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<25・Luca>
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彼女は名前をルカというらしい。
己が前世でどういう人間だったのか。
そして、自分が今何故勇者をやっているのか。それらをノエルが語り終えるまで、ルカは静かに聞いてくれていた。
「……私は、てっきり……」
少しだけ困惑したように、彼女は眉をひそめた。
「勇者をやられる方々はみなさん、この世界を楽しんでらっしゃるのかとばかり思っていました。特にその、サリーさんとゾウマさんは恋人同士になって、王都のお屋敷で毎日楽しく暮らしてらっしゃるのですよね?」
「ですね。それに、マリオンさんとゴートンさんもかなりこの世界を謳歌していると思います。退屈な日本を抜け出して、今はチートスキルを使って好きなことがたくさんできるようになったって」
「はい。新聞でも確か、サリーさんがそんな話をしているのを耳にしたことがありますね」
まあ、露出が多いのは圧倒的にサリーとゾウマである。彼らの言葉がそのまま勇者のイメージになってしまうのはなんらおかしなことではあるまい。
「……ノエルさんも、今の世界を楽しもうとは思わなかったのです?どうしても元の世界に帰りたい?」
ルカの言葉に、ノエルははい、と頷いた。
「確かに、令和時代の日本には……辛いこともたくさんありました。今みたいなイケメンじゃなかったし、いじめられたこともあったし……魔法で起こせる奇跡もなければ、都合の良いチートスキルもありません。そして、この世界の仕組みに不満があるとか、そういうわけではないんです。でもやっぱり僕は……僕が本来生きていた世界はあそこだから。故郷って、そう簡単に捨てられるものじゃないでしょ?」
「そう、ですね」
「元の世界で突然僕が死んで、親友も家族もきっと悲しませてしまったと思うんです。退屈なこと、辛いことばっかりの世界じゃなかった。楽しいことや、大切にしたいこともたくさんあった。それら全て捨てて異世界になんて僕は来たくなかったんです。……って、すみません。こんな話、この世界で生きているルカさんに本来するべきではありませんよね」
「いえ、とんでもないです。お話を伺いたかったのは私ですから」
彼女は首を横に振った。顔が赤くなってはいないが、彼女は素面なのかどうなのか。いかんせん、お酒を飲んでもちっとも酔ったように見えない人も世の中にはいるのだ。自分がアルコール臭くなっているせいで、余計に判別がつかない。
「……勇者様に出会ったら、お尋ねしたいと思ってたことがあるんです」
ルカは真剣なまなざしで、ノエルに問いかけた。
「貴方がたは……ヴァリアントが生まれる原因は、本当に魔王にあったと思いますか?」
「!」
「ご、ごめんなさい。でも、みんな噂してるんです。二年前に魔王は倒されたのに、まだヴァリアントが生まれるのは……実は人違いだったからじゃないか、とか。魔王の残党を討伐すれば終わると言われながら二年も過ぎたのは、そもそも残党なんてものもいないからじゃないかとか。……それに何故、ヴァリアントを生み出したのが魔王だと判断されたのか、その根拠もわからなくて」
「…………」
彼女の疑問は、至極真っ当なものだった。むしろ、今日までよく真正面から尋ねてくる者がいなかったものだ。ノエルはじっと自分が持っているグラスを見つめる。そこには少しだけ泣きそうな顔をした自分が映っていた。
『あんたも、女神様に願いを叶えて貰いたいんでしょう?確かに気になるところがあるのは事実だけど……魔王がもともとは黒幕だった、それを信じておいた方が平和なんじゃなくて?あたしも、あんたもね』
思い出したのは、サリーの言葉だ。
ノエルもわかっているのである。何故彼女が自分にあんなことを言ったのか、くらいは。
自分達は、勇者でなければいけない。今更、魔王が人違いでした、なんてことがあってはならないのだ。そうでなければ自分達は罪もない人を殺し、その仲間の城を焼き討ちしたことになってしまう。英雄は世界を救う一助となった存在でなければならず、常に正義の側であらねばならない。そのような間違い、存在さえも許されないのだと。
それは、自分達が糾弾されるから、というだけではない。
そのような真実が仮にあったとしても――耐えられるほど、自分達が強くないからでもあるのだ。
「……ヴァリアントは、魔王が世界征服のために生み出して、世界に飛び散らせたもの。魔王の力を絶てば、全てが終わる。……それは、この世界に転生してきた僕たちが、女神様に言われたことです。僕達はそれを信じて、魔王と戦いました。それが真実か否かなんて、あの時の僕達は考えなかった。前世とは違うこの世界で、好きなチートスキルを貰って無双するのが楽しかったがために。あるいは……正義の味方になって、魔王を倒す勇者というポジションに酔いしれたがために」
それに加えて、自分は一刻も早くこの世界を平和にして元の世界に帰るのだという気持ちもあった。だからさっさと魔王を倒して終わりにしたい、と。
本音を言えば。この世界が平和になるかどうかなんて、自分にはさほど重要ではなかったのだ。ここは自分の世界ではなく、一時的に飛ばされてしまった仮宿にすぎなかったのだから。
「でも、今は……自分達がやったことが本当に正しいことだったのか、疑問に思っています。実際女神様の言う通りにしても、世界からヴァリアントが消えることはなかったのですから。間違っていたかもしれない。自分達はひょっとしたら……罪もない人を殺してしまったのかもしれないって」
ぎゅっと拳を握りしめる。今更こんなことを考えたところで、死んだ人が戻ってくるわけではない。それでも、じゃあサリーが言う通りに何も考えなければいいなんて、そう簡単にノエルは割り切ることができないのだ。
見なかったフリをしたって、過去は変えられない。
誰かにとって自分達が、殺したいほど憎い相手になったかもしれない事実が。誰かの命を惨たらしく奪った現実が変わるわけではないのだから。
そう、二年前。ノエルは直接参戦しなかったとはいえ、サリーとゾウマが人を殺すのに協力したのは間違いないのだ。
人殺し。大変な罪だ。令和の日本ならば極刑もありえるような恐ろしいこと。どうして自分達はそのような大罪を、なんの罪悪感もなく行えてしまったのだろう。魔王アークが本当に世界征服を行おうとしてたのだとしてもだ。かつての自分たちの理性に照らし合わせるならば、“じゃあ殺しても無罪です”なんてことにはならない。裁判を受けて、その果てに死刑になるのとはまったく訳が違うのだから。
どうして罪悪感がなかったのか?決まっている。
現代日本ではなかったから。
法律でダメと言われなかったから。
相手が、殺していい悪だと誰かに言われたから。
そして、この世界のことを真剣に考えなかったから。身勝手にも自分の願いをさっさと叶えたいと、そればかりを考えてしまったから。
「魔王アークは、最後まで罪を否認していたといいます。せめて……せめて彼が本当に悪なのか、捕まえて裁判にかけて調べるということではだめだったのか。魔王アークの部下たちに至っては、まったく話も聞かずに焼き討ちしてしまったのです」
何が真実か。
どうして自分達は誰かに言われるがまま、己で考えることを放棄してしまったのだろう?
一番の理由は明白だ。――都合の悪い真実なんてものが出てきては困るから。魔王がもし元凶出なかった場合、世界を平和にするためにはほかの元凶を探さなければいけない。それは女神の意向に逆らうことであり、その分自分達が願いを叶えて貰えるまでの道が遠くなることでもある。そんなこと、あの時の自分達は考える勇気さえなかったのである。
「勿論、本当に巨悪の魔王なら。そんな悠長なことは言っていられなかったでしょう。やらなければやられる、戦争の真理とはそういうものです。でも、魔王はほぼ無抵抗でサリーさんに撃たれた。ほかの人たちも同じです。結果論とはいえ……本当に彼らが巨悪だったのかと、考える余地は十分にあったと今なら思います」
「……ノエルさん」
黙ってノエルの話を聞いていたルカは、静かな声で告げたのだった。
「そもそも、正義と悪ってなんだと思いますか?誰がそんなこと決めるんでしょうか」
「え……」
「ゲームやおとぎ話ではよく、正義の味方が悪の大魔王を殺して話がハッピーエンドになります。でも……本来は、この世界には正義しかないか、あるいは正義も悪もない世界なのではないかと私は思うことがあるんです。例えば魔王アークは、はぐれ者になった者達を匿っていました。もしも彼らの安寧の地を獲得するため、人類と戦う道を選んだならば?それは……その行動はきっと人類には侵略行為に見えるのでしょうけれど。魔王にとっては、大切な者の居場所を手にするための聖戦なのかもしれません。視点を変えれば、本当の悪なんて何処にもないなんて、そんなこともあると思うんです」
ただ、と彼女は続ける。
「そんなこと、多くの人は考えない。……相手にも同情の余地があるかもしれないなんて考えたくもない。己が絶対的正義でいた方が楽だから。そして……都合の悪い真実なんて、見たくもないから。誰だってそうだと思うんです。本当に求めているのは真実ではなく、都合の良い真実だけ。愛がなければ、不都合な真実の全ては見えない、音もなく殺される。それがこの世界だって」
それは、まさしくノエルが思っていたことだった。自分達が過去にしてしまったのは、そういうことだったのだろう。
無論、自分達は魔王が本当に潔白だったという証拠を持っているわけでもない。彼が本当に世界征服を目論んだ悪であった可能性もなくはない。
そう、どっちだと断ずることさえできないのだ。断ずることもできないのに、潔白かもしれないという“あったことがあるかもしれない”真実を、猫箱の中に葬り去ったのである。魔王アークの命を共に。
「……少し、感心しました。勇者の中にも、貴方のような人がいると知れて、良かった」
ルカは少しだけ寂しそうに笑って、ノエルに問いかけてきたのである。
「お尋ねします、ノエルさん。貴方は過去の自分達に疑問を持った。間違っているかもしれないと疑った。……その上で今、自分は何をすべきだとお考えですか?」
己が前世でどういう人間だったのか。
そして、自分が今何故勇者をやっているのか。それらをノエルが語り終えるまで、ルカは静かに聞いてくれていた。
「……私は、てっきり……」
少しだけ困惑したように、彼女は眉をひそめた。
「勇者をやられる方々はみなさん、この世界を楽しんでらっしゃるのかとばかり思っていました。特にその、サリーさんとゾウマさんは恋人同士になって、王都のお屋敷で毎日楽しく暮らしてらっしゃるのですよね?」
「ですね。それに、マリオンさんとゴートンさんもかなりこの世界を謳歌していると思います。退屈な日本を抜け出して、今はチートスキルを使って好きなことがたくさんできるようになったって」
「はい。新聞でも確か、サリーさんがそんな話をしているのを耳にしたことがありますね」
まあ、露出が多いのは圧倒的にサリーとゾウマである。彼らの言葉がそのまま勇者のイメージになってしまうのはなんらおかしなことではあるまい。
「……ノエルさんも、今の世界を楽しもうとは思わなかったのです?どうしても元の世界に帰りたい?」
ルカの言葉に、ノエルははい、と頷いた。
「確かに、令和時代の日本には……辛いこともたくさんありました。今みたいなイケメンじゃなかったし、いじめられたこともあったし……魔法で起こせる奇跡もなければ、都合の良いチートスキルもありません。そして、この世界の仕組みに不満があるとか、そういうわけではないんです。でもやっぱり僕は……僕が本来生きていた世界はあそこだから。故郷って、そう簡単に捨てられるものじゃないでしょ?」
「そう、ですね」
「元の世界で突然僕が死んで、親友も家族もきっと悲しませてしまったと思うんです。退屈なこと、辛いことばっかりの世界じゃなかった。楽しいことや、大切にしたいこともたくさんあった。それら全て捨てて異世界になんて僕は来たくなかったんです。……って、すみません。こんな話、この世界で生きているルカさんに本来するべきではありませんよね」
「いえ、とんでもないです。お話を伺いたかったのは私ですから」
彼女は首を横に振った。顔が赤くなってはいないが、彼女は素面なのかどうなのか。いかんせん、お酒を飲んでもちっとも酔ったように見えない人も世の中にはいるのだ。自分がアルコール臭くなっているせいで、余計に判別がつかない。
「……勇者様に出会ったら、お尋ねしたいと思ってたことがあるんです」
ルカは真剣なまなざしで、ノエルに問いかけた。
「貴方がたは……ヴァリアントが生まれる原因は、本当に魔王にあったと思いますか?」
「!」
「ご、ごめんなさい。でも、みんな噂してるんです。二年前に魔王は倒されたのに、まだヴァリアントが生まれるのは……実は人違いだったからじゃないか、とか。魔王の残党を討伐すれば終わると言われながら二年も過ぎたのは、そもそも残党なんてものもいないからじゃないかとか。……それに何故、ヴァリアントを生み出したのが魔王だと判断されたのか、その根拠もわからなくて」
「…………」
彼女の疑問は、至極真っ当なものだった。むしろ、今日までよく真正面から尋ねてくる者がいなかったものだ。ノエルはじっと自分が持っているグラスを見つめる。そこには少しだけ泣きそうな顔をした自分が映っていた。
『あんたも、女神様に願いを叶えて貰いたいんでしょう?確かに気になるところがあるのは事実だけど……魔王がもともとは黒幕だった、それを信じておいた方が平和なんじゃなくて?あたしも、あんたもね』
思い出したのは、サリーの言葉だ。
ノエルもわかっているのである。何故彼女が自分にあんなことを言ったのか、くらいは。
自分達は、勇者でなければいけない。今更、魔王が人違いでした、なんてことがあってはならないのだ。そうでなければ自分達は罪もない人を殺し、その仲間の城を焼き討ちしたことになってしまう。英雄は世界を救う一助となった存在でなければならず、常に正義の側であらねばならない。そのような間違い、存在さえも許されないのだと。
それは、自分達が糾弾されるから、というだけではない。
そのような真実が仮にあったとしても――耐えられるほど、自分達が強くないからでもあるのだ。
「……ヴァリアントは、魔王が世界征服のために生み出して、世界に飛び散らせたもの。魔王の力を絶てば、全てが終わる。……それは、この世界に転生してきた僕たちが、女神様に言われたことです。僕達はそれを信じて、魔王と戦いました。それが真実か否かなんて、あの時の僕達は考えなかった。前世とは違うこの世界で、好きなチートスキルを貰って無双するのが楽しかったがために。あるいは……正義の味方になって、魔王を倒す勇者というポジションに酔いしれたがために」
それに加えて、自分は一刻も早くこの世界を平和にして元の世界に帰るのだという気持ちもあった。だからさっさと魔王を倒して終わりにしたい、と。
本音を言えば。この世界が平和になるかどうかなんて、自分にはさほど重要ではなかったのだ。ここは自分の世界ではなく、一時的に飛ばされてしまった仮宿にすぎなかったのだから。
「でも、今は……自分達がやったことが本当に正しいことだったのか、疑問に思っています。実際女神様の言う通りにしても、世界からヴァリアントが消えることはなかったのですから。間違っていたかもしれない。自分達はひょっとしたら……罪もない人を殺してしまったのかもしれないって」
ぎゅっと拳を握りしめる。今更こんなことを考えたところで、死んだ人が戻ってくるわけではない。それでも、じゃあサリーが言う通りに何も考えなければいいなんて、そう簡単にノエルは割り切ることができないのだ。
見なかったフリをしたって、過去は変えられない。
誰かにとって自分達が、殺したいほど憎い相手になったかもしれない事実が。誰かの命を惨たらしく奪った現実が変わるわけではないのだから。
そう、二年前。ノエルは直接参戦しなかったとはいえ、サリーとゾウマが人を殺すのに協力したのは間違いないのだ。
人殺し。大変な罪だ。令和の日本ならば極刑もありえるような恐ろしいこと。どうして自分達はそのような大罪を、なんの罪悪感もなく行えてしまったのだろう。魔王アークが本当に世界征服を行おうとしてたのだとしてもだ。かつての自分たちの理性に照らし合わせるならば、“じゃあ殺しても無罪です”なんてことにはならない。裁判を受けて、その果てに死刑になるのとはまったく訳が違うのだから。
どうして罪悪感がなかったのか?決まっている。
現代日本ではなかったから。
法律でダメと言われなかったから。
相手が、殺していい悪だと誰かに言われたから。
そして、この世界のことを真剣に考えなかったから。身勝手にも自分の願いをさっさと叶えたいと、そればかりを考えてしまったから。
「魔王アークは、最後まで罪を否認していたといいます。せめて……せめて彼が本当に悪なのか、捕まえて裁判にかけて調べるということではだめだったのか。魔王アークの部下たちに至っては、まったく話も聞かずに焼き討ちしてしまったのです」
何が真実か。
どうして自分達は誰かに言われるがまま、己で考えることを放棄してしまったのだろう?
一番の理由は明白だ。――都合の悪い真実なんてものが出てきては困るから。魔王がもし元凶出なかった場合、世界を平和にするためにはほかの元凶を探さなければいけない。それは女神の意向に逆らうことであり、その分自分達が願いを叶えて貰えるまでの道が遠くなることでもある。そんなこと、あの時の自分達は考える勇気さえなかったのである。
「勿論、本当に巨悪の魔王なら。そんな悠長なことは言っていられなかったでしょう。やらなければやられる、戦争の真理とはそういうものです。でも、魔王はほぼ無抵抗でサリーさんに撃たれた。ほかの人たちも同じです。結果論とはいえ……本当に彼らが巨悪だったのかと、考える余地は十分にあったと今なら思います」
「……ノエルさん」
黙ってノエルの話を聞いていたルカは、静かな声で告げたのだった。
「そもそも、正義と悪ってなんだと思いますか?誰がそんなこと決めるんでしょうか」
「え……」
「ゲームやおとぎ話ではよく、正義の味方が悪の大魔王を殺して話がハッピーエンドになります。でも……本来は、この世界には正義しかないか、あるいは正義も悪もない世界なのではないかと私は思うことがあるんです。例えば魔王アークは、はぐれ者になった者達を匿っていました。もしも彼らの安寧の地を獲得するため、人類と戦う道を選んだならば?それは……その行動はきっと人類には侵略行為に見えるのでしょうけれど。魔王にとっては、大切な者の居場所を手にするための聖戦なのかもしれません。視点を変えれば、本当の悪なんて何処にもないなんて、そんなこともあると思うんです」
ただ、と彼女は続ける。
「そんなこと、多くの人は考えない。……相手にも同情の余地があるかもしれないなんて考えたくもない。己が絶対的正義でいた方が楽だから。そして……都合の悪い真実なんて、見たくもないから。誰だってそうだと思うんです。本当に求めているのは真実ではなく、都合の良い真実だけ。愛がなければ、不都合な真実の全ては見えない、音もなく殺される。それがこの世界だって」
それは、まさしくノエルが思っていたことだった。自分達が過去にしてしまったのは、そういうことだったのだろう。
無論、自分達は魔王が本当に潔白だったという証拠を持っているわけでもない。彼が本当に世界征服を目論んだ悪であった可能性もなくはない。
そう、どっちだと断ずることさえできないのだ。断ずることもできないのに、潔白かもしれないという“あったことがあるかもしれない”真実を、猫箱の中に葬り去ったのである。魔王アークの命を共に。
「……少し、感心しました。勇者の中にも、貴方のような人がいると知れて、良かった」
ルカは少しだけ寂しそうに笑って、ノエルに問いかけてきたのである。
「お尋ねします、ノエルさん。貴方は過去の自分達に疑問を持った。間違っているかもしれないと疑った。……その上で今、自分は何をすべきだとお考えですか?」
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