ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
117 / 214
第五章 フワーデ・フォー

第115話 脅威の射程距離

しおりを挟む
「現在確認されている最大射程は50キロメートルです」

「はっ!? 何だって?」

 山形砲雷長の報告がよく聞こえなかったので、私は大声で聞き直した。思っていたより声が大きかったのか、CICにいる全オペレーターが私の方に振り向く。

「だから50キロメートルです!」

 モニタに映っている山形砲雷長が先ほどより大声で返答する。

「マジか……」
「マジです」

 最大射程50キロメートル。
 
 護衛艦フワデラの主砲 Mk45 5インチ砲の射程が約37キロメートルで、

 帝国史上最大の戦艦大和の45口径46センチ砲の射程が約42キロメートルだ。

 それが……

「幼女化ビームの射程が50キロメートルだと!?」

「やり方次第ではまだまだ伸びると思いますよ!」

 驚愕する私のことを完全にスルーして、モニタの向こうにいる山形砲雷長が大はしゃぎしている。

 ここ最近のシンイチの幼女化能力の伸びが凄まじい。スキルのパワーが向上したというより、それを制御するシンイチの能力が著しく成長している。

 特撮マニアの乗組員たちが開催するクラスに参加し、ポーズの特撮ヒーローっぽさが増した。単に直線的なビームを出すだけでなく、光輪にして飛ばすことができるよういなったのはこのクラスの指導のおかげだろう。

 香港カンフー映画マニアの乗組員たちが開催するクラスに参加し、アクロバティックに幼女化する技術が向上した。

 女性乗組員が主催するヨガクラスでは、視線をキョロキョロする度にライラに抓られながら、集中力を鍛えていた。

 そして決め手となったのが弓道クラス。的をイメージして射抜く訓練で、彼は今回の長距離の幼女化ビームに成功する。

 シンイチがそこに至るきっかけを作った山形砲雷長が、私に自慢気にその成果を話し始める。

「まず最初はフワーデちゃんの飛ばす偵察ドローンの映像を、シンイチくんの目にすることができたわけですよ。次に複数のドローンを飛ばしたリレー中継でも成功しました。距離はまだまだ伸ばせるはずです!」

 そう言って山形砲雷長は、ここから50キロメートル先にあるボートで手をふる幼女たちの映像をモニタに映しだしている。現地で待機中のヘリからの映像だ。

「い、威力は? 人より大型の個体に通用するのか?」

 少なくとも陸では彼の幼女化は大型の妖異にも通じていたのを何度も見ている。ただその時は、目視できるくらい敵は近くにいたのだ。50キロ先の巨大な妖異に通じるのだろうか。通じて欲しい。

「20キロメートル付近で、30メートルクラスの鯨のような生物の幼女化に成功しています。少なくとも光量においては50キロメートルでも変わりませんでした。光量が幼女化ビームの効果と比例するかは不明ですが」

「そうか。まぁ50キロと言わずとも、次に大型妖異が10キロ圏内に入る前に発見できれば、シンイチのビームを試してみるとしよう」

「了」

「とはいえシンイチばかりに頼るわけにもいかない。我々も帝国海軍としての矜持を見せねばなるまい」

「ということは艦長……とうとう腹を決めたんですね」

「あぁ、やってやる! やってやるぞ!」

 EONポイント稼ぎ!

 いつの間にか私の背後に平野副長が立っていた。何故か黒縁三角眼鏡を掛けている。平野が片手で眼鏡をクィッと動かしながら手にしている報告書を読み上げる。

「それでは、前川主計長と黒淵補給長からの要望をお伝えします」

「お、おう」

「本艦のEONポイントは、悪魔討伐作戦の立案時に設定した当初予算の約43%まで達成することができました。魔鉱石の供給が安定していることと、アシハブア王国との貿易によって、今後の半年で100%を達成することができると予測しています」

「半年か……結構かかるものだな」

「リーコス村のインフラや住人の消費も増えていますから仕方がありません。とはいえ、半年はやはり長いです。長いですので……」

「ので?」

「艦長が稼いでください!」

「え?」

 天上界から発注される女神クエストのことだろうか? いや、それならわざわざ私に特定する必要はないはず。ということは……。

「艦長には、ドラゴンジャー及びフワーデ・フォーの両方の配信(妖異討伐)に参加していただきます!」

「えぇぇっ!? なぜに!?」

「ルカ村長は、ドラゴンジャー出動の際、艦長が参加していれば女神クエストの全報酬を我々に提供すると約束してくれています。さらに先日、配信収益も折半しても良いという提案まで頂いております」

「はぁ……」

「下世話な話になりますが、ドラゴンジャーの場合、ドラゴンとグレイベアの戦力は非常に強力です。フワーデ・フォーの場合、弾薬・兵装は全て我々自身の持ち出しとなりますが、ドラゴンジャーの場合、二人の戦力を頼りにすることができます」

「確かに下世話な話だな」

 平野副長がCICのモニタにグラフを表示する。

「こちらをご覧ください。フワーデ・フォーとドラゴンジャーのメンバー別人気投票率の推移です。意外かもしれませんが、艦長の人気は堅実なんですよ。PVも艦長の出演時には大きく伸びています」

 グラフを見ると、他のメンバーが上下の変動が激しいのに対し、確かに私は高い人気で安定していた。

「それにしてもライラが低いのが意外だな」

「やはり人妻ということが響いているのでしょうね。ネットでのコメントも艦長に関するものが一番多いようです。いくつか読み上げましょうか?」

「やめてくれ……絶対に立ち直れなくなる気がする」

「それでですね。シンイチくんとライラさんには、艦上での訓練に集中していただくためにフワーデ・フォーからは抜けていただきます。代わりに新たなメンバーとして……」

 カツン、カツンと音がしてCICの入り口に人影が立つ。

「不破寺真九郎ですん! この度、フワーデ・フォーの新メンバーになりましたん!」

 幼女じゃねーじゃん!と思わずツッコミを入れてしまった私に、平野がまた眼鏡をクィッとして不敵な笑みを浮かべる。

「いつからフワーデ・フォーが幼女戦隊だと勘違いしていたのですか?」

「そういや美少女戦隊だったか。でも、天上界のロリコン紳士どもはそれを許すのか?」

「ライラさんと不破寺さんの入れ替えについては、ちゃんと事前にアンケートは取っています。その結果……」

「結果……は?」

「おっぱいは正義ということでした」

「おっ、おまえ、いつもセクハラセクハラって私のことを批判してるくせに、不破寺さんのおっぱいはいいのかよ!」

「この眼鏡を掛けている私は、いつもの平野ではありません。敏腕マネージャー・ヒラノです。そういうことで言わせていただければ……」

 平野が人差し指と親指で輪を作り、ニヤリと笑った。

「世の中、ゼニやで……」

 平野が銭ゲバになってりゅぅぅぅ!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...