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第1章 日本
06. 予期せぬ好機
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『スナック しおり』
こぢんまりとした下町の商店街。
このメイン通りを横道に入った奥、様々な居酒屋やスナックが軒を連ねる一角にその店はあった。
夜になれば提灯やネオンで照らされた路地裏はしっとりと艶をおび、様々な愛憎劇、悲喜交々が染み付いた横町一帯を、そこはかとない哀愁が優しく包み込む。
太陽がちょうど真上に位置した今はまだ、その様相はなりを隠し息を潜めて静かに時を待っているようだ。
扉の上部に付いたベルが、カランカランと勢いよく音を鳴らす。
晶馬が店内へ入ると、中から滋味のある優しげな声が聞こえてくる。
「あらあら、暑かったでしょう。ささっ、中に入って涼んでちょうだい。」
目尻にシワを寄せ穏やかに微笑む女性。
包み込むような、暖かさのある柔和な物腰は来るものに安心感を与える。
一見、晶馬とは対照的な印象を持つが、その色っぽく垂れた目元は晶馬とよく似ており、成熟した大人の色気を放っていた。
おそらくこの人が、晶馬の母親だろう。
見当を付けた灯雪は、軽く頭を下げる。
「お邪魔します。」
そこは一応育ちの良い灯雪。
両親からは、挨拶なんて所詮形式だが、しないと後々面倒だと教えられている。
とはいえ、これから食べ物を与えてくれるお方に、感謝せずにはいられない。
「今日はお招きありがとうございます。晶馬くんの友達の赤築灯雪と言います。」
基本的に餌付けしてくれる人を疑わない灯雪は、親愛を込めて挨拶する。
しかし予想に反して、晶馬の母親はキョトンとした顔をして灯雪を見ていた。
何か場違いなことをしたのだろうか。
ジッと顔を見つめられ、居心地わるい灯雪はたまらず声を掛ける。
「あの・・・」
しかしその言葉は、突如破顔した晶馬の母親に遮られる。
「・・っ、ふふ、あははははっ・・・・」
いきなり笑い出した晶馬の母親に、訳も分からず今度は灯雪がキョトンとする番だった。
「アニキ・・、今の顔すげぇ可愛い」
耳元で低音ボイスを囁く晶馬に、内心「は?」と思いつつも、今は目の前で腹を抱えて笑う女性に意識を持っていかれている灯雪。
なかなか笑いが治らない様子の母親に、晶馬が痺れを切らした。
「はぁ~・・、お袋いい加減にしろよ。アニキが困ってるだろ?」
「くくっ・・、ごめんごめん。あんたのお友達に、まさかこんな礼儀正しい子がいるなんておかしくてっ・・・ふふふっ」
ようやく落ち着いて来た様子の母親は、軽く息子をディスりながら指先で目元の涙を拭う。
「当たり前だろっ。アニキをそんじょそこらの奴らと一緒にするんじゃねぇよ。」
「はいはい、あんたとは全くの別格って事は分かったわよ。」
どうやら晶馬の友達というだけで、信用度は低いようだ。
一体何をしたのか・・・。
軽口を叩き合う2人を見て、自分の家とはまた違った、仲の良い親子の姿に灯雪は自然と微笑んでいた。
「クッソ可愛いな・・・くっちまいてぇ」
灯雪を見た晶馬が、何やらボソボソと呟いている。
「灯雪くん。見ての通りウチは古びた場末のスナックで、大したおもてなしも出来ないけれど、今日はオバちゃんが得意料理を腕に縒をかけて作ったから、いっぱい食べていってね。」
促されて向かった、ローテーブルの上には、たくさんの料理が並んでいた。
「うまそ~・・・」
思わず生唾を吞み込む灯雪の姿に、親子は目を細めた。
「昔ながらの田舎料理だから、灯雪くんのお家の料理とは似ても似つかないだろうけれど。」
「そんな事ないです。俺、こういう家庭料理が一番好きなんです。」
現に、灯雪は家政婦のトメさんが作る、和食を中心とした家庭料理が大のお気に入りである。
「そお?ふふ・・じゃあ沢山作ったから、遠慮しないでね。」
目の前には、カレイの煮付け、海老と野菜の天ぷら、ピーマンの肉詰め、手毬寿司、いわしのつみれ汁、肉じゃが、茄子のお浸し、いんげんの胡麻和えといった、手の込んだ美味しそうな料理が並ぶ。
ご馳走を前にした灯雪に遠慮はない。
「いただきます!」
目をらんらんと輝かせながら箸を掴んだ灯雪は、いざ食わんっとして天ぷらに手を伸ばす。
その時、突然ドアベルがけたたましく鳴った。
「大変よっ!バーのマスターと奥さんがボトル投げ合って喧嘩してるわ!!」
勢いよく店に入って来たのは、豊満な胸をこれでもかと強調した、ボディコンスタイルのグラマラス美女だ。
「まぁまぁ大変!すぐに止めに行かなくちゃ。晶馬っ行くわよ!」
晶馬の母親は慌てた様子で、駆け出そうとする。
「はぁ~?そんなのほっとけよ。夫婦喧嘩は犬もくわねぇって言うだろ?」
灯雪と同じソファーに座り、背もたれに腕を掛けて鷹揚に構える晶馬は呑気に答えた。
出鼻を挫かれた母親は、こりゃ動く気ないなと見切った様子で晶馬の説得にかかる。
「あの夫婦は加減っていうものを知らないの。普段はこっちが恥ずかしいくらいに仲が良いのだけど、喧嘩となると流血沙汰で救急車を呼んだ事も1度や2度じゃないのよ?!大怪我する前に2人を止めないと大変なことになるわ。ほらっ急いで!」
腕を引っ張り息子を立たせようとするが、びくともしない。
「可愛い息子が喧嘩に巻き込まれて、怪我でもしたらどうすんだよ。」
海老の天ぷらをヒョイとつまみ、モグモグと咀嚼する晶馬。
「何言ってんの!いつも喧嘩を起こすのはあんたでしょ!何度お母さんが警察に呼び出されたと思ってるの!」
それでも、重い腰を動かそうとしない晶馬に、母親は一呼吸おいて、落ち着いた声を放った。
「晶馬・・・あれ、見せるわよ?灯雪くんに。」
ピーマンの肉詰めにかぶりつこうとしていた晶馬が動きを止める。
「あんたの机の一番上の引き出しの裏の奥に貼り付けてあるやつ。いいのね?」
しばらく逡巡した後、母親をひと睨みすると晶馬は舌打ちし、ようやく重い腰を上げた。
「クソババア、覚えてろよ。」
悪態を吐く息子を尻目に、母親は灯雪に向かって微笑む。
「ごめんなさいねぇ、灯雪くん。なるべくすぐに戻ってくるから好きなだけ食べててね。」
息子を動かすことなど、わけないようだ。
晶馬は案外女性の尻にひかれるほうなのかと、灯雪は意外に思う。
「俺も行きましょうか?お母さんが怪我したら大変ですし、こんなんでも男の端くれだから多少力になれますよ。」
見目に男らしさが無い事を、自覚している灯雪。
多少のコンプレックスはあるが、腕っ節は強いので相手を油断させるにはちょうど良いと、本人は前向きに捉えている。
「あらまぁっ、優しいのね、灯雪くん。本当にあの子のお友達なのかしら?ふふ、大丈夫よ、晶馬は体だけは頑丈だから。お姉ちゃん後よろしくね。」
そう言って最後にボディコン美女に声をかけ、晶馬の母親は急いで出て行った。
ボディコン美女と2人きりで残された灯雪だが、何故か美女は灯雪をじっと見たきり微動だにしない。
とりあえず自己紹介と思い、灯雪が名乗ろうとしたところで、美女がポツリと呟く。
「随分な大食漢だって聞いたから、どんな大男が来るかと思ったけれど、完全に裏切られたわ。」
まじまじと観察され、不可解そうに顔を歪めるボディコン美女。
よく分からないが期待を裏切ったようなので謝っておく。
「・・・すいません。」
灯雪がそう言うと、ボディコン美女は慌てて手を振り否定する。
「ああ、違う違う!いい意味でよ! 個人的にはごつい男が好きだけど、あなたみたいな美少年は大歓迎よ。」
そう言って、ごくごく自然に灯雪の隣に座り、空のグラスにオレンジジュースを注ぎながらボディコン美女が話す。
「灯雪くん・・だっけ?私は晶馬の姉の絵莉。普段は違う店で働いてるんだけど、時々こっちに来て手伝っているのよ。よろしくね。」
絵莉は、灯雪に密着すると、小首を傾げて色っぽく笑う。
緩いウェーブのかかった黒髪が、大胆に開いた胸元へ誘うように一房流れる。
「よ・・よろしくお願いします。」
思わず胸を見てしまった灯雪が、頬を染めながら慌てて視線をグラスに移す。
「ふふ・・可愛い~。灯雪くんって童貞?晶馬とは同い年だっけ?」
「い・・いえ、ひとつ上の中学3年です。」
さらりとセクハラをする晶馬姉。
普段、あまり動揺を見せない灯雪だが、大人の色香とあからさまな下ネタには免疫がないゆえ、知らずに俯きがちになってしまう。
その耳は、ほんのりと薄桃色に染まっていた。
「何これ・・可愛すぎる・・・」
一瞬、絵莉の瞳がギラリと獰猛な輝きを放ったが、完全にキャパを超えている灯雪が気づく事はなかった。
俄然調子の出てきた絵莉は、さらに踏み込んで来る。
「ねぇ、灯雪くん。おっぱい触ったことある?」
絵莉が灯雪に胸を寄せ、耳元で囁く。
灯雪は全身の血液が沸騰するのを感じた。
堪らず両手で顔を覆い、膝に肘をついて屈む。
暴走してしまいそうな自分を、一生懸命戒める。
「あの・・いえ・・・っ!、ちょっ・・ちょっと近いですっ・・」
絵莉の左手が、灯雪の太ももに置かれる。
「ふふ・・可愛い。いいのよ?触って。」
灯雪の肩がピクリと動く。
脳内では幅をきかせた欲望が理性をどんどん隅に追いやっていた。
ちらりと絵莉を覗き見る。
「ほら、見て。柔らかそうでしょ?女の子の胸は。」
ふにふにと指で自分の胸を押す絵莉に、生唾を吞み込み凝視する灯雪。
「興味・・・ない?よかったらお姉さんがいちから色々教えてあげるわよ?」
悩ましげに尋ねてくる絵莉を前に、灯雪の瞳孔は先程から開きっぱなしだった。
そりゃもちろん興味は大ありだ。
雪姫などと呼ばれている灯雪とて、年頃の男の子。
整った顔立ちと淡白な性格で、周囲はまるで灯雪に性欲なんてないかの様に思うが、本人は至って健全な中学男子なのだ。
「ほら、遠慮しないで。触ってごらん。」
一体なんの僥倖だろう。
まるでエロ動画のようなシチュエーションに、こんな美味い話があっていいのかと怪訝に思うものの、好奇心が優った灯雪は、恐る恐るゆっくりと手を伸ばし始める。
それを見る絵莉の表情は、まるで女郎蜘蛛が張り巡らした罠で獲物を絡め取ったかのように、不敵な笑みを浮かべていた。
後、数センチ。
このまま捕食されると思われたその時。
「何してんだよ・・・」
地の底を這うような声が聞こえた。
ドアベルが、カランカランという虚しい音を部屋中に響かせる。
灯雪は、今まさに胸を触ろうとしていた、間抜けな姿で固まっていた。
背中には、よくわからない汗が一筋流れている。
「ッチ・・」
隣から悔しげな舌打ちが聞こえた。
出入り口には、閻魔様も逃げ出すであろう、全身から怒りを滲ませて佇む男がいた。
気まず過ぎる灯雪は、そおっと手を引っ込めてあらぬ方向を見つめてしまう。
「あんたもう戻ってきたの?」
先程までの甘い声が嘘のように、そっけない声で絵莉が聞く。
「お前、いい加減にしろよ。人が少し席を外した隙に・・油断も隙もねぇな。」
「いやぁね、男の嫉妬って。せっかく灯雪くんがその気になってたのに、邪魔しないでくれる?」
絵莉が灯雪の腕に抱きつきながら反論する。
腕に当たる絵莉の胸の柔らかさに赤面する灯雪には、2人が言い争っている内容など耳に入ってこない。
「・・っ、ふざけんなよテメェッ!だいたいお前、子供には興味ないって言ってただろうがよっ」
力任せに晶馬が、灯雪を引き剥した。
「しょうがないでしょ!灯雪くんの可愛さがメガトン級だったんだもん!!」
はっ、と我に返った時には、何やら会話の内容がおかしなことになっている。
「だもんじゃねぇよ。そりゃアニキの可愛さは比喩出来ない程、底無し無尽蔵だがっ・・・くそっ、アニキ!!あんたその無自覚に人を惑わすの、どうにかしろよっ!」
ぐわしっ、と両肩を掴まれ、晶馬に面前で咎められるが、どう考えても惑わされたのは自分の方だと怪訝に思う。
「いや・・その・・悪かった。出来心というか・・・あまりにも魅力的で・・、お前の姉さんなのに・・本当に悪かった!」
頭を下げる灯雪に、更に機嫌を悪くした晶馬。
一方、『魅力的だなんて・・いやだ灯雪くんたらっ』と上機嫌な絵莉。
なんとかこの場を収束したいと思う灯雪だが、対照的な反応を見せる姉弟に掛けるべき言葉を失ってしまう。
そこへ歪な空気を一変させる、女神の一声が響く。
「まぁまぁどうしたの、2人とも怖い顔しちゃって。」
ある意味場違いな程、穏やかで明るい声。
一瞬で解かれた空気に、ホッと息をつき安堵する。
「ふふ・・ごめんなさいねぇ灯雪くん、この子達ったら幾つになっても落ち着きがなくって。子供みたいでしょう?」
さすが長年、酔っ払い相手に接客をしてきたスナックのママ。
このぐらいのあしらいは屁でもないようだ。
「あら灯雪くん、全然食べてないじゃない。お口に合わなかったかしら?」
「あっいえ、その・・・少し話し込んでしまって、まだ手を付けてないんです。」
そう灯雪は咄嗟に言い訳をした。
まさかさっきの成り行きをそのまま話す訳にもいかない。
灯雪自身の沽券のために。
気のせいか、場の空気が再びピリついたように感じる。
晶馬の母親は微笑んだままゆっくりと姉弟に尋ねた。
「お姉ちゃん、晶馬、どういう事かしら?お母さん、灯雪くんにたくさん食べてもらおうと思って、今日は張り切って作ったの。」
口調は穏やかだが、その眼は全く笑っていない。
やはり親子、晶馬も時々こんな眼をするなどと呑気に考えていた灯雪。
しかし、こういう時の母親の怖さを、2人の姉弟はよく知っていた。
「も、ちろんわかってるわよお母さん!私もそのつもりよ!?」
すかさず姉が、海老の天ぷらを箸で摘み灯雪に勧める。
「灯雪くん!お母さんの天ぷらっ、衣がサクッと軽く揚がっててとっても美味しいのよ!はいっ、あ~ん」
必死に海老の天ぷらを食べさせようとする絵莉。
「アニキ!この肉じゃがもなかなかいけんぞっ、ほらっ、口開けて・・」
同じく、灯雪に肉じゃがを勧める晶馬。
両サイドに座られて、双方から天ぷらと肉じゃがを口元に押し付けられた灯雪は身動きが取れない。
「い、いや・・・自分で食べられるから。」
2人の必死さに瞠目し、仰け反って拒絶する灯雪。
「あんた達っ、それじゃ灯雪くんが落ち着いて食べられないでしょ!」
呆れた母親が溜息をついた。
初っ端から巻き起こった夫婦喧嘩というトラブルも、晶馬の母親がうまく仲介し、バー夫妻も仲直りできたようだ。
なんだかんだ騒がしく始まった昼食だったが、その後は家族3人と和やかに過ごし、灯雪はたくさんの手料理と家族の歓迎に心暖まる思いをした。
晶馬はじっとりと灯雪の事を見つめては、「これも食え」と世話をやいてくる。
甲斐甲斐しい晶馬の一面に感心しながらも、灯雪は勧められるままに食べ続けた。
「灯雪くん、気をつけなさいよ。晶馬見境ないから。」
絵莉が、軽蔑した表情で晶馬を見て言う。
「絵莉に言われたかねぇよっ。」
再び言い争いを始めた姉弟に母親は、「体ばっかり育って、どうしてこう中身は成長しないのかしら」と嘆く。
灯雪は2人を見ながら、そういえば自分たち兄弟はこんな風に喧嘩した事がないなと思う。
自分の家族に全く不満はないが、一度くらい気心の知れた者同士の喧嘩をしてみたいと、少し羨ましく感じたのだった。
帰り際、ふと『後少しだけ夫婦の喧嘩が長引いていれば、胸を触る事が出来たかもしれない』などと、不謹慎な事を考えていた灯雪は、傍で灯雪の事を咎めるように睨む晶馬に気付き、『外は暑いな~』と空々しく呟いたのだった。
こぢんまりとした下町の商店街。
このメイン通りを横道に入った奥、様々な居酒屋やスナックが軒を連ねる一角にその店はあった。
夜になれば提灯やネオンで照らされた路地裏はしっとりと艶をおび、様々な愛憎劇、悲喜交々が染み付いた横町一帯を、そこはかとない哀愁が優しく包み込む。
太陽がちょうど真上に位置した今はまだ、その様相はなりを隠し息を潜めて静かに時を待っているようだ。
扉の上部に付いたベルが、カランカランと勢いよく音を鳴らす。
晶馬が店内へ入ると、中から滋味のある優しげな声が聞こえてくる。
「あらあら、暑かったでしょう。ささっ、中に入って涼んでちょうだい。」
目尻にシワを寄せ穏やかに微笑む女性。
包み込むような、暖かさのある柔和な物腰は来るものに安心感を与える。
一見、晶馬とは対照的な印象を持つが、その色っぽく垂れた目元は晶馬とよく似ており、成熟した大人の色気を放っていた。
おそらくこの人が、晶馬の母親だろう。
見当を付けた灯雪は、軽く頭を下げる。
「お邪魔します。」
そこは一応育ちの良い灯雪。
両親からは、挨拶なんて所詮形式だが、しないと後々面倒だと教えられている。
とはいえ、これから食べ物を与えてくれるお方に、感謝せずにはいられない。
「今日はお招きありがとうございます。晶馬くんの友達の赤築灯雪と言います。」
基本的に餌付けしてくれる人を疑わない灯雪は、親愛を込めて挨拶する。
しかし予想に反して、晶馬の母親はキョトンとした顔をして灯雪を見ていた。
何か場違いなことをしたのだろうか。
ジッと顔を見つめられ、居心地わるい灯雪はたまらず声を掛ける。
「あの・・・」
しかしその言葉は、突如破顔した晶馬の母親に遮られる。
「・・っ、ふふ、あははははっ・・・・」
いきなり笑い出した晶馬の母親に、訳も分からず今度は灯雪がキョトンとする番だった。
「アニキ・・、今の顔すげぇ可愛い」
耳元で低音ボイスを囁く晶馬に、内心「は?」と思いつつも、今は目の前で腹を抱えて笑う女性に意識を持っていかれている灯雪。
なかなか笑いが治らない様子の母親に、晶馬が痺れを切らした。
「はぁ~・・、お袋いい加減にしろよ。アニキが困ってるだろ?」
「くくっ・・、ごめんごめん。あんたのお友達に、まさかこんな礼儀正しい子がいるなんておかしくてっ・・・ふふふっ」
ようやく落ち着いて来た様子の母親は、軽く息子をディスりながら指先で目元の涙を拭う。
「当たり前だろっ。アニキをそんじょそこらの奴らと一緒にするんじゃねぇよ。」
「はいはい、あんたとは全くの別格って事は分かったわよ。」
どうやら晶馬の友達というだけで、信用度は低いようだ。
一体何をしたのか・・・。
軽口を叩き合う2人を見て、自分の家とはまた違った、仲の良い親子の姿に灯雪は自然と微笑んでいた。
「クッソ可愛いな・・・くっちまいてぇ」
灯雪を見た晶馬が、何やらボソボソと呟いている。
「灯雪くん。見ての通りウチは古びた場末のスナックで、大したおもてなしも出来ないけれど、今日はオバちゃんが得意料理を腕に縒をかけて作ったから、いっぱい食べていってね。」
促されて向かった、ローテーブルの上には、たくさんの料理が並んでいた。
「うまそ~・・・」
思わず生唾を吞み込む灯雪の姿に、親子は目を細めた。
「昔ながらの田舎料理だから、灯雪くんのお家の料理とは似ても似つかないだろうけれど。」
「そんな事ないです。俺、こういう家庭料理が一番好きなんです。」
現に、灯雪は家政婦のトメさんが作る、和食を中心とした家庭料理が大のお気に入りである。
「そお?ふふ・・じゃあ沢山作ったから、遠慮しないでね。」
目の前には、カレイの煮付け、海老と野菜の天ぷら、ピーマンの肉詰め、手毬寿司、いわしのつみれ汁、肉じゃが、茄子のお浸し、いんげんの胡麻和えといった、手の込んだ美味しそうな料理が並ぶ。
ご馳走を前にした灯雪に遠慮はない。
「いただきます!」
目をらんらんと輝かせながら箸を掴んだ灯雪は、いざ食わんっとして天ぷらに手を伸ばす。
その時、突然ドアベルがけたたましく鳴った。
「大変よっ!バーのマスターと奥さんがボトル投げ合って喧嘩してるわ!!」
勢いよく店に入って来たのは、豊満な胸をこれでもかと強調した、ボディコンスタイルのグラマラス美女だ。
「まぁまぁ大変!すぐに止めに行かなくちゃ。晶馬っ行くわよ!」
晶馬の母親は慌てた様子で、駆け出そうとする。
「はぁ~?そんなのほっとけよ。夫婦喧嘩は犬もくわねぇって言うだろ?」
灯雪と同じソファーに座り、背もたれに腕を掛けて鷹揚に構える晶馬は呑気に答えた。
出鼻を挫かれた母親は、こりゃ動く気ないなと見切った様子で晶馬の説得にかかる。
「あの夫婦は加減っていうものを知らないの。普段はこっちが恥ずかしいくらいに仲が良いのだけど、喧嘩となると流血沙汰で救急車を呼んだ事も1度や2度じゃないのよ?!大怪我する前に2人を止めないと大変なことになるわ。ほらっ急いで!」
腕を引っ張り息子を立たせようとするが、びくともしない。
「可愛い息子が喧嘩に巻き込まれて、怪我でもしたらどうすんだよ。」
海老の天ぷらをヒョイとつまみ、モグモグと咀嚼する晶馬。
「何言ってんの!いつも喧嘩を起こすのはあんたでしょ!何度お母さんが警察に呼び出されたと思ってるの!」
それでも、重い腰を動かそうとしない晶馬に、母親は一呼吸おいて、落ち着いた声を放った。
「晶馬・・・あれ、見せるわよ?灯雪くんに。」
ピーマンの肉詰めにかぶりつこうとしていた晶馬が動きを止める。
「あんたの机の一番上の引き出しの裏の奥に貼り付けてあるやつ。いいのね?」
しばらく逡巡した後、母親をひと睨みすると晶馬は舌打ちし、ようやく重い腰を上げた。
「クソババア、覚えてろよ。」
悪態を吐く息子を尻目に、母親は灯雪に向かって微笑む。
「ごめんなさいねぇ、灯雪くん。なるべくすぐに戻ってくるから好きなだけ食べててね。」
息子を動かすことなど、わけないようだ。
晶馬は案外女性の尻にひかれるほうなのかと、灯雪は意外に思う。
「俺も行きましょうか?お母さんが怪我したら大変ですし、こんなんでも男の端くれだから多少力になれますよ。」
見目に男らしさが無い事を、自覚している灯雪。
多少のコンプレックスはあるが、腕っ節は強いので相手を油断させるにはちょうど良いと、本人は前向きに捉えている。
「あらまぁっ、優しいのね、灯雪くん。本当にあの子のお友達なのかしら?ふふ、大丈夫よ、晶馬は体だけは頑丈だから。お姉ちゃん後よろしくね。」
そう言って最後にボディコン美女に声をかけ、晶馬の母親は急いで出て行った。
ボディコン美女と2人きりで残された灯雪だが、何故か美女は灯雪をじっと見たきり微動だにしない。
とりあえず自己紹介と思い、灯雪が名乗ろうとしたところで、美女がポツリと呟く。
「随分な大食漢だって聞いたから、どんな大男が来るかと思ったけれど、完全に裏切られたわ。」
まじまじと観察され、不可解そうに顔を歪めるボディコン美女。
よく分からないが期待を裏切ったようなので謝っておく。
「・・・すいません。」
灯雪がそう言うと、ボディコン美女は慌てて手を振り否定する。
「ああ、違う違う!いい意味でよ! 個人的にはごつい男が好きだけど、あなたみたいな美少年は大歓迎よ。」
そう言って、ごくごく自然に灯雪の隣に座り、空のグラスにオレンジジュースを注ぎながらボディコン美女が話す。
「灯雪くん・・だっけ?私は晶馬の姉の絵莉。普段は違う店で働いてるんだけど、時々こっちに来て手伝っているのよ。よろしくね。」
絵莉は、灯雪に密着すると、小首を傾げて色っぽく笑う。
緩いウェーブのかかった黒髪が、大胆に開いた胸元へ誘うように一房流れる。
「よ・・よろしくお願いします。」
思わず胸を見てしまった灯雪が、頬を染めながら慌てて視線をグラスに移す。
「ふふ・・可愛い~。灯雪くんって童貞?晶馬とは同い年だっけ?」
「い・・いえ、ひとつ上の中学3年です。」
さらりとセクハラをする晶馬姉。
普段、あまり動揺を見せない灯雪だが、大人の色香とあからさまな下ネタには免疫がないゆえ、知らずに俯きがちになってしまう。
その耳は、ほんのりと薄桃色に染まっていた。
「何これ・・可愛すぎる・・・」
一瞬、絵莉の瞳がギラリと獰猛な輝きを放ったが、完全にキャパを超えている灯雪が気づく事はなかった。
俄然調子の出てきた絵莉は、さらに踏み込んで来る。
「ねぇ、灯雪くん。おっぱい触ったことある?」
絵莉が灯雪に胸を寄せ、耳元で囁く。
灯雪は全身の血液が沸騰するのを感じた。
堪らず両手で顔を覆い、膝に肘をついて屈む。
暴走してしまいそうな自分を、一生懸命戒める。
「あの・・いえ・・・っ!、ちょっ・・ちょっと近いですっ・・」
絵莉の左手が、灯雪の太ももに置かれる。
「ふふ・・可愛い。いいのよ?触って。」
灯雪の肩がピクリと動く。
脳内では幅をきかせた欲望が理性をどんどん隅に追いやっていた。
ちらりと絵莉を覗き見る。
「ほら、見て。柔らかそうでしょ?女の子の胸は。」
ふにふにと指で自分の胸を押す絵莉に、生唾を吞み込み凝視する灯雪。
「興味・・・ない?よかったらお姉さんがいちから色々教えてあげるわよ?」
悩ましげに尋ねてくる絵莉を前に、灯雪の瞳孔は先程から開きっぱなしだった。
そりゃもちろん興味は大ありだ。
雪姫などと呼ばれている灯雪とて、年頃の男の子。
整った顔立ちと淡白な性格で、周囲はまるで灯雪に性欲なんてないかの様に思うが、本人は至って健全な中学男子なのだ。
「ほら、遠慮しないで。触ってごらん。」
一体なんの僥倖だろう。
まるでエロ動画のようなシチュエーションに、こんな美味い話があっていいのかと怪訝に思うものの、好奇心が優った灯雪は、恐る恐るゆっくりと手を伸ばし始める。
それを見る絵莉の表情は、まるで女郎蜘蛛が張り巡らした罠で獲物を絡め取ったかのように、不敵な笑みを浮かべていた。
後、数センチ。
このまま捕食されると思われたその時。
「何してんだよ・・・」
地の底を這うような声が聞こえた。
ドアベルが、カランカランという虚しい音を部屋中に響かせる。
灯雪は、今まさに胸を触ろうとしていた、間抜けな姿で固まっていた。
背中には、よくわからない汗が一筋流れている。
「ッチ・・」
隣から悔しげな舌打ちが聞こえた。
出入り口には、閻魔様も逃げ出すであろう、全身から怒りを滲ませて佇む男がいた。
気まず過ぎる灯雪は、そおっと手を引っ込めてあらぬ方向を見つめてしまう。
「あんたもう戻ってきたの?」
先程までの甘い声が嘘のように、そっけない声で絵莉が聞く。
「お前、いい加減にしろよ。人が少し席を外した隙に・・油断も隙もねぇな。」
「いやぁね、男の嫉妬って。せっかく灯雪くんがその気になってたのに、邪魔しないでくれる?」
絵莉が灯雪の腕に抱きつきながら反論する。
腕に当たる絵莉の胸の柔らかさに赤面する灯雪には、2人が言い争っている内容など耳に入ってこない。
「・・っ、ふざけんなよテメェッ!だいたいお前、子供には興味ないって言ってただろうがよっ」
力任せに晶馬が、灯雪を引き剥した。
「しょうがないでしょ!灯雪くんの可愛さがメガトン級だったんだもん!!」
はっ、と我に返った時には、何やら会話の内容がおかしなことになっている。
「だもんじゃねぇよ。そりゃアニキの可愛さは比喩出来ない程、底無し無尽蔵だがっ・・・くそっ、アニキ!!あんたその無自覚に人を惑わすの、どうにかしろよっ!」
ぐわしっ、と両肩を掴まれ、晶馬に面前で咎められるが、どう考えても惑わされたのは自分の方だと怪訝に思う。
「いや・・その・・悪かった。出来心というか・・・あまりにも魅力的で・・、お前の姉さんなのに・・本当に悪かった!」
頭を下げる灯雪に、更に機嫌を悪くした晶馬。
一方、『魅力的だなんて・・いやだ灯雪くんたらっ』と上機嫌な絵莉。
なんとかこの場を収束したいと思う灯雪だが、対照的な反応を見せる姉弟に掛けるべき言葉を失ってしまう。
そこへ歪な空気を一変させる、女神の一声が響く。
「まぁまぁどうしたの、2人とも怖い顔しちゃって。」
ある意味場違いな程、穏やかで明るい声。
一瞬で解かれた空気に、ホッと息をつき安堵する。
「ふふ・・ごめんなさいねぇ灯雪くん、この子達ったら幾つになっても落ち着きがなくって。子供みたいでしょう?」
さすが長年、酔っ払い相手に接客をしてきたスナックのママ。
このぐらいのあしらいは屁でもないようだ。
「あら灯雪くん、全然食べてないじゃない。お口に合わなかったかしら?」
「あっいえ、その・・・少し話し込んでしまって、まだ手を付けてないんです。」
そう灯雪は咄嗟に言い訳をした。
まさかさっきの成り行きをそのまま話す訳にもいかない。
灯雪自身の沽券のために。
気のせいか、場の空気が再びピリついたように感じる。
晶馬の母親は微笑んだままゆっくりと姉弟に尋ねた。
「お姉ちゃん、晶馬、どういう事かしら?お母さん、灯雪くんにたくさん食べてもらおうと思って、今日は張り切って作ったの。」
口調は穏やかだが、その眼は全く笑っていない。
やはり親子、晶馬も時々こんな眼をするなどと呑気に考えていた灯雪。
しかし、こういう時の母親の怖さを、2人の姉弟はよく知っていた。
「も、ちろんわかってるわよお母さん!私もそのつもりよ!?」
すかさず姉が、海老の天ぷらを箸で摘み灯雪に勧める。
「灯雪くん!お母さんの天ぷらっ、衣がサクッと軽く揚がっててとっても美味しいのよ!はいっ、あ~ん」
必死に海老の天ぷらを食べさせようとする絵莉。
「アニキ!この肉じゃがもなかなかいけんぞっ、ほらっ、口開けて・・」
同じく、灯雪に肉じゃがを勧める晶馬。
両サイドに座られて、双方から天ぷらと肉じゃがを口元に押し付けられた灯雪は身動きが取れない。
「い、いや・・・自分で食べられるから。」
2人の必死さに瞠目し、仰け反って拒絶する灯雪。
「あんた達っ、それじゃ灯雪くんが落ち着いて食べられないでしょ!」
呆れた母親が溜息をついた。
初っ端から巻き起こった夫婦喧嘩というトラブルも、晶馬の母親がうまく仲介し、バー夫妻も仲直りできたようだ。
なんだかんだ騒がしく始まった昼食だったが、その後は家族3人と和やかに過ごし、灯雪はたくさんの手料理と家族の歓迎に心暖まる思いをした。
晶馬はじっとりと灯雪の事を見つめては、「これも食え」と世話をやいてくる。
甲斐甲斐しい晶馬の一面に感心しながらも、灯雪は勧められるままに食べ続けた。
「灯雪くん、気をつけなさいよ。晶馬見境ないから。」
絵莉が、軽蔑した表情で晶馬を見て言う。
「絵莉に言われたかねぇよっ。」
再び言い争いを始めた姉弟に母親は、「体ばっかり育って、どうしてこう中身は成長しないのかしら」と嘆く。
灯雪は2人を見ながら、そういえば自分たち兄弟はこんな風に喧嘩した事がないなと思う。
自分の家族に全く不満はないが、一度くらい気心の知れた者同士の喧嘩をしてみたいと、少し羨ましく感じたのだった。
帰り際、ふと『後少しだけ夫婦の喧嘩が長引いていれば、胸を触る事が出来たかもしれない』などと、不謹慎な事を考えていた灯雪は、傍で灯雪の事を咎めるように睨む晶馬に気付き、『外は暑いな~』と空々しく呟いたのだった。
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