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第六章 リーコス村開拓
第126話 あっちもこっちも戦隊だらけ
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バシャーン!
妖異軍が率いる海賊船の進路上に、美しい人魚がビキニに収まり切れていないたわたな胸を見せつけるように、海の上を跳ねる。
カメラが人魚の弾む胸にフォーカスしている間、彼女より高い位置に投げられていた黒いケースが二つに割れ、中からHK69擲弾発射器が姿を現す。
パシュッ!
人魚の白い腕がそれを掴んで、海賊船に向けて焼夷弾を発射した。
ドボンッ!
擲弾発射器と共に人魚は海中へ沈んで行く。
次の瞬間……
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
海中から現れた人魚たちが一斉に焼夷弾を海賊船に命中させた。
「「「ぎゃぁぁぁぁ!」」」
船はたちまち燃え上がり、火に包まれた妖異や魔族が次々海へと落ちていく。
「リーダー! マーメイボム設置完了!」
下半身がブルーの黒髪・貧乳・姫カットの美人人魚が、赤髪・巨乳・ポニーテイルのリーダー人魚に声を掛ける。
「OK! それじゃいくよ! カメラの前のみんなも一緒に! 3……2……1!」
「「「マーメイボム!!」」」
ドカーーン!
と大きな爆音と共に、海賊船の横腹に巨大な穴が開く。海水が流入に船がみるみる間に沈んで行く。
「マーメイド・セブン! 今日も妖異をお仕置きよ!」
カメラの前にはいつの間にか7人の美人人魚が横並びになって、それぞれ上半身でポーズを決めていた。
「これからもどんどん妖異を海のモズクに沈めていくから、応援してね! チャンネル登録はこちら!」
7人の美人人魚が一斉にその手を下に向けて振る。モニタには彼女たちの手の下辺りにチャンネル登録の案内画像が表示されていた。
「「「おぉぉ!」」」
護衛艦フワデラの食堂では、モニタ映像を見ていた乗組員《クルー》たちが、手元のスマホを操作してチャンネル登録していた。
「また新しい戦隊か……」
食堂の電子レンジ(兼フワーデの魔力転換炉)でから揚げを温めていた私も、マーメイド・セブンのデビュー配信を見ていた。
「むぅ! ここんとこライバル大杉! タカツ! このままじゃワタシたちのファンが減っちゃうよ! 危機感もとう!」
アンドロイドボディのフワーデが、ほっぺたをプクゥっと膨らませる。
綺麗な銀髪と緑色の瞳の美少女は、自分たちの戦隊フワーデ・フォーがライバルの登場によって、その存在感が薄れていくのではと心配していた。
心配する気持ちはわかる。
「今週だけでも、この人魚戦隊マーメイド・セブンに、白狼戦隊ウルフルズ、ラミアーズR、ソロ活動ならキューティー・ハーピー、女王様の近衛兵、仮面ラミアーBlack、ほんと際限ないよな」
「そうだよー! このままじゃフワーデ・フォーがオワコンになっちゃう! どうしてこんなこと許可しちゃったの! タカツのバカ! バカバカ! アホ!」
「そうは言うが、彼らの活躍が妖異軍の勢力を削いでいるのは確かだし、それにEONポイントは全部うちに入ってくるからな。お前だって恩恵に預かってるだろ」
「ううっ……それはそうなんだけど……」
そう。フワーデの言う通り、このような状況を招いたのは私の判断の結果である。
これまでフワーデの魔力転換炉や神ネット業務スーパー・ビックマートで入手できる武器弾薬・各種兵装は、リーコス村とグレイベア村、イザラス村の一部に提供してきた。
その後、アシハブア王国との連携が強化されたことと、カトルーシャ第三王女の強い希望によって、王国の精鋭騎士団にも武器兵装の貸与を行うことになった。
ドローンも提供しているが、その操作は護衛艦フワデラ、リーコス村、グレイベア村に設置されたオペレーションルームから行っている。通信圏が広がったのでかなりの範囲をカバーすることが可能だ。
リーコス村の白狼族とグレイベア村の人々の協力を得て、現在ではアシハブア王国の東方面と北方のイザラス村までの通信網が確立されている。
今日も彼らは通信設備の新規設置やメンテナンスのためにあちこちを東奔西走している。
貸与したドローンは王国騎士団の監視役も兼ねており、王国には我々の意に沿わない行動については協力せず停止させる旨を伝え、了承を得ている。
ちなみに王国騎士団が妖異を倒した場合でも、女神クエストによるEONポイントは私たちのふところに入ってくる。
まだ検証中だが、どうも我々の武器によって妖異を倒すとフワデラに報酬が入ってくる仕組みっぽい。
「とはいえ、スマホも一緒に貸し出したのが原因なのは間違いないな」
「そうだよ! それだよ! タカツのアホー! なんで渡しちゃったのー!」
勿論、監視とサポートのためだったんだが……。
「いやいやいや、フワーデ! お前もカトルーシャ王女にスマホを熱心に推してたじゃないか! 喜々として使い方教えてたろ!」
「だ、だって……王女様にフワーデ・フォーの宣伝したら、王国でデビューできるかもって思ったんだもん……」
「それで、王女がFuwaTubeにドハマりして、王様や王国騎士団にスマホが行き渡ったんだろうが! やっぱ、お前が原因じゃん!」
「うっ……ち、違うもん……ワタシ悪くないもん……」
フワーデが涙目になったところで、私はいっきに追い打ちを掛けようと――
「だいたいお前が……」
とまで言ったところで、
「こらー! 艦長さん、フワーデちゃんをイジメちゃ駄目ですよん! イジメだめですん!」
不破寺さんに叱られてしまった。
「だ、だいたいお前が一番カワイイんだから、そう心配するな! いくらライバルが現れたところで、フワーデ・フォーが最高なのは変わらない。フワーデ最高! フォーッ!」
私は咄嗟に方針転換し、両手を広げて、片足立ち鶴のポーズを決めてフワーデを励ました。
「だよねーっ! よーし、ワタシ頑張るよー! タカツも頑張るんだよ!」
輝くようなニッコリ笑顔になるフワーデ。
一瞬にして機嫌が戻った。チョロい。
「まぁ、いくらでも戦隊に登場してもらっても構わんがな」
武器等の貸与に当たって、その使用によって得られた収益はすべて護衛艦フワデラのものとする契約になっているのだから。
帝国独禁法?
ここは異世界だ! そんなの関係ねぇ……いや、そういや旗国主義でフワデラ艦内には帝国法が適用されるんだったか。
い、異世界特例ということにしておこう。
とにかく、EONポイントではなく収益というところがポイントだ。
そもそもEONポイントは転生者じゃないと持てないし持っていても使えない。EONポイントではなく収益という言葉にしたのは王国を牽制するため。
もし王国が、我々の武器を妖異との戦闘目的以外で使用した場合、つまり金や権益を得るために使ったとき、我々はその収益の回収を主張すると、王国には何度も警告しておいた。
契約交渉にあたった王国側の連中は渋い顔をしていたが、最後には折れた。
そんな上層部の反応はともかく、騎士団や戦隊の面々は、この世界に存在しない強力な武器で、妖異軍を相手にヒャッハーできるだけで十分に満足しているようだった。
ただそんな彼らも配信のPV数については、かなり気にしているようだ。最近はコメント欄やSNSでは戦隊派閥間での抗争が激化している。
コメント欄:
「マーメイド・セブン最高! やっぱり人魚が最強カワイイ!」
「はっ? どのメンバーもキューティー・ハーピーの足元にも及ばないが?」
「rりゅうこちゃんがいちばんかわいえ」
「ハーピーもマーメイドも、ラミア嬢の魅力の前では霞むよね」
「余はカトルーシャ王女をリーダーにした戦隊キボンヌ。いや、やっぱり危険だからダメポ」
「りゅうこちゃんがいちばんかわいえ」
「りゅうこちゃんがいちばんかわえい」
コメント欄を見ていると、匿名なのに誰だか分かってしまう発言がチラホラ見られる。
私が、精神衛生上あまりよろしくないコメント欄を閉じて、ふと顔を上げると――
食堂の端っこで、竜子が一生懸命スマホをイジッていた。
竜子……同じことを何度も入力してるとスパム扱いされるぞ。
なんて忠告はせず、私は温められたから揚げに箸を伸ばした。
仮面ラミアーBlackプライベート写真
妖異軍が率いる海賊船の進路上に、美しい人魚がビキニに収まり切れていないたわたな胸を見せつけるように、海の上を跳ねる。
カメラが人魚の弾む胸にフォーカスしている間、彼女より高い位置に投げられていた黒いケースが二つに割れ、中からHK69擲弾発射器が姿を現す。
パシュッ!
人魚の白い腕がそれを掴んで、海賊船に向けて焼夷弾を発射した。
ドボンッ!
擲弾発射器と共に人魚は海中へ沈んで行く。
次の瞬間……
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
バシャーン! パシュッ! ドボンッ!
海中から現れた人魚たちが一斉に焼夷弾を海賊船に命中させた。
「「「ぎゃぁぁぁぁ!」」」
船はたちまち燃え上がり、火に包まれた妖異や魔族が次々海へと落ちていく。
「リーダー! マーメイボム設置完了!」
下半身がブルーの黒髪・貧乳・姫カットの美人人魚が、赤髪・巨乳・ポニーテイルのリーダー人魚に声を掛ける。
「OK! それじゃいくよ! カメラの前のみんなも一緒に! 3……2……1!」
「「「マーメイボム!!」」」
ドカーーン!
と大きな爆音と共に、海賊船の横腹に巨大な穴が開く。海水が流入に船がみるみる間に沈んで行く。
「マーメイド・セブン! 今日も妖異をお仕置きよ!」
カメラの前にはいつの間にか7人の美人人魚が横並びになって、それぞれ上半身でポーズを決めていた。
「これからもどんどん妖異を海のモズクに沈めていくから、応援してね! チャンネル登録はこちら!」
7人の美人人魚が一斉にその手を下に向けて振る。モニタには彼女たちの手の下辺りにチャンネル登録の案内画像が表示されていた。
「「「おぉぉ!」」」
護衛艦フワデラの食堂では、モニタ映像を見ていた乗組員《クルー》たちが、手元のスマホを操作してチャンネル登録していた。
「また新しい戦隊か……」
食堂の電子レンジ(兼フワーデの魔力転換炉)でから揚げを温めていた私も、マーメイド・セブンのデビュー配信を見ていた。
「むぅ! ここんとこライバル大杉! タカツ! このままじゃワタシたちのファンが減っちゃうよ! 危機感もとう!」
アンドロイドボディのフワーデが、ほっぺたをプクゥっと膨らませる。
綺麗な銀髪と緑色の瞳の美少女は、自分たちの戦隊フワーデ・フォーがライバルの登場によって、その存在感が薄れていくのではと心配していた。
心配する気持ちはわかる。
「今週だけでも、この人魚戦隊マーメイド・セブンに、白狼戦隊ウルフルズ、ラミアーズR、ソロ活動ならキューティー・ハーピー、女王様の近衛兵、仮面ラミアーBlack、ほんと際限ないよな」
「そうだよー! このままじゃフワーデ・フォーがオワコンになっちゃう! どうしてこんなこと許可しちゃったの! タカツのバカ! バカバカ! アホ!」
「そうは言うが、彼らの活躍が妖異軍の勢力を削いでいるのは確かだし、それにEONポイントは全部うちに入ってくるからな。お前だって恩恵に預かってるだろ」
「ううっ……それはそうなんだけど……」
そう。フワーデの言う通り、このような状況を招いたのは私の判断の結果である。
これまでフワーデの魔力転換炉や神ネット業務スーパー・ビックマートで入手できる武器弾薬・各種兵装は、リーコス村とグレイベア村、イザラス村の一部に提供してきた。
その後、アシハブア王国との連携が強化されたことと、カトルーシャ第三王女の強い希望によって、王国の精鋭騎士団にも武器兵装の貸与を行うことになった。
ドローンも提供しているが、その操作は護衛艦フワデラ、リーコス村、グレイベア村に設置されたオペレーションルームから行っている。通信圏が広がったのでかなりの範囲をカバーすることが可能だ。
リーコス村の白狼族とグレイベア村の人々の協力を得て、現在ではアシハブア王国の東方面と北方のイザラス村までの通信網が確立されている。
今日も彼らは通信設備の新規設置やメンテナンスのためにあちこちを東奔西走している。
貸与したドローンは王国騎士団の監視役も兼ねており、王国には我々の意に沿わない行動については協力せず停止させる旨を伝え、了承を得ている。
ちなみに王国騎士団が妖異を倒した場合でも、女神クエストによるEONポイントは私たちのふところに入ってくる。
まだ検証中だが、どうも我々の武器によって妖異を倒すとフワデラに報酬が入ってくる仕組みっぽい。
「とはいえ、スマホも一緒に貸し出したのが原因なのは間違いないな」
「そうだよ! それだよ! タカツのアホー! なんで渡しちゃったのー!」
勿論、監視とサポートのためだったんだが……。
「いやいやいや、フワーデ! お前もカトルーシャ王女にスマホを熱心に推してたじゃないか! 喜々として使い方教えてたろ!」
「だ、だって……王女様にフワーデ・フォーの宣伝したら、王国でデビューできるかもって思ったんだもん……」
「それで、王女がFuwaTubeにドハマりして、王様や王国騎士団にスマホが行き渡ったんだろうが! やっぱ、お前が原因じゃん!」
「うっ……ち、違うもん……ワタシ悪くないもん……」
フワーデが涙目になったところで、私はいっきに追い打ちを掛けようと――
「だいたいお前が……」
とまで言ったところで、
「こらー! 艦長さん、フワーデちゃんをイジメちゃ駄目ですよん! イジメだめですん!」
不破寺さんに叱られてしまった。
「だ、だいたいお前が一番カワイイんだから、そう心配するな! いくらライバルが現れたところで、フワーデ・フォーが最高なのは変わらない。フワーデ最高! フォーッ!」
私は咄嗟に方針転換し、両手を広げて、片足立ち鶴のポーズを決めてフワーデを励ました。
「だよねーっ! よーし、ワタシ頑張るよー! タカツも頑張るんだよ!」
輝くようなニッコリ笑顔になるフワーデ。
一瞬にして機嫌が戻った。チョロい。
「まぁ、いくらでも戦隊に登場してもらっても構わんがな」
武器等の貸与に当たって、その使用によって得られた収益はすべて護衛艦フワデラのものとする契約になっているのだから。
帝国独禁法?
ここは異世界だ! そんなの関係ねぇ……いや、そういや旗国主義でフワデラ艦内には帝国法が適用されるんだったか。
い、異世界特例ということにしておこう。
とにかく、EONポイントではなく収益というところがポイントだ。
そもそもEONポイントは転生者じゃないと持てないし持っていても使えない。EONポイントではなく収益という言葉にしたのは王国を牽制するため。
もし王国が、我々の武器を妖異との戦闘目的以外で使用した場合、つまり金や権益を得るために使ったとき、我々はその収益の回収を主張すると、王国には何度も警告しておいた。
契約交渉にあたった王国側の連中は渋い顔をしていたが、最後には折れた。
そんな上層部の反応はともかく、騎士団や戦隊の面々は、この世界に存在しない強力な武器で、妖異軍を相手にヒャッハーできるだけで十分に満足しているようだった。
ただそんな彼らも配信のPV数については、かなり気にしているようだ。最近はコメント欄やSNSでは戦隊派閥間での抗争が激化している。
コメント欄:
「マーメイド・セブン最高! やっぱり人魚が最強カワイイ!」
「はっ? どのメンバーもキューティー・ハーピーの足元にも及ばないが?」
「rりゅうこちゃんがいちばんかわいえ」
「ハーピーもマーメイドも、ラミア嬢の魅力の前では霞むよね」
「余はカトルーシャ王女をリーダーにした戦隊キボンヌ。いや、やっぱり危険だからダメポ」
「りゅうこちゃんがいちばんかわいえ」
「りゅうこちゃんがいちばんかわえい」
コメント欄を見ていると、匿名なのに誰だか分かってしまう発言がチラホラ見られる。
私が、精神衛生上あまりよろしくないコメント欄を閉じて、ふと顔を上げると――
食堂の端っこで、竜子が一生懸命スマホをイジッていた。
竜子……同じことを何度も入力してるとスパム扱いされるぞ。
なんて忠告はせず、私は温められたから揚げに箸を伸ばした。
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