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2.ベラのパン屋の絶品クロワッサン
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「誰?」
その光はどうやら人間が放っていたらしい。
子どもの声がしてオーロラはますますしまったと思った。
「すみません。お許しください」
だんだん光に目が慣れてきたら、男の子が座っているようだ。
髪がとってもきれいな金色だ。だから太陽の光を反射していたのかもしれない。
子どもでよかったとちょっとほっとする。
「あの……クロワッサンをお届けに上がりました。挨拶をしましたがお返事がないのでこちらに来てみたんです」
相手は子どもといえど貴族だ。
勝手に庭の方を覗いてしまった。だけど誰も返事をしてくれなかったからだということを強調しておかねば……。
「え?あの……クロワッサン屋さん?」
「はい。『ベラのパン屋』です」
「君がいつも届けてくれていたの?」
「はい」
「こっちに持ってきて。すぐ食べたい」
「え?」
よく見ると男の子は車いすに座っている。もしかしてこの子が病気の子だろうか?
「でも……」
勝手にそんなことをして怒られないだろうか。
「大丈夫だよ。ちょっと待って。母上を呼ぶから。母上――!」
男の子が大声で叫ぶと、「はーい」と男の子と同じ金色の髪の女性が現れた。
綺麗な女の人……。
よく見ると男の子もそっくりでとっても綺麗な顔だわ。
自分の母も美人だとは思っているが、母が活発な美女なら、この女性ははかない美しさを持っている。色も白くて消えそうなくらいだ。
それは男の子も同じ。
「まぁ。もしかしてあなたが?」
「そうだよ。クロワッサンの女の子」
「そうなのね」
「玄関ホールに誰もいなかったからこっちに持ってきてくれたんだよ。もらってもいいでしょう?」
「ええ。そうね」
はかない女性は座って女の子に目線を合わせるとにっこり笑う。とてもはかないけれどやさしくて素敵な笑顔だ。
この人ならきっとちょっとくらい粗相をしても怒らないような気がした。
「いつもありがとう。バスケットを開けてもいいかしら?」
「はい」
優しく見えるがこの女性にはオーラがあると女の子は思った。これがお金持ちの人のオーラなのかな?少し緊張する。
そしてバスケットからクロワッサンをひとつ取り出し、男の子に手渡そうとした。
「ありがとう」
男の子が受け取るときだ。
少し指が触れ合ったと思った。
―――ドクン――。
え?
女の子の身体を何かが駆け抜けた。
つんざくように体中に何かが巡ってくる。
「あ……」
「え?」
はかない女性が驚いている。
「君。どうしたの?母上!どうしよう」
「あなた!どうしたの?大変だわ!医師を呼びなさい!誰か!」
―――あ……あ、
お、思い出した。
全部、思い出したわ!
女の子は体中に駆け抜ける巨大な記憶に追いつけずそのままその場に気絶するように倒れこんだ。
その光はどうやら人間が放っていたらしい。
子どもの声がしてオーロラはますますしまったと思った。
「すみません。お許しください」
だんだん光に目が慣れてきたら、男の子が座っているようだ。
髪がとってもきれいな金色だ。だから太陽の光を反射していたのかもしれない。
子どもでよかったとちょっとほっとする。
「あの……クロワッサンをお届けに上がりました。挨拶をしましたがお返事がないのでこちらに来てみたんです」
相手は子どもといえど貴族だ。
勝手に庭の方を覗いてしまった。だけど誰も返事をしてくれなかったからだということを強調しておかねば……。
「え?あの……クロワッサン屋さん?」
「はい。『ベラのパン屋』です」
「君がいつも届けてくれていたの?」
「はい」
「こっちに持ってきて。すぐ食べたい」
「え?」
よく見ると男の子は車いすに座っている。もしかしてこの子が病気の子だろうか?
「でも……」
勝手にそんなことをして怒られないだろうか。
「大丈夫だよ。ちょっと待って。母上を呼ぶから。母上――!」
男の子が大声で叫ぶと、「はーい」と男の子と同じ金色の髪の女性が現れた。
綺麗な女の人……。
よく見ると男の子もそっくりでとっても綺麗な顔だわ。
自分の母も美人だとは思っているが、母が活発な美女なら、この女性ははかない美しさを持っている。色も白くて消えそうなくらいだ。
それは男の子も同じ。
「まぁ。もしかしてあなたが?」
「そうだよ。クロワッサンの女の子」
「そうなのね」
「玄関ホールに誰もいなかったからこっちに持ってきてくれたんだよ。もらってもいいでしょう?」
「ええ。そうね」
はかない女性は座って女の子に目線を合わせるとにっこり笑う。とてもはかないけれどやさしくて素敵な笑顔だ。
この人ならきっとちょっとくらい粗相をしても怒らないような気がした。
「いつもありがとう。バスケットを開けてもいいかしら?」
「はい」
優しく見えるがこの女性にはオーラがあると女の子は思った。これがお金持ちの人のオーラなのかな?少し緊張する。
そしてバスケットからクロワッサンをひとつ取り出し、男の子に手渡そうとした。
「ありがとう」
男の子が受け取るときだ。
少し指が触れ合ったと思った。
―――ドクン――。
え?
女の子の身体を何かが駆け抜けた。
つんざくように体中に何かが巡ってくる。
「あ……」
「え?」
はかない女性が驚いている。
「君。どうしたの?母上!どうしよう」
「あなた!どうしたの?大変だわ!医師を呼びなさい!誰か!」
―――あ……あ、
お、思い出した。
全部、思い出したわ!
女の子は体中に駆け抜ける巨大な記憶に追いつけずそのままその場に気絶するように倒れこんだ。
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