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#03: The flawless guy
Showdown
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虎宗は渋撥の胸の上に手を置いた状態から、足首と腰の最小半径の回転と上半身の筋肉と瞬発力だけで掌打を打ち出した。ほぼ接着したゼロ距離から発せられる衝撃は、筋肉の壁を透過したその先、丁度肉体の真芯辺りで爆発する。
如何に筋肉を鍛えて頑健な鎧を身に纏い、あるいは堅牢な城壁を構築しようとも、中身はみな同じ、血と肉が詰まっているに過ぎない。内臓はどうしても鍛えようがなく、また本来衝撃を吸収するようにはできていない。従って、内臓への衝撃による直接的負荷は、筋肉や骨を殴られるのとは及びも付かない甚大なダメージである。
それは、古来の達人の域に達すれば心臓を破るという。まだ世が群雄割拠・弱肉強食の厳しい時代、武術が護身術ではなく殺人拳であった頃の名残であると同時に、奥の手であり禁じ手。無闇に人目に晒すことは疎か私闘で用いることは禁じられている秘技だ。
「……トラちゃん‼」
禮は思わず悲鳴のような声で名前を呼んでいた。
振り返った虎宗の目はゾッとするほど冷たかった。彼処に立っているのは、本当に兄と慕う虎宗か。
「あ……な、何、してんの……。し、素人相手に、そんなっ……奥の手使っ……!」
禮は途惑いを隠しきれず、上手く言葉を繋ぐことができなかった。
「コイツは俺殺すのに自分の命懸ける言うた。俺にも殺す気で来い言うた。せやから、俺も全身全霊で応えたっただけや」
淡々と応える虎宗の声は抑揚が無く平坦だった。それがかえって禮の心を細波立たせた。
「ハッちゃんを……殺す気?」
声が震えた。指先が震える。心臓だって震えている。――――初めて虎宗を恐いと思った。
大切な家族、最も信頼できる門弟、優しい兄だと信頼しきっていたが、渋撥の命を苅る覚悟をした虎宗に、にわかに恐怖した。肩や膝や太腿に鳥肌が立ち、全身が総毛立つ。生物が外敵に対して持つ本能的な警戒心だ。
――ハッちゃんに駆け寄って無事を確かめたいのに、盾になって守りたいのに、トラちゃんが恐くて足が一歩も動けへん……ッ。
「撥ゥーーッ‼」
鶴榮が大声で叫んで駆け出した。地面に突っ伏した渋撥に駆け寄った。
禮はその声でハッと金縛りが解けた。
「撥! オイ撥ッ!」
鶴榮が後頭部に必死に呼びかけても渋撥か即座のら返事はなかった。しかし、取り乱した鶴榮が渋撥の背中に触れようとした瞬間、その肩がピクンッと撥ねた。
鶴榮の手は宙でピタッと停止し、黙って渋撥の後頭部を凝視した。
程なく、渋撥はダンッと地面に両手を付いた。
ふらつきながらゆっくりと上半身を引き起こす渋撥の様を見た鶴榮は、眉間に深い皺を刻んでギリッと奥歯を噛んだ。渋撥が天ほど高いプライドを持つ王様だと知っているから、鶴榮は手助けしようとは一切しなかった。
「どんだけ……気ィ失っとった」
渋撥はよろりと立ち上がりながら鶴榮に尋ねた。
「多分、十秒かそこら……」
「クソッ。そんなにか。ナメられたもんや」
十秒あれば留めを刺すには充分。追撃するに余りあるその時間、虎宗は渋撥を見届けもせずに禮のほうを向いて悠長に会話をしていたのだ。それは渋撥にとっては我慢ならないほどの侮辱だ。
「殺す。……アイツだけは絶対にブチ殺す」
渋撥の横顔からその眼光を見詰めると鶴榮の胸がにわかにざわついた。内臓に蓄積されたダメージ、気持ちの悪い吐血、わずかな時間とは言え意識喪失、生命に危機が及ぶかもしれない最悪の想定もした。
しかしながら、鶴榮はやはり渋撥に触れることはしなかった。助けることも抑止することもしなかった。最早、渋撥と虎宗、二匹の獣の間には何者も手出しは無用。どちらかが地に伏し頽れるまでとまることはない。
「…………。ああ、分かった。オマエの気が済むようにやれ。ワシはとめへん」
鶴榮は渋撥から数歩離れた。自身に課したこの王のブレーキ役を自ら放棄した。名残惜しくはなかった。最も長い時間を共有したひとりとして、渋撥の性質は熟知している。目の色が変わるほど憤慨の前には、誰が立ち塞がっても停めることはできない。
(バケモン言われるオマエをここまで追いこむんや、アイツも充分バケモンや。バケモン同士、形振り構わず潰し合うならそれもええ)
虎宗は立ち上がった渋撥を見て、疎ましそうな表情をした。渋撥とは対照的に、彼には憤怒だとか興奮だとかは見て取れなかった。視線からとかく目障りだという強い情意は感じられた。
「まだ立つんか」
「当たり前やろ。オドレは俺が殺すて……何遍も言うてるやろが」
渋撥は自分の二本の足でしっかりと地面を踏み締め、背筋を伸ばして手の甲で口の端から垂れる血を拭った。
「往生際悪いんも大概にせえよ」
虎宗は唾棄するように言った。
やはり目障りだ。不快でしょうがない。渋撥は忌々しくも性懲りもなく真っ直ぐに此方を見てくる。その眼光には濁りも迷いもない。刹那、確かに生死の境を垣間見たくせに、いまだ以て境界を踏破することに躊躇がない。
渋撥は虎宗を睨みつけ、ギリッと音が鳴るほど拳を握り締めた。
(……一発や。俺はまだアイツに一発もマトモに入れてへん。一発決まれば、必ず地ベタ這い蹲らせたる)
渋撥には確信めいた自信があった。彼は神よりも何よりも己の拳を信じる。己自身、己の持つ力だけは何があっても裏切らない。力以上に確かなものなどないと、そういう世界に造り賜うたのが神なのだ。
心臓は、立ち上がった今でも騒々しく胸骨の中を跳ね回っている。肩を上下させないことには真面に息を吐くこともできない。視界が霞んで虎宗の細かな所作が見えない。つまり、自分の考えていること以外は何も解らない。
渋撥は身体を引き摺るようにして、虎宗に向かって押し出すようにして、ジリッジリッと間を詰めてゆく。退く気はないのだから、前に進むしかない。後ろを振り返るほどの体力を浪費するならば、眼前の敵を睨みながら死んだほうがマシだ。
ザザッ。――渋撥がジワジワと縮めていた距離を、虎宗は容易に踏み破った。
圧倒的優位の虎宗が渋撥を怖れる理由など、必要以上に警戒する理由など何処にもない。虎宗は、渋撥は気力で立っているに過ぎないと悟った。心臓に直接衝撃を叩きこまれたのだから、攻撃に必要な呼吸を溜めることすら満足にはできないはずだ。
ホラ、虎宗が拳を振りかぶっても渋撥は睨み続けるだけで身構えることもできない。虎宗は渋撥の顔面目がけてパンチを突き出した。
ゴガァアンッ!
急激に視界が上下に揺さぶられ、一瞬何が起こったのか理解できなかった。足が地面から浮き、振り仰いで見上げた夜空にはチカチカと星が光っていた。そして、無重力を味わう間もないまま背中に固い感触がぶち当たった。
「グァハ……ッ⁉」
虎宗が、渋撥に殴り飛ばされ地面に転がっているのだと気づくのに、それから優に2秒はかかった。
渋撥の渾身の一撃。それは鍛え抜かれた虎宗にも甚大なダメージだった。
「ゴホッ、ゴフッ……!」
渋撥は激しく咳きこんで血を吐きながら両膝を突いた。
手の平に拡がる浅黒い色をした血液はヌルヌルして不快だ。それを地面になすりつけ、再び立ち上がろうと両足に力を入れた。膝がなかなか言うことを聞かず、力を入れようとすると心臓が跳ね回って激痛が走った。心臓はドクッドクッと聞いたこともない変な拍動をし、全身の血管が乱痴気騒ぎしているかのようだ。
渋撥が顔を引き上げると、虎宗が自分の膝に手を置いて支えにして蹌踉めきながら立ち上がる姿が見えた。
(ハゲが! まだ立つんかッ)
一撃が決まれば終わると思っていた。一撃が決まれば形勢逆転できると思っていた。渋撥の全力の一撃は、大局に於いてそれほどの威力を持つ。ところがどうだ。奴は辛くも立ち上がり、自分はこうして地面に重力に縫いつけられている。
虎宗が自分の顎に触れると、ヌルッとした生温かい感触がまとわりついた。
(顎が切れとる……! 何ちゅう強烈なパンチや)
虎宗はグイッと血を拭って膝に手を置きながら立ち上がった。
「ハッ、ハッ、ハッ……」
拭っても拭っても、顎の傷口から呼吸のリズムに合わせてドッドッドッと真っ赤な血液が止め処なく溢れ出て、喉を伝って白いシャツを真っ赤に染め上げてゆく。拭っても無駄だと諦めた虎宗は、渋撥の利き腕の拳に目を落とした。その拳からポタリと赤い雫が落ちた。
「拳、今のでイカれてもーたんちゃうか」
「オドレの血じゃボケ。俺の拳はそんなヤワちゃうねんタコ」
「そりゃ残念や」
コクン。――渋撥は喉から上ってくる生臭いものを嚥下し、蹌踉めきながらも立ち上がった。
「オドレも大概しぶといな、ハゲ」
「ハゲちゃう。坊主や」
「一発で終わらんならしゃあない……とことんまでやったらァ」
「こっちの台詞や」
くらり、と虎宗は眩暈のような感覚に襲われた。渋撥が向かってくることを察知して身構えた途端のことだった。
(ヤバイ。ヤツの顔がよう見えん。眼鏡かけてんのに。何でや。膝が重たい。息が苦しい。たった一発のパンチがそんな効いとるっちゅうんか!)
「オラァッ‼」
渋撥が突き出したパンチを、虎宗は辛うじて回避した。普段なら難なく躱せるはずなのに、膝が言うことを聞かず足が縺れそうになりながらやや無様な回避だった。
「クッ……!」
虎宗は動作の拍子に顎に鋭い痛みが走り、顔を顰めた。
賢明な彼は同時に悟った。これは早く勝敗を喫しなければならないと。それを正確に言葉にすることはできないが、確かにそう直感した。一刻も早くこの獣を狩らねば自分が獣に追われる立場になる。培った経験が、自分のリミットが近いことを悟らせた。
トン。――虎宗の手の平が胸の上に置かれ、渋撥はマズイと思った。
心臓に刃物を押しこまれる予感と大差ない。もう一度あの攻撃を喰らえば心臓が耐えられないであろうと本能で察知した。
この瞬間、虎宗には明確な殺意があった。心臓に刃物を突き立てるのだ、生半可な覚悟ではない。この男を殺してしまっても仕方がないと、腹に決めたのだ。
「ハッちゃんがんばってーッ‼」
先刻まで、血腥い臭いが辺りに立ち籠めていた。獣と獣が絡み合い、爪を立て合い食らい付き合い、血も汗も舞って戦場は死神が見下ろす盤上だった。
けれど、一陣の風が吹き抜けた。嗚呼、血の臭いが掻き消され、死神の影すらも薄まり遠退いてゆく。
「ハッちゃん、負けんといて……」
直ぐ近くにいる虎宗の声ですら薄ぼんやりとしか聞こえないのに、何故離れている禮の声が鼓膜に届いたのか、渋撥にも分からない。しかし、確かに聞き間違えようもなくハッキリと、禮の声は渋撥に届いた。
その声に背中を押された。渋撥は虎宗に胸を押さえられた状態から、さらに一歩深く踏みこんだ。
ズドォンッ!
虎宗の放った衝撃は、渋撥の背中で爆発した。虎宗は瞬時に当てが外れたことを察知した。
(コイツ、自分から間合い詰めて無理矢理〝芯〟を外しよった!)
それにしてもダメージが皆無というわけではなかった。渋撥は口から溢れた血液を気にも留めず、拳を握った。奥歯をギリギリと噛み締め、もう一歩深く虎宗の領域に踏み入った。
渋撥の眼光とかち合い、虎宗はハッとして咄嗟にガードを造ったが、時すでに遅し。
「おおおおおッ‼」
渋撥が狂乱して上げる怒号は、野獣が牙を剥いて獲物に食らい付く様に似ていた。生々しい熱と血の臭いを巻き上げ、同時に四散させる猛々しくも禍々しい獣の咆哮。
ドッゴォオンッ!
渋撥のパンチは虎宗のガードを弾き飛ばして撃破し、完全に顔面を捉えた。
虎宗の両足がぶわっと地面から浮く。長身の虎宗の身体が宙を舞う様は、誰の目にも驚愕であり、時が止まったようにすら見えた。渋撥の勝利を信じようと固く心に誓って声を張り上げた禮ですら我が目を疑った。
ズドンッ、ズシャァアッ。――虎宗は地面に叩きつけられた。
「ブハァッ!」
その拍子に口いっぱいの血を吐き出した。
虎宗の闘志は直ぐさま折れはしなかった。何度か身体を起こそうと身悶えたが、その度に意識が遠のいた。脳味噌が揺さぶられ天地の方向が分からない。手足への命令伝達が上手くゆかない。その内に、地面に仰向けに倒れた体勢でピクリとも身動きしなくなった。
それきり、遂に能登虎宗は沈黙した。
渋撥は肩を大きく上下させながら虎宗の様子を窺った。
虎宗が立ち上がろうとし倒れこむという所業を何度か繰り返したのち完全に意識を失ったことを確認すると、自分も三度目地面に両膝を突いた。
「ハアッ、ハァ……ハァッハァ……」
呼吸を整えようとしても心臓はまだ踊り狂っている。そうこうしているとまた例の喉越しの悪い異物が込み上げてきて、渋撥はベッとそれを地面に吐き捨てた。
「気分はどうや」
安心しきったような鶴榮の声が降ってきた
。渋撥が声のほうを振り仰ぐと、街灯に照らされた人影があった。目が霞んでろくに見えやしないから姿形からは鶴榮であるのか判断がつかなかったが、声は確かに彼のものだ。
「悪ゥはあれへん」
鶴榮はフッと笑みを零した。額に脂汗を浮かべながらも不貞不貞しい返事をするのが渋撥らしかった。
「真っ青なツラしてよう気張るで。オマエはほんまカッコマンや、撥」
鶴榮は渋撥の隣にしゃがみこみ、背中をパンパンッと叩いた。
渋撥と虎宗の決着が付いた頃には、すでに曜至が率いた戦いも終わっていた。菊池はガタガタの前歯を曜至によってさらにボロボロに折られ、その足元に意識転がっていた。
それから直ぐだった、遠くからサイレンが聞こえてきたのは。大人数での乱闘を見つけた通行人の誰かか、東光に占拠されていた喫茶店の店主か、通報したのであろう。
鶴榮はチッと舌打ちして渋撥に肩を貸して立ち上がらせた。
「やっぱ人目に付くトコでケンカするモンちゃうな」
「うわ、ヤベ。いま何か赤いのチラッと見えた」
「なに暢気なこと言うとんねん曜至。さっさと散らばって逃げるように指示せえ」
「駿河さん……ほんまあかん。俺まだ走れへんデス」
美作は弱々しい声を上げて鶴榮に手を伸ばした。大志朗との対戦で体力を激しく消耗していた。
しかしながら、鶴榮は応えてはくれなかった。
「知るかボケ。ほなオマエだけ捕まれ」
「薄情者ォ……ウウゥッ」
「ウオォオー! やっぱり俺の大嫌いな真っ赤な回転灯が近づいて来るゥーッ‼」
「曜至君。叫ぶ元気があるなら手ぇ貸して……」
§ § §
渋撥の自宅マンション。
近江家は親が仕事で家を空けることが多い為、いろいろと都合がよろしく、渋撥と鶴榮、禮はそちらへと移動した。
鶴榮は渋撥に肩を貸したまま、慣れた様子でリビングのドアを開けた。渋撥をリビングのソファにドサッと座らせ、照明スイッチをオンにした。
そこまでやり遂げると、腰に手を当てて「ヨシ」と一息吐いた。肩を借りて歩いたとはいえ渋撥にはしっかりと意識があるし、自宅まで辿り着けば一安心だ。
禮は渋撥の自宅を訪れるのはこれが初めてのことだった。恋人の家を訪問するなど、普通ならばドキドキソワソワするものだろうが、禮はリビングに辿り着くと気が抜けてフローリングの床にへたりこんだ。
「大丈夫か? 禮ちゃん」
鶴榮に問われ、禮はコクコクと何度も頷いた。
「安心したら力抜けた~~。ハッちゃんも鶴ちゃんもみんな捕まってしまうかと思たんやから~」
「アハハ。ワシらは慣れとるでええんや。禮ちゃん逃がすほうが心配やったで」
勝手知ったる他人の家。鶴榮は、安心したら喉が渇いた、とキッチンのほうへ消えていった。
禮は緊張感から解放されて脱力しきった。自然と鶴榮の動線を目で追い、薄暗いキッチンをぼーっと見るともなしに眺める。
どうやってあの場にいた大人数が見事に逃げ仰せたのか、よく分からない。倒れている虎宗を大志朗が助け起こしているところをチラッと目撃したから、きっと無事に逃げただろう。おそらくだが、あのふたりは自分よりもずっとああいう事態にも環境にも慣れている気がした。それこそ鶴榮のように。
「オイ」
キッチンのほうに顔を向ける禮に、渋撥が素っ気なく声をかけた。
禮が振り返ると、渋撥はソファに深く沈みこんで不機嫌な顔だった。虎宗に与えられたダメージが痛むのだろうかと、だとしたら責任を感じてしまう。禮がなんと言葉をかけたらよいのか途惑っていると、渋撥のほうから口を開いた。
「俺に何か言うことあれへんか」
「?」
禮は正直ピンと来なかった。
渋撥は、禮が困ったようにやや首を傾げたのを見て、ハアーッと盛大な溜息を吐いて天井を振り仰いだ。
「ゴメン……ね?」
禮は渋撥を少しでも元気づけたくて言葉を選んだが、渋撥はお気に召さなかったらしい。禮のほうへ引き戻した顔は、眉間に皺を寄せていた。
「何で謝んねん」
「トラちゃんが、ハッちゃんケガさしてしもたから……」
渋撥はますますブッス~と不機嫌になった。
虎宗の所業であるのに禮が責任を感じて申し訳なさそうにするのが、実に気に食わなかった。兄妹同然に育った事実は今更如何ともしがたいにしろ、一心同体でもあるまいに。
「アイツのしたことで禮が謝ンな」
「え。せやけど――……あ、うん」
禮は渋撥が不機嫌になる心理が分からず、そのご機嫌を取る上手い言葉も持ち合えなかった。困ってしまってしきりにまじろぎをし、とにかく頷くしかできなかった。
「禮はアイツに勝てるヤツなんかいてへん言うたやろ。俺はソイツに勝ったで。ほな俺に言うことあるやろ」
「あ……えと……? ……オメデト?」
言った後、禮はドキドキしながら渋撥の反応を待った。
渋撥にしても確かにそのような趣旨の言葉が欲しかったと思うのだが、実際に言葉にされる実に呆気なかった。
「あかんかった? ウチ、何か間違えた?」
禮は眉を八の字にしておろおろする。
渋撥は禮の顔を見ながら、はあーー、と大きな溜息を吐いた。
泣くし喚くし、一度は虎宗には決して勝てないとレッテルを貼られもしたが、目の前で小さくなっている姿はやはり愛らしかった。
「こっち来い」
渋撥に手招きされて、禮は膝立ちで怖ず怖ずと近づいた。
渋撥は禮が手の届く範囲にやって来ると、手を捕まえて引き寄せた。とさん、と禮は渋撥の胸の上に落ちた。渋撥は片腕で禮を掻い抱いた。
頬で密着した渋撥の身体は温かかった。分厚い胸板越しにトクン、トクンと心臓の鼓動が聞こえてきた。熱と音が、生きているのだとこれ以上ないほど分かりやすく教えてくれる。
汗と血と埃、そして煙草のニオイを嗅ぐと安心した。安心すると自然と涙が湧き上がってきてポロリと溢れた。
「トラちゃんに勝ててよかった……。ハッちゃんが……死なんでほんまよかった……」
「なに大袈裟なこと言うてんねん」
大袈裟などではない。渋撥は天より高いプライドを持つ王様だから、そのプライドが挫かれてしまえばきっと渋撥は渋撥でなくなってしまう。禮はそれを怖れた。
禮は渋撥の服を握り締め、次から次へとポロポロと大粒の涙を流した。
「また泣くんか、禮は」
渋撥は禮に泣かれるのは正直困ってしまうが、無理に涙を止めようとはしなかった。
禮が泣くのは自分の所為だと、禮を笑顔でいさせてやれないのは自分の所為だと、傍若無人な渋撥にだってそのくらいの理解力はある。だから、今はその涙を受け止めてやろうと思った。
「泣かしてしもて……スマンかったな」
渋撥は禮の額に唇をつけ、ポツリと言った。
何をしても是と崇められる王様として君臨している彼が謝罪を口にするなど滅多にない。禮の涙は王様を滅多にないことをする気分にさせた。
渋撥は禮の頬に手を添えて顔を上げさせた。涙で濡れて夜の海のように揺れる禮の瞳には自分の顔が映りこんでいた。
「これでよう分かったやろ。……俺はこういう男や。禮が何言うても、泣かれても、とまられへん。なんぼ禮に惚れとってもこればっかりはどうしようもない」
お前の為でもできないことがあると言われても、落胆はなかった。お前よりも自分の矜恃が重要だと言われても、悲しみはしなかった。
汗と血と埃、そして煙草のニオイ。そのようなもので酷く安心するのは、心の底から好きだから。どれほど自分勝手でも、どれほど突き放されても、嫌いになることなんてできやしない。
――ハッちゃんはケダモノ…………。
多分、シロちゃんが言うように、ウチらとは真逆のモノなんやと思う。トラちゃんが言うように、ウチの為には自分のプライドを捨てられへん人なんやと思う。
せやけど、ちゃんとウチに優しくしてくれるハッちゃんも知ってるよ。ウチを好きやと言うてくれるハッちゃんも知ってるよ。
ウチはハッちゃんのどこか一個だけを好きになったんとちゃう。ハッちゃんの全部が好き。
「もう知ってる……」
禮は少し震える声でポツリと言葉にした。まるで鈴の音のようなその声に、渋撥は聞き入った。
「ハッちゃんがそーゆー人やって知ってるけど、ウチはハッちゃんが好き」
禮は白い花が開くようににっこりと微笑み、渋撥の目は縫いつけられた。禮の手が手の甲にそっと触れ、その手はこの世のものとは思えないほど柔らかかった。自分でも碌なものではないと見限っている本性を知っても、離れていかずに好きだと言ってくれるのだから、本当にこの世のものではないのかもしれない。ならばしっかりと捕まえていないと儚く消えてしまう。
(クッソカワイイな!)
渋撥は衝動的に禮を両手で抱き締めた。
愛おしさが喉を突くように湧いてきて、愛おしくて愛おしくてどうしようもなくなって、考えるよりも先に身体が動いた。
禮は太い腕でギュウギュウと締めつけられ、苦しさに表情を歪めた。
「ハッちゃん痛ッ……」
「ちょお黙っとけ」
力を緩めたらこの腕をスルリと擦り抜けて消えていってしまうのだろう。さもなくば、いまだ以て憎らしいあの男に掠め取られるかもしれない。どれほど抱き締めて密着しても、思いの丈の十分の一も伝わらない気がする。
渋撥はただただ腕のなかの禮の匂いを、温度を、噛み締めた。禮の持つモノすべてを独占したい。
(クソ! クソ! カワイイカワイイカワイイ! むちゃくちゃカワイイやろが! 天使か⁉ 天使やな!)
「痛い痛い痛い! ハッちゃんほんまに痛苦しい~~っ💦」
急に息苦しさから解放されたかと思うと、禮はあれよという間にソファの上に寝かされた。抵抗する間もなく渋撥が上にどさっと覆い被さってきた。
「え? なに?」
禮が尋ねても渋撥からの返答はなかった。
渋撥は素早く羽織っていたシャツとTシャツを脱ぎ捨てた。渋撥の目がギロリと光り、此処まで来れば、世情に疎い禮でも渋撥が何をしようとしているか流石に分かる。
禮は顔を真っ赤にして渋撥の胸板に腕を突っ張った。
「急に何すんの⁉ やだやだやだッ」
「なるべく痛ないようにしたるさかい――」
バキィッ! ――渋撥の後頭部に鉄槌が下された。
鶴榮の本気の拳骨だった。飲み物を取ってキッチンから戻ってきたら、か弱い少女が組み敷かれて悲鳴を上げているのだから咄嗟に手も出る。
「ケンカのあとで昂ぶっとるからてがっつきよって」
「鶴ちゃん助けて~~っ」
禮は涙目になって鶴榮に助けを求めた。渋撥が本気になったら禮ひとりではどうしようもない。
渋撥はガバッと頭を上げて鶴榮を睨んだ。
「邪魔すんな!」
「せめてワシがおらんトコで盛れーー!」
「オマエが勝手に俺んちにおるんやろがッ!」
「クッソ重たいのにここまで運んだったのはワシやぞ! 性欲強すぎて死ね、この恩知らずッ💢」
§ § §
――と、まあ、このふたりの間にはこのようなことがありました。
ハッちゃんはこの後しばらく、あの脱走した病院に通う羽目になったし、トラちゃんもハッちゃんに殴られた顎にヒビ入ってて、安静にしとかなあかんかったし。ついでに言えば、トラちゃん受験生やのに顎が痛くてよう勉強でけへん言うてた。つまり、ふたりの因縁はケンカが終わった後にも尾を引いてたワケ。
……そりゃあもう仲良うしてね、言うほうが無理やよ。
渋撥と虎宗は互いに銅像のように微動だにせず真正面から睨み合っていた。誰かが停めに入らねば掴み合いの喧嘩になるまでやめないだろう。どちらも仇敵と対峙して自分から折れるような性分ではない。
禮はソファの上で両膝を抱えてふたりを観察していたが、あまりに変化がないので、はあ、と嘆息を漏らした。
「……ねえ。ずぅっとそんなして睨み合ってんの、疲れへん?」
「べつに」
渋撥と虎宗は意図的ではなかったがまったく同じ単語をチョイスし、同じタイミングで口にしてしまったことを苦々しく思い「チイッ!」と盛大に舌打ちをした。
その舌打ちがまた同時だったから、禮はぷふっと噴き出した。
「何や、禮」
「禮ちゃん?」
ふたりはほぼ同時に禮のほうへ顔を向けた。互いに面白くなさそうに横目に相手を見る。
「あははっ。ハッちゃんとトラちゃん、おんなしや。性格ぜんぜんちゃうのに変なの」
「似てへん!」
ふたりはまた同時に声が揃ってしまった。それを見て禮は無邪気にコロコロと笑うから、ふたりはすっかり毒気を抜かれてしまった。
熒閂の最新話はクロスフォリオにて先行公開( https://xfolio.jp/portfolio/ke1sen/series/1023833 )
如何に筋肉を鍛えて頑健な鎧を身に纏い、あるいは堅牢な城壁を構築しようとも、中身はみな同じ、血と肉が詰まっているに過ぎない。内臓はどうしても鍛えようがなく、また本来衝撃を吸収するようにはできていない。従って、内臓への衝撃による直接的負荷は、筋肉や骨を殴られるのとは及びも付かない甚大なダメージである。
それは、古来の達人の域に達すれば心臓を破るという。まだ世が群雄割拠・弱肉強食の厳しい時代、武術が護身術ではなく殺人拳であった頃の名残であると同時に、奥の手であり禁じ手。無闇に人目に晒すことは疎か私闘で用いることは禁じられている秘技だ。
「……トラちゃん‼」
禮は思わず悲鳴のような声で名前を呼んでいた。
振り返った虎宗の目はゾッとするほど冷たかった。彼処に立っているのは、本当に兄と慕う虎宗か。
「あ……な、何、してんの……。し、素人相手に、そんなっ……奥の手使っ……!」
禮は途惑いを隠しきれず、上手く言葉を繋ぐことができなかった。
「コイツは俺殺すのに自分の命懸ける言うた。俺にも殺す気で来い言うた。せやから、俺も全身全霊で応えたっただけや」
淡々と応える虎宗の声は抑揚が無く平坦だった。それがかえって禮の心を細波立たせた。
「ハッちゃんを……殺す気?」
声が震えた。指先が震える。心臓だって震えている。――――初めて虎宗を恐いと思った。
大切な家族、最も信頼できる門弟、優しい兄だと信頼しきっていたが、渋撥の命を苅る覚悟をした虎宗に、にわかに恐怖した。肩や膝や太腿に鳥肌が立ち、全身が総毛立つ。生物が外敵に対して持つ本能的な警戒心だ。
――ハッちゃんに駆け寄って無事を確かめたいのに、盾になって守りたいのに、トラちゃんが恐くて足が一歩も動けへん……ッ。
「撥ゥーーッ‼」
鶴榮が大声で叫んで駆け出した。地面に突っ伏した渋撥に駆け寄った。
禮はその声でハッと金縛りが解けた。
「撥! オイ撥ッ!」
鶴榮が後頭部に必死に呼びかけても渋撥か即座のら返事はなかった。しかし、取り乱した鶴榮が渋撥の背中に触れようとした瞬間、その肩がピクンッと撥ねた。
鶴榮の手は宙でピタッと停止し、黙って渋撥の後頭部を凝視した。
程なく、渋撥はダンッと地面に両手を付いた。
ふらつきながらゆっくりと上半身を引き起こす渋撥の様を見た鶴榮は、眉間に深い皺を刻んでギリッと奥歯を噛んだ。渋撥が天ほど高いプライドを持つ王様だと知っているから、鶴榮は手助けしようとは一切しなかった。
「どんだけ……気ィ失っとった」
渋撥はよろりと立ち上がりながら鶴榮に尋ねた。
「多分、十秒かそこら……」
「クソッ。そんなにか。ナメられたもんや」
十秒あれば留めを刺すには充分。追撃するに余りあるその時間、虎宗は渋撥を見届けもせずに禮のほうを向いて悠長に会話をしていたのだ。それは渋撥にとっては我慢ならないほどの侮辱だ。
「殺す。……アイツだけは絶対にブチ殺す」
渋撥の横顔からその眼光を見詰めると鶴榮の胸がにわかにざわついた。内臓に蓄積されたダメージ、気持ちの悪い吐血、わずかな時間とは言え意識喪失、生命に危機が及ぶかもしれない最悪の想定もした。
しかしながら、鶴榮はやはり渋撥に触れることはしなかった。助けることも抑止することもしなかった。最早、渋撥と虎宗、二匹の獣の間には何者も手出しは無用。どちらかが地に伏し頽れるまでとまることはない。
「…………。ああ、分かった。オマエの気が済むようにやれ。ワシはとめへん」
鶴榮は渋撥から数歩離れた。自身に課したこの王のブレーキ役を自ら放棄した。名残惜しくはなかった。最も長い時間を共有したひとりとして、渋撥の性質は熟知している。目の色が変わるほど憤慨の前には、誰が立ち塞がっても停めることはできない。
(バケモン言われるオマエをここまで追いこむんや、アイツも充分バケモンや。バケモン同士、形振り構わず潰し合うならそれもええ)
虎宗は立ち上がった渋撥を見て、疎ましそうな表情をした。渋撥とは対照的に、彼には憤怒だとか興奮だとかは見て取れなかった。視線からとかく目障りだという強い情意は感じられた。
「まだ立つんか」
「当たり前やろ。オドレは俺が殺すて……何遍も言うてるやろが」
渋撥は自分の二本の足でしっかりと地面を踏み締め、背筋を伸ばして手の甲で口の端から垂れる血を拭った。
「往生際悪いんも大概にせえよ」
虎宗は唾棄するように言った。
やはり目障りだ。不快でしょうがない。渋撥は忌々しくも性懲りもなく真っ直ぐに此方を見てくる。その眼光には濁りも迷いもない。刹那、確かに生死の境を垣間見たくせに、いまだ以て境界を踏破することに躊躇がない。
渋撥は虎宗を睨みつけ、ギリッと音が鳴るほど拳を握り締めた。
(……一発や。俺はまだアイツに一発もマトモに入れてへん。一発決まれば、必ず地ベタ這い蹲らせたる)
渋撥には確信めいた自信があった。彼は神よりも何よりも己の拳を信じる。己自身、己の持つ力だけは何があっても裏切らない。力以上に確かなものなどないと、そういう世界に造り賜うたのが神なのだ。
心臓は、立ち上がった今でも騒々しく胸骨の中を跳ね回っている。肩を上下させないことには真面に息を吐くこともできない。視界が霞んで虎宗の細かな所作が見えない。つまり、自分の考えていること以外は何も解らない。
渋撥は身体を引き摺るようにして、虎宗に向かって押し出すようにして、ジリッジリッと間を詰めてゆく。退く気はないのだから、前に進むしかない。後ろを振り返るほどの体力を浪費するならば、眼前の敵を睨みながら死んだほうがマシだ。
ザザッ。――渋撥がジワジワと縮めていた距離を、虎宗は容易に踏み破った。
圧倒的優位の虎宗が渋撥を怖れる理由など、必要以上に警戒する理由など何処にもない。虎宗は、渋撥は気力で立っているに過ぎないと悟った。心臓に直接衝撃を叩きこまれたのだから、攻撃に必要な呼吸を溜めることすら満足にはできないはずだ。
ホラ、虎宗が拳を振りかぶっても渋撥は睨み続けるだけで身構えることもできない。虎宗は渋撥の顔面目がけてパンチを突き出した。
ゴガァアンッ!
急激に視界が上下に揺さぶられ、一瞬何が起こったのか理解できなかった。足が地面から浮き、振り仰いで見上げた夜空にはチカチカと星が光っていた。そして、無重力を味わう間もないまま背中に固い感触がぶち当たった。
「グァハ……ッ⁉」
虎宗が、渋撥に殴り飛ばされ地面に転がっているのだと気づくのに、それから優に2秒はかかった。
渋撥の渾身の一撃。それは鍛え抜かれた虎宗にも甚大なダメージだった。
「ゴホッ、ゴフッ……!」
渋撥は激しく咳きこんで血を吐きながら両膝を突いた。
手の平に拡がる浅黒い色をした血液はヌルヌルして不快だ。それを地面になすりつけ、再び立ち上がろうと両足に力を入れた。膝がなかなか言うことを聞かず、力を入れようとすると心臓が跳ね回って激痛が走った。心臓はドクッドクッと聞いたこともない変な拍動をし、全身の血管が乱痴気騒ぎしているかのようだ。
渋撥が顔を引き上げると、虎宗が自分の膝に手を置いて支えにして蹌踉めきながら立ち上がる姿が見えた。
(ハゲが! まだ立つんかッ)
一撃が決まれば終わると思っていた。一撃が決まれば形勢逆転できると思っていた。渋撥の全力の一撃は、大局に於いてそれほどの威力を持つ。ところがどうだ。奴は辛くも立ち上がり、自分はこうして地面に重力に縫いつけられている。
虎宗が自分の顎に触れると、ヌルッとした生温かい感触がまとわりついた。
(顎が切れとる……! 何ちゅう強烈なパンチや)
虎宗はグイッと血を拭って膝に手を置きながら立ち上がった。
「ハッ、ハッ、ハッ……」
拭っても拭っても、顎の傷口から呼吸のリズムに合わせてドッドッドッと真っ赤な血液が止め処なく溢れ出て、喉を伝って白いシャツを真っ赤に染め上げてゆく。拭っても無駄だと諦めた虎宗は、渋撥の利き腕の拳に目を落とした。その拳からポタリと赤い雫が落ちた。
「拳、今のでイカれてもーたんちゃうか」
「オドレの血じゃボケ。俺の拳はそんなヤワちゃうねんタコ」
「そりゃ残念や」
コクン。――渋撥は喉から上ってくる生臭いものを嚥下し、蹌踉めきながらも立ち上がった。
「オドレも大概しぶといな、ハゲ」
「ハゲちゃう。坊主や」
「一発で終わらんならしゃあない……とことんまでやったらァ」
「こっちの台詞や」
くらり、と虎宗は眩暈のような感覚に襲われた。渋撥が向かってくることを察知して身構えた途端のことだった。
(ヤバイ。ヤツの顔がよう見えん。眼鏡かけてんのに。何でや。膝が重たい。息が苦しい。たった一発のパンチがそんな効いとるっちゅうんか!)
「オラァッ‼」
渋撥が突き出したパンチを、虎宗は辛うじて回避した。普段なら難なく躱せるはずなのに、膝が言うことを聞かず足が縺れそうになりながらやや無様な回避だった。
「クッ……!」
虎宗は動作の拍子に顎に鋭い痛みが走り、顔を顰めた。
賢明な彼は同時に悟った。これは早く勝敗を喫しなければならないと。それを正確に言葉にすることはできないが、確かにそう直感した。一刻も早くこの獣を狩らねば自分が獣に追われる立場になる。培った経験が、自分のリミットが近いことを悟らせた。
トン。――虎宗の手の平が胸の上に置かれ、渋撥はマズイと思った。
心臓に刃物を押しこまれる予感と大差ない。もう一度あの攻撃を喰らえば心臓が耐えられないであろうと本能で察知した。
この瞬間、虎宗には明確な殺意があった。心臓に刃物を突き立てるのだ、生半可な覚悟ではない。この男を殺してしまっても仕方がないと、腹に決めたのだ。
「ハッちゃんがんばってーッ‼」
先刻まで、血腥い臭いが辺りに立ち籠めていた。獣と獣が絡み合い、爪を立て合い食らい付き合い、血も汗も舞って戦場は死神が見下ろす盤上だった。
けれど、一陣の風が吹き抜けた。嗚呼、血の臭いが掻き消され、死神の影すらも薄まり遠退いてゆく。
「ハッちゃん、負けんといて……」
直ぐ近くにいる虎宗の声ですら薄ぼんやりとしか聞こえないのに、何故離れている禮の声が鼓膜に届いたのか、渋撥にも分からない。しかし、確かに聞き間違えようもなくハッキリと、禮の声は渋撥に届いた。
その声に背中を押された。渋撥は虎宗に胸を押さえられた状態から、さらに一歩深く踏みこんだ。
ズドォンッ!
虎宗の放った衝撃は、渋撥の背中で爆発した。虎宗は瞬時に当てが外れたことを察知した。
(コイツ、自分から間合い詰めて無理矢理〝芯〟を外しよった!)
それにしてもダメージが皆無というわけではなかった。渋撥は口から溢れた血液を気にも留めず、拳を握った。奥歯をギリギリと噛み締め、もう一歩深く虎宗の領域に踏み入った。
渋撥の眼光とかち合い、虎宗はハッとして咄嗟にガードを造ったが、時すでに遅し。
「おおおおおッ‼」
渋撥が狂乱して上げる怒号は、野獣が牙を剥いて獲物に食らい付く様に似ていた。生々しい熱と血の臭いを巻き上げ、同時に四散させる猛々しくも禍々しい獣の咆哮。
ドッゴォオンッ!
渋撥のパンチは虎宗のガードを弾き飛ばして撃破し、完全に顔面を捉えた。
虎宗の両足がぶわっと地面から浮く。長身の虎宗の身体が宙を舞う様は、誰の目にも驚愕であり、時が止まったようにすら見えた。渋撥の勝利を信じようと固く心に誓って声を張り上げた禮ですら我が目を疑った。
ズドンッ、ズシャァアッ。――虎宗は地面に叩きつけられた。
「ブハァッ!」
その拍子に口いっぱいの血を吐き出した。
虎宗の闘志は直ぐさま折れはしなかった。何度か身体を起こそうと身悶えたが、その度に意識が遠のいた。脳味噌が揺さぶられ天地の方向が分からない。手足への命令伝達が上手くゆかない。その内に、地面に仰向けに倒れた体勢でピクリとも身動きしなくなった。
それきり、遂に能登虎宗は沈黙した。
渋撥は肩を大きく上下させながら虎宗の様子を窺った。
虎宗が立ち上がろうとし倒れこむという所業を何度か繰り返したのち完全に意識を失ったことを確認すると、自分も三度目地面に両膝を突いた。
「ハアッ、ハァ……ハァッハァ……」
呼吸を整えようとしても心臓はまだ踊り狂っている。そうこうしているとまた例の喉越しの悪い異物が込み上げてきて、渋撥はベッとそれを地面に吐き捨てた。
「気分はどうや」
安心しきったような鶴榮の声が降ってきた
。渋撥が声のほうを振り仰ぐと、街灯に照らされた人影があった。目が霞んでろくに見えやしないから姿形からは鶴榮であるのか判断がつかなかったが、声は確かに彼のものだ。
「悪ゥはあれへん」
鶴榮はフッと笑みを零した。額に脂汗を浮かべながらも不貞不貞しい返事をするのが渋撥らしかった。
「真っ青なツラしてよう気張るで。オマエはほんまカッコマンや、撥」
鶴榮は渋撥の隣にしゃがみこみ、背中をパンパンッと叩いた。
渋撥と虎宗の決着が付いた頃には、すでに曜至が率いた戦いも終わっていた。菊池はガタガタの前歯を曜至によってさらにボロボロに折られ、その足元に意識転がっていた。
それから直ぐだった、遠くからサイレンが聞こえてきたのは。大人数での乱闘を見つけた通行人の誰かか、東光に占拠されていた喫茶店の店主か、通報したのであろう。
鶴榮はチッと舌打ちして渋撥に肩を貸して立ち上がらせた。
「やっぱ人目に付くトコでケンカするモンちゃうな」
「うわ、ヤベ。いま何か赤いのチラッと見えた」
「なに暢気なこと言うとんねん曜至。さっさと散らばって逃げるように指示せえ」
「駿河さん……ほんまあかん。俺まだ走れへんデス」
美作は弱々しい声を上げて鶴榮に手を伸ばした。大志朗との対戦で体力を激しく消耗していた。
しかしながら、鶴榮は応えてはくれなかった。
「知るかボケ。ほなオマエだけ捕まれ」
「薄情者ォ……ウウゥッ」
「ウオォオー! やっぱり俺の大嫌いな真っ赤な回転灯が近づいて来るゥーッ‼」
「曜至君。叫ぶ元気があるなら手ぇ貸して……」
§ § §
渋撥の自宅マンション。
近江家は親が仕事で家を空けることが多い為、いろいろと都合がよろしく、渋撥と鶴榮、禮はそちらへと移動した。
鶴榮は渋撥に肩を貸したまま、慣れた様子でリビングのドアを開けた。渋撥をリビングのソファにドサッと座らせ、照明スイッチをオンにした。
そこまでやり遂げると、腰に手を当てて「ヨシ」と一息吐いた。肩を借りて歩いたとはいえ渋撥にはしっかりと意識があるし、自宅まで辿り着けば一安心だ。
禮は渋撥の自宅を訪れるのはこれが初めてのことだった。恋人の家を訪問するなど、普通ならばドキドキソワソワするものだろうが、禮はリビングに辿り着くと気が抜けてフローリングの床にへたりこんだ。
「大丈夫か? 禮ちゃん」
鶴榮に問われ、禮はコクコクと何度も頷いた。
「安心したら力抜けた~~。ハッちゃんも鶴ちゃんもみんな捕まってしまうかと思たんやから~」
「アハハ。ワシらは慣れとるでええんや。禮ちゃん逃がすほうが心配やったで」
勝手知ったる他人の家。鶴榮は、安心したら喉が渇いた、とキッチンのほうへ消えていった。
禮は緊張感から解放されて脱力しきった。自然と鶴榮の動線を目で追い、薄暗いキッチンをぼーっと見るともなしに眺める。
どうやってあの場にいた大人数が見事に逃げ仰せたのか、よく分からない。倒れている虎宗を大志朗が助け起こしているところをチラッと目撃したから、きっと無事に逃げただろう。おそらくだが、あのふたりは自分よりもずっとああいう事態にも環境にも慣れている気がした。それこそ鶴榮のように。
「オイ」
キッチンのほうに顔を向ける禮に、渋撥が素っ気なく声をかけた。
禮が振り返ると、渋撥はソファに深く沈みこんで不機嫌な顔だった。虎宗に与えられたダメージが痛むのだろうかと、だとしたら責任を感じてしまう。禮がなんと言葉をかけたらよいのか途惑っていると、渋撥のほうから口を開いた。
「俺に何か言うことあれへんか」
「?」
禮は正直ピンと来なかった。
渋撥は、禮が困ったようにやや首を傾げたのを見て、ハアーッと盛大な溜息を吐いて天井を振り仰いだ。
「ゴメン……ね?」
禮は渋撥を少しでも元気づけたくて言葉を選んだが、渋撥はお気に召さなかったらしい。禮のほうへ引き戻した顔は、眉間に皺を寄せていた。
「何で謝んねん」
「トラちゃんが、ハッちゃんケガさしてしもたから……」
渋撥はますますブッス~と不機嫌になった。
虎宗の所業であるのに禮が責任を感じて申し訳なさそうにするのが、実に気に食わなかった。兄妹同然に育った事実は今更如何ともしがたいにしろ、一心同体でもあるまいに。
「アイツのしたことで禮が謝ンな」
「え。せやけど――……あ、うん」
禮は渋撥が不機嫌になる心理が分からず、そのご機嫌を取る上手い言葉も持ち合えなかった。困ってしまってしきりにまじろぎをし、とにかく頷くしかできなかった。
「禮はアイツに勝てるヤツなんかいてへん言うたやろ。俺はソイツに勝ったで。ほな俺に言うことあるやろ」
「あ……えと……? ……オメデト?」
言った後、禮はドキドキしながら渋撥の反応を待った。
渋撥にしても確かにそのような趣旨の言葉が欲しかったと思うのだが、実際に言葉にされる実に呆気なかった。
「あかんかった? ウチ、何か間違えた?」
禮は眉を八の字にしておろおろする。
渋撥は禮の顔を見ながら、はあーー、と大きな溜息を吐いた。
泣くし喚くし、一度は虎宗には決して勝てないとレッテルを貼られもしたが、目の前で小さくなっている姿はやはり愛らしかった。
「こっち来い」
渋撥に手招きされて、禮は膝立ちで怖ず怖ずと近づいた。
渋撥は禮が手の届く範囲にやって来ると、手を捕まえて引き寄せた。とさん、と禮は渋撥の胸の上に落ちた。渋撥は片腕で禮を掻い抱いた。
頬で密着した渋撥の身体は温かかった。分厚い胸板越しにトクン、トクンと心臓の鼓動が聞こえてきた。熱と音が、生きているのだとこれ以上ないほど分かりやすく教えてくれる。
汗と血と埃、そして煙草のニオイを嗅ぐと安心した。安心すると自然と涙が湧き上がってきてポロリと溢れた。
「トラちゃんに勝ててよかった……。ハッちゃんが……死なんでほんまよかった……」
「なに大袈裟なこと言うてんねん」
大袈裟などではない。渋撥は天より高いプライドを持つ王様だから、そのプライドが挫かれてしまえばきっと渋撥は渋撥でなくなってしまう。禮はそれを怖れた。
禮は渋撥の服を握り締め、次から次へとポロポロと大粒の涙を流した。
「また泣くんか、禮は」
渋撥は禮に泣かれるのは正直困ってしまうが、無理に涙を止めようとはしなかった。
禮が泣くのは自分の所為だと、禮を笑顔でいさせてやれないのは自分の所為だと、傍若無人な渋撥にだってそのくらいの理解力はある。だから、今はその涙を受け止めてやろうと思った。
「泣かしてしもて……スマンかったな」
渋撥は禮の額に唇をつけ、ポツリと言った。
何をしても是と崇められる王様として君臨している彼が謝罪を口にするなど滅多にない。禮の涙は王様を滅多にないことをする気分にさせた。
渋撥は禮の頬に手を添えて顔を上げさせた。涙で濡れて夜の海のように揺れる禮の瞳には自分の顔が映りこんでいた。
「これでよう分かったやろ。……俺はこういう男や。禮が何言うても、泣かれても、とまられへん。なんぼ禮に惚れとってもこればっかりはどうしようもない」
お前の為でもできないことがあると言われても、落胆はなかった。お前よりも自分の矜恃が重要だと言われても、悲しみはしなかった。
汗と血と埃、そして煙草のニオイ。そのようなもので酷く安心するのは、心の底から好きだから。どれほど自分勝手でも、どれほど突き放されても、嫌いになることなんてできやしない。
――ハッちゃんはケダモノ…………。
多分、シロちゃんが言うように、ウチらとは真逆のモノなんやと思う。トラちゃんが言うように、ウチの為には自分のプライドを捨てられへん人なんやと思う。
せやけど、ちゃんとウチに優しくしてくれるハッちゃんも知ってるよ。ウチを好きやと言うてくれるハッちゃんも知ってるよ。
ウチはハッちゃんのどこか一個だけを好きになったんとちゃう。ハッちゃんの全部が好き。
「もう知ってる……」
禮は少し震える声でポツリと言葉にした。まるで鈴の音のようなその声に、渋撥は聞き入った。
「ハッちゃんがそーゆー人やって知ってるけど、ウチはハッちゃんが好き」
禮は白い花が開くようににっこりと微笑み、渋撥の目は縫いつけられた。禮の手が手の甲にそっと触れ、その手はこの世のものとは思えないほど柔らかかった。自分でも碌なものではないと見限っている本性を知っても、離れていかずに好きだと言ってくれるのだから、本当にこの世のものではないのかもしれない。ならばしっかりと捕まえていないと儚く消えてしまう。
(クッソカワイイな!)
渋撥は衝動的に禮を両手で抱き締めた。
愛おしさが喉を突くように湧いてきて、愛おしくて愛おしくてどうしようもなくなって、考えるよりも先に身体が動いた。
禮は太い腕でギュウギュウと締めつけられ、苦しさに表情を歪めた。
「ハッちゃん痛ッ……」
「ちょお黙っとけ」
力を緩めたらこの腕をスルリと擦り抜けて消えていってしまうのだろう。さもなくば、いまだ以て憎らしいあの男に掠め取られるかもしれない。どれほど抱き締めて密着しても、思いの丈の十分の一も伝わらない気がする。
渋撥はただただ腕のなかの禮の匂いを、温度を、噛み締めた。禮の持つモノすべてを独占したい。
(クソ! クソ! カワイイカワイイカワイイ! むちゃくちゃカワイイやろが! 天使か⁉ 天使やな!)
「痛い痛い痛い! ハッちゃんほんまに痛苦しい~~っ💦」
急に息苦しさから解放されたかと思うと、禮はあれよという間にソファの上に寝かされた。抵抗する間もなく渋撥が上にどさっと覆い被さってきた。
「え? なに?」
禮が尋ねても渋撥からの返答はなかった。
渋撥は素早く羽織っていたシャツとTシャツを脱ぎ捨てた。渋撥の目がギロリと光り、此処まで来れば、世情に疎い禮でも渋撥が何をしようとしているか流石に分かる。
禮は顔を真っ赤にして渋撥の胸板に腕を突っ張った。
「急に何すんの⁉ やだやだやだッ」
「なるべく痛ないようにしたるさかい――」
バキィッ! ――渋撥の後頭部に鉄槌が下された。
鶴榮の本気の拳骨だった。飲み物を取ってキッチンから戻ってきたら、か弱い少女が組み敷かれて悲鳴を上げているのだから咄嗟に手も出る。
「ケンカのあとで昂ぶっとるからてがっつきよって」
「鶴ちゃん助けて~~っ」
禮は涙目になって鶴榮に助けを求めた。渋撥が本気になったら禮ひとりではどうしようもない。
渋撥はガバッと頭を上げて鶴榮を睨んだ。
「邪魔すんな!」
「せめてワシがおらんトコで盛れーー!」
「オマエが勝手に俺んちにおるんやろがッ!」
「クッソ重たいのにここまで運んだったのはワシやぞ! 性欲強すぎて死ね、この恩知らずッ💢」
§ § §
――と、まあ、このふたりの間にはこのようなことがありました。
ハッちゃんはこの後しばらく、あの脱走した病院に通う羽目になったし、トラちゃんもハッちゃんに殴られた顎にヒビ入ってて、安静にしとかなあかんかったし。ついでに言えば、トラちゃん受験生やのに顎が痛くてよう勉強でけへん言うてた。つまり、ふたりの因縁はケンカが終わった後にも尾を引いてたワケ。
……そりゃあもう仲良うしてね、言うほうが無理やよ。
渋撥と虎宗は互いに銅像のように微動だにせず真正面から睨み合っていた。誰かが停めに入らねば掴み合いの喧嘩になるまでやめないだろう。どちらも仇敵と対峙して自分から折れるような性分ではない。
禮はソファの上で両膝を抱えてふたりを観察していたが、あまりに変化がないので、はあ、と嘆息を漏らした。
「……ねえ。ずぅっとそんなして睨み合ってんの、疲れへん?」
「べつに」
渋撥と虎宗は意図的ではなかったがまったく同じ単語をチョイスし、同じタイミングで口にしてしまったことを苦々しく思い「チイッ!」と盛大に舌打ちをした。
その舌打ちがまた同時だったから、禮はぷふっと噴き出した。
「何や、禮」
「禮ちゃん?」
ふたりはほぼ同時に禮のほうへ顔を向けた。互いに面白くなさそうに横目に相手を見る。
「あははっ。ハッちゃんとトラちゃん、おんなしや。性格ぜんぜんちゃうのに変なの」
「似てへん!」
ふたりはまた同時に声が揃ってしまった。それを見て禮は無邪気にコロコロと笑うから、ふたりはすっかり毒気を抜かれてしまった。
熒閂の最新話はクロスフォリオにて先行公開( https://xfolio.jp/portfolio/ke1sen/series/1023833 )
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