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第五章 フワーデ・フォー
第115話 脅威の射程距離
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「現在確認されている最大射程は50キロメートルです」
「はっ!? 何だって?」
山形砲雷長の報告がよく聞こえなかったので、私は大声で聞き直した。思っていたより声が大きかったのか、CICにいる全オペレーターが私の方に振り向く。
「だから50キロメートルです!」
モニタに映っている山形砲雷長が先ほどより大声で返答する。
「マジか……」
「マジです」
最大射程50キロメートル。
護衛艦フワデラの主砲 Mk45 5インチ砲の射程が約37キロメートルで、
帝国史上最大の戦艦大和の45口径46センチ砲の射程が約42キロメートルだ。
それが……
「幼女化ビームの射程が50キロメートルだと!?」
「やり方次第ではまだまだ伸びると思いますよ!」
驚愕する私のことを完全にスルーして、モニタの向こうにいる山形砲雷長が大はしゃぎしている。
ここ最近のシンイチの幼女化能力の伸びが凄まじい。スキルのパワーが向上したというより、それを制御するシンイチの能力が著しく成長している。
特撮マニアの乗組員たちが開催するクラスに参加し、ポーズの特撮ヒーローっぽさが増した。単に直線的なビームを出すだけでなく、光輪にして飛ばすことができるよういなったのはこのクラスの指導のおかげだろう。
香港カンフー映画マニアの乗組員たちが開催するクラスに参加し、アクロバティックに幼女化する技術が向上した。
女性乗組員が主催するヨガクラスでは、視線をキョロキョロする度にライラに抓られながら、集中力を鍛えていた。
そして決め手となったのが弓道クラス。的をイメージして射抜く訓練で、彼は今回の長距離の幼女化ビームに成功する。
シンイチがそこに至るきっかけを作った山形砲雷長が、私に自慢気にその成果を話し始める。
「まず最初はフワーデちゃんの飛ばす偵察ドローンの映像を、シンイチくんの目にすることができたわけですよ。次に複数のドローンを飛ばしたリレー中継でも成功しました。距離はまだまだ伸ばせるはずです!」
そう言って山形砲雷長は、ここから50キロメートル先にあるボートで手をふる幼女たちの映像をモニタに映しだしている。現地で待機中のヘリからの映像だ。
「い、威力は? 人より大型の個体に通用するのか?」
少なくとも陸では彼の幼女化は大型の妖異にも通じていたのを何度も見ている。ただその時は、目視できるくらい敵は近くにいたのだ。50キロ先の巨大な妖異に通じるのだろうか。通じて欲しい。
「20キロメートル付近で、30メートルクラスの鯨のような生物の幼女化に成功しています。少なくとも光量においては50キロメートルでも変わりませんでした。光量が幼女化ビームの効果と比例するかは不明ですが」
「そうか。まぁ50キロと言わずとも、次に大型妖異が10キロ圏内に入る前に発見できれば、シンイチのビームを試してみるとしよう」
「了」
「とはいえシンイチばかりに頼るわけにもいかない。我々も帝国海軍としての矜持を見せねばなるまい」
「ということは艦長……とうとう腹を決めたんですね」
「あぁ、やってやる! やってやるぞ!」
EONポイント稼ぎ!
いつの間にか私の背後に平野副長が立っていた。何故か黒縁三角眼鏡を掛けている。平野が片手で眼鏡をクィッと動かしながら手にしている報告書を読み上げる。
「それでは、前川主計長と黒淵補給長からの要望をお伝えします」
「お、おう」
「本艦のEONポイントは、悪魔討伐作戦の立案時に設定した当初予算の約43%まで達成することができました。魔鉱石の供給が安定していることと、アシハブア王国との貿易によって、今後の半年で100%を達成することができると予測しています」
「半年か……結構かかるものだな」
「リーコス村のインフラや住人の消費も増えていますから仕方がありません。とはいえ、半年はやはり長いです。長いですので……」
「ので?」
「艦長が稼いでください!」
「え?」
天上界から発注される女神クエストのことだろうか? いや、それならわざわざ私に特定する必要はないはず。ということは……。
「艦長には、ドラゴンジャー及びフワーデ・フォーの両方の配信(妖異討伐)に参加していただきます!」
「えぇぇっ!? なぜに!?」
「ルカ村長は、ドラゴンジャー出動の際、艦長が参加していれば女神クエストの全報酬を我々に提供すると約束してくれています。さらに先日、配信収益も折半しても良いという提案まで頂いております」
「はぁ……」
「下世話な話になりますが、ドラゴンジャーの場合、ドラゴンとグレイベアの戦力は非常に強力です。フワーデ・フォーの場合、弾薬・兵装は全て我々自身の持ち出しとなりますが、ドラゴンジャーの場合、二人の戦力を頼りにすることができます」
「確かに下世話な話だな」
平野副長がCICのモニタにグラフを表示する。
「こちらをご覧ください。フワーデ・フォーとドラゴンジャーのメンバー別人気投票率の推移です。意外かもしれませんが、艦長の人気は堅実なんですよ。PVも艦長の出演時には大きく伸びています」
グラフを見ると、他のメンバーが上下の変動が激しいのに対し、確かに私は高い人気で安定していた。
「それにしてもライラが低いのが意外だな」
「やはり人妻ということが響いているのでしょうね。ネットでのコメントも艦長に関するものが一番多いようです。いくつか読み上げましょうか?」
「やめてくれ……絶対に立ち直れなくなる気がする」
「それでですね。シンイチくんとライラさんには、艦上での訓練に集中していただくためにフワーデ・フォーからは抜けていただきます。代わりに新たなメンバーとして……」
カツン、カツンと音がしてCICの入り口に人影が立つ。
「不破寺真九郎ですん! この度、フワーデ・フォーの新メンバーになりましたん!」
幼女じゃねーじゃん!と思わずツッコミを入れてしまった私に、平野がまた眼鏡をクィッとして不敵な笑みを浮かべる。
「いつからフワーデ・フォーが幼女戦隊だと勘違いしていたのですか?」
「そういや美少女戦隊だったか。でも、天上界のロリコン紳士どもはそれを許すのか?」
「ライラさんと不破寺さんの入れ替えについては、ちゃんと事前にアンケートは取っています。その結果……」
「結果……は?」
「おっぱいは正義ということでした」
「おっ、おまえ、いつもセクハラセクハラって私のことを批判してるくせに、不破寺さんのおっぱいはいいのかよ!」
「この眼鏡を掛けている私は、いつもの平野ではありません。敏腕マネージャー・ヒラノです。そういうことで言わせていただければ……」
平野が人差し指と親指で輪を作り、ニヤリと笑った。
「世の中、ゼニやで……」
平野が銭ゲバになってりゅぅぅぅ!
「はっ!? 何だって?」
山形砲雷長の報告がよく聞こえなかったので、私は大声で聞き直した。思っていたより声が大きかったのか、CICにいる全オペレーターが私の方に振り向く。
「だから50キロメートルです!」
モニタに映っている山形砲雷長が先ほどより大声で返答する。
「マジか……」
「マジです」
最大射程50キロメートル。
護衛艦フワデラの主砲 Mk45 5インチ砲の射程が約37キロメートルで、
帝国史上最大の戦艦大和の45口径46センチ砲の射程が約42キロメートルだ。
それが……
「幼女化ビームの射程が50キロメートルだと!?」
「やり方次第ではまだまだ伸びると思いますよ!」
驚愕する私のことを完全にスルーして、モニタの向こうにいる山形砲雷長が大はしゃぎしている。
ここ最近のシンイチの幼女化能力の伸びが凄まじい。スキルのパワーが向上したというより、それを制御するシンイチの能力が著しく成長している。
特撮マニアの乗組員たちが開催するクラスに参加し、ポーズの特撮ヒーローっぽさが増した。単に直線的なビームを出すだけでなく、光輪にして飛ばすことができるよういなったのはこのクラスの指導のおかげだろう。
香港カンフー映画マニアの乗組員たちが開催するクラスに参加し、アクロバティックに幼女化する技術が向上した。
女性乗組員が主催するヨガクラスでは、視線をキョロキョロする度にライラに抓られながら、集中力を鍛えていた。
そして決め手となったのが弓道クラス。的をイメージして射抜く訓練で、彼は今回の長距離の幼女化ビームに成功する。
シンイチがそこに至るきっかけを作った山形砲雷長が、私に自慢気にその成果を話し始める。
「まず最初はフワーデちゃんの飛ばす偵察ドローンの映像を、シンイチくんの目にすることができたわけですよ。次に複数のドローンを飛ばしたリレー中継でも成功しました。距離はまだまだ伸ばせるはずです!」
そう言って山形砲雷長は、ここから50キロメートル先にあるボートで手をふる幼女たちの映像をモニタに映しだしている。現地で待機中のヘリからの映像だ。
「い、威力は? 人より大型の個体に通用するのか?」
少なくとも陸では彼の幼女化は大型の妖異にも通じていたのを何度も見ている。ただその時は、目視できるくらい敵は近くにいたのだ。50キロ先の巨大な妖異に通じるのだろうか。通じて欲しい。
「20キロメートル付近で、30メートルクラスの鯨のような生物の幼女化に成功しています。少なくとも光量においては50キロメートルでも変わりませんでした。光量が幼女化ビームの効果と比例するかは不明ですが」
「そうか。まぁ50キロと言わずとも、次に大型妖異が10キロ圏内に入る前に発見できれば、シンイチのビームを試してみるとしよう」
「了」
「とはいえシンイチばかりに頼るわけにもいかない。我々も帝国海軍としての矜持を見せねばなるまい」
「ということは艦長……とうとう腹を決めたんですね」
「あぁ、やってやる! やってやるぞ!」
EONポイント稼ぎ!
いつの間にか私の背後に平野副長が立っていた。何故か黒縁三角眼鏡を掛けている。平野が片手で眼鏡をクィッと動かしながら手にしている報告書を読み上げる。
「それでは、前川主計長と黒淵補給長からの要望をお伝えします」
「お、おう」
「本艦のEONポイントは、悪魔討伐作戦の立案時に設定した当初予算の約43%まで達成することができました。魔鉱石の供給が安定していることと、アシハブア王国との貿易によって、今後の半年で100%を達成することができると予測しています」
「半年か……結構かかるものだな」
「リーコス村のインフラや住人の消費も増えていますから仕方がありません。とはいえ、半年はやはり長いです。長いですので……」
「ので?」
「艦長が稼いでください!」
「え?」
天上界から発注される女神クエストのことだろうか? いや、それならわざわざ私に特定する必要はないはず。ということは……。
「艦長には、ドラゴンジャー及びフワーデ・フォーの両方の配信(妖異討伐)に参加していただきます!」
「えぇぇっ!? なぜに!?」
「ルカ村長は、ドラゴンジャー出動の際、艦長が参加していれば女神クエストの全報酬を我々に提供すると約束してくれています。さらに先日、配信収益も折半しても良いという提案まで頂いております」
「はぁ……」
「下世話な話になりますが、ドラゴンジャーの場合、ドラゴンとグレイベアの戦力は非常に強力です。フワーデ・フォーの場合、弾薬・兵装は全て我々自身の持ち出しとなりますが、ドラゴンジャーの場合、二人の戦力を頼りにすることができます」
「確かに下世話な話だな」
平野副長がCICのモニタにグラフを表示する。
「こちらをご覧ください。フワーデ・フォーとドラゴンジャーのメンバー別人気投票率の推移です。意外かもしれませんが、艦長の人気は堅実なんですよ。PVも艦長の出演時には大きく伸びています」
グラフを見ると、他のメンバーが上下の変動が激しいのに対し、確かに私は高い人気で安定していた。
「それにしてもライラが低いのが意外だな」
「やはり人妻ということが響いているのでしょうね。ネットでのコメントも艦長に関するものが一番多いようです。いくつか読み上げましょうか?」
「やめてくれ……絶対に立ち直れなくなる気がする」
「それでですね。シンイチくんとライラさんには、艦上での訓練に集中していただくためにフワーデ・フォーからは抜けていただきます。代わりに新たなメンバーとして……」
カツン、カツンと音がしてCICの入り口に人影が立つ。
「不破寺真九郎ですん! この度、フワーデ・フォーの新メンバーになりましたん!」
幼女じゃねーじゃん!と思わずツッコミを入れてしまった私に、平野がまた眼鏡をクィッとして不敵な笑みを浮かべる。
「いつからフワーデ・フォーが幼女戦隊だと勘違いしていたのですか?」
「そういや美少女戦隊だったか。でも、天上界のロリコン紳士どもはそれを許すのか?」
「ライラさんと不破寺さんの入れ替えについては、ちゃんと事前にアンケートは取っています。その結果……」
「結果……は?」
「おっぱいは正義ということでした」
「おっ、おまえ、いつもセクハラセクハラって私のことを批判してるくせに、不破寺さんのおっぱいはいいのかよ!」
「この眼鏡を掛けている私は、いつもの平野ではありません。敏腕マネージャー・ヒラノです。そういうことで言わせていただければ……」
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