旅鉄からの手紙

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篠ノ井線

日本三大車窓〜姨捨山〜

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長野駅で時間がある時によく寄り道するのが篠ノ井線にある姨捨駅である。長野駅から篠ノ井線で30分少々で行ける。

篠ノ井を出てからは松本方面に向かう為に善光寺平の南西側の淵にあたる山を、まるで盆地の淵を線で描くように徐々に登って行く。

列車のモーターによるうなりを聞きながら標高が上がって行くに連れて善光寺平とそれを取り囲む山々を見渡せる視界が広くなり眺めが少しずつよくなる快感を、姨捨駅までの約20分近く味わえるのが本当にたまらない。

その眺めの良さは姨捨駅付近がピークで、この付近は雄大な十勝平野などが一望できる北海道旧根室本線狩勝峠と、霧島連山や遠くに桜島と望める熊本と宮崎との県境肥薩線矢岳峠と並んで日本三大車窓の一つにもなっている。

姨捨駅を松本方面に発車すると列車は山間に入り直ぐに全長2,656mの冠着トンネルに入る。篠ノ井線はこの先松本方面終点塩尻まで通っているが、反対方向松本方面からトンネルや直前の山間を抜けた後に見られる姨捨駅付近の車窓もまた開放的でまるで希望が広がって元気が出てくるような感覚も味わえる。

特に高尾あたりから中央本線を通り遠回りをして特に普通列車を乗り継いで松本を経由して篠ノ井線で来たら、その感覚に加えはるばる長野に来たと実感出来る。

またビルやマンションなど高層の建物が多い東京や神戸など都会とはまた違った夜景も楽しめ、2012年から週末の夜を中心に長野駅から姨捨駅までの間を姨捨駅付近の夜景を楽しむための臨時列車「ナイトビュー姨捨」が運行されている。その列車はお客様に夜景をより楽しんでいただくために車内照明を減光するサービスも行っているらしい。

姨捨駅は建設当時蒸気機関車の発車に支障が出る為に急な坂の場所に駅を作れなかったので、本線から少し離れたわずかな平らなスペースに駅をつくった。それに伴い本線から駅に向かって枝分かれした支線も作られた。

列車を一旦本線から駅とは別のもう一つの枝分かれした方向転換用の平らな線路に移動させてから、逆方向に動かし支線にある駅に向ういわゆるスイッチバック方式である。

蒸気機関車から電車の普及など技術の進歩で列車はある程度急な坂でも発車できるようになり、かつて全国のあちこちに見られたほとんどの急勾配の箇所につくられたスイッチバック方式の駅は廃止されその多くは本線に駅を再設置した。

姨捨駅は現存する全国では珍しいスイッチバックの駅であり、先述した姨捨駅付近と同様に善光寺平やそれを取り囲む山々の眺めが良く、その眺めを見に訪れる方も多いという。

その眺めのうち、駅から見て千曲川の向こう側に聳える山々の奥にある菅平高原では、夏はラグビーで冬はスキースノボーなど一年中スポーツが盛んな高原としても知られている。特にラグビーの合宿地としては有名で菅平にて全日本の平尾元監督にお会いした知り合いもいる程である。平尾元監督もあの伏見工業出身で泣き虫先生の教え子の一人でもある。近年そのラグビー全日本代表がワールドカップで南アフリカなど強豪国を破るレベルまで上がっているし、今後の更なる進歩が楽しみである。

また付近の棚田がいくつも連なる風景も良い事でも知られている。満月と田植えの前に田んぼに水が引かれる時期と重ならないとなかなか見られないが、数々の棚田に月がいくつも映る「田毎の月」は一度でも見てみたい。

2017年から運行開始しているJR東日本管轄の路線を通り東日本各地を周る豪華寝台なども設置されているクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」合わせて姨捨駅構内にクルーズトレインのお客様向けの夜景を楽しめるバーも設置された。そのバーも一般に向けて街にあるお店の如く開放するなどクルーズトレインの乗客以外にも使用される範囲が広がる可能性も秘めている。

姨捨駅の無人の駅舎の中で「姨捨」という地名の由来となった昔話が掲示されているのを見つけた。

その内容を簡単にまとめると、昔年寄りが大嫌いな殿様が、国中に70歳になった年寄りを山奥に捨てるように御触れを出した。ある一人の若者も70歳になった母親を山に捨てに行ったが、息子が帰りに迷わないようにと木の枝を折っては来た道に投げ置きを繰り返した母親の親心に心を打たれて、どうしても捨てる事が出来ずに命令に背いて母親を自宅に連れて帰って床下にかくまった。
隣の国の殿様が「灰で縄をなえ」と「玉の曲がった穴に糸を通せ」など次々に難題を押し付けてそれらの難題が出来なければ国を攻めると言って来た。困った殿様は国中におふれを出しそれらの難題を解決出来る知恵を求めた。それを知った若者は母親に尋ねると「塩水に浸したわらでなった縄を焼けば」と「穴の片方に蜜を塗りもう片方から糸をいわいつけた蟻を通せば」と次々と良い知恵を出した。若者は母親から教えてもらった知恵を殿様に知らせると、殿様はたいそう喜び若者に褒美をとらせようとしたが若者は褒美は要らないので70歳の母親を助けるように願い、さらに若者が殿様に知らせた知恵は母親から授かった事を話した。殿様「年寄りも国を助ける事がある」と姨捨のおふれを廃止した。

後から調べて見るとこの姨捨山の話は私が小さい頃よくテレビで見ていた「まんが日本昔話」でも「うばすて山」という題で放送されていた。見た記憶が無いのでネット検索で見つけた動画で再生出来たし見てみると上記の姨捨山の昔話がよりイメージし易くなった。母親が親離れをする程のいい歳をした息子のために何回も木の枝を投げ置くシーンは

「(うちの)息子が大きくなっても息子が小さい頃に生まれた親心を忘れるな」

「親の自分に対する親心は素直に有難く受け入れて無にするな」

など「親心」に関する道しるべに思えた。
この昔話から、若者が年寄りにも関わらず母親を大切にした事と殿様が最後に大嫌いな年寄りを最後は素直に認めた事により、国の危機を乗り越えたように、他人の短所はどうしても目につき易いがあまりそれにとらわれ過ぎず、長所も認めて接すると必ずと言っていい程自分の為にもなり良いかたちで自分に返って来る。それは親子や夫婦などの家族、親戚、友達、サークルや団体などの先輩後輩も含めた仲間、近所、会社や仕事などの人間関係全てに当てはまる。
正に姨捨駅で見晴らしの良い景色を見た後に、目からウロコが出た。
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