ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
172 / 214
第八章 護衛艦ヴィルミアーシェ

第170話 妹襲来!

しおりを挟む
 田中未希航海長(未だ32歳独身)から、来月が誕生日だという話を聞かされた私は、大慌てで結婚式の手配を始めた。

 田中とステファンと話し合った結果、結婚式の日取りは、田中の誕生日の前日ということになった。

 翌日には護衛艦フワデラ、リーコス村、グレイベア村全員に知れ渡り、結婚式の準備が始まった。

 えらく手際が良いなと思ったら、どうも皆が皆、結婚式の日取りは田中の誕生日の前になるだろうと予測していたらしい。

 悪魔勇者の討伐後に開催された人類軍祝勝典で、アシハブア王都に滞在中の各国要人たちが、この結婚式に参加したいと打診してきた。

 アシハブア王などは、昨日のリモート会議で、
 
「我が臣下がフワデラのご令嬢と結ばれるのだ。王都で盛大に結婚式を挙げさせよう。間もなく特使も着くだろうから、委細はその者と決めるがよかろう」
 
 と何やらご満悦な笑顔で宣わっていた。

 グレイベア村での宴席に出ていなければ、私はこの提案を素直に受け入れていたかもしれない。

 あの宴席で、ルカ村長と王国の間で、何か嚙み合わないものがあるのを感じた。

 甘酒の酔いが覚めてから、それが何であるのかわかった。

 人間とそれ以外の種族の確執。

 もし結婚式がアシハブア王都で行なわれるとなれば、グレイベア村の住人の参加は難しくなるだろう。

 そんなことを受け入れるわけにはいかない。

「陛下のご配慮に心より感謝申し上げます。しかし、二人が親しくする者の中には、ドラゴンやラミア族、鬼人、白狼族が多く、また西方の魔神からも参加させろと言われておりまして、さすがに王都での式は難しいかと」

「ド、ドランゴンに魔神まで……」

 魔神ウドゥンキラーナは田中やステファンと面識はない。

 だが南と坂上から二人のことを聞いたウドゥンキラーナは、帝国式の結婚式に興味を持ったようで、ぜひ見てみたいと言っていた。

 なのでウソは言っていない。

「魔族が王都に押し寄せるとなれば、大変なご迷惑をおかけしてしまうことになります。それに、田中のたっての希望で、結婚式は帝国式で行なう予定です。それができるのは今のところリーコス村しかございません」

「むぅ……花嫁の望みとあれば仕方ないのぉ」

 本音としてはドラゴンと魔神に王都に入られては困るということだろうが、とりあえず王都での結婚式はキャンセルすることができた。



~ 翌日 ~
 
 リーコス村の村長宅(兼司令部)の玄関フロアで騒ぎが起きていると聞いて、私は慌ててジェットスーツで駆けつけた。

 庭に降りると、玄関先に四頭立ての豪華な馬車が止まっているのが見えた。

 恐らく護衛であろう4人騎士たちが、空から舞い降りて来た幼女を見てフリーズしている。 

 私は彼らに小さく手を上げて、

「どもども、お役目ご苦労様です」

 と軽く挨拶をしながら、玄関に入った。

 もしかしたら、止められて誰何《すいか》されるかなと思ったが、彼らはずっと固まったままだった。

 玄関に入ると、そこには金髪縦ロールの美人と、その両脇を固めるようにして立っている二人の女騎士がいた。

 さらに彼らを取り囲むように立っている、白狼族スタッフが六名。

 白狼族スタッフの困惑した表情と、金髪縦ロールと女騎士二人の難しい表情を見て、私は何が起きているのかを察した。

「亜人風情に用はありませんの。私の到着は知らせていたはずよ!」

 金髪縦ロールの声には怒りと失望が滲み出ていた。

「お兄様はどこ? 今すぐスプリングス子爵のところへ案内なさい!」

 私は片方の眉毛を上げて、白狼族スタッフを見る。『またか……』という以心伝心だ。

 私と目が合ったスタッフが皮肉な顔で頷く。『またですよ……』という以心伝心だ。

 以前、ヴィルミアーシェさんを『亜人風情』呼ばわりした若者1に対しては、怒髪天を衝いた私だったが、今回はそうでもない。

 アシハブア王国や人類軍の客人は、だいたいが同じようなのばかりなので、もう慣れたというのもあるだろう。

 もしかすると、金髪縦ロールが美人だから判定が甘いというだけかもしれない。

 私は金髪縦ロールの美人に向って歩きつつ、インカムを通じてフワーデにこの客人たちのことについて尋ねた。

『金髪の人はステファンの妹さんだよ。他の人たちは護衛。アシハブアの王様が言ってた特使だね。今、ステファンさんが慌ててそっちに向ってる』

 フワーデの説明を聞いた私は、金髪縦ロールの美人に向って話しかけた。
 
 この後のパターンも大体同じで、慣れたものだ。

 ガキが生意気にも大人の話にでしゃばってくるなと、怒るか無視するか。

 その後で私が護衛艦フワデラの艦長と知らされて、態度を豹変させるのだ。

「あーっ、わたくし、護衛艦フワデラの艦長タカツと申します。スプリングス氏の妹さんですね。お待たせして申し訳ありません。スプリングス氏は、今急ぎこちらに向っております」

 金髪縦ロールと女騎士二人が、私を見て目を見開いて驚く。

 さぁさぁ、私を怒鳴るか無視するか、こいつらはどっちだ?

 金髪ロールがワナワナと震え出す。

 次の瞬間――

「カワイイ!」

 彼女の声は溢れんばかりの歓喜に満ちていた。

 金髪縦ロールの女性に優しく抱きしめられ、彼女の頬が私の頬に優しく擦れる感触を感じる。

 彼女の目は純粋にカワイイものを愛でる喜びで輝いていた。

「ほわわぁ! 貴方がタカツ艦長ですの! 想像していた以上の可愛さですわぁぁぁぁ!」

 あ、あれ~?

 思っていたのとぜんぜん違う反応だぁ。

 金髪縦ロールが、私をギューッと抱き締めてくる。

 ので、思わず私も抱き返してしまった。あくまで「思わず」である。「ついつい反射的に」ということである。これは平野に弁明する際の大事なポイントだ。
 
 だって彼女は美人だし、仕方ないね。

 後ろに控えている女騎士の一人がコホンっと咳払いをすると、金髪縦ロールがハッとして身体を引き離した。

「あら、失礼しましたわね!」

 彼女は一歩後ずさり、軽くお辞儀をして、明るく微笑んだ。

「わたくしは、アリス・スプリングス。こちらでお世話になっているお兄様、ステファン・スプリングス子爵の妹ですわ」

 自己紹介を終えると、彼女は再び私をギュッと抱き締め、さらに私のツインテールを手に取ってクンカクンカし始めた。

「はうぅ。良い香りがしますわぁ!」

 そりゃ帝国でも有名な、艶やかな髪がファサッと舞うCMのシャンプーとリンスを使ってるからな。
 
 そ、それにしても、こいつからはヴィルミカーラと同じヤバイ感じがビンビンする。

 それからしばらくして司令部にステファンが到着。何故かヴィルミカーラを伴なって玄関に入ってきた。

 ステファンは、私の後頭部に鼻を埋めている妹を見て「アリス……」と名前を口にしただけで固まってしまった。

 ヴィルミカーラの方は、私の髪の毛をクンカクンカしているアリスを見て、

「か、艦長……わ、私というものがありながらひ、酷い。こ……これがネトラレ」

 顔に掛った髪を口で噛みながら、意味不明なことをつぶやいていた。  

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...