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八話 返す言葉
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一方、ミティルニアと言えばディアルガが帰ってしまってからはずっと自室に引き篭もり、親しい侍女も中に入れようとしなかった。
「はぅ……ね、ディアルガ様は心配してくださったのに、わたくしあんなこと…」
唯一入室を許した愛猫を腕に抱きながらミティルニアはごろごろ、ごろごろとソファに横たわってぐすぐすと後悔を垂れ流していた。
「にゃあぅ」
「そうよね、まずは謝罪しないと…でも」
また猫との会話がループし始めた時、誰も近寄らないようにと言い含めておいた扉がノックされる。それも、通常のノックとは少し違って気を急いているようなものである。
「ラルドラ侯爵子息がまたこちらに…!」
返事も待たずに乱暴に開かれた扉から飛び込むように入室した馴染みの侍女は、ミティルニアにとって死罪の宣告にも等しい言葉を告げると彼女が何か反応を示す前に、くるくるに結髪から解けてしまっているミティルニアの髪を素早く解き、丁寧にしかし素早く櫛を通す。
未婚の淑女は全ての髪を上げることは出来ず、それ故に半分だけ結い上げる型が最も一般的だが今はそんな時間はない。次いでドレスを大急ぎで整えられ、それが終わればミティルニアは何が何なのか分からず混乱したまま廊下に連れ出される。
「もうエントランスにお越しだそうです。お急ぎくださいまし、お嬢様!」
「ぇ、あ、」
ぺい、と半ば投げ出されるようにエントランスに続く大階段の前に立たされたミティルニアはその階下に見える黒髪に思わず逃げ出したくなってしまうが、そんな訳にはいかない。
(どうして、日に二回もお越しになるなんて今まで一度もなかったのに…)
やはり、先程の件について叱責か抗議でもしに来られたのだろうか、とミティルニアの思考が暗く沈み始めた時、ディアルガはこつんという微かな靴の音を聞き取ってミティルニアの姿を認める。
勢いよく振り返ったディアルガを見つめるミティルニアの瞳はもう既に潤んでいるが、ディアルガもそれに負けないくらい緊張に震えている。
「ミティルニア…君に、どうしても伝えたいことがあって」
「な、な…なん、なんでしょう…」
ミティルニアが降りてくるのを待たずにディアルガは大階段を駆け登り、あっという間に彼女の元まで到達する。
「俺は君を愛している…ミティルニアが好きなんだ、とても」
突然の愛の告白にミティルニアが固まり、おかしな声を出す口を抑えている間にもディアルガの言葉は止まることを知らない。
「きっと、俺が手を離してミティルニアが転んでしまった時…あの瞬間からずっと」
「ぇ、う…」
「ミティルニアが俺を想っていなくても構わない。隣にいて欲しいんだ、ずっと…だからどうかもう一度、俺と婚姻の約束をしてくださいませんか」
ディアルガはその場で厭うことなく跪き、心底愛おしそうにミティルニアの手に軽くキスをする。それは王国で紳士が淑女に捧げる最上の愛の表しである。ミティルニアがずっと憧れ続けたそれが今、叶えられたのだ。
「っ……はい!」
ミティルニアが返すべき言葉はそれしか無かった。
「はぅ……ね、ディアルガ様は心配してくださったのに、わたくしあんなこと…」
唯一入室を許した愛猫を腕に抱きながらミティルニアはごろごろ、ごろごろとソファに横たわってぐすぐすと後悔を垂れ流していた。
「にゃあぅ」
「そうよね、まずは謝罪しないと…でも」
また猫との会話がループし始めた時、誰も近寄らないようにと言い含めておいた扉がノックされる。それも、通常のノックとは少し違って気を急いているようなものである。
「ラルドラ侯爵子息がまたこちらに…!」
返事も待たずに乱暴に開かれた扉から飛び込むように入室した馴染みの侍女は、ミティルニアにとって死罪の宣告にも等しい言葉を告げると彼女が何か反応を示す前に、くるくるに結髪から解けてしまっているミティルニアの髪を素早く解き、丁寧にしかし素早く櫛を通す。
未婚の淑女は全ての髪を上げることは出来ず、それ故に半分だけ結い上げる型が最も一般的だが今はそんな時間はない。次いでドレスを大急ぎで整えられ、それが終わればミティルニアは何が何なのか分からず混乱したまま廊下に連れ出される。
「もうエントランスにお越しだそうです。お急ぎくださいまし、お嬢様!」
「ぇ、あ、」
ぺい、と半ば投げ出されるようにエントランスに続く大階段の前に立たされたミティルニアはその階下に見える黒髪に思わず逃げ出したくなってしまうが、そんな訳にはいかない。
(どうして、日に二回もお越しになるなんて今まで一度もなかったのに…)
やはり、先程の件について叱責か抗議でもしに来られたのだろうか、とミティルニアの思考が暗く沈み始めた時、ディアルガはこつんという微かな靴の音を聞き取ってミティルニアの姿を認める。
勢いよく振り返ったディアルガを見つめるミティルニアの瞳はもう既に潤んでいるが、ディアルガもそれに負けないくらい緊張に震えている。
「ミティルニア…君に、どうしても伝えたいことがあって」
「な、な…なん、なんでしょう…」
ミティルニアが降りてくるのを待たずにディアルガは大階段を駆け登り、あっという間に彼女の元まで到達する。
「俺は君を愛している…ミティルニアが好きなんだ、とても」
突然の愛の告白にミティルニアが固まり、おかしな声を出す口を抑えている間にもディアルガの言葉は止まることを知らない。
「きっと、俺が手を離してミティルニアが転んでしまった時…あの瞬間からずっと」
「ぇ、う…」
「ミティルニアが俺を想っていなくても構わない。隣にいて欲しいんだ、ずっと…だからどうかもう一度、俺と婚姻の約束をしてくださいませんか」
ディアルガはその場で厭うことなく跪き、心底愛おしそうにミティルニアの手に軽くキスをする。それは王国で紳士が淑女に捧げる最上の愛の表しである。ミティルニアがずっと憧れ続けたそれが今、叶えられたのだ。
「っ……はい!」
ミティルニアが返すべき言葉はそれしか無かった。
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