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たまり場
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その後コンビニに寄って飲み物やお菓子をたくさん買ってもらった。
まーくんがお酒を買わないから、意外と言ったら車で帰るんだよバカ、と頭を叩かれた。よくよく考えたらそりゃそうだと思って適当に謝っといた。
「あれ、どこだっけ。ここらだよな?」
「この道まっすぐだよ」
「あれか、あのデッケェ倉庫。つーかお前、ここまでバイクで来ようとしてたのか?」
「うん、よく考えたら結構距離あるね」
「なにを他人事みてぇに...」
車でかなりの時間かかった。
やっぱり学校違うとたまり場も離れる。
呑気にそんなことを考えていると車はいつの間にか止まっていて。
「悪ぃ、ちょっと電話する。部屋どこ?」
「二階のいちばん奥」
「さんきゅ、後から行くわ」
頷きながら車を降りる。
少し歩いたところであっ、と思って後ろを振り向いて窓ガラス越しに中を見たが、もう電話しているらしく何やら話し込んでいる。
いいや、まーくんに持ってきてもらおう。
飲み物とお菓子はまーくんに託すことにした。
倉庫の正面から前通ってたように普通に入ると下っ端たちの視線を感じる。
あ、あのバイクあれじゃ永遠に治んない。ちゃんと全部部品外して磨いてから組み合わせないといけないのに。あっちのバイクもダメだ。もっと頑丈にしないと外れちゃう。
周りを見渡しながらそんなことを考えていると目の前にはスキンヘッドの下っ端。目の前に立たれたら止まるしかなくて。
「...なに?」
「何じゃねー、お前誰だよ」
「今の子はそんなに楯突くんだ?」
「は?何の話だ。勝手に入ってんじゃねーよ」
うん、やっぱりあたしのことわかんないか。
でもまあよかったのは、敵だと思ってくれたことだ。これであたしが女だからって変なことしようとしたら一発...いや、三発は殴ってたね。
そこだけはきちんと空たちが言いつけているらしい。
「ねえ、幹部のみんなは?」
「お前に関係ねぇだろ」
「呼んできてくれない?」
「誰だかわかんねぇお前の為に呼ぶわけねぇだろ」
「なら道開けて。自分で行くから」
「それも無理。上に行かせるわけにはいかねぇ」
あんまり喧嘩したくないんだけど。
この様子じゃあたしが総長って言っても信じてくれなさそう。周りはあたしらを囲んでニヤニヤしながら見てる。あれ、あたしが知ってる人ひとりもいない。だからこんなことになってるのか。
幹部は上にいるだろうし、ここにいないってことはあたしが知ってるメンバーは下にある部屋で賭け事やってそう。ゲーム好きだからなぁ。
「みんな何してるの?」
「カナデさん!この女どうしましょう?なんか幹部の皆さんを呼べって言ってて」
ふと上から声が掛かり見上げれば奏の姿。
幹部室から出ていたらしく、階段の上からこちらを見ている。喧嘩するの楽しいけど自分のチームのメンバーは嫌だから奏気づいてくれないかな。
そんなことを思っているとあたしに気づいたらしく目を見開いている。微かに笑いながらそっと小さく手を振るとちょっと顔を赤くさせる。そこら辺の女よりよっぽど可愛い。奏は黒髪で可愛らしい容姿をしている。身長も170cmなくて、口調も優しいから一見あんまり喧嘩できるようには見えない。
「その場にいて」
「は、はい」
顔を赤くさせていたのも束の間、いつもより低い声を出して急いで階段を降りてくる。
幹部ってだけあってかなりまとめる力はあるらしい、周りの下っ端たちが誰1人として動かなくなった。
奏が通ろうとするとみんな左右に分かれ、道を作っていておお、とその場の空気に似合わないようなことを考える。
久しぶりに見る奏の姿をじっと見ていると、その視線に気づいてない奏が少し離れた所から声を上げる。
「ヨシ、邪魔。ちょっと退いて」
あたしの目の前にいたスキンヘッドがひっ、と言いながら退く。
ああ、そっか。魁皇では一ヶ月に一回、上下関係なくチーム内でのバトルが行われる。そこで奏の強さを見たってところかな。
奏の喧嘩の動きを思い出しながら、身体を少し動かして奏の方を向けば奏が小走りで近付いてくる。
「ひなたぁ!」
「う、わっ」
その勢いのまま抱きつかれ、地面に倒れ込む。傍から見たらまるで押し倒されてるかのような状態だ。
「なんでここにいるの?いつ来たの?コイツらに何もされてない?大丈夫?あーもうほんと可愛い。妃葵不足すぎて俺もうやばい。大好きすぎておかしくなりそう」
「大丈夫だよ、ありがと。とりあえず退こっか」
頻繁に会ってればこんなことはないんだけど、久しぶり会うと何故かいつも出会い頭にマシンガントークをかましてくる。もう慣れたからスルーしちゃうけど。
マシンガントークはともかく、奏みたいにこんな可愛い顔で大好きとか言われるとやっぱり嬉しい。そう思ってるといつの間にか奏の頭を撫でていたみたいで奏が擦り寄ってくる。
まーくんがお酒を買わないから、意外と言ったら車で帰るんだよバカ、と頭を叩かれた。よくよく考えたらそりゃそうだと思って適当に謝っといた。
「あれ、どこだっけ。ここらだよな?」
「この道まっすぐだよ」
「あれか、あのデッケェ倉庫。つーかお前、ここまでバイクで来ようとしてたのか?」
「うん、よく考えたら結構距離あるね」
「なにを他人事みてぇに...」
車でかなりの時間かかった。
やっぱり学校違うとたまり場も離れる。
呑気にそんなことを考えていると車はいつの間にか止まっていて。
「悪ぃ、ちょっと電話する。部屋どこ?」
「二階のいちばん奥」
「さんきゅ、後から行くわ」
頷きながら車を降りる。
少し歩いたところであっ、と思って後ろを振り向いて窓ガラス越しに中を見たが、もう電話しているらしく何やら話し込んでいる。
いいや、まーくんに持ってきてもらおう。
飲み物とお菓子はまーくんに託すことにした。
倉庫の正面から前通ってたように普通に入ると下っ端たちの視線を感じる。
あ、あのバイクあれじゃ永遠に治んない。ちゃんと全部部品外して磨いてから組み合わせないといけないのに。あっちのバイクもダメだ。もっと頑丈にしないと外れちゃう。
周りを見渡しながらそんなことを考えていると目の前にはスキンヘッドの下っ端。目の前に立たれたら止まるしかなくて。
「...なに?」
「何じゃねー、お前誰だよ」
「今の子はそんなに楯突くんだ?」
「は?何の話だ。勝手に入ってんじゃねーよ」
うん、やっぱりあたしのことわかんないか。
でもまあよかったのは、敵だと思ってくれたことだ。これであたしが女だからって変なことしようとしたら一発...いや、三発は殴ってたね。
そこだけはきちんと空たちが言いつけているらしい。
「ねえ、幹部のみんなは?」
「お前に関係ねぇだろ」
「呼んできてくれない?」
「誰だかわかんねぇお前の為に呼ぶわけねぇだろ」
「なら道開けて。自分で行くから」
「それも無理。上に行かせるわけにはいかねぇ」
あんまり喧嘩したくないんだけど。
この様子じゃあたしが総長って言っても信じてくれなさそう。周りはあたしらを囲んでニヤニヤしながら見てる。あれ、あたしが知ってる人ひとりもいない。だからこんなことになってるのか。
幹部は上にいるだろうし、ここにいないってことはあたしが知ってるメンバーは下にある部屋で賭け事やってそう。ゲーム好きだからなぁ。
「みんな何してるの?」
「カナデさん!この女どうしましょう?なんか幹部の皆さんを呼べって言ってて」
ふと上から声が掛かり見上げれば奏の姿。
幹部室から出ていたらしく、階段の上からこちらを見ている。喧嘩するの楽しいけど自分のチームのメンバーは嫌だから奏気づいてくれないかな。
そんなことを思っているとあたしに気づいたらしく目を見開いている。微かに笑いながらそっと小さく手を振るとちょっと顔を赤くさせる。そこら辺の女よりよっぽど可愛い。奏は黒髪で可愛らしい容姿をしている。身長も170cmなくて、口調も優しいから一見あんまり喧嘩できるようには見えない。
「その場にいて」
「は、はい」
顔を赤くさせていたのも束の間、いつもより低い声を出して急いで階段を降りてくる。
幹部ってだけあってかなりまとめる力はあるらしい、周りの下っ端たちが誰1人として動かなくなった。
奏が通ろうとするとみんな左右に分かれ、道を作っていておお、とその場の空気に似合わないようなことを考える。
久しぶりに見る奏の姿をじっと見ていると、その視線に気づいてない奏が少し離れた所から声を上げる。
「ヨシ、邪魔。ちょっと退いて」
あたしの目の前にいたスキンヘッドがひっ、と言いながら退く。
ああ、そっか。魁皇では一ヶ月に一回、上下関係なくチーム内でのバトルが行われる。そこで奏の強さを見たってところかな。
奏の喧嘩の動きを思い出しながら、身体を少し動かして奏の方を向けば奏が小走りで近付いてくる。
「ひなたぁ!」
「う、わっ」
その勢いのまま抱きつかれ、地面に倒れ込む。傍から見たらまるで押し倒されてるかのような状態だ。
「なんでここにいるの?いつ来たの?コイツらに何もされてない?大丈夫?あーもうほんと可愛い。妃葵不足すぎて俺もうやばい。大好きすぎておかしくなりそう」
「大丈夫だよ、ありがと。とりあえず退こっか」
頻繁に会ってればこんなことはないんだけど、久しぶり会うと何故かいつも出会い頭にマシンガントークをかましてくる。もう慣れたからスルーしちゃうけど。
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