ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

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第五章 フワーデ・フォー

第108話 美少女戦隊フワーデ・フォー

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 リーコス村を訪れたフワデラ夫妻がグレイベア村に帰って1週間後。私たちは、リーコス村周辺に現れた妖異軍の討伐に赴いていた。

 まもなく夜を迎えようという草原で、夕日を背に巨大なオークの戦士が目の前にいる四人の少女を見下ろしていた。

「ガハハハハ! お前たちがイゴーロナックル将軍様の邪魔をしているという人類軍か! 全員ガキではないか! ワシひとりで全て屠ってくれよう!」

 121名の魔族兵と23体の妖異兵を背後にしている巨大なオークの戦士は強気のようだった。まぁ、相手にするのがおヘソ丸出しの小さな少女だけとなれば、たとえ自分ひとりだったとしても同じ態度になるだろう。

 巨大な岩トロルが三体いるのが見えるが、まだ夕日が当たっているためか、まだ動いてはいないようだった。

 とりあえず、しかたなく、私は打ち合わせ通りに口上を述べる。お腹が冷えるし、履きなれない短いスカートのために股間がどうにも心もとない。

 でも艦長がんばる!

「よ、妖異共―! お前たちの悪事はマルッとスルッとペロッと全てお見通しだ! 今からお前たちを成敗する!」

 私の背後から右斜め前に黄色系衣装の竜子が飛び出す!

「太陽の力をこの身に浴びて! サンシャインイエロー!」

 ビシッと竜子が右サイド向けのポーズを決める。

「青き清浄なる世界を目指して! マンデーブルー!」

 私はザッと左に飛んで左サイド向けのポーズを決めた。それにしても、いつもながら私のセリフはこれで大丈夫なのだろうか。 

 ライラがくるりと一回転して、少し左に移動して横ピースを決める。

「愛する人を守るため! シンイチさまラブピンク!」

 セリフは自由に決めて良いということになったので、ライラは自由に決めたようだった。

 ザザッ……。

 最後にフワーデが進み出る。

「海の女神が悪を討つ! プリンセス・フワーデ!」

 色はどうしたぁぁ! ……とツッコンでる暇はねぇ!

「「「「美少女戦隊フワーデ・フォー!」」」」

 ビシッ!

 と私たちが決めのポーズを取ったと同時に……

 ドドーン! ドドーン! ドドーン! ドドーン! ドドーン! 

 護衛艦フワデラのMk.45 5インチ砲が最初に岩トロル三体を破壊。さらに続けて妖異軍の本陣に主砲が次々と撃ち込まれた。

 妖異軍はパニックに陥り、魔族兵は逃亡を始める。

 パシュッ! パシュッ! パシュッ! パシュッ! パシュッ! 
  
 坂上大尉率いる狙撃チームが、魔術師としてマークされていた魔族の額を次々と撃ち抜いていく。

 あいつらの戦力は未知の部分が多いので、排除は最優先になっている。

 あらかた掃討が終わると、アラクネに搭乗したヴィルミカーラを先頭に、水陸機動隊がティンダロスと共に妖異兵の掃討に向った。
 
 勿論、妖異軍の位置はドローン・カラスによって全て特定されており、情報の共有も行われている。

「なっ!? ……なんだこれは、何が起こってる……」

 当惑している巨大なオークの戦士の前にフワーデがとことこと歩み寄る。

 小柄な少女を認めたオークの戦士は、他の全てのことを一旦保留にすることに決めたらしい。

 周囲に意識を向ければ絶望しか残っていない状況で、目の前のひ弱な少女をいたぶり殺すことに喜びを見出したようだった。

「くくく、このガキども! お前たちの一人を人質にして逃げるとしよう。他は殺す!」

 そう言って掴みかかろうとするのを、トコトコとフワーデが近づきつつ右腕を振り上げた。

「フワーデェェェェ……」

 彼女を捉えようと伸ばされるオークの戦士の手に、フワーデのヒョロっとしたパンチが衝突する。

「パーーーーンチ!」

 グルンッ!

 フワーデに殴られたオークの右腕は、そのままオークの頭上へと振り上げられた。グギッと肩の関節からヤバ目な音がして、さらにオークの身体が回転する。

「グアワァァァァ」

 フワーデの筐体であるテーシャは重量が非常に重く【検閲削除】kgもある。そのパンチでオークの巨体を跳ね飛ばすときも、安定した重心は少しもブレることはなかった。

「まままま、待て! 待ってくれ! 待ってくださいぃぃ!」

 もう少しで千切れそうな右腕をかばいながら、巨大なオークの戦士が命乞いを始めた。

 私は巨大なオークの戦士の訴えに頷きながら答える。

「わかってる。妖異軍に強制されて仕方なく襲ってきたんだろう? お前は脅されて仕方なく人間を襲っただけなんだよな?」

「そ、そそそう! そうなんだ! 本当は殺したくなんてなかった! だがそうしないとアイツらに殺されちまうんだよ! 悪気なんてこれっぽっちもなかった!」

 私はオークの戦士に向って手を差し伸べる。

「わかってる。悪魔勇者に逆らえなかったんだよな。わかってる。だから……」

 オークの戦士に安堵の表情が浮かぶ。

「お前が殺した人たちに謝ってくるといい」

 私がオークの戦士に差し伸べた手を握り締める。

 バシュッ!

 オークの額に穴が空き、その身体がゆっくりと地面に横たわって行った。

 妖異は発見即殲滅だが、魔族兵については基本的に投降を受け入れる。

 こうした私たちの方針は、今では妖異軍の間にも知られているようだった。

 ただそれには条件がある。

 妖異軍には知られていない条件、それは「民間人を殺傷していないこと」だ。

 ちなみにここで言う民間人には降伏した兵も含まれる。

 そしてこのオークはその条件に引っ掛かっていることが、事前の偵察で確認されている。

 この戦場に至るまでの奴の戦果が、見るに堪えない遺体の数々が、進軍する彼らの馬や馬車に飾られていたのだ。

「終わったね」
 
 倒れたオークを見てフワーデがつぶやく。

「あぁ……」

 全員が撤退した後、インカムから山形砲雷長がタクティカル・トマホークの発射を告げるカウントダウンが聞こえて来た。

「3……2……1……」

 チュドォォォォォン!

 敵本陣があった場所に弔いの火が燃え上がり、

 それからしばらくして、

 夜が訪れた。
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