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<8・反転する物語>
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有難いことに、梟の話を訊いても英玲奈は取り乱すようなことはなかった。霊障で出入り口が開かないということは、単純に出口を探せばいいということでもなくなってしまう。元凶をどうにかしなければ、この閉じ込められた状況は解決しない。それがわかっていても、心を強く保つのはとても難しいことであるにも関わらず。
正直なところ、非常に有難いところであった。ここで英玲奈にパニックになられたら、どうすればいいかわからなくなってしまう。というか、マリコさんが悲鳴を聞きつけてこっちに来てしまうのが一番困る。彼女がいつ、どの段階で追いついてくるのか全く分からないのだから。
「……確かに、今まで何もおかしなことが起きなかったのに、急にただのおまじないで燕君が行方不明になったり、噂話の中身が元に戻っていたりするのって変ですよね」
「だろ?」
七不思議や怪談なんてものは、人の認識によって形作られるものであると思っている。つまり、誰も噂しなくなった幽霊なんてものは“いなくなったも同然”だと梟は思うのだ。強い力を持つ地縛霊ならともかく、大抵の霊の力なんてものはそうそう強いものでもない。浮遊霊の多くが脅威でないのは、人の認識に強く影響する力を持たないからだと梟は思っている。そのへんを漂っていられる霊というのは自由であるようでいて、一箇所に強い思い入れを持たなかったがゆえ地縛霊にならなかったとも解釈できるのだ。そういう霊は、言い換えれば“意思”が弱い。生きている人間の意識に潜り込めるほどの力はないのである。
生きている人間の気の力は、存外強いものなのだ。よほど鬱々とした人間でもない限りは、常時無意識にバリアでも張っているようなもの。某アニメ的に言うならば、人間は誰しも無自覚にATフィールドを張っているようなものと言っても過言ではないのだ。それを、強い意思を持たない浮遊霊が破るのは並大抵のことではない。
だからこそ、“それでも”誰かに認識されたい、あるいは害を齎したい霊は工夫をするのである。
そのうちの一つが、相手からその防御壁を解かせるということ。
ノックをして相手にドアを開かせようとする霊の話はよくあるが、あれは実に合理的なものなのである。ノックをして呼びかける、相手がそれに答えて霊を自分の領域に“招き入れる”一連の動作が鍵となる。自分から招いたものに対して、人はガードが弱い。悪い霊はそこにつけこんで、自分を“招き入れた”存在に悪さを働くのである。
いずれにせよ、それらの霊の力は“噂となり、怪談となり、物語として認知されることで強固になる”ものである。トイレの花子さん、なんてものがいい例ではないか。赤い服を着たおかっぱの女の子、の姿をイメージする人は少なくない。それは“花子さんとはそういうもの”という噂が広まり、多くの人に認識された結果だ。明確に、詳細にイメージされることで恐怖が具体的な形となり、人に恐れ敬われるようになるのである。一部の主教が偶像を崇拝するのと近いかもしれない。
何が言いたいのかといえば。噂がなくなった、あるいは忘れ去られた存在というものは――それだけで大きく力を削がれるはずだ、ということなのである。
「何かきっかけがあったと思うんだよ。噂が何もなしにひっくり返るとも思わないし、今まで悪さしなかった霊が悪霊になるとも思えない。……なんか、封印でも解かれたみたいな印象なんだよ」
何か最近変わったことはなかったか?と尋ねれば。うーん、と英玲奈は首を傾げる。
「私も、そんなに七不思議に詳しいわけじゃないし。……学校の友達と話したりしないわけじゃないけど、七つ全部知ってる人なんかそうそういないんですよね。むしろ男子の方が面白がって集めてたりするくらいで」
まあ、そういうものだろう。梟が全部知っていたのは、まさに小学生時代にそういうものを面白がっていたクチであったからに他ならない。バカバカしい話ではあるが、そういうものを女子達に語ることで尊敬されたいとか、怖がらせたいとか、まあくだらないことを考える集団の一人であったのである。
「あ」
ふと、何かに気づいたように英玲奈は顔を上げた。
「そういえば、先生が……」
「なんかあったのか、英玲奈ちゃん」
「いや、その。一週間くらい前だったと思うんですけど。六年三組の女の子が一人、家出していなくなっちゃったって聞いてて。六年生の……そうだ、千代田真姫さん」
家出。それも小学生の女の子が。きっと両親は心配していることだろう。
「そりゃ……大変だな。最近の六年生って忙しいもんな。受験する子とかも多いし、すっごく熱心にクラブ活動してる子もいるし」
悩みもきっと多いのだろう、と言えば。そうですよね、と英玲奈は曖昧に頷いた。
「実際、千代田さんは受験生だったって。有名な中学に入るために一生懸命勉強してた真面目な子だったから、みんな心配してるって聞きました。受験のストレスで、逃げちゃったんじゃないかなんて言う人もいます。でも……一部の人は噂してるんです」
「噂?」
「直前に、千代田さんとおまじないの話をしていた人がいたみたいで。その、受験でうまくいくおまじない。千代田さん、最近成績が下がっていて落ち込んでいたらしいんです。で、友達がその千代田さんに、勉学でうまくいくおまじないみたいなのを教えたんだって。多分それ、七不思議の一つだったんだと思うんです。私は詳しく知らないけど、勉強を助けてくれるおまじないもあったみたいで」
確かに、それらしいおまじないもあったような気がする。二階へ続く階段をゆっくり上がりながら、どれだったっけと梟は思い出そうとしていた。
そうだ、確か――五階の女子トイレ。幸運を呼ぶ双子の鏡ではなかっただろうか。
「今日そのおまじないを試してみるね、みたいなことを千代田さんは言ってて。そしたらしばらくして千代田さん、行方不明になっちゃって。落ち込んでいると言われても、そこまで思いつめている様子もなかったし……ましてや家出なんかするような子じゃないからおかしいって、親しい人ほど言ってるんです。もしかしたら、おまじないをやったことと、消えてしまったことは関係があるんじゃないかって」
もしその話が本当ならば、彼女がおまじないを試した一週間前の時点で、この学校の七不思議は害のあるものに変わっていたということになる。つまり、少なくとも一週間前、あるいはそれよりも前に、なんらかのきっかけがあったということだ。
だが、そのきっかけについてはさすがの英玲奈も心当たりがないらしい。当然、既に卒業生である梟もそのような情報をキャッチできているはずがない。
これがTRPGであったなら、図書館にでも行って情報収集するなり、聞き込みでもして調べをつけにいくところである。残念ながらさっきからまるで人に遭遇しないので、聞き込みできる“生きた人間”が全く見当たらない状況なのだが。ついでに言うと、今図書室に行って何かを調べるのも正直怖いと言えば怖い。図書室に何か恐ろしい霊が出る、というような怪談は、自分の記憶にある限りではなかったような気がするけれども。
――なんか、頭の端に引っかかってるんだよな。何か見落としてるような気がしてならない……。
この様子だと、五階の女子トイレも調べに行った方がいいのだろうか。積極的に怪談に関わる場所に行くのは気が進まないが、霊障が起きている原因が何処にあるかわからない以上――そしてその原因が七不思議と関わりがあるかもしれない以上、調べないわけにはいかないのかもしれない。
その場合は、うっかり地雷を踏まないように気をつけなければいけないわけだが。さっきのように、旧七不思議のスイッチをうっかり踏んで、危険を招くようなのは金輪際ごめんなのである。
「職員室って、このへんだっけ?」
「そうです、二階の東のはしっこの方……」
二階へ上がり、職員室とプレートがかかった部屋をそろそろと覗き込む。学校の先生という仕事は、往々にしてブラック企業に例えられることがある。全ての学校がそうだとは言わないが、実際定時や残業なんてものの概念があるとは言い難い。五時まで仕事をしてさあ終わり帰りましょう、ではなく。むしろそのあたりから、“授業外”の仕事がやっと着手できる時間だと聞いたことがある。クラブ活動の面倒を見るのも先生ならば、生徒の課題を作ったり採点をしたりというのも先生の仕事であるからだ。
もっと言うと、いじめや不登校などの問題にも一人ずつ向き合っていかなければいけないのである。それこそ、夜の八時になっても職員室に詰めていることも少なくないと聞いたことがある。――果たして五時定時で残業換算してしまったら、一体月に何時間残業をしていることになるのだろうか。百時間、では済まないような気がしてしまうほどである。
――先生の仕事って、本当に大変だよな。……やりがい搾取ってダメだと思うんだけど。
電気はついているし、普段なら先生たちのほとんどがまだ帰っていない時間だろう。
だが、職員室を覗き込んだ先、特に誰かがいるような気配はなかった。明るい室内で、机の上にはいくつもやりかけの課題や書類のようなものも残されている。まるで先生達だけが、忽然と姿を消してしまったかのようだった。
「いない……なんで?」
「……なんで、だろうな」
やはり、自分達だけ別の世界に飛ばされてしまったのだろうか。冷や汗をかきながらも職員室の引き戸を開け、中へゆっくりと足を踏み入れた。ぎしり、と木が軋むような音がして“あれ?”と首を傾げる梟。
――……?職員室の床って、木製だったか?
踏み込んだ足の下は、どこか古めかしい木の板が張られている。上に乗っている机などは普通に鉄製の、比較的新しいもので構成されているのに。
はっとして見上げれば、天井や壁も、どこか古めかしいものになっていた。どこもかしこも、茶色の木造。まるで、この部屋だけ旧校舎の時代に戻ってしまったかのように。
――なんだ、これ……。
何か、想像を絶することが起きている。そんな梟にトドメを刺すように、その声は響いてきた。
『キャハハハハハハ……!』
ぎょっとして、見た。職員室の二つある入口、自分達がいる、その反対の入口の方に――彼女が立っているのが見えたからだ。
そう。
白いワンピース姿の、マリコさんが。
「に、逃げろ、英玲奈ちゃん!」
やはり、追いかけてきたらしい。梟は英玲奈の手を握って職員室を飛び出した。
何処に逃げればいいのかも、全く想像がつかないままに。
正直なところ、非常に有難いところであった。ここで英玲奈にパニックになられたら、どうすればいいかわからなくなってしまう。というか、マリコさんが悲鳴を聞きつけてこっちに来てしまうのが一番困る。彼女がいつ、どの段階で追いついてくるのか全く分からないのだから。
「……確かに、今まで何もおかしなことが起きなかったのに、急にただのおまじないで燕君が行方不明になったり、噂話の中身が元に戻っていたりするのって変ですよね」
「だろ?」
七不思議や怪談なんてものは、人の認識によって形作られるものであると思っている。つまり、誰も噂しなくなった幽霊なんてものは“いなくなったも同然”だと梟は思うのだ。強い力を持つ地縛霊ならともかく、大抵の霊の力なんてものはそうそう強いものでもない。浮遊霊の多くが脅威でないのは、人の認識に強く影響する力を持たないからだと梟は思っている。そのへんを漂っていられる霊というのは自由であるようでいて、一箇所に強い思い入れを持たなかったがゆえ地縛霊にならなかったとも解釈できるのだ。そういう霊は、言い換えれば“意思”が弱い。生きている人間の意識に潜り込めるほどの力はないのである。
生きている人間の気の力は、存外強いものなのだ。よほど鬱々とした人間でもない限りは、常時無意識にバリアでも張っているようなもの。某アニメ的に言うならば、人間は誰しも無自覚にATフィールドを張っているようなものと言っても過言ではないのだ。それを、強い意思を持たない浮遊霊が破るのは並大抵のことではない。
だからこそ、“それでも”誰かに認識されたい、あるいは害を齎したい霊は工夫をするのである。
そのうちの一つが、相手からその防御壁を解かせるということ。
ノックをして相手にドアを開かせようとする霊の話はよくあるが、あれは実に合理的なものなのである。ノックをして呼びかける、相手がそれに答えて霊を自分の領域に“招き入れる”一連の動作が鍵となる。自分から招いたものに対して、人はガードが弱い。悪い霊はそこにつけこんで、自分を“招き入れた”存在に悪さを働くのである。
いずれにせよ、それらの霊の力は“噂となり、怪談となり、物語として認知されることで強固になる”ものである。トイレの花子さん、なんてものがいい例ではないか。赤い服を着たおかっぱの女の子、の姿をイメージする人は少なくない。それは“花子さんとはそういうもの”という噂が広まり、多くの人に認識された結果だ。明確に、詳細にイメージされることで恐怖が具体的な形となり、人に恐れ敬われるようになるのである。一部の主教が偶像を崇拝するのと近いかもしれない。
何が言いたいのかといえば。噂がなくなった、あるいは忘れ去られた存在というものは――それだけで大きく力を削がれるはずだ、ということなのである。
「何かきっかけがあったと思うんだよ。噂が何もなしにひっくり返るとも思わないし、今まで悪さしなかった霊が悪霊になるとも思えない。……なんか、封印でも解かれたみたいな印象なんだよ」
何か最近変わったことはなかったか?と尋ねれば。うーん、と英玲奈は首を傾げる。
「私も、そんなに七不思議に詳しいわけじゃないし。……学校の友達と話したりしないわけじゃないけど、七つ全部知ってる人なんかそうそういないんですよね。むしろ男子の方が面白がって集めてたりするくらいで」
まあ、そういうものだろう。梟が全部知っていたのは、まさに小学生時代にそういうものを面白がっていたクチであったからに他ならない。バカバカしい話ではあるが、そういうものを女子達に語ることで尊敬されたいとか、怖がらせたいとか、まあくだらないことを考える集団の一人であったのである。
「あ」
ふと、何かに気づいたように英玲奈は顔を上げた。
「そういえば、先生が……」
「なんかあったのか、英玲奈ちゃん」
「いや、その。一週間くらい前だったと思うんですけど。六年三組の女の子が一人、家出していなくなっちゃったって聞いてて。六年生の……そうだ、千代田真姫さん」
家出。それも小学生の女の子が。きっと両親は心配していることだろう。
「そりゃ……大変だな。最近の六年生って忙しいもんな。受験する子とかも多いし、すっごく熱心にクラブ活動してる子もいるし」
悩みもきっと多いのだろう、と言えば。そうですよね、と英玲奈は曖昧に頷いた。
「実際、千代田さんは受験生だったって。有名な中学に入るために一生懸命勉強してた真面目な子だったから、みんな心配してるって聞きました。受験のストレスで、逃げちゃったんじゃないかなんて言う人もいます。でも……一部の人は噂してるんです」
「噂?」
「直前に、千代田さんとおまじないの話をしていた人がいたみたいで。その、受験でうまくいくおまじない。千代田さん、最近成績が下がっていて落ち込んでいたらしいんです。で、友達がその千代田さんに、勉学でうまくいくおまじないみたいなのを教えたんだって。多分それ、七不思議の一つだったんだと思うんです。私は詳しく知らないけど、勉強を助けてくれるおまじないもあったみたいで」
確かに、それらしいおまじないもあったような気がする。二階へ続く階段をゆっくり上がりながら、どれだったっけと梟は思い出そうとしていた。
そうだ、確か――五階の女子トイレ。幸運を呼ぶ双子の鏡ではなかっただろうか。
「今日そのおまじないを試してみるね、みたいなことを千代田さんは言ってて。そしたらしばらくして千代田さん、行方不明になっちゃって。落ち込んでいると言われても、そこまで思いつめている様子もなかったし……ましてや家出なんかするような子じゃないからおかしいって、親しい人ほど言ってるんです。もしかしたら、おまじないをやったことと、消えてしまったことは関係があるんじゃないかって」
もしその話が本当ならば、彼女がおまじないを試した一週間前の時点で、この学校の七不思議は害のあるものに変わっていたということになる。つまり、少なくとも一週間前、あるいはそれよりも前に、なんらかのきっかけがあったということだ。
だが、そのきっかけについてはさすがの英玲奈も心当たりがないらしい。当然、既に卒業生である梟もそのような情報をキャッチできているはずがない。
これがTRPGであったなら、図書館にでも行って情報収集するなり、聞き込みでもして調べをつけにいくところである。残念ながらさっきからまるで人に遭遇しないので、聞き込みできる“生きた人間”が全く見当たらない状況なのだが。ついでに言うと、今図書室に行って何かを調べるのも正直怖いと言えば怖い。図書室に何か恐ろしい霊が出る、というような怪談は、自分の記憶にある限りではなかったような気がするけれども。
――なんか、頭の端に引っかかってるんだよな。何か見落としてるような気がしてならない……。
この様子だと、五階の女子トイレも調べに行った方がいいのだろうか。積極的に怪談に関わる場所に行くのは気が進まないが、霊障が起きている原因が何処にあるかわからない以上――そしてその原因が七不思議と関わりがあるかもしれない以上、調べないわけにはいかないのかもしれない。
その場合は、うっかり地雷を踏まないように気をつけなければいけないわけだが。さっきのように、旧七不思議のスイッチをうっかり踏んで、危険を招くようなのは金輪際ごめんなのである。
「職員室って、このへんだっけ?」
「そうです、二階の東のはしっこの方……」
二階へ上がり、職員室とプレートがかかった部屋をそろそろと覗き込む。学校の先生という仕事は、往々にしてブラック企業に例えられることがある。全ての学校がそうだとは言わないが、実際定時や残業なんてものの概念があるとは言い難い。五時まで仕事をしてさあ終わり帰りましょう、ではなく。むしろそのあたりから、“授業外”の仕事がやっと着手できる時間だと聞いたことがある。クラブ活動の面倒を見るのも先生ならば、生徒の課題を作ったり採点をしたりというのも先生の仕事であるからだ。
もっと言うと、いじめや不登校などの問題にも一人ずつ向き合っていかなければいけないのである。それこそ、夜の八時になっても職員室に詰めていることも少なくないと聞いたことがある。――果たして五時定時で残業換算してしまったら、一体月に何時間残業をしていることになるのだろうか。百時間、では済まないような気がしてしまうほどである。
――先生の仕事って、本当に大変だよな。……やりがい搾取ってダメだと思うんだけど。
電気はついているし、普段なら先生たちのほとんどがまだ帰っていない時間だろう。
だが、職員室を覗き込んだ先、特に誰かがいるような気配はなかった。明るい室内で、机の上にはいくつもやりかけの課題や書類のようなものも残されている。まるで先生達だけが、忽然と姿を消してしまったかのようだった。
「いない……なんで?」
「……なんで、だろうな」
やはり、自分達だけ別の世界に飛ばされてしまったのだろうか。冷や汗をかきながらも職員室の引き戸を開け、中へゆっくりと足を踏み入れた。ぎしり、と木が軋むような音がして“あれ?”と首を傾げる梟。
――……?職員室の床って、木製だったか?
踏み込んだ足の下は、どこか古めかしい木の板が張られている。上に乗っている机などは普通に鉄製の、比較的新しいもので構成されているのに。
はっとして見上げれば、天井や壁も、どこか古めかしいものになっていた。どこもかしこも、茶色の木造。まるで、この部屋だけ旧校舎の時代に戻ってしまったかのように。
――なんだ、これ……。
何か、想像を絶することが起きている。そんな梟にトドメを刺すように、その声は響いてきた。
『キャハハハハハハ……!』
ぎょっとして、見た。職員室の二つある入口、自分達がいる、その反対の入口の方に――彼女が立っているのが見えたからだ。
そう。
白いワンピース姿の、マリコさんが。
「に、逃げろ、英玲奈ちゃん!」
やはり、追いかけてきたらしい。梟は英玲奈の手を握って職員室を飛び出した。
何処に逃げればいいのかも、全く想像がつかないままに。
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