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男爵会議の前に2

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妊娠…赤ちゃん…

誰の……アーサー様…の…赤ちゃん……

混乱した頭の中はごちゃごちゃして考えがまとまらない

「…ええ、ミズナ、あなた最後の月のモノはいつだった?」
私の手を引きソファーに座らせ隣に座るお母様
「さ…最後は…先々月の…」
と思い出し青くなる、そういえば彼との日々についていくのに夢中で…気にしていなかった……



私……妊娠したの?


涙が溢れてこぼれる
お腹を触り赤ちゃんが居るか摩るが、当たり前だけどまだなんにもない

どうしようどうしよう

「…相手は?…どこの方?」
泣き出してしまった私にお母様は優しい声で問いかける

「…アーサー様…です…騎士団長の」
名前を出して後悔する…彼と私とでは…どうする事も出来ない

彼の名前を告げると息を止め目を見開くお母様
俯き色々考えるが、結局言い訳になってしまう
顔を上げお母様の目を見る

「っでも!…これは違うのですっ…私が…私が…ちゃんとしなかったから…で」
言い訳にもならず、中途半端な事しか言えない自分が嫌になる

ちゃんとしていれば


ちゃんと避妊していれば


「……そう…騎士団長様……ブランク公爵家の次期当主様なんですね」
放心状態だったお母様は私の背を摩り
「…どうしたいの?彼に伝えるのですか…?それとも…」

一度言葉を切り迷うお母様は、ううんと顔を横に振り私の目を見て
「それとも…それとも養子に出すの?」

養子に出すという事は…彼の子を二度と見る事は出来ない


そんなの…そんなの耐えられない
私の愛しい人との赤ちゃんを他の人に渡すのは絶対に嫌だ

しかし、彼に伝えてどうなるの…?
もし、もし彼との結婚に反対する人が出れば……いとも簡単に離れ離れになってしまう
子供も取り上げられてしまうだろう
だって彼は公爵家の次期当主なのだから……
彼にも赤ちゃんにも会えないのは…………


「…お母様…彼には……伝えません。子供…赤ちゃんも私が育てます」



キッパリと断言した私にホッとしたお母様は、私の手を取り
「しばらく療養しましょう、城への勤めは…お父様に相談しましょう……つわり……酷いんじゃないの?」
と優しく声を掛けてくれるお母様に涙が止まらず、そうか…悪阻だったのか…と納得した

ーーアーサー様はお医者様を呼ぶと言って大袈裟です、と私は聞かなかったけど、女の医者以外はダメだと怒っていらっしゃったわ…
それも私があの部屋に帰ったら…診てもらうはずだったけども

「…実は…お医者様にはまだ…あの…お母様に言われるまで妊娠の可能性を考えてもいなかったので…」
と正直に告げると
「ではすぐに手配します」
と立ち上がって部屋を出ようとするお母様に
「あのっ…お金なら…少し多めにアーサー様に貰いました…なので…なのでしばらくはお渡し出来るかと」
と家族会議に向けお金の心配をさせまいとするが








「何言っているの?ミズナ…貧乏はもうお終いです」
とにっこり笑ったお母様が謎の言葉を残し部屋から出て行ってしまったのだ

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