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予備校生日記7
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予備校生日記7
10/18(土)
今日、あの子は、あいつと出かけた。
そんなことは一言も聞いていないけど、
間違いなく出かけた。
ぼくは、あの子が好きだけれど、
それをあの子に打ち明けた後、
「終わり」を迎えることが、
今の僕にはできない。
よき話し相手であり、友人であるあの子を
失うということは、
今、少なくとも今の状態では大きすぎる。
昨日から僕は、あの子と話していない。
顔を見るのさえ、いやだった。
かと言ってこれからずっと、
避けていくつもりはないけれど、
とにかく、昨日はいやだった。
でも、月曜になったら、
結局僕らは、今まで通り、笑いあってしまうのだろう。
どおして?
どおして、そんなに簡単に笑い合えてしまうんだ。
二人の信頼? そんなもんじゃない。
僕のあきらめと、あの子の無関心だ。
寂しい・・・
君はあいつが好きなんだね。
毎日一緒にいても、話すことがたくさんある僕よりも、あいつのことが。
そうまで強いのか、君の気持ちは・・・
だらしない男。
他の男に好きな女を取られても平気な男。
振られるのが怖くて、好きな女に好きと言えない男。
10/19(日)
一通り悔しがれば、わりに後は平気なのです。
僕はプライドが高いから、寂しくても悲しくても外には出さないのです。
今日僕は、あの子を諦めた。
10/22(水)
また、僕の誤解なのかい?
今日の君は、何か、僕に話しかけているような眼をしていた。
「雅志ちゃんの彼女になる人は幸せね」
あの子を恋人にすることを諦めたはずなのに、
ふっと、その気持ちが崩れていく。
また、傷つくのがわかっているのに、
君の気まぐれな一言を繰り返している。
君は、あいつが好きなんだろ?
僕は、友達でいい。
『女と犬』
1.
肉を持った女が歩いていると、前から一匹の犬が近づいてきた。
犬はとても利口で、女の言葉がわかった。
犬は、女の持っている肉を見ると腹が減ってきて、肉を食べたくなった。
犬は、しばらく肉など食べていなかった。
犬はよだれを流した。
しかし女は、優しい目をして犬に言った。
「お願いよ、この肉を食べないで、この肉を食べないでちょうだい」
犬は利口であったから、女の言うことを聞いた。
2.
女は言った。
「この肉を食べてはいけません。あなたはこの肉を決して食べないと、約束してくれますね」
犬は女との約束を守った。
なぜなら、犬はとても利口で、そして、女を愛してしまったからだ。
女は安心した表情を見せると、たばこに火をつけながらこう言った。
「この肉はね、私の大切な人に食べてもらうため、ずっと大事にしてきたの」
犬はその肉の重要さがわかり、今後、その肉のことは考えるのをやめようと思った。
もし考えれば、食べたいという自分の欲望に抵抗できないような気がしたからだった。
3.
女は不思議に思った。
なぜ、この犬は、この肉を食べようとしないんだろう。
犬なら、力づくで女の私から肉を奪い、食べることができるはずだ。
そうか、この犬は、お腹がいっぱいなのだ。
肉なんて、もう、たべあきてしまっているんだ。
だから、私の肉を食べようとしないのよ!
女はそう思うと、くやしくなった。
犬はいつもお腹をすかしていなければならない。
女はそう思っていた。
だから、犬が、この肉に見向きもしないことが不服ですらあった。
4.
しばらくたつと犬は、
なぜ女が肉をわざわざ自分に見えるよう持ち歩いていたのか不思議に思い始めた。
食べられて困るものなら、しまっておけばいい。
犬は思った。
女は、食べられて困る肉を持ち歩かないのでは。
犬は悩んだ挙句、女の持っている肉を食べることにした。
近づいてみると、肉はとても食欲をそそり、その匂いは犬を、いわゆる普通の犬に変えた。
5.
約束を破られた女は当然のごとく怒り、犬とは口をきかなくなった。
女はショックであった。心外であった。
信じていた犬に裏切られたのだ。
女は犬を恨んだが、犬は平気だった。
女はあの日以来、犬の目の前から消えた。
しかし、犬は、自分の気持ちに素直に行動ができたことに満足だった。
自分は犬なのだ。
肉を見れば食べたくなる。
犬は、肉を見ながら、女との約束を守ろうとしたことに、おかしくなった。
終わり
あなたとの約束を破って、この手紙を書いています。
約束と言っても、初めから守れる自信なんてまるでなかった。
隣の席にあなたを座らせておくために、その約束を守ってきました。
犬の前の肉を、叱られることの怖さに、食べられなく苦しんでいる犬より、
食べてしまって叱られた方が、
自然だし、そして、その方がずっと楽だったかもしれません。
肉を食べてはいけないと言いつけた飼い主と、
その言いつけを守った犬は、一見、安定して見えますが、
実際には、やはり、無理がありました。
食べられていけない肉なら、
別の犬に食べさせた肉なら、
飼い主は、冷蔵庫にしまっておかなければ犬はかわいそうです。
犬は、お腹が空いているのに、
まるで、お腹がいっぱいのように振舞っていました。
その肉には興味がないように、鼻をそむけたときがあったかもしれません。
犬は、もしかした、肉を見ているだけでも満足なのかしら、
飼い主はそんな風に思っているかもしれませんが、
見ているだけでは、犬のお腹はいっぱいにはならないのです。
予備校生日記7 終わり
10/18(土)
今日、あの子は、あいつと出かけた。
そんなことは一言も聞いていないけど、
間違いなく出かけた。
ぼくは、あの子が好きだけれど、
それをあの子に打ち明けた後、
「終わり」を迎えることが、
今の僕にはできない。
よき話し相手であり、友人であるあの子を
失うということは、
今、少なくとも今の状態では大きすぎる。
昨日から僕は、あの子と話していない。
顔を見るのさえ、いやだった。
かと言ってこれからずっと、
避けていくつもりはないけれど、
とにかく、昨日はいやだった。
でも、月曜になったら、
結局僕らは、今まで通り、笑いあってしまうのだろう。
どおして?
どおして、そんなに簡単に笑い合えてしまうんだ。
二人の信頼? そんなもんじゃない。
僕のあきらめと、あの子の無関心だ。
寂しい・・・
君はあいつが好きなんだね。
毎日一緒にいても、話すことがたくさんある僕よりも、あいつのことが。
そうまで強いのか、君の気持ちは・・・
だらしない男。
他の男に好きな女を取られても平気な男。
振られるのが怖くて、好きな女に好きと言えない男。
10/19(日)
一通り悔しがれば、わりに後は平気なのです。
僕はプライドが高いから、寂しくても悲しくても外には出さないのです。
今日僕は、あの子を諦めた。
10/22(水)
また、僕の誤解なのかい?
今日の君は、何か、僕に話しかけているような眼をしていた。
「雅志ちゃんの彼女になる人は幸せね」
あの子を恋人にすることを諦めたはずなのに、
ふっと、その気持ちが崩れていく。
また、傷つくのがわかっているのに、
君の気まぐれな一言を繰り返している。
君は、あいつが好きなんだろ?
僕は、友達でいい。
『女と犬』
1.
肉を持った女が歩いていると、前から一匹の犬が近づいてきた。
犬はとても利口で、女の言葉がわかった。
犬は、女の持っている肉を見ると腹が減ってきて、肉を食べたくなった。
犬は、しばらく肉など食べていなかった。
犬はよだれを流した。
しかし女は、優しい目をして犬に言った。
「お願いよ、この肉を食べないで、この肉を食べないでちょうだい」
犬は利口であったから、女の言うことを聞いた。
2.
女は言った。
「この肉を食べてはいけません。あなたはこの肉を決して食べないと、約束してくれますね」
犬は女との約束を守った。
なぜなら、犬はとても利口で、そして、女を愛してしまったからだ。
女は安心した表情を見せると、たばこに火をつけながらこう言った。
「この肉はね、私の大切な人に食べてもらうため、ずっと大事にしてきたの」
犬はその肉の重要さがわかり、今後、その肉のことは考えるのをやめようと思った。
もし考えれば、食べたいという自分の欲望に抵抗できないような気がしたからだった。
3.
女は不思議に思った。
なぜ、この犬は、この肉を食べようとしないんだろう。
犬なら、力づくで女の私から肉を奪い、食べることができるはずだ。
そうか、この犬は、お腹がいっぱいなのだ。
肉なんて、もう、たべあきてしまっているんだ。
だから、私の肉を食べようとしないのよ!
女はそう思うと、くやしくなった。
犬はいつもお腹をすかしていなければならない。
女はそう思っていた。
だから、犬が、この肉に見向きもしないことが不服ですらあった。
4.
しばらくたつと犬は、
なぜ女が肉をわざわざ自分に見えるよう持ち歩いていたのか不思議に思い始めた。
食べられて困るものなら、しまっておけばいい。
犬は思った。
女は、食べられて困る肉を持ち歩かないのでは。
犬は悩んだ挙句、女の持っている肉を食べることにした。
近づいてみると、肉はとても食欲をそそり、その匂いは犬を、いわゆる普通の犬に変えた。
5.
約束を破られた女は当然のごとく怒り、犬とは口をきかなくなった。
女はショックであった。心外であった。
信じていた犬に裏切られたのだ。
女は犬を恨んだが、犬は平気だった。
女はあの日以来、犬の目の前から消えた。
しかし、犬は、自分の気持ちに素直に行動ができたことに満足だった。
自分は犬なのだ。
肉を見れば食べたくなる。
犬は、肉を見ながら、女との約束を守ろうとしたことに、おかしくなった。
終わり
あなたとの約束を破って、この手紙を書いています。
約束と言っても、初めから守れる自信なんてまるでなかった。
隣の席にあなたを座らせておくために、その約束を守ってきました。
犬の前の肉を、叱られることの怖さに、食べられなく苦しんでいる犬より、
食べてしまって叱られた方が、
自然だし、そして、その方がずっと楽だったかもしれません。
肉を食べてはいけないと言いつけた飼い主と、
その言いつけを守った犬は、一見、安定して見えますが、
実際には、やはり、無理がありました。
食べられていけない肉なら、
別の犬に食べさせた肉なら、
飼い主は、冷蔵庫にしまっておかなければ犬はかわいそうです。
犬は、お腹が空いているのに、
まるで、お腹がいっぱいのように振舞っていました。
その肉には興味がないように、鼻をそむけたときがあったかもしれません。
犬は、もしかした、肉を見ているだけでも満足なのかしら、
飼い主はそんな風に思っているかもしれませんが、
見ているだけでは、犬のお腹はいっぱいにはならないのです。
予備校生日記7 終わり
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