ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
142 / 214
第六章 リーコス村開拓

第140話 破られた出店許可証

しおりを挟む
~ ハニートラップの理由 ~

 グレイベア村にあるラミアパブの個室で、私とマーカスはお互いの額を突き合わせて睨み合っていた。

 目の前のテーブルには、マーカスが私に仕掛けたハニートラップによる「リーコス村へのラミアパブ出店許可証」と、私がマーカスに仕掛けた幼女トラップによる「住宅ローン等支払い約定書」がテーブルの上に並べられている。

 マーカスの顔には「何でこんなことになってんの!?」という戸惑いが露わになっていたが、それはこちらとて同じことだ。

 双方ともしばらく固まっていたが、先に動いたのはマーカスだった。

 ビリビリッ!

 マーカスは出店許可証を手に取るとそのまま破り捨ててしまった。

「なっ!?」

 予想外の状況に私は困惑した。マーカスはアメリカ人っぽい感じで肩をすくめる。

「そもそもこんなもの必要ないしな。あぁ、タカツのジュタクローンとかいうのはキッチリ払うから安心しろ。娘さんの結婚式も俺がド派手に上げてやるさ」

 この時点においては、私はまだこちらのお金を帝国に持って行くことができないことを知らなかった。ので、内心めちゃくちゃほくそ笑んでいた。

「そこまでニヤケ顔になるなんて、ジュタクローンというのはそれほどキツイ債務なのか」

 顔に出てた。

 艦長の威厳が損なわれかねないと思った私は、可及的速やかに話題を逸らす。

「それでマーカス。お姉ちゃんたちを使って私をハメた理由を聞かせてもらおうか」

 もし諸々の言い訳が建てられるような理由なら、またお願いしたいからな。

 違った。本音が出ちゃった。

「まずはタカツ艦長に知って欲しかったのさ。アンタたちがカクも色仕掛けに弱いって事実をな」

「な、なにおぅ……」

 帝国軍人の名誉に掛けて反論すべきところだったが、まさにマーカスが指摘した通り、いとも簡単にハニートラップに掛った私の声が尻すぼみになるのは仕方ない。

「タカツを含め、フワデラの乗組員たちが兵士としての練度が非常に高いってことは知ってる。これは古大陸でアンタたちと出会って以降、ずっと感じていたことなんだが、その練度の割には人の悪意に疎いというか弱いというか……」

 マーカスは、我々を侮蔑しないような言葉を探す努力を続けているようだった。なかなか言葉が見つからなさそうだったので私が助け舟を出す。

「言いたいことがわかるような、具体的な事例があればそれを教えてくれ。私へのハニートラップ以外でな」

 私の提案をマーカスが軽く頷いて同意を示す。

「そうだな……。今、フワデラの人間が4名、アシハブアの王城に滞在しているな」

 マーカスの言う通り、乗組員4名と他にリーコス村の白狼族4名が滞在している。

「その四人だが、全員、異性に篭絡されてたぞ」

「なんだと!?」

「パーティーで婚約破棄されて泣き崩れたルコライド家の令嬢に手を差し伸べて恋仲になったのがヤマダ。奴隷市場で美しいタヌキ系亜人少女がゲス貴族に買われそうになっていたのを、で通りかかったスズキは、横槍を入れて金を支払っている」

 その後、亜人少女はで城下で見つかった貿易商の叔父に引き取られた。姪を救ってくれた鈴木は大層感謝され、鈴木が獣人少女と会う機会を何かと作っているという。

 他の二人についても似たような事態が発生していた。

 マーカスはアシハブア王国にいる間は、この四人に何かと気を使ってくれていたらしい。なのでうちの乗組員たちがをしていたことも、直接彼らから話を聞いていたのだ。

 不思議な運命によって導かれた出会いを、浮かれ心地で語るのを聞いたマーカスは、すぐに背後関係を洗う。

 結論はすぐに出た。

「貴族の令嬢、貿易商の姪、外務大臣の三男、王国大学学長の娘、そのいずれもがファロスの大劇場で美男美女の名役者たちが熱演するような出会いが発生しているわけだが……」

 ここでマーカスが言葉を切る。

「おうふ」

 その親たちについては私にも心当たりがあった。私が王都に滞在中、フワデラとのコネクションを作ろうと、何かと強引な接触を図って来た連中だ。

 ハニートラップだ……まんま教科書通りのハニトラだ……。うなだれる私の肩をマーカスがポンポンと叩く。

「まぁ、幸いなことに、俺たちに敵対するような勢力は今のところ絡んではいない。王国内での勢力争いだ。それに四人には俺が舞台の裏側を見せてやったから、これ以上、妙なことにはなるまいよ」

 どうやらマーカスが手を尽くし、四人それぞれに対して、その運命の相手が何かしらの目論見を持っていることが分かる状況に立ち合わせたらしい。

 あ、ありがたい……。正直、どのように対処すればよいのか私にはわからなかったからな。異世界異性交遊禁止!と朝礼で語ることくらいしか思い浮かばん。

 マーカス……意外と頼れる男じゃないか。

「ただ、タカコだけはそれでも三男坊がイイと言ってたんだ」

 アシハブアに滞在している井上貴子少尉(25歳独身)は坂上大尉の部下だ。恋にうつつを抜かすようなタイプではないと思っていたが……。

「それで……井上少尉はどうなったんだ?」

「仕方なかったから、俺が口説いた」

「はぁ?」

 何言ってんだこのハリウッドマッチョ、略してハリマッチョは?

「……って、まさかうちの乗組員に手を出したんじゃないだろうな!」

 ハリマッチョは、アメリカ人がよくやるヤレヤレの所作を実行した。

「まだだよ。だけどタカコがこれ以上、俺に本気になったらどうしたらいい?」

 死ねばいいんじゃないかな?

  視線で私の心が伝わったのだろう。マーカスは両手を前にして、話を本来に戻そうと提案してきた。

「とにかく、フワデラの乗員たちは異性に対する警戒が無さ過ぎるんだよ。免疫がないと言ってもいい。王国や他の国が本気で篭絡してきたら、トンデモナイことになることは必須!」

 ビシッ! とハリマッチョが私の目の前に指を突き付ける。

「そこで俺のラミアパブってわけだよ! 異性に対する免疫を付けるにしても、誰でも言いってわけじゃないだろ? 俺なら信用できる人材を用意できるからな!」

 な、なるほど! なんだかとっても良い話に聞こえて来たぞ。

 私は前向きにマーカスの話を聞くことにした。

 話を聞くほどに、ラミアのおっパブ……じゃなかったラミアパブの必要性を私は確信していった。

 リーコス村に戻る頃になると、私はマーカスとがっちり手を組んで、村長のヴィルミアーシェさんや平野副長をどのように説得するかについて話し合っていた。

 その後――

 私たちの熱いプレゼンを、かなり引き気味で聞いていた女性二人の了承を何とか取り付けることに成功。

 最初は二人ともシブイ顔を崩さなかったが、マーカスがハニトラの実例を挙げたところから耳を貸すようになり、最後には必要性を認識してくれた。

 途中、私が「あくまでおっパブではない! 健全! 健全なお酒の飲めるメイド喫茶だから!」と主張したところで、一度、話がご破算になりかけたが、マーカスのフォローでなんとか乗り切った。

 そしてついに――

 リーコス村に『マーカスのラミアパブ』がオープンすることになった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...