ベスティエン ――強面巨漢×美少女の〝美女と野獣〟な青春恋愛物語

熒閂

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#03: The flawless guy

"The die is cast"

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 レイ虎宗タケムネに反撃を喰らわせた光景を見た群衆は、呆気にとられた。この場にいる人間のなかで最も幼く、最も小さく、最もか弱いはずの禮が、彼らの最大武力としている虎宗を迎撃し果せた事実は信じがたく、驚かないはずがない。
 禮は虎宗も大志朗タイシローも、渋撥シブハツについて何も教えてくれはしないと確信した。もうこの場に留まって干戈を交える意味はない。
 鶴榮ツルエは禮に急かされて素早くスクーターを起こし、ふたりで颯爽と走り去った。

 鶴榮と禮は一旦、渋撥と別れた場所に戻った。最早そこには渋撥も東光トーコー高校の敵勢の姿も無かった。
 日が暮れて人気ひとけはまったくなくなり、辺りは静まり返っていた。アスファルトの一部が街灯に照らし出され、赤黒い血の跡が点々と残っているのが見て取れた。渋撥のものか敵のものかは分からないが、此処で激闘が行われたのは事実だ。
 禮は足許の血痕にじっと目を落とした。無表情な横顔は、端正であるが故に彫像が如く何を思っているのか鶴榮には皆目見当が付かなかった。

「禮ちゃん。ここおってもしゃあないし家帰ろ。ワシ送るさかい」

「ヤダ」

 禮からの返答は早かった。
 鶴榮は少々困った様子で後頭部を掻いた。

「もう時間も遅い。禮ちゃんは帰ったほうがええ。ハツのこと何か分かったらスグ連絡するさかい――」

「うそ」

 禮はやや強い語調で足許に向かって言い放った。

「そんなん嘘やもん。ハッちゃんに何かあってもウチには教えてくれへん。みんなハッちゃんのことになるとウチにほんまのこと言わへんやん!」

 禮から責められるように言われても、鶴榮は言い返さなかった。
 「みんな」の中には、自分だけではなく坊主頭の男ややたら綺麗な顔をした男も含まれているのだろうなと悟った。あのふたりと禮がどのような関係なのか知らないが、ふたりから禮への接し方を見ても、裏切られたと感じるくらいには親しいのは間違いない。裏切られて傷ついている禮と口論する気になどなれなかった。

「……ごめん」

「イヤ、気にせんでええ」

 鶴榮は禮の肩をポンポンと優しく撫でた。
 不意に鶴榮のスマートフォンが鳴った。電話は、曜至ヨージからだった。




 禮と鶴榮は曜至から連絡を受け、総合病院へ急行した。
 病院の真ん前にスクーターを乗りつけて飛び降りた。おそらく、スクーターに鍵をかけるのも忘れたと思う。そのようなことを悠長に確認している暇はなかった。
 外来診療の時間が終了した病院は、外から見ても暗く静まっていることが分かった。ガーーー、と自動ドアの開閉をいつもよりも随分ゆっくりに感じた。一分一秒がとても長い。息を付く間を忘却するくらいに。
 禮も鶴榮も病院に駆けこみ、バタバタバタッと一目散に渋撥の病室を目指した。何階の何号室であるかは事前に曜至から聞いておいた。病室に辿り着くまでに走るなと注意された気もするが、ふたりとも速度を緩めなかった。
 エレベータを待ちきれなかったふたりは階段を駆け上った。渋撥の病室がある階に着くと、階段からすぐの位置に待合室があり、そこに曜至の姿が見えた。鶴榮はそこで足を停めたが禮はそのまま病室まで駆け抜けていった。

 渋撥の病室の前には美作みまさかがいた。壁に凭りかかって立っていた彼は、禮を見つけて「あ、禮ちゃん」と声をかけた。

「ハッちゃんは⁉」

 禮は病室のドアに手をかけようとし、美作は壁から離れて慌てて制止した。

「今はまだあかん。近江オーミさん意識のォて面会謝絶やねん。目が覚めるまでは絶対安静やてさっきナースが言うてはった」

「意識ないてどういうことっ」

「それが――……」

 美作は禮から目を逸らし、言葉を濁した。





「曜至」

 鶴榮は、待合室の背凭れのない長椅子に腰かけていた曜至に声をかけた。
 顔を上げた曜至は、見たことがないくらい神妙な面持ちをしていた。

「オイ。面会謝絶てどうなっとんねん」

 鶴榮に尋ねられ、曜至はトントンと親指で自分の身体の中央辺りを指した。

「内臓、結構キてるらしい」

「内臓?」

 曜至は長椅子から立ち上がって鶴榮の前に立った。強張った表情で鶴榮の肩を握り締めた。
 学生服越しに伝わってくるくらいに手の温度が高かった。鶴榮が到着するまでずっと拳を握り締めて何かに耐えていたのかもしれない。

「悪ィ」

 絞り出された低い声。曜至はまるで教会の懺悔室で告解をするように重々しい声を出した。

「こんなことになるんなら、近江さん連れて逃げる前にアイツを殺しとくべきだった」

「アイツ?」

「坊主頭の、眼鏡かけた男」

 鶴榮の脳内を、とんでもないトルクの坊主頭の男・能登ノト虎宗タケムネの顔が巡った。同時に、射竦められてしまうほど鋭く光った眼光も思い出した。
 あの目は本当に人間か。あの腕力は本当に人間のものか。あのパワーは本当に人間に許されたものか。禍々しいまでのあの力は、もしや渋撥や鶴榮と同じ――――。
 曜至は鶴榮の肩から手を放し、スッと横を擦り抜けた。

「曜至。どこ行く」

「アイツを……アイツら全員ブッ殺す準備。準備が済んだら連絡する。近江さんのことは任した、鶴榮」

 曜至は至近距離にいても決して目を見ようとしなかった。合わす顔がないと考えてしまうほどに後悔や罪悪感を抱いていると思った。

「ああ、任しとけ」




 曜至が病院を去ったあと、禮たちは待合室で渋撥の目覚めを待つことにした。
 病棟はとうに寝静まっており、待合室は静かだった。待合室には長椅子と自動販売機ぐらいしかなかった。禮と鶴榮は長椅子に腰かけ、美作は自動販売機の前に立って飲み物を選んでいた。
 美作は鶴榮にホットのブラックコーヒーを、禮にはホットのミルクティーを買って渡した。「ありがと」と言って受け取った禮の顔は心なしか青ざめていた。当然だ、面会謝絶や意識不明などと聞かされて平気でいられるはずがない。

「禮ちゃん。腕、大丈夫か?」

 両腿の上に肘を置いた前屈みの体勢で座っていた鶴榮は、禮の腕を指差した。
 人ひとり吹き飛ばすほどの虎宗の蹴りを受け止め、この細腕が無傷で済むとは思えない。鶴榮は禮を自分の盾にしてしまったことが心苦しかった。
 禮は自分の腕を摩ってみた。ズキッと鋭い痛みが走ったが、顔には出さず腕を摩り続ける。

「痛いか?」

「だいじょぶ。ちゃんとガードしてたから」

「禮ちゃんが鍛えとるのは知っとるが、痛いもんは痛いやろ。身体は女のコなんやから」

「なんてことないよ」

 禮の受け答えに覇気はなく、笑顔は空々しかった。
 鶴榮は何も言わず禮の顔をじっと見詰めた。問い詰めるつもりはなかったが、禮がいま何を思っているか推し量りたい一念はあった。
 鶴榮があまりにも凝視するから、禮の笑顔がはたと停まった。

「鶴ちゃんは、訊けへんの?」

 禮が何を促そうとしているか分からないほど鶴榮は察しの悪い男ではない。しかし、渋撥の容態が知れず不安に思っている禮を問い詰めるのは気が引けて口を開き倦ねた。
 事情を把握していない美作は、ただただ鶴榮と禮との間で視線を右往左往させていた。

「ハッちゃんをケガさせた人は誰なん、とか……何で知り合いなん、とか……」

「禮ちゃん、東光のヤツら知っとんかっ?」

 美作はすぐさま食いついて身体を禮のほうに向けた。敵の情報は多いほうがよい。今はどのような情報でも仕入れたい情況だ。
 鶴榮は美作の頭をグワッと掴んで下方に押さえこんで黙らせた。

「こうなってしもた以上、アイツらはワシらの敵や。やり合うことは避けられへん。ワシらは何があってもアイツらをぶっ潰す。禮ちゃんとアイツらは知り合いやろ。ええんか、アイツらと敵同士になっても」

「しゃあないよ……。ウチはハッちゃんが一番大事だいじやもん。もうトラちゃんたちとは……敵同士やよ」

 か細い声がポツリと白い床に落ちた。
 落ちたのが涙でなくて鶴榮はホッとした。しかし、禮が泣いているわけでもないのに顔を上げないのは、仕方がないと割り切った顔を作ることができないからだろうなと思った。

「ほんまにええんやな」

 念を押すように鶴榮に問われ、禮はコクンと頷いた。
 多分、サヨナラはとうに告げた。大志朗に選択を迫られたとき、大志朗と拳を交えたとき、虎宗の前に立ちはだかったとき、虎宗を投げ飛ばしたとき。身を、心を、魂を、何度も何度も切られるような想いをしながらサヨナラと言ったのだ。
 再会が昔の情景と似ていたから勘違いしてしまった。建物も風景も姿形も人の心も、この世に変わらないものなんてひとつもない。どれほど長い時間を過ごしても、兄妹のように想い合っていても、自分たちだけが特別でいられるはずがない。
 彼岸へと手を振ってサヨナラ。思い出とサヨナラ。
 過去が、遠離る。




「アイツらは何者や。あのキレエな顔したヤツと、坊主頭のメガネや」

 鶴榮は美作の頭から手を離して禮に尋ねた、

「トラちゃん……坊主頭の人は、ウチのお兄ちゃん」

「はあッ⁉」

 禮の言葉を聞いた美作は、眉をひん曲げて盛大に驚いた。
 禮は自分と虎宗、大志朗との関係性について鶴榮と美作に淡々と説明した。努めて感情を押し殺した。渋撥の味方である為には、あのふたりへの情は無いほうがよいと思った。
 対岸か彼岸か、闘争はいつだって二者択一だ。

「トラちゃんもシロちゃんも、ウチが子どもの頃から一緒に鍛錬してて、ふたりともかなり強いよ」

「どんぐらいや?」

 鶴榮に尋ねられた禮は即答を避けた。美作から貰ったミルクティーを口へ運び、ふうと息を吐いてから口を開いた。

「二年くらい会うてへんかったけど、そのときでシロちゃんはウチと同じくらいか少し上くらい。せやけどトラちゃんは……」

 禮が言葉を濁した意味は、鶴榮にはすぐに分かった。

ハツより強いっちゅうんか」

 言わずとも分かる。禮はそう思っているからあんなにも虎宗と渋撥の衝突を回避しようとしたのだ。鶴榮も美作も曜至も、渋撥を王と崇める諸々すべては、その無敗神話を信じている。しかし、禮の目は神話を否定していた。

「トラちゃんは負けたことあれへんの」

 それを聞いた美作は、いやいや、と話に割って入ってきた。

「負けたことあれへん言うても道場の試合とかの話やろ。ケンカと試合はちゃうで」

 美作は冗談のように笑いながら言った。禮が嘘を吐いているとは言わないが前提の齟齬があると思った。
 しかしながら、虎宗の強さを実際に目の当たりにした鶴榮の反応は些か異なった。禮の肩を掴んで自分のほうを向かせた。

ハツより強いヤツなんかいてへん!」

 鶴榮が禮に対して声を荒らげたことに美作は少々面喰らった。
 鶴榮は禮にではなくて自分自身に言い聞かせたのだ。渋撥の神話を疑い始めている自分に対して。虎宗の強さは鮮烈で苛烈に悪魔的だ。その魔力に当てられ、それまで鶴榮のなかで高い塔のように聳え立っていた神話が揺らぎ始めていた。

「そんなこと言うてもハッちゃんかて負けてしもたやんか!」

 鶴榮が取り乱した分、禮も取り乱した。動揺も不安も恐怖も焦燥も必死に押しこめようとしていたのに、掻き乱されてから先にはどうやって感情の水面を鎮めたらよいのか分からない。身体は震えだし、瞳からポロポロと涙が零れ落ちた。

「負けて、しもたからッ……ハッちゃんこんなトコに……! 何で、こんなことになって……ッ」

 禮は縋りつくように鶴榮の袖を掴んだ。何かに捕まっていないと振り落とされてしまいそうだった。言い知れない恐怖に、這い上がれない奈落の底に突き落とされてしまいそうだった。
 どうしてこのようなことになってしまったのだろう。愛しい過去とサヨナラしようと決めたのに、振った手を収める場所がない。
 ――この手はあなたと繋がれているはずなのに、わたしの傍にあなたはいない。あなたの手を振り払った覚えはないのに、どうしてわたしとあなたとの間は白い扉で仕切られているのだろう。




  § § §




 虎宗タケムネ大志朗タイシローは、とある喫茶店にいた。
 初めて入ったこぢんまりした喫茶店。学生服を着た十数人の男たちが連れ立って入店してきて、他の客は全員出て行ってしまった。揃いの学生服で満席になった店内の雰囲気は、まるでテロリストに占拠されたようだった。
 これだけ人数がいるのに、誰ひとり自由気儘に喋ったり暴れたりすることはなかった。会話するにしてもボソボソと声を潜め、騒がしくならない。むしろ、店内には重苦しい雰囲気が充満した。
 彼らにそぐわないこの空気の原因は、一番奥のテーブルに居座る虎宗と大志朗がずっと沈黙を続けているからだ。虎宗と大志朗はテーブルを挟んで向き合って座っていた。大志朗は虎宗が燻らせる紫煙を、頬杖を突いてずっと眺めている。
 皆、胸の内ではこのような息が詰まる空間から解放されたいと思っているが、大志朗ですら黙っているのに他の誰が虎宗に話しかけられようか。

「フー……」

 虎宗は無言で煙を吐き出した。立ち上った煙が天井にぶつかって雲のように立ち籠める。
 大志朗さえも虎宗のほうから言葉を発するのを待った。決定的な失恋をした彼に、致命的に喪失した彼に、何と声をかけたらよいか思いつかなかった。
 大志朗は虎宗の前に灰皿にチラッと目を向けた。その中には十本近い吸い殻がある。それらを吸っている間、虎宗は煙草の煙を吐き出す以外は口を開いていない。
 ギイ、バタン。――手洗いのドアが開き、中から西ノ宮ニシノミヤが出てきた。
 彼は顎に滴る水を学生服の袖で拭いながらツカツカと歩き、虎宗と大志朗が座っているテーブルの隣、大志朗とは丁度背中合わせの位置に座った。
 西ノ宮の隣にはすでにひとり座っていた。痛々しそうな表情をして西ノ宮の横顔を見る。

「大丈夫か西ノ宮。歯、イッたんだろ?」

「べつにこれぐらい何ともないわ」

「蹲ってたから何かあったとは思ったけど、歯イッちまうとは……」

「オマエらもワンパンでのされとったやろ」

 西ノ宮は男をギロッと睨んだ。誰よりも自分が一番不甲斐なさを感じているというのに、すぐ背中には大志朗がいるというのに、失態をわざわざ再確認させるな。

「大志朗」

 ついに虎宗が口を開いた。大志朗は頬杖を突いたまま目だけを動かして虎宗を見た。
 虎宗の重苦しいオーラの所為で静まり返っている周囲も、ついついふたりの会話に聞き入った。

「禮ちゃんが俺らの敵、か……」

 虎宗はいつもよりもワントーン低い声で呟いた。付き合いの長い大志朗にはすぐに分かった、すこぶる機嫌が悪いときの虎宗の声だ。

「そんなん俺に言われても……」

「何でよりによってあの男やねん!」

 ドォオンッ!
 虎宗はテーブルの上に握り拳を落とした。

「ッ……‼」

 聞き耳を立てていた周囲の男たちに緊張が駆け抜けた。
 西ノ宮は、最も虎宗の近くにいる大志朗を案じて立ち上がろうとしたが、意外にも大志朗は動じずに虎宗の顔を見据えていた。

「そんなん、俺に訊かんでも解るやろ」

 大志朗は荒ぶる虎宗とは対比的に、叱りつけるでも対峙するでもなく、諭し言い聞かせる口調だった。

「禮ちゃんが冗談や間に合わせで男と付き合う子ォに見えるか。力尽くで来られて仕方なしにハイ言う子やと思うか」

 虎宗はテーブルの上に置いた拳をギリギリと音が鳴りそうなほど強く握り締めた。

「禮ちゃんは惚れとんねん。あの男――――《荒菱館コーリヨーカン近江オーミ》に」

 何が聞きたかったのだろう。受け容れ難い事実だから大志朗に否定してほしかったのか。それとも第三者の口から聞けば落ち着いて聞き入れられるとでも思ったのか。しかし、結果は何も変わりはしない。胸は破けたままだし、禮とは対岸に離れ離れのままだし、禮はあの男のもののまま。

「俺かて信じたないケド……。禮ちゃんが自分の口から言うたんや。どんだけ都合悪くても、信じるしかあれへんやろ」

 信じずに済むのなら、事実から目を背けていられるのなら、何も知らずにいられたらどんなによかっただろう。しかし、事実は彼らに迫り来て、ぶち当たり、追い越して駆け抜けていった。
 ――置いて行かれた俺たちは、とんだ間抜けだ。

「そうか……。禮ちゃんはあの男に惚れとるんやな……」

 虎宗はテーブルの上の自分の拳に目を落とし、ゆっくりと拳を開いた。網膜には自分の手の平を映しているはずなのに、脳裏には禮の顔が浮かぶ辺り、自分でも未練がましいと思う。それを自分の意思で掻き消すこともできやしない。

 ――「トラちゃんがハッちゃんの敵になるなら、もうウチも敵やよ……」――

 ズクッ。――鼓動に合わせて鈍い痛みが走った。
 自分勝手なはずの脳内でも恋しい少女は笑ってくれない。敵と敵、此岸と彼岸、決定的に別たれて、それでもなお居座り続けるこの痛みを振り切る方法とは、何なのだろうか。

「…………。禮ちゃんがあの男に惚れとっても、俺がアイツを潰さなあかんことに変わりない」

「トラ。オマエ……ほんまにそれでええんやな」

 大志朗に問われ、虎宗は親指で額を掻いた。いつもどおりに何てことはない顔をできているだろうか。幼馴染みの前とは言え、痛みを堪える情けない顔など見透かされたくはない。

「いいか悪いかなんかな、もう関係ないねん。〝賽は投げられた〟や。俺ら東光トーコーと、アイツら荒菱館の戦争はもう始まっとんねん」

 ガーー。――店の自動ドアが開いた。
 ひとりの男を先頭に数人が入店してきた。虎宗と大志朗を除いて店内にいる者は全員立ち上がり、先頭の男に頭を下げた。

菊池キクチさん。チィース」

「お疲れさんです」

 菊池と呼ばれた男は「オウ、オウ」と返事をして尊大に振る舞いながら店のなかを進んだ。虎宗と大志朗のテーブルまでやって来て足を停めた。
 虎宗と大志朗は、皆が王様のように扱うその男に対して顔を向けることすらしなかった。

「《荒菱館の近江》も№2も逃がしたらしいな。能登ノトくんともあろう者がどうした」

 虎宗は何も言わず口に煙草を咥えた。

「賢いオマエのことやから俺との約束を忘れてへんと思うが……」

 菊池は虎宗の真正面くらいの位置に手を突き、その肩にポンと手を置いた。虎宗にまるで無視されていること自体に腹を立てる素振りはなかった。

「能登ォ。オマエはもう俺の兵隊や。約束果たすまで精々気張って俺の役に立ってくれや」

 大志朗はチッと舌打ちした。それが聞こえた西ノ宮は、小声で「大志朗さん」と諫めた。
 菊池は彼らのリーダーであり、集団のなかでリーダーの反感を買って得することなどはない。西ノ宮は大志朗には損をしてほしくなかった。
 しかしながら、大志朗は西ノ宮の心配などお構いなしに菊池に「オイ」と乱暴に声をかけた。

「約束を果たしたら俺らとオマエは赤の他人や。友だちみたいに馴れ馴れしくすんな」

「大志朗さんッ」

 西ノ宮は慌てて制止しようとするが、大志朗はキツイ目付きで菊池を睨みつけた。

「トラの肩から手ェ退かせ」

 菊池はニヤニヤと笑みを湛えたまま、ゆっくりと虎宗の肩から手を浮かせて両手を挙げて見せた。
 それから大志朗のほうへ身体の向きを変え、じっくりと顔を俯瞰する。

「オマエはどこまで正義の味方気取っとるつもりや」

「あ?」

「オマエももう荒菱館のモン何人もヤッてくれとるやろォ。ほんま助かってるわ。ヤられたほうからしたらヤッたヤツの事情なんか知ったこっちゃあるか。人ォ殴れば恨み買うのは当たり前や。人から恨み買うたら立派な悪人や。俺とオマエの何がちゃうねん」

「ワレッ……」

 大志朗はガッと菊池の胸座むなぐらを掴んだ。
 言われなくても分かっているつもりの道理を、最も道理に暗そうなこいつに語られるのはカッと頭に血が上る。
 西ノ宮が「大志朗さんッ」とふたりの間に慌てて割って入った。衆人環視の場ならば掴み合いになってもきっと誰かが止めに入る。この小狡い男はそれを分かった上で大志朗を挑発した。

「やめとけ大志朗。ソイツの言うとおりや。俺もお前ももう恨み買うとる。今更善人面はでけへん」

 顔も覚えていない誰かの恨みなど恐ろしくはない。一度腹を決めたからには誰に憎まれても構わない。虎宗は何処の何奴を敵に回しても厭わなかったのだ、禮以外なら。故に禮と敵対した以上、失うものは一切ない。此処からは本当にこの身ひとつだ。
 禮と彼らの道は別たれた。道は別たれ彼岸へと辿り着いた。敵陣の対岸、そこは見えるのに彼方よりも遠い。




  § § §




 総合病院。
 鶴榮ツルエは禮と美作ミマサカを置いて待合室から離れ、ひとりで廊下の端に立っていた。スマートフォンで曜至ヨージと連絡を取り合う。

〈そっちの様子はどうだ? 鶴榮〉

「どうもこうも変化ナシや」

〈そうか……〉

 スマートフォンの向こうから聞こえる曜至の声は、何処か沈んでいるようだった。

「オマエらはそのまま待機しとけ」

〈ああ、いつでも動ける態勢だ。人数は揃えた、ヤツらの居場所も分かった。何か動きがあったら分かるように何人か張りつけてる。……あとは号令ひとつだ〉

 賽は投げられた――――。
 急勾配な坂道を転がり出した一石が、何処かにぶつからねば自分では止まれぬように、ダイスの目が幾つでも彼らはその目のとおりに足を進めるしかない。その先に待つのが「振り出しに戻る」でも「GAME OVER」でも、振られたダイスをなかったことにできはしない。

 ――号令を出すのはオマエや、ハツ。オマエが王様や。
 アイツらがオマエの為に命投げ出す覚悟を決めとるように、オマエもアイツらが担ぎ上げる王様として振る舞わなあかん。
 早よ目ェ覚まして立ち上がれ。早よ目ェ覚まして命令しろ。
 ぎょうさんの人間の体も命も乗っかったこの運命のすべてが、オマエの号令ひとつや。




「ほなそっちは任したで、曜至」

 鶴榮は曜至との通話を終了し、スマートフォンをポケットの中に押しこんだ。
 待合室へと戻る道中、脳内を禮が過った。ふたりして声を大きくしたきり、あまり言葉を交わしていない。あの程度で口喧嘩をしたなどとは思わないが、年下の少女への配慮を欠いてしまったことが少々心苦しかった。

ハツの為に兄貴とやり合うか……。選んでもろたハツは幸せ者やな。せやけど選んだ禮ちゃんはツライやろ。身内切り捨てて平気でおれるような子ちゃう。多分ほんまは……ワシらなんかと一緒におってええ子ちゃう。この点だけは、あのキレエな兄ちゃんの言うとおりやな)

 鶴榮が待合室に戻ってくると、美作から素早く「駿河スルガさん」と声をかけられた。

「曜至君、何て言うてました?」

 鶴榮は美作に「オウ」と応じつつ、サングラスの下の目線は禮へと向いた。鶴榮が離れていた間中、美作が相手をしていたはずだが禮の顔色は暗い。いつもは渋撥や鶴榮のような強面にも気にかけず溌剌と笑う子なのに。
 笑顔を妨げているのは、言わずもがな兄と敵対する事態になってしまった憂慮だ。

「あんじょう準備は済んだ。ここはワシがおるさかい、オマエは禮ちゃんを家まで送っていって、そのまま向こうと合流せえ」

 美作が「はい」と返事した隣で、禮が弾かれたように顔を上げた。

「ウチ、ハッちゃんが起きるまで待っとく」

「あかん」

「ハッちゃん心配やし、ここまで来てそんな――」

「あかん」

 鶴榮は禮の言葉を遮って再度、今度はより力強く告げた。

ハツが目ェ覚ましたら、戦争の始まりや。ハツと禮ちゃんの兄貴のな」

 そのようなことは分かっている。誰に強要されたのではなく紛れもなく自分の意志で訣別した。此岸と彼岸、選んだのは自分だ。
 それなのに、禮は一瞬表情を歪めてしまった。おそらく、サングラス越しの鶴榮の目に心根を見透かされてしまった。

「鶴ちゃ……」

 バタァンッ!
 禮が何と言って鶴榮に縋りつこうかと思案している真っ最中、病室の扉が勢いよく開いた。
 禮たちはハッとして渋撥の病室のほうへ顔を向けた。ぬっ、と揺れる巨体が病室から廊下へと出てきたのが見え、鶴榮と美作は病室に向かって駆け出した。

「近江さんッ」

 美作から大声で名前を呼ばれ、渋撥は不快そうに顔を顰めた。その不貞不貞しい態度が如何にも渋撥らしかった。

「全然大丈夫やないですか! 心配させんといてくださいよッ」

「美作。俺の服」

 美作は、鶴榮に指示されて一度渋撥の自宅へ着替えを取りに行っていた。昨日の乱闘の所為で着ていたシャツは伸びたり汚れたりで駄目になってしまっていたから、そのようなシャツを渋撥が好んで着ないことは、付き合いが一番長い鶴榮がよく心得ている。
 渋撥は美作から受け取った服に何だかんだと文句を付けながら腕を通したあと、ポツンと立っている禮に目が留まった。鶴榮と美作は病院という場所を弁えることもなく走って声を上げて歓喜したというのに、禮は物言わぬ彫像のようにそこに立っていた。
 禮は自分でも、渋撥の目が覚めたらいの一番に駆け寄ると思っていた。しかし、渋撥の顔を見た瞬間、立ち上がったものの駆け寄る第一歩が出なかった。
 渋撥が目の前に来ても、ただただ顔を見上げるだけで「大丈夫」の一言も出てこなかった。本当は今すぐ抱きついて無事を確かめたいのに、足が縫いつけられたように動かなかった。兄と慕う虎宗が、渋撥を傷つけた罪悪感で胸が押し潰されそう。どのような顔をして「大丈夫」などと言えるというのか。
 渋撥の腕が伸びてきて、禮はビクッと肩を撥ねさせた。大きな掌が頭の上にふわっと乗っかり途端に渋撥の匂いが拡がり、自然と涙が溢れそうになった。自分と渋撥はもう薄く白い扉に仕切られていないのだと実感すると目頭が熱くなる。

「ッ……ハッちゃん……!」

「オウ、禮」

 禮は眉間に集まる熱を堪える為に身を縮めた。少しでも力を抜くと涙が溢れてしまいそうで、懸命に熱を押しこめる。熱が捌け口を求めてグルグルと体中を巡る。

「大……丈夫……?」

 ようやく絞り出した言葉は震えていた。声を出すと涙が零れそうだから、禮は俯いて自分の口を手の平でパッと塞いだ。

「心配かけてすまんかったな」

 禮は声を出さずふるふると首を横に振った。

ツルにあんじょう逃がしてもろたか。禮が無事でよかったで」

 俯いた禮には、渋撥がほっと安堵の吐息を漏らしたように聞こえた。自分は意識を失って病院に運びこまれるほどのダメージを負ったのに、我が身よりも自分を案じてくれた渋撥に、また涙が出そうになる。渋撥に想われていることが嬉しくて哀しくて、涙が出そうになる。

「お願いやから……もう……危ないこと、せんといて……」

 禮は、自分の頭の上に置かれた渋撥の腕の袖を捕まえた。

「もう、ケンカせんといて……ッ」

能登ノト虎宗タケムネて坊主頭、知っとるか」

 渋撥の袖を掴む禮の手がぶるっと震え、その手はスルリと落ちた。

「アイツが、禮が言うてた〝トラちゃん〟っちゅうヤツなんやな」

「ごめッ……! ごめん、なさい……ッ」

 禮は縮めていた身体をまたさらに縮め、渋撥の目には華奢な体が折れてしまいそうに見えた。絞り出す声は悲痛な叫びのようだ。渋撥は、か弱い体が軋み出しそうで見ていられなくなり、目を逸らした。

「何でアイツのしたことで禮が謝んねん」

「ごめん、ハッちゃん……ッ」

「なァ、禮」

 渋撥の手が頬に触れ、禮は促されるように顔を上げた。

「俺とアイツ、どっちが大事だいじや」

「ッ……」

 禮は隙を突かれたようにギクッとしてしまった。
 一番大切にしなくてはいけないものは何なのか、頭では整理できていたはずなのに即座に答えられなかった。否、答えられなかったということは、覚悟など何もできていなかった証拠だ。兄と恋人、どちらも大切に想っている。どちらも掛け替えのない。どちらも失いたくないと、思ってしまっている。
 渋撥も、問えば禮が困惑することは分かっていた。にも拘わらず言ってしまった。問い質さずにはおれなかった。それはあなたよ、と答えてくれることを期待した。
 しかしながら、期待は裏切られた。

 渋撥は禮の頬から手を退け、目を逸らし、背を向けた。
 禮は咄嗟に、再び渋撥の服の袖を掴んだ。見切りをつけられたみたいにゾッとした。
 渋撥は足を停めてくれたが、表情は無かった。

「い、行かんといて……」

「何でそんなツラする」

 禮の不安げな表情を見ると、渋撥の胸で何かがチリチリッと火を噴く。自分の心配をしているのかあの坊主頭の男の心配をしているのか分からない。

「だって……ハッちゃん行ったら、トラちゃんとケンカになるんやろ……?」

「仕掛けられたのはこっちのほうや。売られたケンカを買うだけや」

「ヤダ……トラちゃんとケンカせんといて……ッ」

「何で止めるんや」

 禮は渋撥の服の袖をぎゅうっと握り締めた。

「ハッちゃんがケガすんのが嫌やからに決もてるやん!」

 渋撥は無意識に眉間の皺を深くし、奥歯をグリッと噛んだ。
 どちらが大事だいじかと問われ答を迷うのにも、自分の勝利を信じていないのにも腹が立つ。自分でも信じられないくらいに腹が立つ。禮に対しこうまで苛烈な感情を覚えたのは初めてだった。

「俺がアイツに負ける思うとるやろ」

「だってトラちゃんに勝てる人なんていてへんもん! 行ってしもたらハッちゃんかてもっとヒドイケガするかもしれッ……」

 渋撥は大きく腕を振って禮の手を振り払った。

「それが一番腹立つんじゃッ‼」

 パツン、プツン、と琴線の切れる音がする。極限まで張り詰められた琴線は、獣のような怒号でいとも容易く弾け飛んだ。

「いッ……行ったらあかん……」

 禮は全身の皮膚が粟立った。
 一度は堰き止めたはずの熱が再び駆け上ってくる。もうダメだ、もう堪えられない。腕を振り払われたことが、渋撥が振り返らないことが、その足を引き留められないことが哀しい。これから起こる未来が恐ろしい。
 大きな黒い瞳から涙がポロポロと零れた。

「行かんといてぇーーッ!」

 渋撥は背中にぶつかった甲高い悲鳴を無視した。振り返らず進む先だけを睨み続けて前進する。
 鶴榮と美作は渋撥のあとに続いた。王が征くというのなら何処までも共に進むのが臣下だ。
 鶴榮は禮の涙をしかと見留ながら早足でその真横を通過した。憐憫の情は湧く。しかし、それ以上に果たさなければならぬ使命がある。
 鶴榮はスマートフォンを耳に当て、曜至が出るのを待つ。

〈どうした鶴榮〉

ハツが起きた。今からそっちに合流するわ。寝とるヤツも暇こいとるヤツも全員叩き起こせ」

〈じゃあ……〉

「王様ヤる気満々や。ほな、全面戦争と行こか」

 賽は投げられた。ダイスを元の場所に戻すことは誰にもできない。
 足は踏み出された。戦場を踏み鳴らす軍靴を停めることは誰にもできない。
 王が往く。彼岸を焼き払い、討ち滅ぼし征服せんが為。




熒閂の最新話はクロスフォリオにて先行公開( https://xfolio.jp/portfolio/ke1sen/series/1023833 )
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