ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
50 / 214
第一章 護衛艦フワデラ

第49話 女王様に踏んで欲しい……

しおりを挟む
 リーコス村に向かってくる魔族軍の残党を一掃するため、追加のドローンと人員をヘリでリーコス村へ送る。

 安全を確保するため村人たちは海岸に集め、重傷者はフワデラへ移送して治療を行うことにした。魔族軍の捕虜は拘束してティンダロス隊に監視させている。

 南大尉と坂上大尉は幼女水陸機動隊と共にリーコス村に上陸。白狼族のヴィルフォアッシュも村の防衛のために彼らと一緒に戻っていた。

 私はCICのモニタで掃討戦の様子を眺めていた。
 
 ヴィルミカーラに抱っこされながら眺めていた。

「空から見ると妖異と魔族の違いは明白だな」

「た、確かに……ち、違いが……あ、ある」

 CICの扉が開いて誰かが入って来たのがチラッと視界に入ったので、私はヴィルミカーラの胸をポンポンと叩いて抱っこから降ろしてもらう。
 
 入って来たのは平野副長だった。平野は私が見ているモニタを見てリーコス村の状況を確認する。

「蜘蛛の子を散らすように逃げていくのが魔族、村へ向かって進んでくるのが妖異というところでしょうか」

 もしかすると私とヴィルミカーラの会話を聞いていたのか。

 だ、だが私がヴィルミカーラに抱っこしてもらっていたところは見られてはいまい。きっと大丈夫。神様お願い!

「CICでは艦長の背丈でもモニタは見ることができますし、ヴィルミカーラに抱き着く必要はないのでは?」

 見られてたぁぁ!
 
 平野が氷の視線で上から私を見下ろしてくる。平野のスキル【見下し好感度UP】が発動しているのだろう。冷たく見下されている私の背中にぞくぞくと電撃が走った。

 女王様に踏んで欲しい……。
 
 なっ!?  今、私は何を考えた!?
 
 マズイ……これは非常にマズイ。このままでは、平野女王様に土下座して踏んでくださいと懇願しかねない。

 既に私の膝はガクガクブルブルしている。

 皆の前で「踏んで下さい女王様!」と叫んでしまいそうになってきたぞ。

 さすがに部下の前でそんな醜態は晒すことはできない。部下がいなくても駄目だけど。

 いや、二人きりのときならいいんじゃね? いやいやむしろ、部下たちが見てる前で踏んで頂けるからこそ燃えるのでは?
 
 ……って、何だこの思考!

 恐るべし平野のスキル。もしこいつがこのスキルを悪用すれば世界征服だって出来てしまうんじゃないか? そんなことさせてなるものか。このっ!

 私は自分のスキル【幼女の願い】を発動! 目のうるおい成分を110%に上げて、目をうるうるさせながら平野に反撃する。

「お、おねぇちゃん……ごめんなさい。本当はおねぇちゃんに抱っこして欲しかったんだけど……おねぇちゃん忙しそうだったから仕方なかったの」

「くっ!」

 平野の顔に「小さい女の子に厳しく当たり過ぎてしまって罪悪感に苛まれた」という表情が走る。

 【見下し好感度UP】の呪縛が解けた私は、さらにスキルを打ち込んで平野をメロメロにしてやろうと構える。

 ちなみにどれくらいメロメロにしてやるかと言えば、今日一杯は平野のデカい胸をモミモミしまくって、お昼寝の枕にするくらい……などと考えつつ平野ににじり寄った瞬間――

「チョー受けるぅぅぅう!」

 土岐川早苗2等海士が私を指差してチョー受けた。彼女のスキル【チョー受ける真偽判定】が私に発動されていたのだ。

 ちなみにチョーウケているはずの土岐川の表情は超引きつっており、その目は恐怖で見開いていた。

 彼女のスキルは発動したら制御することができない。今、自分が私にトンデモナイことをしているという自覚があるのだろう。

 わかる。わかるぞ土岐川。平野に無理強いされてのスキル発動なのだろう。お前の意志ではないのだろう?

 だが許ざん……。

 後で絶対カンチョー攻撃してやる! ズブっとなっ!

  私は人差し指を立てたまま両手の掌を合わせて、それを土岐川に向けた。

「うひぃぃぃ」

 怯える土岐川を庇うように平野が私の前に出てきた。その表情はマジで氷で出来ているのでは?というくらい怖かった。

「ヴィルミカーラへのセクハラだけではなく、それを嘘で誤魔化そうとし、さらには真実を暴いた部下を脅す……これほど悪事を重ねてタダで済むとは思っていませんよね?」

 平野がズイっと私の方に一歩進む。

 ズズッと私は二歩下がる。助けを求める私の視線が山形にぶつかると、山形はサッと目を逸らす。ヴィルフォアッシュはサッとスマートホンを取り出して何か操作を始める。

 ヴィルミカーラだけが首を傾げてニコッと笑っていたが、この場にいる誰一人として私の援護に付こうとするものはいなかった。

 仕方ない! 私一人で平野に立ち向かうしかない! 私は腹を括って……

「ごめんなちゃい……」
 
 幼女土下座をした。
 
 そのとき私は大事なことに気が付いた。
 
 そういえば、部下の前で土下座なんていつものことじゃないか? と。

 そう思うと少し胸が切なくなり、スキルによるものではない本物の涙が目に溢れそうになる。

「はぁ……」

 涙目で顔を上げた私を見て平野が大きくため息を吐く。

「反省しているのなら今回は不問にします。急ぎの用もあることですし……」

「急ぎの用?」

「降伏した魔物の中に士官クラスのものがいたようです。これから尋問に向かおうと思いますので、艦長に同行していただければと」

「わ、わかった。すぐに向かうとしよう」

 私は戦闘の指揮を山形砲雷長に預け、捕虜のいるリーコス村へ向った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...