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第2章 異世界(トゥートゥート)
01. 残された後悔
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『決めた、君にするよ。』
そう言って男は近付いた。
俺は覚悟を決め、胸元に抱えていた小包を下に降ろす。
『かわいそうに。お金で買われたんだね。でも大丈夫、君が死んでも代わりはいるから。』
俺を見て笑う男が、ナイフの刃をカチャリと出した。
背中に手を回されると、まるでハグでもしているかの様に俺の胸に刃を突き刺す。
顔色をうかがうように覗いていた男が刃を引き抜くと、数歩離れたところで、何事もなく畳んだナイフをポケットにしまった。
冷や汗を流しながら静かに倒れていく俺に、男の陶然とした声が聞こえる。
『綺麗だ・・・。』
地面には血がダクダクと広がっていく。
男は見入るように立ち尽くしていた。
狂っている。
痛みで朦朧とする意識の中、俺はだいぶ焦っていた。
事が終われば立ち去ると見込んでいたのに、このままではまた幸希と接触してしまう。
『・・・っ、さっさと行けよ・・・、気が済んだだろ・・っ。』
声を振り絞ってそう言うと、逆に男はゆっくりと近付いて来る。
まずいっ・・・、何で逃げないんだよっコイツっ。
そう思っていると、向かいの家から窓を開ける音が響いた。
中からは微かに話し声も聞こえてくる。
『・・・・クソッ。』
その声に反応した男は小さく悪態をつくと、正気に戻ったのか足早にここを去って行った。
男の足音が遠退き、やがて聞こえなくなると、俺は心から安堵する。
これで幸希は死なずに済むのだろうか。
あの神様はどうも信用ならねぇけど、今はそれにすがるしかない。
出来れば俺のこんな姿、幸希には見せたく無かった。
気付いたら門のところで突っ立ていたのだから今更どうしようもない。
神様も、もうちょっと気を回してくれればいいんだが。
そうこうしているうちに、だんだんと目が霞んでいく。
自分の呼吸が弱々しいものになっているのが分かる。
あぁ、晶馬の姉ちゃんのおっぱい触っときゃ良かったなぁ。
女性経験もなけりゃ、彼女だっていなかったんだ。
今考えれば、俺の人生の最大のチャンスはあそこだったはず。
やっぱり出来る時にやっとかないと後悔するもんだな。
灯雪としての人生はこれで終わりだ。
命を引き換えにしたことは後悔していない。
けど・・・やっぱり呆気ねぇなぁ・・・。
おっぱい・・・触りたかったなぁ・・・・・。
そう言って男は近付いた。
俺は覚悟を決め、胸元に抱えていた小包を下に降ろす。
『かわいそうに。お金で買われたんだね。でも大丈夫、君が死んでも代わりはいるから。』
俺を見て笑う男が、ナイフの刃をカチャリと出した。
背中に手を回されると、まるでハグでもしているかの様に俺の胸に刃を突き刺す。
顔色をうかがうように覗いていた男が刃を引き抜くと、数歩離れたところで、何事もなく畳んだナイフをポケットにしまった。
冷や汗を流しながら静かに倒れていく俺に、男の陶然とした声が聞こえる。
『綺麗だ・・・。』
地面には血がダクダクと広がっていく。
男は見入るように立ち尽くしていた。
狂っている。
痛みで朦朧とする意識の中、俺はだいぶ焦っていた。
事が終われば立ち去ると見込んでいたのに、このままではまた幸希と接触してしまう。
『・・・っ、さっさと行けよ・・・、気が済んだだろ・・っ。』
声を振り絞ってそう言うと、逆に男はゆっくりと近付いて来る。
まずいっ・・・、何で逃げないんだよっコイツっ。
そう思っていると、向かいの家から窓を開ける音が響いた。
中からは微かに話し声も聞こえてくる。
『・・・・クソッ。』
その声に反応した男は小さく悪態をつくと、正気に戻ったのか足早にここを去って行った。
男の足音が遠退き、やがて聞こえなくなると、俺は心から安堵する。
これで幸希は死なずに済むのだろうか。
あの神様はどうも信用ならねぇけど、今はそれにすがるしかない。
出来れば俺のこんな姿、幸希には見せたく無かった。
気付いたら門のところで突っ立ていたのだから今更どうしようもない。
神様も、もうちょっと気を回してくれればいいんだが。
そうこうしているうちに、だんだんと目が霞んでいく。
自分の呼吸が弱々しいものになっているのが分かる。
あぁ、晶馬の姉ちゃんのおっぱい触っときゃ良かったなぁ。
女性経験もなけりゃ、彼女だっていなかったんだ。
今考えれば、俺の人生の最大のチャンスはあそこだったはず。
やっぱり出来る時にやっとかないと後悔するもんだな。
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