龍×龍

結城 凛月ーきじょう りつきー

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転入

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ピピッ ピピッ ピピッ...ガシャン!
「...ん、ふぁぁ」
手が痛い。あ、まさかこれ時計壊しちゃった感じか。
これで何台目だろう。もう目覚まし時計買うのやめようかな。
まだ7時、なら平気だよね。
よくある朝の一連の動作を行い、めんどくさくなって昨日の夜の残りを朝ごはんとして食べる。
よし、今日くらい余裕を持って出よう。
真新しい制服を身につけ、とりあえず髪を結った。
今日は転入初日だ。
やっぱり黒髪は慣れないなぁ。いくらスプレーでも。
まあ、自業自得だから仕方ない。
家を出るとお天道様がキラキラ光ってる。
ねえ、ちょっと眩しすぎるよ。暑い。
もう10月なのに。
そういや、こっちの地域に来たのいつぶりだろう。もう5年ぶりとかになるのかな?
せっかく早く家を出たのに、ゆったり歩いてきたもんだから、あまりにも時間がかかってしまった。学校についた只今の時刻、9時20分です。
そりゃそうだよね、普通は電車で通う道なのに歩いてきたんだから。余裕を持っていた自分はどこに行ったんだろう。
遅刻確定。諦めてのんびり行くことにする。
あれ、どこ行けばいいんだっけ。
理事長室?職員室?いやいや、ここはどこ?
「おい。お前、誰の女だ?」
「...」
「お前だよ、黒髪でおさげの変な女!」
「あたし?」
「お前しかいねーだろ」
校内に入ったらたくさんの視線を感じた。嫌な気分になりながらも歩いていると突然話しかけられた。
おお、こいつ金髪だ。
待って身長高いよこいつ。見上げるしかない。
「なにか用?」
「だから、誰の女だよっつってんの。この学校で黒髪の奴なんて初めて見たぞ?」
「は?」
「チッ、話が通じねぇな。つーかてめぇなんでこんなところにいやがる」
何言ってるのかさっぱりだ。誰の女ってなに?ていうか、黒髪を初めて見たってどういうこと?
「黒髪って、だめなの?」
「そういうわけじゃねぇよ。...お前、ここに来たの初めてか?」
「あ、うん。あたし、転校生」
「転校生だぁ?だから見たことなかったのか。あー、じゃあ理事長室まで連れてってやる。ついてこい」
あれ、こいつ意外と優しい?
髪は金色で、身長は180cm越えてるっぽいし、口調も荒いから最初はどんなやつかと思ったけどいい奴そう。
「ねえ、名前なんていうの?」
「響。お前は?」
キョウと話しながら歩く。あたしの歩幅に合わせてくれてるみたい。
優しいなぁ。あ、でも照れ屋さんかも。
「妃葵。ありがとう、キョウ」
「あ?気にすんな」
キョウは、なんだかツンデレっぽい。
口調悪いけどそっぽ向いてるし、横顔赤い。
「ふふっ。キョウは、何年生?」
「2年。俺に関わるといい事ねぇから、あんまり踏み込まねぇ方がお前のためだぞ」
「え?」
「...俺は暴走族なんだよ。俺が周りを見渡せば、みんな視線逸らすだろ?」
そういえば、あたしひとりのときは変なものを見るような視線だったのに、今は視線の種類が変わった。男達からは羨望の視線か、恐怖心を含んだ視線を感じる。女達からは嫉妬の視線。キョウが見渡したときは甲高い声も聞こえた。
男女関係なく中には怖がってる人もいるみたい。
もしかしてキョウの入ってる暴走族は、学校まとめたりしてるのかな?
「じゃあ結構強いんだね」
「あぁ、ってそうじゃねえ。なんでお前、そんなに普通にしてられんだ。俺が怖くねぇのか?」
「怖い?何が?」
よっぽどあいつらとか、あの人たちの方が怖い。たかが金髪、眉間にシワくらいじゃどうってことない。
「...お前天然かよ」
「いや、全然」
「お前みたいなやつ、珍しいな」
「んー、逆に聞くよ?キョウのどこが怖いの?」
「俺に聞かれても困るけどよぉ...」
「でしょ?ほら、怖くないんだよ」
無理やり押し通そう。
この学校の偏差値低かったし、行けるでしょ。とかなんとか言っちゃって。あれ?偏差値といえば、編入試験受けてないような...いや、絶対受けてない。なんで入れたんだろう。また謎が生まれた。
「あーもういいや、お前普通じゃねぇな」
「なにそれ、ちょー失礼」
普通じゃないって、なんで。あたし今回は普通だよね?
髪だって真っ黒だし、スカートだって膝丈だし、着崩してすらいないよ?何が普通じゃないんだろうか。
「普通の女は怯えるか媚びる。何なんだよお前」
「え、それ聞かれても困る。むしろ怯えたり、媚びたりして欲しかったの?」
「んなわけねーだろ。もううんざりなんだよそーいうの」
「ならいいじゃん。そんなに気にしないでよ」
「...はぁ。もういいよそれで」
なんかこれじゃ、あたしが悪いみたい。
なんでだろう。あたしってそんなに変なのかな?
昔から変な奴だ、とは言われ続けてきたけど。
そんな自覚あるわけない。自分ではまともだと思うんだけどな。
「理事長室ついたぞ」
「あ、ほんとだ。キョウ、ありがとね」
「あぁ。その、なんだ。お前が俺のせいで目ぇつけられたかも知んねぇからよ、だから、えっと」
「LINEでいい?」
「...あぁ。さんきゅ」
ほんとに優しいな。でもツンデレ。
見た目と中身が反比例状態だよこれ。
「この高校の知り合いキョウしかいないみたい。なんか聞きたいこととかあったら連絡してもいい?」
「おう、お前何年だ?」
「1年。キョウとは、教室がある階違うね」
「1年?見えねぇな」
「そ?じゃあそろそろ行くよ。ありがとう。バイバイ」
「あぁ、じゃあな」
今更だけどキョウは容姿が整ってた。あーいう顔は強面系っていうのかな。
本当はキョウが喧嘩ふっかけてくるような奴だったらどうしようかと思ってた。
最初から問題起こすわけにはいかないし、何のためにこんなダサい格好してると思ってんだよ、ってなる。
初めて話したのがキョウでよかった。
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