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ソライロ
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僕が筆を執るとき、実際今現在はパソコンをカタカタしているのだが、できるだけ抽象的な文章が書きたいと考える。しかしそれを書きはじめると抽象とはなにか、一体どのような文章が抽象的なのかと抽象の具体例 (それは時にアイであり、また時にヘイワである) を頭の中に思い描いては却下するという作業を繰り返し、結局は書くのをやめてしまう。
ぴんぽーん。
一人暮らしの僕はそこそこ用心をしながら生活をしている。だからインターフォンが鳴った時には必ずドアガードを掛けて応答をすることにしていた。
「どちら様ですか。」
その存在は非常にぼんやりとしていた。フェミニズムに大した関心がない僕はそれをカレと呼ぶことにする。カレが口を開く。
「今日の空は何色でしたか。」
一日中部屋に引き篭もっていたので返答に困りながらも僕は答えた。
「まあソライロだったでしょう。」
「昨日は。」
「同様でしょう。」
「朝は、夕方は。晴れの日は、雨の日は。ブラジルは、イギリスは。」
「またそれも同様。」
「私には世界がモノクロに見えます。」
カレは相当な阿呆であるらしい。僕は呆れながらも小学生を諭すように教えてあげた。
「空はソライロでしょう。」
カレはニコッと笑い、お邪魔しますと一声発すると同時に、ドアガードを外した。
やはりカレはこの文章に入ってきてしまった。
だから僕は書くのをやめた。
ぴんぽーん。
一人暮らしの僕はそこそこ用心をしながら生活をしている。だからインターフォンが鳴った時には必ずドアガードを掛けて応答をすることにしていた。
「どちら様ですか。」
その存在は非常にぼんやりとしていた。フェミニズムに大した関心がない僕はそれをカレと呼ぶことにする。カレが口を開く。
「今日の空は何色でしたか。」
一日中部屋に引き篭もっていたので返答に困りながらも僕は答えた。
「まあソライロだったでしょう。」
「昨日は。」
「同様でしょう。」
「朝は、夕方は。晴れの日は、雨の日は。ブラジルは、イギリスは。」
「またそれも同様。」
「私には世界がモノクロに見えます。」
カレは相当な阿呆であるらしい。僕は呆れながらも小学生を諭すように教えてあげた。
「空はソライロでしょう。」
カレはニコッと笑い、お邪魔しますと一声発すると同時に、ドアガードを外した。
やはりカレはこの文章に入ってきてしまった。
だから僕は書くのをやめた。
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みんなの感想(1件)
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1 タイトルやあらすじからどんなことを想像したのか?
まず抽象とはどういう意味なのかを調べてみた。
多くの物や事柄や具体的な概念から、それらの範囲の全部に共通な属性を抜き出し、これを一般的な概念としてとらえること。(ウェブ調べ)
うん、なんだか余計に分からなくなる説明だが、そう言うことなのだろう。
ソライロというタイトルと、訪問者の繋がりは何だろう? と考えた。ソライロとえば空色だが、実際には空の色ではない。(青く見えるだけである)
こう考えると、全体的に不思議だなと思った。では主人公はその壁を超えたいのだろうか?ますます謎の深まる物語だなと感じた。つまり、どんな内容なのか全く塑像のつかないワクワク感があるのだ。
2 好きな部分
あえてカタカナで表現している部分。
3 好きな理由
もし文中のあえてカタカナにしている部分が漢字だったなら、全然雰囲気が変わる。
この独特の雰囲気はカタカナが混じることにより、表現されていると思うから。
4 感じたこと
わかりそうで分からない、この謎めいた部分がとても好きである。
ドアガードは物語と現実を分断するモノなのだろうか?
抽象を文字の世界で表現するのは、とても難しいと感じた。
5 自分が主人公の立場だったなら
とりあえず、入ってきた人を一回外に出してみようと思う。
どうなるんだろう?また入ってくるのだろうか?
6 物語のその先を想像する
また新しい物語にて、書くのをやめるというループが繰り返されるのではないだろうか? と、想像した。
ありがとうございます!
この作品は小説を書き始める僕の葛藤が強く出ている言わばエッセイに近い作品です。非常に懐かしい。
カタカナというのはかなりインパクトが強い表現なので使うのは中々難しいながら、勢いで使っていますね笑
この文章のどこまでが映像化できるのか、想像できるのかというのもかなり興味深い点です。所々に映像を切断する表現があったりなかったり。