38 / 41
<38・Lucle>
しおりを挟む
どうしてノエルが突然ヴァリアント化してしまったのか。そのメカニズムを考えるのはあとだ。女神の怒りに触れたからそうなったのだとすれば、やはり女神は自分の意思でヴァリアントになる人間を選べるということになる。
だとすれば、ルチルが今無事であるのは神の気まぐれのようなものなのだろうか。あるいは、女神に連絡を取ろうとすると、自動的に罠が発動する仕掛けにでもなっていた?
『あ、あああ……な、んで。僕が、女神様に……連絡を取ろうとしたから?やるなっていう、命令を、破ったから?』
彼は確かに、命令を破った、と言っていた。きっと、連絡をしてくるなとでも命じられていたのだろう。そのルールを破ると自動で勇者がヴァリアント化してしまう仕掛けになっていたという可能性は高そうである。
どっちにしろ確かなことは。兄たちが駆けつけてくるまで、この場所はルチルがなんとかするしかないということ。
否、本当に兄の負担になりたくないのなら、ルチルが一人で戦ってみせるべきだということだ。
――やってやる!ルチルも……もう、雪の中で凍えていた子供じゃないのだから!
今、多くの薬品を入れたトランクは手元にない。しかし白衣の下には、いざという時のためにいくつか“護身用”の試薬を忍ばせてきてはいるのだ。それらを調合すれば、この場においても多少の薬は作ることができる。
「に、逃げて、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「!」
水晶と同じ紫色の棘が、牢屋の中から三本突き出してきた。ルチルはどうにか身を翻して回避する。棘は、石でできているはずの廊下の壁を軽々と突き破っていた。あれに刺されたら、素敵な串刺し肉が出来上がるのは明白である。一応防具も着てきてはいるが、あまりアテにしない方がよさそうだ。
幸い、まだノエルの意思があるからなのか、水晶体の成長スピードはけして速くはない。
また、棘を出してから次の攻撃が来るまでしばし猶予があるようだった。多分まだヴァリアント化したてであるため、エネルギーを効率的に使えていないのだろう。一度攻撃すると疲れてしまってしばらく休まなければいけない、といった風だ。
ただ、彼が完全に体を制御できるのであれば、ルチルが攻撃を受けているはずがないわけで。あまり過信せず、迅速に対応した方がよさそうではある。
――今の隙に……!
ルチルは白衣の下に忍ばせた薬品を素早く調合する。自分が持っている試薬は、調合次第で薬にも毒にもできる代物だ。鉱物のような体に変化しつつあるノエルに、普通の毒物が効くとは思えない。よって今作るべき薬は、強い酸性を持つ溶解液だ。
「よしっ!」
戦闘中であっても、感覚で的確な配合ができるという自信がルチルにはあった。試験管に混ぜた劇薬を思い切りノエルの方にぶっかける。
じゅうううううう、と煙を上げて、廊下に浸食してきていた水晶の一部が溶けた。
――良かった、これで溶けなかったらどうしようかと思った……!
金剛石さえも溶かすことができるとっておきの溶解液だ。これで対処できなかったならなすすべなかったところである。溶けた水晶はしばらく沸騰した後、どろどろに溶けたものがゆっくりと固まって戻っていくようだが――それでも一時的にダメージを与えることができるとわかっただけ儲けものだ。
「あ、はは……僕、やっぱり、化け物になっちゃったんだな……」
青ざめた顔に涙を浮かべて、ノエルが言った。どうやら、首だけはこのまま取り込まれずに残るということらしい。体はすっかり、水晶の一部と化してしまっているが。
「溶かされた、のに……全然、痛くない……はは。困ったな……」
「何呑気なこと言ってるんですか!勇者のくせに、諦めるのが早すぎでしょう!?」
気づけば苛立ちのまま、ルチルは叫んでいた。
「このままでいいとは思ってないって、そう言っていたのは貴方でしょう!?変わりたかったんじゃないですか、前世で一緒だったお友達のように!」
『都合が良すぎるのは分かっています。でも僕は……自分の命のすべてをもってして、ちゃんと償いをしたいんです。きっと前世でともに生きた親友なら、そうすると思うから……!サリーさんたちが生きてるのなら僕が説得します、だから!!』
自分は何を言ってるんだろう。ルチルは自問自答していた。たった二度話しただけの相手。憎い憎い勇者の一人。それなのに今、どうしてこんなに泣きたい気持ちになっているのだろう。悔しいのだろう。
彼が己の末路を諦めようがどうしようが自分には関係ないことだ。極端な話、兄や仲間たちが巻き込まれなければ何も気にしなくていいはずなのに。
ノエルの心が折れそうになっていることが今、どこまでも許せないと感じている。
「生きて償うとか言っていたのに、それは口先だけですか?ふざけたことぬかしてんじゃねえよ!!」
贖うというのなら、それだけの気概を見せてほしい。
償いたいというのなら、どれほど苦しくても痛くても生き抜く根性を見せてほしい。
それを見て初めて、自分も納得できるような気がしているのだ。そう。
――本当は彼らも人間だったんだって。憎み合うべきじゃなかったんだって、そう思えたらどんなにか。
無論、それはノエル相手のことであって、サリーのような根性ひん曲がった女相手にも同じことが言えたかどうかは怪しいけれど。というか、罠が狙った通りに発動したなら彼女はもうすでに死んでいてもおかしくないけれど。
それでも、一つの事実として。彼らもまた望んでこの世界に来たわけではなかったと知ってしまったのだ。そして、女神に言われたことをそのまま実行しただけであること、その真偽を確かめるだけの余地も与えられていなかったということは。
同情の余地なんて言うべきじゃない、でも。
ひょっとしたら。そうやって憎み合うことそのものが、全てを仕組んだ女神の狙い通りなのかもしれなくて。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
再び突き出してくる二本の棘。白衣が僅かに破れたがなんとか回避に成功する。ルチルはもう一度薬品を調合すると、前進しながら振りかぶった。
薬の残りも多くはない。これで決める。一度足元に落とした剣を拾い直しながら、薬品をノエルの胸元にぶちまけた。じゅうううう、と再度上がる白い煙。水晶が大きく溶ける。
――弱点!ルチルには見えないけど、ノエルの心臓部分だって本人が言ってた。今だけは、信じる!
溶けたところに、思い切り剣を突き刺した。硬い水晶は薬品だけでは全て溶け切っていなかったが。それでも女神から貰ったという対ヴァリアント用の剣はするするとノエルの体に吸い込まれていく。
びしびしびしびし、と紫色の水晶が放射線状にひび割れ始めた。全体重を乗せるようにして、さらに剣を押し込む。水晶に飲み込まれたノエルの胸元に、深々と沈み込んでいく剣。
「……ルチル、さん」
すぐそばに近づいた顔。ノエルは、さっきまでの苦痛が消え去ったような穏やかな笑みで、ルチルを見ていた。
「……ありがとうございます。それから、本当にごめんなさい。どうか、いつか……貴女も、幸せになってください、ね……」
何故そんなことを言うのだろう。
何故そんなことが言えたのだろう。
答えは、この直後に明らかになることになる。
***
時々壁から突き出してくる棘を避けていたら、地下室への到着がだいぶ遅れてしまった。
ようやくジルとゴートンが辿り着いた時に見たものは、破壊されつくした檻と、人間の姿に戻ってあおむけに倒れているノエル。その前にしゃがみこんでいるルチルの姿だった。
「ルチル!」
ジルが駆け寄ると、ルチルは憔悴しきった顔を上げる。っして、がさがさに乾いた唇で言葉を紡いだのだった。
「……お兄様、どういうことなんですか」
「え?」
「ヴァリアント、は。殺したら……元の人間に戻って、生き返るのではないのですか。どうして……どうしてこの人、死体のままなんですか」
「!?」
どうやらルチルが自力で、ヴァリアント化したノエルを倒したということらしい。だが、ノエルは倒れたままぴくりとも動かない。その胸には大きな傷がある。恐らくルチルがとどめを刺した時の傷だろう。
しかし、ノエルは明らかに息をしていない。
穏やかな表情のまま、ぴくりとも動かずそこに倒れている。まるで眠っているかのような死に顔だった。
「あ、あああ……!」
ジルと一緒に来たゴートンが、茫然としたようにその場に崩れ落ちた。
「粛清されたんだ、女神様に……!」
「粛清?」
「め、女神様から命じられたいくつかのルールがあったんだ。女神様にこっちから連絡を取ってはいけないとか、女神様のいる国の扉をこっちから開けてはいけないとか。そ、それを破ったらどうなるかは聞いてなかったが、それが、死ぬってことなんだとしたら……」
ううう、とうめき声をあげて蹲るゴートン。
「ヴァリアント化されて、しかも倒されたら蘇ることもできなくなるなんて、そんな、そんなのってねえよ……!やっぱり、全部女神様が仕組んだことだったってのか?俺達は、俺達はなんのために?今日まで何のために戦ってきたんだ、あ、あああ、ああああ……!」
彼の絶望は当然のことだろう。
何故ならたった今、確定したのだから。ノエルは死んだ。それによって、まだ助かったかもしれないマリオンもこの時点で死亡が確定した。勇者は、ゴートン一人だけになってしまったのだ。
彼にとっては、どれほど見下されようと仲間は仲間だったという。この異世界で一人きり。どれほどの恐怖であることか。
――変だな、俺。何を考えてるんだか。
馬鹿らしい。彼の孤独なんて、自分が想像する必要もないことではないか。アークが殺されるのに手を貸して、たくさんの女達を凌辱してきたこんな男のことなど。
「……なあ、ジニー」
やがて、ゴートンは泣き濡れた顔を上げるのである。
「教えてくれ。……あんた本当は……本当は、魔王の手下、なのか?」
「……!」
息をのんだ気配は、果たして彼に伝わっただろうか。
だとすれば、ルチルが今無事であるのは神の気まぐれのようなものなのだろうか。あるいは、女神に連絡を取ろうとすると、自動的に罠が発動する仕掛けにでもなっていた?
『あ、あああ……な、んで。僕が、女神様に……連絡を取ろうとしたから?やるなっていう、命令を、破ったから?』
彼は確かに、命令を破った、と言っていた。きっと、連絡をしてくるなとでも命じられていたのだろう。そのルールを破ると自動で勇者がヴァリアント化してしまう仕掛けになっていたという可能性は高そうである。
どっちにしろ確かなことは。兄たちが駆けつけてくるまで、この場所はルチルがなんとかするしかないということ。
否、本当に兄の負担になりたくないのなら、ルチルが一人で戦ってみせるべきだということだ。
――やってやる!ルチルも……もう、雪の中で凍えていた子供じゃないのだから!
今、多くの薬品を入れたトランクは手元にない。しかし白衣の下には、いざという時のためにいくつか“護身用”の試薬を忍ばせてきてはいるのだ。それらを調合すれば、この場においても多少の薬は作ることができる。
「に、逃げて、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「!」
水晶と同じ紫色の棘が、牢屋の中から三本突き出してきた。ルチルはどうにか身を翻して回避する。棘は、石でできているはずの廊下の壁を軽々と突き破っていた。あれに刺されたら、素敵な串刺し肉が出来上がるのは明白である。一応防具も着てきてはいるが、あまりアテにしない方がよさそうだ。
幸い、まだノエルの意思があるからなのか、水晶体の成長スピードはけして速くはない。
また、棘を出してから次の攻撃が来るまでしばし猶予があるようだった。多分まだヴァリアント化したてであるため、エネルギーを効率的に使えていないのだろう。一度攻撃すると疲れてしまってしばらく休まなければいけない、といった風だ。
ただ、彼が完全に体を制御できるのであれば、ルチルが攻撃を受けているはずがないわけで。あまり過信せず、迅速に対応した方がよさそうではある。
――今の隙に……!
ルチルは白衣の下に忍ばせた薬品を素早く調合する。自分が持っている試薬は、調合次第で薬にも毒にもできる代物だ。鉱物のような体に変化しつつあるノエルに、普通の毒物が効くとは思えない。よって今作るべき薬は、強い酸性を持つ溶解液だ。
「よしっ!」
戦闘中であっても、感覚で的確な配合ができるという自信がルチルにはあった。試験管に混ぜた劇薬を思い切りノエルの方にぶっかける。
じゅうううううう、と煙を上げて、廊下に浸食してきていた水晶の一部が溶けた。
――良かった、これで溶けなかったらどうしようかと思った……!
金剛石さえも溶かすことができるとっておきの溶解液だ。これで対処できなかったならなすすべなかったところである。溶けた水晶はしばらく沸騰した後、どろどろに溶けたものがゆっくりと固まって戻っていくようだが――それでも一時的にダメージを与えることができるとわかっただけ儲けものだ。
「あ、はは……僕、やっぱり、化け物になっちゃったんだな……」
青ざめた顔に涙を浮かべて、ノエルが言った。どうやら、首だけはこのまま取り込まれずに残るということらしい。体はすっかり、水晶の一部と化してしまっているが。
「溶かされた、のに……全然、痛くない……はは。困ったな……」
「何呑気なこと言ってるんですか!勇者のくせに、諦めるのが早すぎでしょう!?」
気づけば苛立ちのまま、ルチルは叫んでいた。
「このままでいいとは思ってないって、そう言っていたのは貴方でしょう!?変わりたかったんじゃないですか、前世で一緒だったお友達のように!」
『都合が良すぎるのは分かっています。でも僕は……自分の命のすべてをもってして、ちゃんと償いをしたいんです。きっと前世でともに生きた親友なら、そうすると思うから……!サリーさんたちが生きてるのなら僕が説得します、だから!!』
自分は何を言ってるんだろう。ルチルは自問自答していた。たった二度話しただけの相手。憎い憎い勇者の一人。それなのに今、どうしてこんなに泣きたい気持ちになっているのだろう。悔しいのだろう。
彼が己の末路を諦めようがどうしようが自分には関係ないことだ。極端な話、兄や仲間たちが巻き込まれなければ何も気にしなくていいはずなのに。
ノエルの心が折れそうになっていることが今、どこまでも許せないと感じている。
「生きて償うとか言っていたのに、それは口先だけですか?ふざけたことぬかしてんじゃねえよ!!」
贖うというのなら、それだけの気概を見せてほしい。
償いたいというのなら、どれほど苦しくても痛くても生き抜く根性を見せてほしい。
それを見て初めて、自分も納得できるような気がしているのだ。そう。
――本当は彼らも人間だったんだって。憎み合うべきじゃなかったんだって、そう思えたらどんなにか。
無論、それはノエル相手のことであって、サリーのような根性ひん曲がった女相手にも同じことが言えたかどうかは怪しいけれど。というか、罠が狙った通りに発動したなら彼女はもうすでに死んでいてもおかしくないけれど。
それでも、一つの事実として。彼らもまた望んでこの世界に来たわけではなかったと知ってしまったのだ。そして、女神に言われたことをそのまま実行しただけであること、その真偽を確かめるだけの余地も与えられていなかったということは。
同情の余地なんて言うべきじゃない、でも。
ひょっとしたら。そうやって憎み合うことそのものが、全てを仕組んだ女神の狙い通りなのかもしれなくて。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
再び突き出してくる二本の棘。白衣が僅かに破れたがなんとか回避に成功する。ルチルはもう一度薬品を調合すると、前進しながら振りかぶった。
薬の残りも多くはない。これで決める。一度足元に落とした剣を拾い直しながら、薬品をノエルの胸元にぶちまけた。じゅうううう、と再度上がる白い煙。水晶が大きく溶ける。
――弱点!ルチルには見えないけど、ノエルの心臓部分だって本人が言ってた。今だけは、信じる!
溶けたところに、思い切り剣を突き刺した。硬い水晶は薬品だけでは全て溶け切っていなかったが。それでも女神から貰ったという対ヴァリアント用の剣はするするとノエルの体に吸い込まれていく。
びしびしびしびし、と紫色の水晶が放射線状にひび割れ始めた。全体重を乗せるようにして、さらに剣を押し込む。水晶に飲み込まれたノエルの胸元に、深々と沈み込んでいく剣。
「……ルチル、さん」
すぐそばに近づいた顔。ノエルは、さっきまでの苦痛が消え去ったような穏やかな笑みで、ルチルを見ていた。
「……ありがとうございます。それから、本当にごめんなさい。どうか、いつか……貴女も、幸せになってください、ね……」
何故そんなことを言うのだろう。
何故そんなことが言えたのだろう。
答えは、この直後に明らかになることになる。
***
時々壁から突き出してくる棘を避けていたら、地下室への到着がだいぶ遅れてしまった。
ようやくジルとゴートンが辿り着いた時に見たものは、破壊されつくした檻と、人間の姿に戻ってあおむけに倒れているノエル。その前にしゃがみこんでいるルチルの姿だった。
「ルチル!」
ジルが駆け寄ると、ルチルは憔悴しきった顔を上げる。っして、がさがさに乾いた唇で言葉を紡いだのだった。
「……お兄様、どういうことなんですか」
「え?」
「ヴァリアント、は。殺したら……元の人間に戻って、生き返るのではないのですか。どうして……どうしてこの人、死体のままなんですか」
「!?」
どうやらルチルが自力で、ヴァリアント化したノエルを倒したということらしい。だが、ノエルは倒れたままぴくりとも動かない。その胸には大きな傷がある。恐らくルチルがとどめを刺した時の傷だろう。
しかし、ノエルは明らかに息をしていない。
穏やかな表情のまま、ぴくりとも動かずそこに倒れている。まるで眠っているかのような死に顔だった。
「あ、あああ……!」
ジルと一緒に来たゴートンが、茫然としたようにその場に崩れ落ちた。
「粛清されたんだ、女神様に……!」
「粛清?」
「め、女神様から命じられたいくつかのルールがあったんだ。女神様にこっちから連絡を取ってはいけないとか、女神様のいる国の扉をこっちから開けてはいけないとか。そ、それを破ったらどうなるかは聞いてなかったが、それが、死ぬってことなんだとしたら……」
ううう、とうめき声をあげて蹲るゴートン。
「ヴァリアント化されて、しかも倒されたら蘇ることもできなくなるなんて、そんな、そんなのってねえよ……!やっぱり、全部女神様が仕組んだことだったってのか?俺達は、俺達はなんのために?今日まで何のために戦ってきたんだ、あ、あああ、ああああ……!」
彼の絶望は当然のことだろう。
何故ならたった今、確定したのだから。ノエルは死んだ。それによって、まだ助かったかもしれないマリオンもこの時点で死亡が確定した。勇者は、ゴートン一人だけになってしまったのだ。
彼にとっては、どれほど見下されようと仲間は仲間だったという。この異世界で一人きり。どれほどの恐怖であることか。
――変だな、俺。何を考えてるんだか。
馬鹿らしい。彼の孤独なんて、自分が想像する必要もないことではないか。アークが殺されるのに手を貸して、たくさんの女達を凌辱してきたこんな男のことなど。
「……なあ、ジニー」
やがて、ゴートンは泣き濡れた顔を上げるのである。
「教えてくれ。……あんた本当は……本当は、魔王の手下、なのか?」
「……!」
息をのんだ気配は、果たして彼に伝わっただろうか。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる