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第45話 エンカウント
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タンドルフは、ドワーフというよりホビットというイメージが近いドワーフの鍛冶職人だった。
「ふむふむ。これならすぐに取り掛かれるよ。一週間くらい貰えれば基本の義手は作れるかな。こっちは一から打つんじゃなく、裏の武器屋で剣を選んでくれたら……両方で10日ってところだよ」
タンドルフは図面を見ながら顎に手を当てて見積もりを立てていた。
「義眼の方は、ちと時間と金が掛かりそうだな。中に治癒の魔石を仕込む必要があるんだが、あいにく品切れで、入手の当てもないんだよ」
「治癒の魔石がないと作れないの?」
「側《がわ》だけ作っても使えなくはないけど、毎日取り出して熱湯で消毒しないとダメかな。ハイポーションを沁み込ませれば一週間は持つけど……」
「治癒の魔石なら?」
「ずっと入れたままで大丈夫だよ」
「治癒の魔石ってどこで買える? 何だったら俺の方で手に入れてくるけど」
「魔石商に掛け合えば融通してくれるかもしれないけど、王侯貴族や大商人を相手に競り合うことになるよ」
「そんなに高価なのか……」
「俺たち庶民は、冒険者がギルドに流したものか、魔石を加工する際に割れたのを下して貰ってるんだ。それだって値はそこそこするけど」
「わかった。とりあえず側だけ作ってよ。魔石の方は俺の方で調達してみる。で、これ全部でおいくら万円?」
「まんえん? ああ、金か。そうだな全部で大金貨1枚ってところか」
「じゃ、大金貨2枚渡しとく」
「おお!? そんなに必要ないよ?」
「なら、いま想定していたのより良い素材を使ってくれ。頼む」
「わ、わかった。一流品を作って見せるよ」
俺はタンドルフに金貨を渡す。
「それにしても、この図面の紙は凄く品質がいいな。こんなに細かい線までくっきりと描かれてるなんて……あんたもしかしてどこぞの貴族さんなのかい?」
「いいや違うよ。もし頼んでいたものが一流品だと俺に思わせることができたら、これを筆とセットでプレゼントするよ」
「本当かい!? よし、絶対に思わず唸らせるようなのを仕上げてみせるよ!」
「よろしく!」
俺はタンドルフの店を出て、資材を購入しているステファンたちとの待ち合わせ場所に向かう。
「えっと、この辺だったような……」
お昼を過ぎる頃になると、人混みが急に増えて、通りには新たな露店が開かれていた。俺は少し方向感覚を失ってしまった。いや正直に言おう。迷子になった。
本気で迷子になった場合は、街の門の前で待つことになっているので、それほど心配する事態ではない。プチ迷子だ。
俺は門で待つことに心を決めた。二人を探して焦るあまりお腹が痛くなるような事態を避けて、ここはあえて観光を楽しもうと思ったのだ。
そう気持ちを切り替えてしまえば、ぶらぶら露店をひやかしながら散歩としゃれこむのも悪くない。
ぶらぶら。
ぶらぶら。
ぶら……。
(ぴろろん! 田中様の登録された情報に89%合致する方を探知しました)
「ほへ?」
視界に索敵マップが表示されピンク色のハートマークが点滅している。ここから約10mくらい先だ。
「ハートマークが点滅……ってハッ!? 」
(田中様が登録された『好みの女性』に89%合致する方ですね)
(キタコレ! ココロチン! ナイスアシスト!)
(ふぁい・おー!です!)
俺は人混みをかき分けて10mの距離を一気に縮めていった。まるで1000kmのように感じる10mだった。
とうとう来る!
ヒロインが来る!
イチャラブが来る!
ハーレムくりゅぅぅぅ!
バッ!
人混みを抜けた先には天使がいた。
って、いや、エンジェル・キモオタじゃないよ? ホントにホントのMy天使!
美しい銀髪、大きく潤んだ薄い緑の瞳、小さくてぷっくりとした艶やかな唇、確かにあの『後輩ちゃん』と呼ばれていたお姉さんだ。あの優しかったお姉さんが俺の目の前に立っていた。が、しかし……
ふむ。なるほど合致率が100%じゃないのは胸のせいか。
異世界で出会った好みの女性は貧乳さんでした。
だがそんなの問題ねー! 俺はもう既に心を奪われている! だから今は貧乳でもいい。いや貧乳こそいい!
よーし!
……とそこで俺の足が止まる。
(えっとココロチン? ここからどうすればいい? どうすれば彼女とお近づきになれる?)
(あぁ、このチンカス! そんなの当たって砕けろでしょ!)
(チ、チンカスって……ココロチン)
俺は頭の中にいるはずのココロチンに背中を蹴り飛ばされたかのように、つんのめって彼女の前に躍り出た。
目の前の彼女、銀髪の君は超俺のタイプだった。ココロチンに好みを登録するときに、可愛いければ誰でもいいと言ったような気がしないでもないが、ただの記憶違いだろう。間違いないこの銀髪の君こそ俺のドストライクだ!
「あっ、あのっ!?」
俺が飛び出てきたことに驚きながら、彼女が声を掛けてきた。彼女の方から声を掛けてきたんだよ! これって脈ありじゃね? もしかして俺って好感度高めじゃね? いやむしろ惚れられてんじゃね?
彼女と目が合う。その美しい潤んだ瞳が何かを期待するように俺を見上げていた。
これは……妄想じゃなく脈ありなのでは……。そして彼女のぷるるんとした唇がゆっくりと開かれる。いきなりですか? いきなりそこからですか? もちろん頂きますよぉ!
「うちのおいしいパンを買ってくださいませんか!」
「……」
彼女の足元に置かれたたくさんの籠に、たくさんの種類の、たくさんのパンが置かれていた。
「おいしいパンいかがですか!」
「はい」
俺はパンを全部お買い上げした。
「ふむふむ。これならすぐに取り掛かれるよ。一週間くらい貰えれば基本の義手は作れるかな。こっちは一から打つんじゃなく、裏の武器屋で剣を選んでくれたら……両方で10日ってところだよ」
タンドルフは図面を見ながら顎に手を当てて見積もりを立てていた。
「義眼の方は、ちと時間と金が掛かりそうだな。中に治癒の魔石を仕込む必要があるんだが、あいにく品切れで、入手の当てもないんだよ」
「治癒の魔石がないと作れないの?」
「側《がわ》だけ作っても使えなくはないけど、毎日取り出して熱湯で消毒しないとダメかな。ハイポーションを沁み込ませれば一週間は持つけど……」
「治癒の魔石なら?」
「ずっと入れたままで大丈夫だよ」
「治癒の魔石ってどこで買える? 何だったら俺の方で手に入れてくるけど」
「魔石商に掛け合えば融通してくれるかもしれないけど、王侯貴族や大商人を相手に競り合うことになるよ」
「そんなに高価なのか……」
「俺たち庶民は、冒険者がギルドに流したものか、魔石を加工する際に割れたのを下して貰ってるんだ。それだって値はそこそこするけど」
「わかった。とりあえず側だけ作ってよ。魔石の方は俺の方で調達してみる。で、これ全部でおいくら万円?」
「まんえん? ああ、金か。そうだな全部で大金貨1枚ってところか」
「じゃ、大金貨2枚渡しとく」
「おお!? そんなに必要ないよ?」
「なら、いま想定していたのより良い素材を使ってくれ。頼む」
「わ、わかった。一流品を作って見せるよ」
俺はタンドルフに金貨を渡す。
「それにしても、この図面の紙は凄く品質がいいな。こんなに細かい線までくっきりと描かれてるなんて……あんたもしかしてどこぞの貴族さんなのかい?」
「いいや違うよ。もし頼んでいたものが一流品だと俺に思わせることができたら、これを筆とセットでプレゼントするよ」
「本当かい!? よし、絶対に思わず唸らせるようなのを仕上げてみせるよ!」
「よろしく!」
俺はタンドルフの店を出て、資材を購入しているステファンたちとの待ち合わせ場所に向かう。
「えっと、この辺だったような……」
お昼を過ぎる頃になると、人混みが急に増えて、通りには新たな露店が開かれていた。俺は少し方向感覚を失ってしまった。いや正直に言おう。迷子になった。
本気で迷子になった場合は、街の門の前で待つことになっているので、それほど心配する事態ではない。プチ迷子だ。
俺は門で待つことに心を決めた。二人を探して焦るあまりお腹が痛くなるような事態を避けて、ここはあえて観光を楽しもうと思ったのだ。
そう気持ちを切り替えてしまえば、ぶらぶら露店をひやかしながら散歩としゃれこむのも悪くない。
ぶらぶら。
ぶらぶら。
ぶら……。
(ぴろろん! 田中様の登録された情報に89%合致する方を探知しました)
「ほへ?」
視界に索敵マップが表示されピンク色のハートマークが点滅している。ここから約10mくらい先だ。
「ハートマークが点滅……ってハッ!? 」
(田中様が登録された『好みの女性』に89%合致する方ですね)
(キタコレ! ココロチン! ナイスアシスト!)
(ふぁい・おー!です!)
俺は人混みをかき分けて10mの距離を一気に縮めていった。まるで1000kmのように感じる10mだった。
とうとう来る!
ヒロインが来る!
イチャラブが来る!
ハーレムくりゅぅぅぅ!
バッ!
人混みを抜けた先には天使がいた。
って、いや、エンジェル・キモオタじゃないよ? ホントにホントのMy天使!
美しい銀髪、大きく潤んだ薄い緑の瞳、小さくてぷっくりとした艶やかな唇、確かにあの『後輩ちゃん』と呼ばれていたお姉さんだ。あの優しかったお姉さんが俺の目の前に立っていた。が、しかし……
ふむ。なるほど合致率が100%じゃないのは胸のせいか。
異世界で出会った好みの女性は貧乳さんでした。
だがそんなの問題ねー! 俺はもう既に心を奪われている! だから今は貧乳でもいい。いや貧乳こそいい!
よーし!
……とそこで俺の足が止まる。
(えっとココロチン? ここからどうすればいい? どうすれば彼女とお近づきになれる?)
(あぁ、このチンカス! そんなの当たって砕けろでしょ!)
(チ、チンカスって……ココロチン)
俺は頭の中にいるはずのココロチンに背中を蹴り飛ばされたかのように、つんのめって彼女の前に躍り出た。
目の前の彼女、銀髪の君は超俺のタイプだった。ココロチンに好みを登録するときに、可愛いければ誰でもいいと言ったような気がしないでもないが、ただの記憶違いだろう。間違いないこの銀髪の君こそ俺のドストライクだ!
「あっ、あのっ!?」
俺が飛び出てきたことに驚きながら、彼女が声を掛けてきた。彼女の方から声を掛けてきたんだよ! これって脈ありじゃね? もしかして俺って好感度高めじゃね? いやむしろ惚れられてんじゃね?
彼女と目が合う。その美しい潤んだ瞳が何かを期待するように俺を見上げていた。
これは……妄想じゃなく脈ありなのでは……。そして彼女のぷるるんとした唇がゆっくりと開かれる。いきなりですか? いきなりそこからですか? もちろん頂きますよぉ!
「うちのおいしいパンを買ってくださいませんか!」
「……」
彼女の足元に置かれたたくさんの籠に、たくさんの種類の、たくさんのパンが置かれていた。
「おいしいパンいかがですか!」
「はい」
俺はパンを全部お買い上げした。
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