ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
167 / 214
第八章 護衛艦ヴィルミアーシェ

第165話 トゥカラーク大陸

しおりを挟む
 護衛艦フワデラと護衛艦ヴィルミアーシェは、毎日のように訓練を行っている。

 その成果には目覚ましいものがあり、現在では、完璧な戦術運動をフワーデのサポートなしに行うことができるようになっていた。

 また護衛艦ヴィルミアーシェ単艦による演習では、北方へは港湾都市ローエン、南方へはアシハブア王国の王都までの往復航海を行なっている。

 今でも妖異を対象とした女神クエストは発生しているが、その中でも海洋の妖異を狩猟するものについては、護衛艦ヴィルミアーシェが対応。もちろんクエストには必ず護衛艦フワデラも同行するが、基本的にはバックアップに徹している。

 本日、ヒトサンマルマル。

 護衛艦ヴィルミアーシェは、女神クエスト『深みに潜む者共を討伐せよ』を受注。彼らの巣食う岩礁に艦砲射撃を叩き込んで完全に破壊した。

 度重なる爆音によって気絶した半魚人が、プカプカと海上に浮き上がってきたところへ、上空で待ち構えていた飛行型戦闘ドローン・イタカが機銃掃射で仕留めて、半時もしないうちにクエストが完了。

 その間、指揮を執り続ける平野の様子を、私は護衛艦フワデラの戦闘指揮所から見守っていた。

「すっかり艦長が板についてきたな平野」

 モニタに映った平野が、少し上気した顔で敬礼を返してくる。

「ありがとうございます。ですが、まだまだ皆に助けられてばかりです」

 謙遜する平野の後ろから、山形砲雷長がひょこっと顔を出した。

「平野艦長は、よくやってますよ! いつでも沈着冷静で、的確な指示を出してくれますからね!」

 山形の言葉に、平野は恥ずかしそうに頬を染める。こんなわかりやすく照れている平野は超レアだ。

 私がニヤニヤしていることに気が付いた平野は、コホンッと咳払いをしてから、いつものクールな顔を整える。

「そ、それで艦長……高津艦長は、ヴィルミカーラを副官にされたのでしょうか?」

 これまで艦内で私を抱っこしていた平野の代わりに、今ではヴィルミカーラに抱っこしてもらっている

 何故ヴィルミカーラになったかについては、なんとなくとしか言いようがない。

 もしも、キチンと希望を聞かれたならば、不破寺さんとか、ヴィルミアーシェさんとか、ラミア族の誰かとか、おっぱいサイズで選ぶと思う。

 ヴィルミカーラは、何だかんだで一緒に過ごす時間が長かったからかもしれない。

 ロリショタという彼女の性癖も、今では軽く回避できるし、お互い適度な距離感を掴めているので、気を遣うこともない。

「わ、わたしはふ、副官じゃなくてひ、秘書、秘書なの。び、美人秘書」

 ヴィルミカーラが、勝手に自分の肩書きを決めて名乗る。

 それにしても、自分のことを美人秘書と抜かすとは……確かにその通りではあるが。

 おそらくツッコミを期待しているのであろう、ヴィルミカーラのボケをスルーした。

 大事な話があるのでな。

「護衛艦ヴィルミアーシェの操艦も安定してきた。そろそろ別大陸への航海に向けての準備を始めようと思う」

 平野が、私の発言に驚いて目を見開く。

「古大陸へ向われるのですか?」
 
「先にトゥカラーク大陸に向うつもりだ。古大陸の位置は既に判明しているからな」

「そのトゥカラーク大陸の場所は分かっているのでしょうか」

 もちろんわかっていない。

 天上界には、悪魔勇者討伐報酬のひとつとして、海図を寄越せと要求してみたのだが、無理だった。

 その理由について長々とした電文で届いたのだが、その説明をフワーデがするので、ほとんど要領を得なかった。

 それでも頑張って推測すると、どうやら今のこの時代に存在しないものは提供できないということのようだ。

 一応、天上界の方でも地図を探してくれたらしい。

 四億年前に、宇宙から飛来したウミユリ状の生命体が作成した世界地図が、南極の地下深くに保管されているという情報については教えてくれた。

 その世界地図についてフワーデの図鑑で確認してみると、

『現在の大陸とは、大きさも形も数さえも違いますが、この地図でよろしかったでしょうか?』

 と書かれていた。

 よろしいわけねぇぇぇ!

 このあまりにも適当な天上界の情報に、私は頭を抱えざる得なかった。そんな幼女のほっぺたを、ヴィルミカーラがチョンチョンと突いてくる。

「か、艦長はせ、世界のち、地図が欲しいの?」

「そうだが、ヴィルミカーラは世界地図に心当たりがあるのか?」

「か、かつてわ、私がぼ、冒険者だったこ、頃……、わ、わたしはけ、剣士とし、してそ、それなりにか、大活躍し、してたそ、そうあ、あれは大陸のほ、北限……」

「とりあえず要点だけ話してくれ」

 私が途中で話を折ったことで、ヴィルミカーラが不満そうな顔を見せる。だが私が超プリティな幼女スマイルを向けると、きちんと要点を絞って語ってくれた。

 それは彼女が冒険者だった頃に耳にした、あるアーティファクトについての噂話。

 古代王国の予言者マヤドゥが、銀の女神に導かれて月の世界に運ばれた際、月から見た世界の形を石に刻んだという伝説だ。

「そんなものがあるのか……」

 ヴィルミカーラの話を聞いて、一瞬は期待を抱いたものの、すぐに冷静になる。

「しかし、そんな貴重なものを手に入れることなんてできるのか?」

 そもそもどこにあるのだろうか? 大陸中を探し回るなんてことになるのなら、諦めるしかない。

「げ、現地のお、お土産店でう、売ってる」

  そうキタかー!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...