ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
193 / 214
第九章 トゥカラーク大陸

第192話 ダゴン教会の最後

しおりを挟む
「なんだあの建物は!?」とインカムに向って、私は叫んだ。

「艦長! オコゼの頭です!」と桜井船務長。
「オコゼハウス?」と境大尉。
 
 白狼兵の二人は頭にクエスチョンマークを浮かべている。

 それはオコゼの頭……を模した建物だった。

 その入り口には、大きなアーチ形の看板が掛けられている。

「ダゴン教会って書いてるよー!」
「オコゼ……ですかね」とシンイチ。
「「オコゼ?」」とライラとトルネラ。
「オコゼだよねー」とフワーデ。

 オコゼの頭の建物のオコゼの口からは、今も続々と魚面が現れてきている。

 その魚面の多くは、アジやサバやイワシといった青魚の正面顔といった感じなのだが、ところどころ、オコゼ頭の魚面が混ざっている。

 わらわらと詰め寄ってくる魚面の群れは、VRフワーデゴーグル越しに、現場を見ている私でさえ、ちょっとちびりそうな状況だ。

「やはりオコゼ頭の方が、ステータスが高かったりするのでしょうか」

 桜井船務長が、オコゼ頭の一体にヘッドショットを決めながら、そんな呑気なことを言っていた。

「ちょ! 桜井、お前この状況でよくそんなこと言ってられるな」

 焦りで声が裏返った私の声を聞いて、桜井船務長が苦笑いを浮かべるのが見えた。

 桜井達がいくら機銃を撃とうと、ドローン・イタカが銃撃しようと、オコゼ頭の教会から次々と魚面が湧いて出てくる。

 桜井たちはとうとう背後を海にして、船着き場に追い詰められた。

 このままでは小型艇は間に合わない。

 インカムを通して、桜井の声が聞こえてきた。

「うちにはエースがいますから。それがなきゃ、俺だって腰抜かす場面だとは思いますがね」

「まぁ、そうだったな……」
 
 今や魚面たちは桜井たちから数メートルまで包囲を縮めていた。

 桜井の怒号が響く!

「シンイチィィ!」

 魚面たちに最も近い場所にいた桜井が、さっと後ろに退き、代わりにシンイチが前に出てきた。

 腕を十字に組み合わせたシンイチが叫ぶ。

「【幼女化ビィィィィィィム!】(継続時間1秒)」

 シンイチの腕から、強力な光線が放たれた。

 光線は目の前の魚面たちを貫いて、数十メートル先まで伸びていく。

 ビィィィィィィ!

 シンイチは光線を出したまま身体を左右に動かして、その場にいる全員に幼女化ビームを浴びせていく。

 ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! 
 
 そこらかしこで白い煙が立ち昇り、魚面たちが幼女に変わっていく。

 ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! 

 1秒後には幼女は元の魚面の姿へと戻って行くが、その時は、全員がほぼ虫の息となっていた。

 シンイチの幼女化は、あまりにも早く解除してしまうと身体に相当の負担が掛かる。身体に負担を掛けないようにするには、最低でも10分は時間が必要だ。

 もしそれが1秒で解除となると、大型の妖異でさえ瀕死状態となってしまうのだ。

 魚面たちは止めを刺すのを待たずして、全てその息を止めた。

 桜井船務長がシンイチに声を掛ける。

「シンイチ、教会の中と地下にも頼む! もしかすると監禁されている人がいるかもしれない!」

「わかりました! じゃあ意識は保持したままで、6時間幼女化します!」

 再び腕を十字に組み合わせたシンイチが叫ぶ。
 
「【幼女化ビィィィィィィム!】(意識継続。継続6時間)」

 ビィィィィィィィ!

 シンイチが教会の建物全体と地下に向けて、丁寧に光線を浴びせていく。

 数分後。
 
 シンイチが手を降ろしたときには、辺り一面、魚面の遺体に覆われていた。

 かなりの地獄絵図である。

「「「ギョ、ギョギョ!? いったい何があったギョ!?」」」

「「「!?」」」
 
 全員の視線が教会側に向いていたので、突然、背後から聞こえて来た魚弁に、桜井たち全員が慌てて振り向いた。

 船着き場側に、三体の魚面が立っていた。

「「「ギョギョォォ! こ、殺さないでギョ!」」」

 桜井たちの殺気を受けた魚面たちは、全員がその場に膝まづいて命乞いを始めた。

「そう言って助けを求めた旅行者を、お前たちは殺さなかったのか?」

 桜井船務長が恐ろしく低い声で魚面たちに問いかける。

「ギョギョ! 俺たちは殺してない! 旅行者を攫ってもいないギョ!」
「お、俺たちはダゴン教団とは関係ないギョ!」
「ほ、本当だギョ! 信じて欲しいギョ!」

 どういういことだ?

 私はインカムを通して、桜井に彼らの話を聞くように伝えた。

 桜井は銃口を魚面に向けたままで、

「よし。話を聞こう。だが妙な動きをしたら……わかっているな」

 コクコクと頷く魚面たち。

 そこへ境大尉の声が上がった。

「船務長! ボートが到着しました!」

 船着き場を見ると、小型艇が着岸していた。

 待っていたぞとばかりに、桜井や境大尉、そして白狼兵たちが懐中電灯の光をボートに向ける。

 向けようとして、何度か暗くなった海面を照らした。

 その直後――

「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」」」

 桜井たちの絶叫が響く。

「ど、どうした桜井!」

「「「「あわわわわわ」」」」

 私の問いかけに、桜井たちが応答できずにいる。

「艦長! 見てください!」
  
 シンイチがフワーデ・ボディの前に立って、海面を指差した。

 暗い海。

 波が揺れる度、街の明かりが海面に反射して、海面が光る。

 光は2つずつ均等に並んでいる。

 2つずつ?

 それも沢山。

 沢山?

「艦長、あれ見えてますか?」
 
 シンイチが懐中電灯の灯りを、円を描くように海面に当てていた。

 そこに注目しろということなのだろう。

「んっ? あれ? あれって、一体何が見え……」

 その瞬間、脳内が見えているものを正確に解釈した。

「ぎょえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 それを理解した瞬間、私は絶叫を上げていた。

 海面に、

 それはもう沢山の魚面がプカプカと浮いて、こちらを見ていたのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...