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第一章 護衛艦フワデラ
第49話 女王様に踏んで欲しい……
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リーコス村に向かってくる魔族軍の残党を一掃するため、追加のドローンと人員をヘリでリーコス村へ送る。
安全を確保するため村人たちは海岸に集め、重傷者はフワデラへ移送して治療を行うことにした。魔族軍の捕虜は拘束してティンダロス隊に監視させている。
南大尉と坂上大尉は幼女水陸機動隊と共にリーコス村に上陸。白狼族のヴィルフォアッシュも村の防衛のために彼らと一緒に戻っていた。
私はCICのモニタで掃討戦の様子を眺めていた。
ヴィルミカーラに抱っこされながら眺めていた。
「空から見ると妖異と魔族の違いは明白だな」
「た、確かに……ち、違いが……あ、ある」
CICの扉が開いて誰かが入って来たのがチラッと視界に入ったので、私はヴィルミカーラの胸をポンポンと叩いて抱っこから降ろしてもらう。
入って来たのは平野副長だった。平野は私が見ているモニタを見てリーコス村の状況を確認する。
「蜘蛛の子を散らすように逃げていくのが魔族、村へ向かって進んでくるのが妖異というところでしょうか」
もしかすると私とヴィルミカーラの会話を聞いていたのか。
だ、だが私がヴィルミカーラに抱っこしてもらっていたところは見られてはいまい。きっと大丈夫。神様お願い!
「CICでは艦長の背丈でもモニタは見ることができますし、ヴィルミカーラに抱き着く必要はないのでは?」
見られてたぁぁ!
平野が氷の視線で上から私を見下ろしてくる。平野のスキル【見下し好感度UP】が発動しているのだろう。冷たく見下されている私の背中にぞくぞくと電撃が走った。
女王様に踏んで欲しい……。
なっ!? 今、私は何を考えた!?
マズイ……これは非常にマズイ。このままでは、平野女王様に土下座して踏んでくださいと懇願しかねない。
既に私の膝はガクガクブルブルしている。
皆の前で「踏んで下さい女王様!」と叫んでしまいそうになってきたぞ。
さすがに部下の前でそんな醜態は晒すことはできない。部下がいなくても駄目だけど。
いや、二人きりのときならいいんじゃね? いやいやむしろ、部下たちが見てる前で踏んで頂けるからこそ燃えるのでは?
……って、何だこの思考!
恐るべし平野のスキル。もしこいつがこのスキルを悪用すれば世界征服だって出来てしまうんじゃないか? そんなことさせてなるものか。このっ!
私は自分のスキル【幼女の願い】を発動! 目のうるおい成分を110%に上げて、目をうるうるさせながら平野に反撃する。
「お、おねぇちゃん……ごめんなさい。本当はおねぇちゃんに抱っこして欲しかったんだけど……おねぇちゃん忙しそうだったから仕方なかったの」
「くっ!」
平野の顔に「小さい女の子に厳しく当たり過ぎてしまって罪悪感に苛まれた」という表情が走る。
【見下し好感度UP】の呪縛が解けた私は、さらにスキルを打ち込んで平野をメロメロにしてやろうと構える。
ちなみにどれくらいメロメロにしてやるかと言えば、今日一杯は平野のデカい胸をモミモミしまくって、お昼寝の枕にするくらい……などと考えつつ平野ににじり寄った瞬間――
「チョー受けるぅぅぅう!」
土岐川早苗2等海士が私を指差してチョー受けた。彼女のスキル【チョー受ける真偽判定】が私に発動されていたのだ。
ちなみにチョーウケているはずの土岐川の表情は超引きつっており、その目は恐怖で見開いていた。
彼女のスキルは発動したら制御することができない。今、自分が私にトンデモナイことをしているという自覚があるのだろう。
わかる。わかるぞ土岐川。平野に無理強いされてのスキル発動なのだろう。お前の意志ではないのだろう?
だが許ざん……。
後で絶対カンチョー攻撃してやる! ズブっとなっ!
私は人差し指を立てたまま両手の掌を合わせて、それを土岐川に向けた。
「うひぃぃぃ」
怯える土岐川を庇うように平野が私の前に出てきた。その表情はマジで氷で出来ているのでは?というくらい怖かった。
「ヴィルミカーラへのセクハラだけではなく、それを嘘で誤魔化そうとし、さらには真実を暴いた部下を脅す……これほど悪事を重ねてタダで済むとは思っていませんよね?」
平野がズイっと私の方に一歩進む。
ズズッと私は二歩下がる。助けを求める私の視線が山形にぶつかると、山形はサッと目を逸らす。ヴィルフォアッシュはサッとスマートホンを取り出して何か操作を始める。
ヴィルミカーラだけが首を傾げてニコッと笑っていたが、この場にいる誰一人として私の援護に付こうとするものはいなかった。
仕方ない! 私一人で平野に立ち向かうしかない! 私は腹を括って……
「ごめんなちゃい……」
幼女土下座をした。
そのとき私は大事なことに気が付いた。
そういえば、部下の前で土下座なんていつものことじゃないか? と。
そう思うと少し胸が切なくなり、スキルによるものではない本物の涙が目に溢れそうになる。
「はぁ……」
涙目で顔を上げた私を見て平野が大きくため息を吐く。
「反省しているのなら今回は不問にします。急ぎの用もあることですし……」
「急ぎの用?」
「降伏した魔物の中に士官クラスのものがいたようです。これから尋問に向かおうと思いますので、艦長に同行していただければと」
「わ、わかった。すぐに向かうとしよう」
私は戦闘の指揮を山形砲雷長に預け、捕虜のいるリーコス村へ向った。
安全を確保するため村人たちは海岸に集め、重傷者はフワデラへ移送して治療を行うことにした。魔族軍の捕虜は拘束してティンダロス隊に監視させている。
南大尉と坂上大尉は幼女水陸機動隊と共にリーコス村に上陸。白狼族のヴィルフォアッシュも村の防衛のために彼らと一緒に戻っていた。
私はCICのモニタで掃討戦の様子を眺めていた。
ヴィルミカーラに抱っこされながら眺めていた。
「空から見ると妖異と魔族の違いは明白だな」
「た、確かに……ち、違いが……あ、ある」
CICの扉が開いて誰かが入って来たのがチラッと視界に入ったので、私はヴィルミカーラの胸をポンポンと叩いて抱っこから降ろしてもらう。
入って来たのは平野副長だった。平野は私が見ているモニタを見てリーコス村の状況を確認する。
「蜘蛛の子を散らすように逃げていくのが魔族、村へ向かって進んでくるのが妖異というところでしょうか」
もしかすると私とヴィルミカーラの会話を聞いていたのか。
だ、だが私がヴィルミカーラに抱っこしてもらっていたところは見られてはいまい。きっと大丈夫。神様お願い!
「CICでは艦長の背丈でもモニタは見ることができますし、ヴィルミカーラに抱き着く必要はないのでは?」
見られてたぁぁ!
平野が氷の視線で上から私を見下ろしてくる。平野のスキル【見下し好感度UP】が発動しているのだろう。冷たく見下されている私の背中にぞくぞくと電撃が走った。
女王様に踏んで欲しい……。
なっ!? 今、私は何を考えた!?
マズイ……これは非常にマズイ。このままでは、平野女王様に土下座して踏んでくださいと懇願しかねない。
既に私の膝はガクガクブルブルしている。
皆の前で「踏んで下さい女王様!」と叫んでしまいそうになってきたぞ。
さすがに部下の前でそんな醜態は晒すことはできない。部下がいなくても駄目だけど。
いや、二人きりのときならいいんじゃね? いやいやむしろ、部下たちが見てる前で踏んで頂けるからこそ燃えるのでは?
……って、何だこの思考!
恐るべし平野のスキル。もしこいつがこのスキルを悪用すれば世界征服だって出来てしまうんじゃないか? そんなことさせてなるものか。このっ!
私は自分のスキル【幼女の願い】を発動! 目のうるおい成分を110%に上げて、目をうるうるさせながら平野に反撃する。
「お、おねぇちゃん……ごめんなさい。本当はおねぇちゃんに抱っこして欲しかったんだけど……おねぇちゃん忙しそうだったから仕方なかったの」
「くっ!」
平野の顔に「小さい女の子に厳しく当たり過ぎてしまって罪悪感に苛まれた」という表情が走る。
【見下し好感度UP】の呪縛が解けた私は、さらにスキルを打ち込んで平野をメロメロにしてやろうと構える。
ちなみにどれくらいメロメロにしてやるかと言えば、今日一杯は平野のデカい胸をモミモミしまくって、お昼寝の枕にするくらい……などと考えつつ平野ににじり寄った瞬間――
「チョー受けるぅぅぅう!」
土岐川早苗2等海士が私を指差してチョー受けた。彼女のスキル【チョー受ける真偽判定】が私に発動されていたのだ。
ちなみにチョーウケているはずの土岐川の表情は超引きつっており、その目は恐怖で見開いていた。
彼女のスキルは発動したら制御することができない。今、自分が私にトンデモナイことをしているという自覚があるのだろう。
わかる。わかるぞ土岐川。平野に無理強いされてのスキル発動なのだろう。お前の意志ではないのだろう?
だが許ざん……。
後で絶対カンチョー攻撃してやる! ズブっとなっ!
私は人差し指を立てたまま両手の掌を合わせて、それを土岐川に向けた。
「うひぃぃぃ」
怯える土岐川を庇うように平野が私の前に出てきた。その表情はマジで氷で出来ているのでは?というくらい怖かった。
「ヴィルミカーラへのセクハラだけではなく、それを嘘で誤魔化そうとし、さらには真実を暴いた部下を脅す……これほど悪事を重ねてタダで済むとは思っていませんよね?」
平野がズイっと私の方に一歩進む。
ズズッと私は二歩下がる。助けを求める私の視線が山形にぶつかると、山形はサッと目を逸らす。ヴィルフォアッシュはサッとスマートホンを取り出して何か操作を始める。
ヴィルミカーラだけが首を傾げてニコッと笑っていたが、この場にいる誰一人として私の援護に付こうとするものはいなかった。
仕方ない! 私一人で平野に立ち向かうしかない! 私は腹を括って……
「ごめんなちゃい……」
幼女土下座をした。
そのとき私は大事なことに気が付いた。
そういえば、部下の前で土下座なんていつものことじゃないか? と。
そう思うと少し胸が切なくなり、スキルによるものではない本物の涙が目に溢れそうになる。
「はぁ……」
涙目で顔を上げた私を見て平野が大きくため息を吐く。
「反省しているのなら今回は不問にします。急ぎの用もあることですし……」
「急ぎの用?」
「降伏した魔物の中に士官クラスのものがいたようです。これから尋問に向かおうと思いますので、艦長に同行していただければと」
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