硝煙にキスを

罪架風理。

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 村に着いて確認してみたところ、教団が占領しているところに食い込むように軍隊が進行しているようだ。私たちは村の郊外、高台にある鉄塔の下の小屋をポイントにして行動を開始する。
「……見付けた。教団の捕虜になっているみたいね」
 スコープ越しに見る限りでは民間人らしい人物が一人いる。あとは研究員だろう。
「機材の使い方は大丈夫?」
「ええ、これくらいは研究機材と比べたら」
 エリート坊っちゃんにはおもちゃだったか。
「時間を合わせて。現在二三時一七分。三〇分までに中央の教会に到着する。道案内と敵の警戒よろしく。あと、通信が長くなるから敬語はいらない」
「分かりま……分かった。アンリを、頼んだ」
「……一応渡しておく。自分の身は自分で守りな。でもできるだけ逃げること。祈る相手はもう腐っているんだから」
 トランクから手頃な拳銃を取り出しスコットに渡しておく。私の使い慣れている拳銃だ。
 ―さて、始めよう。
 
 村はそこまで大きくない。さすが辺境の村。見た限りでは製炭業や農業を主にしていたようだ。レトロマニアには良いかもしれない。
『リズィーさ……あ、すみません』
「謝罪のために通信してくるなんて、よほどお喋りが好きなのね」
『いえ、すみ、ごめん。えーと、この先道なりに行くと巡回中の教団兵にぶつかる。迂回する手もあるけど、そこで右に行って突き当たりにある家を二階に上がって屋根を行った方が最短ルートに戻れる』
 廃村であることは理解しているみたいね。屋根の上は人目に着きやすい。猫になれと言うのか。
 屋根に上がって状況確認。銃撃戦を繰り広げているお祭り会場は少し先か。そのまま均衡状態を保ってくれたら楽だ。
 ―どこからか、低い唸り声が聴こえた。走る私の足元が突然崩れたので即座に下へ飛び降り、廃墟を見上げる。そこには気味の悪い異形……腐れ神だ。
『リズィー、腐れ神がいる!』
 もう少し早く言って欲しいんだけど。
「顔色が悪いわね。落ちている物でも食べた?」
「敵だ! 腐れ神様もいるぞ!」
 私がホルスターに手を伸ばしたと同時か、崩壊音を聞き付けてか巡回していた二人の教団兵が現れ、銃を乱射しながら突っ込んできた。
「手厚い歓迎ね」
 飛び降りてくる腐れ神をかわして即座。抜いた拳銃を腹に捩じ込み引き金を三回引いた。―教団兵の方へ吹っ飛んだ腐れ神が、取り込んでいた御神体を破壊されて掻き消える。
 教団兵が驚いている隙にさらに踏み込んで、すぐに銃を構えた一人に飛び蹴り、着地様もう一人を射撃し、蹴り倒した奴も撃ち殺した。
『軍の分隊がそちらに向かっている。回り込んで叩くのかもしれない』
「ガチンコ勝負に飽きたか」
 道を急いだ。教団が軍隊に気を取られているおかげで、教会に辿り着くことは難しくなかった。この廃教会、村の割にはまるで屋敷のように広い建物だ。
『リズィー、教団兵側のバリケードが突破された。教会に下がろうとしている!』
「ちっ、もうちょっと根性出したらどうなの信者ども」
『――ごめん、こっちに教団兵が来た。離脱するっ』
 スコットの通信が途切れた。目的地に着いたわけだし、さっさと逃げてくれると助かる。
 軍が教会にまで来てしまうと面倒だ。おっぱめるか。
「派手に行こうじゃないの」
 ゴーグルを掛けて、グレネードをなかに放り込み爆破。立ち込める粉塵のなかに飛び込むと困惑する教団兵を撃ち倒した。掃射してくる教団兵に、私は近くにいた教団兵をいなし壁にして防ぐ。落ちていた小銃を拾いプレゼントのお返しをしてやった。
 粉塵を抜けて中央、礼拝堂へ向かう。帝都軍と教団兵の入り交じるなかで何度引き金を弾いたのだろうか。親玉が近いおかげで腐れ神も度々出てくる。素人目でも分かるくらいに、礼拝堂に目的の腐れ神が閉じ籠っているのは明らかだった。さっさと封殺してとっとと村からずらかろう。
 礼拝堂の前に立つ教団兵を撃ち殺し、扉を蹴り開けた。なかにいたのは、歪んだ女神の顔で悲鳴を上げている腐れ神。歪みつつも神の形を取ろうとしているのは、自分が偉大な神であることを知っている証拠。腐ってもなお神として人の上に立とうとする未練だ。
「今日は奢ってあげるわ。たくさんね」
 腐れ神に小瓶を投げ付ける。中身は腐れ神の動きを鈍らせる、人間の血清だ。高価な瓶だけど、おっさんからたくさんかっさらって来たから大奮発でき――
「――!」
 すぐさま身を退く。すると何かが霞めて近くの椅子を撃ち抜いた。狙撃だ。狙撃銃を扱うのは軍隊のはず。
「――まてぃ!」
 暴れ出した腐れ神と対峙している最中、扉をくぐって現れたのは過激派宗教団体の司祭と教団兵二人、そして……アンリだ。彼女だけ連れてこられたらしい。
「貴様何奴だ! 我らが神へ手を出すなど言語道――」
 容赦なく駆け込み撃ち抜く。アンリを抱えて長椅子の隙間に飛び込むと、暴れた腐れ神により教団兵二人は潰された。
「立てる?」
「え、ええ……でも、私は逃げるわけには……」
「スコットが待っているわ」
「スコットが……?」
 守りながら狭いところで戦うのは難しい。外に出た方がいい。しかし連れて飛び出すと、アンリは私の手を振り払った。
「ごめんなさい、私、逃げるわけにいかないんです」
 アンリがそう呟いて礼拝堂へ走り出すと、入り口をぶち破ってきた腐れ神に捕まって引き込まれていった。咀嚼音が鳥肌を立たせる。
「悪食ね。最後の晩餐はそれでいい?」
『――リズィー。お待たせ』
「……スコット」
『そこを動かないでくれ。動く的は撃ちにくい』
 静かに、射殺すような声。私はため息で返事をした。
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