デッドエンド・パレード

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<17・考察>

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 グループでたった二人になってしまった集と彩也は、そのまま聖也のグループととりあえず一緒に行動することになった。集としても非常にありがたいところである。化物が再度放出されれば、人数的にもこっちに寄ってくる可能性が高いが――結局助けに行かなければならなくなることを考えると、こっちに来てくれた方が都合が良いというのが聖也の考えであるらしい。
 実際、元々聖也がいたグループは五人編成だった。五人組と六人組のグループがあって、最終的に六人組であった集のグループが襲われたのはきっと偶然ではないのだろう。勿論、たまたまその扉の近くに集達がいたから、という不運もあったのだろうが。

「この研究室、武器として使えそうな道具はないこともないけど……鍵らしきものは見つからないな」

 ひっくり返した引き出しの中身を机の上に並べながら、集はため息をついた。実験器具やら本やらがこれだけ揃っているのなら、鍵の一つくらいどこかにあっても良いのではないかと思っていたのだが。残念ながら、アテが外れてしまったらしい。この部屋に絞って探し回ってみたものの、特にあのキラキラした金ピカの鍵は何処にもないようだった。
 宝探しを要求するのなら、宝が宝と分かる形状をしていなければ意味がない。聖也が化物の頭の中から見つけたように、いかにも「鍵です!」と主張してくる形状でなければゲームは成り立たないのだ。たまたまこちらは先んじて最初の鍵を見つけて答えを知ったが、他の鍵も似たような形をしていると考えるのが自然だろう。
 大きさは、鍵としては少々大きめ。具体的にはシャープペンシル一本分くらいだと言っていい。この大きさなら、そうそう見落とす心配もないと思うのだが。

「次の化物が出てくるまで、あと十五分くらいしかないぞ。どうするんだ聖也」
「予定が狂ったが、このまま俺達はこの階を調べて、上に上っていく形で探索をしようと思ってる。どうやら美波、耕洲の二人は下に向かったみたいだしな。下の階に行ってる篠丸のグループには、既に『通信』で注意喚起してある。美波達に遭遇したら、即逃げるなり隠れるなりしてくれるだろ」
「それならいいんだけどな……」

 唐松美波。確かに、彼女と耕洲は不良カップルとして非常に評判が良くなかったのは事実だ。話す機会もなかったので、どんな人物なのかもよく知られていなかったというのが正しい。いくら不良と呼ばれる人種であっても、人を殺すことには多少躊躇いを見せると思っていたし、そもそも鍵が人数分ないということさえ確定的ではないというのに――。
 あんな風に、罪もない人間を殺して笑っていられる人物であるとは思ってもみなかった。耕洲もだ。彼の場合は、もしかしたら美波の言いなりや、下僕といった立場に甘んじているだけなのかもしれないが。

「……今回集合に応じなかったメンバーは、危険要素として注意しておいた方がいいかもしれませんね。まだ、遭遇してない方々は能力もわからないですし」

 散らかしたものを律儀に片付けながら、天都が言う。

「最初に集合しなかった人間は、八人。まず唐松美波さん……能力は『爆破』。それと、唐松さんの彼氏である守村耕洲君。守村君の能力は『無視』でしたよね。この二人は協力しあって脱出を目指してる」
「どっちも強力な能力だ。遭遇して戦闘になったら非常に厄介だぞ」
「ですよね……」

 爆発で仕掛ける攻撃能力と、それをサポートできる力。どうしてこう、面倒な二人に面倒な力を渡してしまうのだろうか。あの組み合わせで本気で連携を取られたら、使いにくい能力が揃っている自分達は相当苦戦すること間違いなしであるのだが。

「……いや、対策する方法はある」

 言い出したのは、夏俊だ。

「まず、あいつらの能力に限った話でもないが……全ての能力に共通して言えることは、同じ前提条件を持つってことだ。能力名を表示させた上で、能力の名前を唱えないといけないだろ?つまり、聖也が唐松にやってみせたように……腕を抑えてボタンを押し込めなくするか、あるいは喉を潰して能力名を唱えられないようにしてしまえば封印することが可能なんだ」

 それは、見ていて思ったことだ。美波の能力だと悟るや否や、即座に動いた聖也の行動は実に素早いものであったと言える。あの時自分が耕洲に捕まったりしなければ――とは思うが、正直耕洲の力を初見で防ぐのは難しいだろう。むしろあのまま殺されなかったことを幸運に思うしかない。能力がわかっていればまだ、対応のしようもあるかもしれないからだ。

「それと、強い能力には使用制限があったり、使用回数に縛りがあったりする。美波の能力は、離れたところにいる相手の頭を爆破できるってなもんなんだよな?はっきり言って万能すぎる。使用回数とかに制限があるのは間違いない。少なくとも、一度発動させると数分は発動できないと見て間違いないと思う」
「根拠は?」
「能力を発動させるためには、ボタンを抑えて能力名を唱えないといけないだろ?つまり、すぐに能力を唱えたいなら、ボタンは予め押しておいていつでも発動できるように準備しておいた方がいいんだ。でも、美波は俺達と話している間、一度もボタンを押そうとしなかった。一度使った後、次の使用までは数分以上の開きがないといけないと俺は見ている。それと、敵を直接見ている状態でないと能力が発動しないとか、射程もそんなには長くないかもしれないな。だって美波は耕洲と一緒に、化物と戦わず部屋の中に隠れていたくらいだから」

 言われてみればそうだ。そんなすごい力であったなら、彼らで化物を倒してしまっても構わなかったはずである。それをしなかったのは発動回数に限りがあったからケチった可能性もあるが、はっきり言ってバリケードが壊されてキメラが入ってきてしまっていたら、そのまま美波と耕洲も殺されていたかもしれなかった状況だ。ならば、発動したくてもできなかった、と見た方が正しいのかもしれない。
 同時に、一度発動させたら、かなりの時間間を置かないと次が発動できない能力であったのだとしたら。チャンスのチャンスが来るまで、能力の発動を温存しておきたいと考えるのが自然な流れだろう。

「ちなみに耕洲の能力も強力な分縛りが強いだろう。集、天都。あいつらの会話を思い出せ」



『俺の能力は『無視』。発動すると、一定範囲内にいる俺が認識している全ての生物が、俺の存在を認識できなくなる……無視してしまうという力だ。化物を倒すのも不意をつくのも使える、なかなか万能な力だと思わないか。美波と合わせれば、無敵だ』
『無敵はいいんですけどー、耕洲君。丁寧に説明しないでくださいよー。ていうか、使っちゃったんですか?もったいなーい』
『いいじゃないか、一回くらい。こいつらにも思い知らせた方がいいし、このまま美波が傷つけられる方が嫌だ。……というわけで、さっさと美波を離せ、桜美聖也。お前は美波を殺したくないのだろうが、俺達は違う。もう一人殺したんだ、あと何人増えても関係ない』



「唐松美波は、耕洲の能力発動を勿体無いと言っていた。使用回数制限があるのは間違いない。あと、俺の体感では耕洲を認識できなかった時間は非常に短いものだったと思う。能力と能力の発動時間にどれだけ開きがあるのかはわからないし、こっちは必要所要時間の方はないかもしれないが。『無視』が作れる時間はさほど長くはないと思う。数分か、ヘタをしたら数十秒だ。あいつは単体では化物から逃げ切ることが難しいのかもしれないな」

 多分このへんは、聖也も気づいていたんだろう、と夏俊は言う。集は思わず感心させられた。あの忙しない状況で、そして数少ない情報だけで。そこまで能力を分析し、見抜くことができようとは。聖也にばかり目が行きがちだが、こいつもこいつでとんでもない逸材なのかもしれなかった。――それが結果的にアランサの使徒の連中を喜ばせるかもしれない、というのは少々癪に障ることではあったけれども。
 強力な能力には、同じだけ制限がかかる。そうでもしなければ、ブレスレットの容量に均等に能力を登載することができなかったのかもしれない。

「……最初に集まらなかった奴らは、みんなでの脱出に協力的じゃない可能性が高いんだよね」

 横から会話に加わってくる、未花子。同じ女の子だからか、ずっと彩也の方を気にかけている様子だった。彩也は事件直後よりは自発的に行動するようになっているものの、未だに暗い顔のまま言葉を一切発しない状態である。
 立ち直るにはまだ時間がかかることだろう。むしろ、本来ならば時間をかけてカウンセリングしていかなければいけないような案件だ。集だって、ショックを受けなかったわけではないのである。ただ、強引にでも割り切って前に進むしかないと思っているというだけで。思い込もうと、自分に言い聞かせているだけで。

「こうなってくると、他の連中の能力ってのが気になるかも。集合に応じなかったの、あと六人だったか。……予想してたけど、水車のグループもいなかったよね」
「水車恭二か。あいつも危ないからな……」

 クラスに数人いる不良メンバー、彼らのリーダーをやっていたのが水車恭二だ。一見気さくで明るく、友好的にも見える彼。いつも笑顔で話し、余裕綽綽であるのが特徴だ。しかし、悪い噂は唐松美波・守村耕洲のカップル以上に付きまとっている。一度キレると止まらず、ヤクザの下っ端さえもボコボコに殴り倒したことがあるらしいとさえ聞いたことがあった。正直、一番関わり合いになりたくない一人である。
 その金魚のフンであったのが、植田守矢。小島季里人、武藤通の三人。恭二に忠実な彼らが姿を見せないのはほぼほぼ予想通りだったと言っても良かった。今頃四人仲良く脱出の相談でもしているか――いや、恭二のこと、場合によっては仲間三人のことさえも切り捨てて一人だけ生き残る、なんてこともしそうではある。

「一匹狼の屑霧海人くずきりかいともいなかった。こいつは本当に何を考えているのかわからない。そして宇崎舞紗うざきまいさだ……うちの学級委員長だろ。大人しいし真面目だし、彼女が集合に応じなかったのが一番謎で仕方ない。一体何を考えてるんだか……」

 今後も非協力的なメンバーの妨害に遭う可能性があることを考えると、なるべく早く彼らの能力も把握しておきたいところである。残念ながら彼らの能力を知れる時には、同時に戦闘やトラブルの勃発していそうなのが頭の痛いところであるが。

「おい、聖也がそろそろ移動するって言ってるぞ。急げー」
「お、おう」

 大毅の声に、集は慌ててめぼしいナイフやハサミをバッグに突っ込むと、未花子達と共に研究室を後にしたのだった。
 願わくばこれ以上、余計な犠牲が出ないことを祈りながら。
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