようでした。
落成式の終了後、キモヲタはユリアスやシスター・エヴァと一緒に、アリエッタ姫の案内役を務めることになりました。
そもそもが人見知りで美人を前にすると緊張してしまうキモヲタ。できればアリエッタ姫の案内はユリアスたちに任せて、逃げ出したいというのが本音でした。
その逃亡を防いだのは、キモヲタが逃げ出さないように前後を塞いでいるエレナとエルミアナの存在だけではありません。
アリエッタ姫の美しさでした。
そのつややかな金髪は、窓から差し込む光を受けて柔らかな輝きを放ち、一瞬で目を奪われるほどの美しさでした。
瞳は深い青でありながらもどこか温かみがあり、施設のスタッフたち一人一人に目を合わせ、微笑みを浮かべ、そのたびに誰もが姫の優美な姿と振る舞いに魅了されるのでした。
この日のために用意されたのであろうドレスは、カザン王国の伝統と品格を象徴するもので、ラベンダー色の柔らかな生地に、銀糸で織り込まれた花模様が上品に輝いています。
ウエストを絞ったデザインはアリエッタ姫の細身の体躯を引き立て、スカートの裾は軽やかに広がり、歩くたびに軽やかに揺れてまるで舞ってでもいるかのようでした。
足元には淡い色の小さな靴が覗き、華奢な足首をちらりと見せる姿は控えめながらも魅力的です。
キモヲタが口ごもりながらつたない説明をする間、アリエッタ姫は小さくうなずき、ときおり興味深そうに問いかけをします。
その声は透き通るように柔らかで、聞く者の心を穏やかにする力がありました。彼女はどの部屋に入ったときも必ず足を止めて、目の前の光景を真剣に観察していました。
案内の途中で、中庭に咲く花々に目を留めた彼女は、一歩近づいてその花を愛おしそうに眺めました。エルミアナにつつかれてキモヲタがこの場所についての説明を始めます。
「こ、こちらの中庭には美しい花々で人々の心を癒すだけでなく、あちらにある薬草栽培温室では、や、薬草を育てているでござる。その……いろいろと」
キモヲタのつたない説明を最後まで静かに聞いた後、アリエッタ姫はフワッと暖かい風が吹くような笑顔をキモヲタに向けました。
「この場所が、カザン王国の民にとって復興の希望となるのですね」
花に手を添えながらつぶやいた彼女の姿は、医療施設の白い壁と相まってまるで一幅の絵画のようであり、キモヲタはアリエッタ姫が天上界の女神であるかのような錯覚を覚えるほどでした。
そんな感覚に陥ったのはキモヲタだけではありません。アリエッタ姫は、その美しさだけでなく、彼女の言葉や所作から滲み出る知性と慈愛によって、王国の象徴として誰からも敬愛されていることを、この場にいたすべての者が改めて感じたのでした。
こうしてアリエッタ姫が周りを魅了するのは、もともと王族としての彼女の本質の一部ではありました。しかし、キモヲタにその魅力な微笑を向けるのは、意図的に行っていることでもあったのです。
北西区の住民のためにソープランドを建設したキモヲタに対して、アリエッタ姫は好感を抱いていましたが、それ以上に彼の人脈に関心を持っていたのでした。
キモヲタはアシハブア王国の最有力貴族であるドルネア公の妻の命を救っており、その厚い信頼を獲得していること。また護衛艦フワデラとも浅からぬ縁があるらしいことをアリエッタ姫は知っていました。
カザン王国をルートリア連邦の楔から解き放ち、護衛艦フワデラとの同盟を画策している姫としては、なんとしてもキモヲタとの関係を深めていきたいと考えていたのです。
「北西区の人々に屋根だけではなく日々のパンやスープ、働く場まで与えてくださって、本当にキモヲタ男爵はカザン王国の恩人ですね」
アリエッタから華が開くかのような微笑みを向けられたキモヲタ。
「はわっ!? 王女殿下からそのようなおこ、お言葉をいただけるとは、ここここのキモヲタ、恐悦悦至極でござりまする!」
簡単に魅了されているのでした。
アリエッタ姫の魅了が、完全にキモヲタの心を篭絡しつつあったそのとき――
「この獣人風情が! 汚らわしいわね、近寄らないで!」
「下賤の者が私に触れるんじゃない! 斬って捨てるぞ!」
彼女の思惑を台無しにするような怒鳴り声が響き渡ったのでした。
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