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第十六話 集結ーエヴォル陣営ー
しおりを挟む夜も更け始め、ツインベッドが並んでもまだかなりの余裕がある広めの部屋で四人の男女が思い思いに過ごしていた。
ビーは目をつむったまま椅子に寄りかかり、フィーはベッドに腰をかけ、リアに膝枕をしながら隣に座るシアとともにリアを手慰みにしていた。
そのリアは撫でられたり顔をモニモニされたりともみくちゃにされ、ウーウー唸っていた。
そんなゆったりとした空気の中、突然扉の前が黒くモヤがかかった。
そうなることがわかりきっていたように室内の誰もが過ごし続け、そのモヤが晴れるとそこにはブラックと少女を抱えたダース、疲れ切っているワーシャの三人が立っていた。
三人が出揃うと、ビーは待ってましたと言わんばかりに話しかけた。
「やっと来たか」
「待たせて悪い。それとフィー、俺たちの回収指示助かった」
「いえ」
フィーはリアの顔を弄くるのを止めて、首を横に振った。
「他のみなさんが思ったより早めに集合してくださいましたし、ダースさんたちもかなり早めに到着したので、ちょうどいいと思いまして」
「いつも助かってる」
ダースは軽く目配せしながらフィーに感謝した。
そのまま抱えていた少女を少しだけ持ち上げ、アピールした。
「とりあえずこの子を横にさせたい」
「それならそのベッドに寝かせてあげてください。まだ誰も使ってないので」
フィーに促され、ダースが少女をベッドへ横にさせようとしていると、疲れが決壊したのか、ワーシャがわめき始めた。
「もう疲れたぁ…あ!リアがフィーに膝枕してもらってる!」
「むむ!たとえワーシャの頼みでもここは渡さないよ!」
うめき声を出しながら顔を上げると、リアがフィーに膝枕をしてもらっているのに気づいてしまった。
それを指摘されたリアが退かされないようにフィーの腰に寝たまま力強く抱きついた。
その様子を眺めていたフィーは嬉しそうにリアの頭を撫でた。
「ぐぬぬ…だがあたしには!とう!」
その光景を見て、心底羨ましく感じたワーシャは最後の手段と飛び上がった。
愛しの名前を叫びながら。だが。
「シアちゃぁぁぁぁぁああああ"!?」
ワーシャの想い虚しく、シアからは全身氷漬けという形で返された。
ゴトリと虚しい音を立てながら氷漬けワーシャは飛び上がった体制のまま着地した。
「油断も隙きもありませんね…」
少女をベッドに寝かせていたダースが呆れながらワーシャを見下ろしているシアに苦笑し、擁護した。
「悪いんだが今日に関しては許してやってくれないか?かなり疲弊してるんだ」
「…」
それを聞いたシアは一度だけワーシャのほうを見て、すぐに顔ごと反らした。
次の瞬間にはワーシャの氷が消え、氷の分だけ浮いていたワーシャがべシャリと床に叩きつけられた。
「うぎゅ!?…うぅ…シアちゃんに拒絶された…ん?」
べそべそと泣くワーシャがふと顔を上げると、不自然なスペースを横に空けてベッドの端に座り直したシアに気づいた。
その光景に頭が追いつかず、ワーシャがキョトンとしていると、顔を反らせたまま、シアが話しかけた。
「…しないんですか?しないならフィーさんの召喚獣でも乗せちゃいますよ」
いつの間に捕まえたのか、シアの手にはフィーの召喚獣が持ち上げられていた。
自分のためにシアがスペースを開けてくれていることにようやく気づいたワーシャはダバダバと感涙した。
「!!!???シアたぁん…」
「んぅ…!?」
音よりも速く、シアの認識スピードよりも速く膝枕のベストポジションで横になったワーシャに驚いて、変な声を出してしまったシアは急に恥ずかしくなり、それを隠すように持っていたフィーの召喚獣をワーシャの顔に落とした。
「むぐ」
言葉にならない声を上げて、召喚獣を顔で受け止めたワーシャを横目にブラックが切り出した。
「ところでここをまばらに取り囲んでる連中はなんなんだ?」
「あー…それならたぶん俺たちが原因だな。そこんとこはあとで詳しく話すよ」
ブラックが察知した周囲の状況に、ビーは少し言いづらそうに説明した。
だがこの説明に違和感を感じたリアが指摘した。
「俺たちって…100%ビーさんが悪い話じゃないですか」
「…んじゃ早速だが、招集をかけた理由はその子か?」
「あっごまかした」
話題を反らすように話し始めたビーにため息をつきながら、ダースは本題に移った。
「それもあるが、まずは情報共有からしておこうと思ってな。時系列で考えるなら最初はフィーたちからお願いしたい」
「そうですね。ではこの土地で確認した現状の情勢からお話しましょう」
リアに膝枕をしたまま、フィーは報告し始めた。
「ここ、ヴァルキュアは完全独立国家…というよりも大陸そのもので国を形成している場所になります」
「てことは周辺国がないってこと?」
これまた膝枕をされたまま、ワーシャは気になることを聞いた。
その様子を気にすることもなくフィーは答えた。
「そういうことになりますね。なので今回は他国からの襲撃による可能性はかなり低いと見ていいでしょう」
ダースはフィーの言い方に引っかかりを覚え、たずねた。
「…その口ぶりだとまだ?」
「…はい。『ワールドイーター』の反応はたしかに感じるんですがはっきりしなくて」
そうフィーが言うとほんの少しだけその場の空気が重くなった。
それを打破したのはまたもや膝枕をされたままのリアだった。
「焦ってもしょうがないよ!現れるまでにしっかり準備すればいいんだし!」
「リアちゃん…そうですね。ありがとうございます」
自分の膝の上からそう励まされたフィーは、嬉しそうにリアのおでこをなでて応えた。
思考を切り替え、フィーは続けた。
「国内情勢はすこぶる良好なうえ、今の国家に対しての良くない感情は住民から感じられませんでした。問題らしい問題としては今がいい状況だからこそ起こる、より一層の向上志向といったものぐらいですね」
「住民の悪感情も特になしですか」
そう言いながらシアがため息をついた。
「私からは以上です。続きはブラックから」
「俺からはモンスの話だ」
フィーから継いだブラックが報告を始めた。
「出動までの前情報でモンス、この地域では魔物と呼ばれる存在の生息情報は確かにあったが、この地域周辺には大きな反応は感知できなかった」
「街道近辺でもそれらしい反応はなかったが、すでに殲滅が完了してるってことか?」
ダースが城に行くまでの道中を思い出しながら聞いた。
それに対してブラックは首を横に振った。
「いやそうじゃない。あくまで大きな反応がないだけで小さな反応はいくつか感知できている。ただワールドイーターになり得る存在は事前に処理されているか、そもそも存在しないと見て問題ないだろう」
「かなり厳しく統制されてるみたいねー」
「文明レベルも見た目以上に進んでますしね」
ワーシャやフィーの言葉通り、このヴァルキュアは発展していた。
ビーもそれに同調した。
「石造りの建築様式なのに、建物内はかなりのハイテクノロジーと来たもんだ」
「今思えば試合会場もすごかったけど、この宿もすごいよねー。空調完備でいつでも使える湯船と水洗トイレも各部屋に有るし」
リアが居心地良さそうに感想を言った。
話が逸れ始めたことを感じたブラックが話題を切った。
「話を戻すぞ。周辺状況の報告は以上。他に言えることはモンスの状況から見ても現状でワールドイーターの原因ははっきりしていないということだ」
ブラックの報告が終わるとダースが上を仰ぎながらボソリとつぶやいた。
「こうなるとだいぶ候補が減ってきたな…」
「じゃあ次は騎士杯組だな」
意気揚々と前のめりになりながらビーが話し始めた。
「俺からは二つ報告がある。一つはこの世界での能力の仕組み。もう一つは…」
指を一本ずつ挙げて、報告の概要を話すビーは二つ目の報告を溜めて言った。
「キーマンの可能性がある人物についてだ」
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