来世は空気を希望します!~壁になって推しカプを見守りたい系オタクJK、目覚めたらヒロインでした解釈違いです!〜

小津 悠理

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来世は空気を希望します!

25.暇なのでお散歩に行ってきます

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 詩穂さんが作ってくれた美味しい朝ご飯をお腹いっぱい食べた。
 あのノイズみたいなものはあれきり起きなくて、やっぱり見間違いだったんだと思う。良かった。
 さーて、今日は何しようかな。この期間はメインストーリーでも空白だから、しなくちゃいけないこととか行かなきゃいけない場所とか特にないんだよね。入寮の手続きとかももう済んでるし。
 うーん。周囲の散策……とか。
 思いついてみたらなかなか良い案な気がしてきた。推しが育った街! 推しを育んだ土地! この目で見ておかねばきっと後悔する! 
 よしそうしよう。善は急げと言うし、早速行動開始だ。
 身支度を整える。
 はちゃめちゃ美しい言葉ちゃんの私服だから何着て出かけるかすごく悩んだけど、結局シンプルにシャツとジーンズにした。
 シャツは白い七分丈で、ウエスト辺りを絞るようなペプラムデザインになっている。後ろの身頃の方が少し長いから、ふわっと広がって可愛い。
 ジーンズは濃いブルーで、白いシャツと合わせると爽やかだ。
 メイクは悩んだけど、あんまり手を加えないことにした。昨日も思ったけど、元の素材が良すぎるから下手にいじると良さを殺してしまうとの判断から。
 歩いたら暑くなるだろうなと思ったので、髪はポニーテールに纏めた。三日月の飾りのついたゴムがあったのでそれで結う。
 足元は楽にスニーカーをチョイス。
 以上、完成! 「観月言葉のちょっとそこまでお散歩ルック」!
 自画自賛だけど可愛すぎて涙が出る。洋服箪笥の中確認しまくってデート前もかくやという気迫でひとりファッションショー繰り広げた甲斐があった。
 顔がいいから何でも似合うなほんと。今日のこの格好も全然派手なものじゃないのに、言葉ちゃんの美しさを完璧に引き立てている。私の目にはキラキラ輝いて映っています。内側から発光してるんじゃないのこの眩しさ……。
 自分のセンスで推しを着せ替え人形にできるの楽しすぎて楽しすぎて。なんかもう笑っちゃう。
 よし、堪能した。本来の目的を忘れないうちに出発しよう。
 一階で家事をこなす詩穂さんに出かけてくる旨を伝えて、いざ出発! 現在時刻は午前十時。お昼ご飯の時間までには帰りたいので、午後一時をリミットとします! 行ってきまーす! 
 外は春めいたいい天気で、ぽかぽかとした日差しが温かく身体を刺す。抜けるような晴天の空は春の雲がところどころをぼんやりと覆っているのが、ああ春だなあって感じ。
 三月にしては暖かすぎるような気もするけど、この場所架空の国だし、推しが寒さに凍えるところなんか見たくないのでこれでよし! ……いややっぱりちょっと、かなり、結構そういう姿も見たい気もする。でもその場合自分でこなさなきゃいけないのかー。それは嫌だな……。
 歩き出す方向はどっちにしようかな。右か、左か。
 言葉ちゃんのおうちの前は道が一本真っ直ぐ通っているから、どちらに進むかによって、道がぐるっと繋がっていない限り探検範囲がかなり変わってくるはず。ぐるっと繋がってなければ。あれこれもしかしてフラグ立てた?
 決めた、左にする。昨日枝折くんが向かっていった方向だからです。枝折くんの家、外観はゲーム内で見たんだけど、さすがに立地までは細かく知らないんだよね。見てみたい。
 てってこ歩き出す。
 突き当たりの角を曲がって、言葉ちゃんの家から十分の範囲に枝折くんの家はある。探してみよう。問題は美和わたしがプロの方向音痴ということだけだけど、言葉ちゃんの能力が上書きされてるってあの座布団のある真っ白空間で絵巻様言ってたし! 信じるよ、絵巻様! 言葉ちゃんは方向音痴ではないからきっと枝折くんの家も見つけられるし帰り道も見失わないでいられる! 
 昨日枝折くんがエモーショナルに手を振ってくれた角を曲がり、続いていた道をずんずん進む。この辺りは住宅地みたいで、似たような造りの家が何軒も並んでいる。赤い屋根、青い屋根、緑の屋根。落ち着いた色の塗装だけど、カラフルなのが面白い。
 枝折くんの家あるかなー。表札に「月嶋」がかかってたらたぶん当たり。ここ……は違う。ここ……も違う。もう少し先かな。
 周囲の家をきょろきょろ観察しながら進む。進まなかった右方向からは明らかに距離が開いて進んでいってる気がするので、ぐるっと繋がってるってフラグは折れたなこりゃ。わーい。
 そろそろ十分くらい歩いた気がする。もうそろそろ見つけてもいい頃だよね。
 時間をスマホで確認すると午前十時九分だった。おお、体内時計正確。
 そうそう、この世界にもスマホはあります。ゲーム内に出てきたアイテムはたぶん一通り用意してくれたんだと思う。日記帳とか制服とかだけじゃないの正直助かる。さすが「ほしわず完全模倣世界」と名付けるだけはある。メインストーリー内で言葉ちゃんがスマホを使って連絡する場面があるから、無かったら伝書鳩を飼いならす必要があったかも。
 この世界のスマホ、何がすごいって充電いらずなの。機体の中に自動で持ち主から魔力を補給するっていう魔術式が組んであって、持ち主登録をした人間がスマホを手に持っていると、勝手に活動に必要な分の魔力を持ち主から吸い取る。その量もごくわずかで、燃費がいい。しかも登録した魔術師以外からの魔力補給……充電は受け付けないから、もし落としたり盗まれたりしても悪用される心配はなし。作り上げた魔術師は天才だ。
 スマホに思いを馳せながらも周囲はちゃんと見てますよ。ここは違う、ここも違う、ここは……あった!「月嶋」! 
 見つかったー! ほんとにあったー! 
 足を止めて表札のかかったお家を見上げれば、深緑の屋根の二階建ての一軒家だった。
 おお……。ここが我らが愛すべき不憫ヒーロー月嶋枝折くんの住んでるお家……。
 へえーふーんと角度を変えて周囲をうろうろしていたら、突然何かに身体がぶつかった。
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