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トラブルを呼ぶ探偵

探偵やってます

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sideシュウジ


俺の名前は神永柊司。
日本人だ。


そんな俺が、このアメリカの田舎町で仕事として営んでいるのがここ、

『神永探偵事務所』

である。


まあ、一口に探偵とは言っても、こんな田舎町にあるのだ。

仕事も農作業の手伝いだったり、迷い牛を探してくれなど、小さい依頼も多い。
要するに何でも屋のような感じとなっている。


でも、俺は基本的に仕事を選んだりしない。
大きい仕事から小さい仕事までやるという、スタンスを取っている。
―何?やらないと食っていけないだろって?
それには理由があるんだ。


それは、どんな些細な関わりであろうと、必ず何処かで繋がる事があるとの、とある女の子の言葉からだ。


そんな俺を支えているのが、先程シズクと呼んだ女の子―

―雫だ。


「今日は依頼の連絡は無かったよ~」


そう答えながら、グラスに注いだ麦茶を渡してきた。
受け取った俺はそれを飲みつつ、雫に視線をやる。


背は150弱位と180近い俺と比べるとかなり小柄。
特徴的な長い髪を一つに縛って後ろに流している。

服装は春らしい白地に小花柄のワンピースにエプロン。

なんだか、若奥様みたいな恰好をしている彼女。


はっきり言って、彼女のお陰でこの探偵という、不安定且つ危険な職業をしていけている。
情報収集能力に加え、情報を的確に使う明晰な頭脳。

そして、世界中連れ回したせいか、その人脈は今や俺も預かり知らない程のネットワークを持つ。


何時だったか、あれこれ文句をつけて、依頼料を踏み倒そうとしたクライアントがいた。

その時に彼女は、ソイツに関する『ちょっと悪い』情報を持っていたらしい。

だが、脅すわけでもなく笑顔でそれを濁らせただけ。


―その時の顔は俺でもビビった。
満面の笑みなのに、笑ってる様に見えないんだもんな。


後日、依頼料を割り増しで寄越したのは言うまでもない。


「あ、でもね~、電話があったんだ」
「電話?」
「うん。あのね…」


今思い出したのか、嬉しそうに話す雫の縛った髪が、ピコピコ動いて日の光に当たり、『蒼く』光って揺れた。


雫の髪は、俺の黒髪とは違い、蒼い。 
それは人工的なものではなく、自然な蒼だ。


最近は『彼等』に憧れて様々な色に髪の毛を染めるのが流行っているようだか、人工的なものではない雫の髪色には到底敵わない。


そんな事を思いながら雫を見ていると、彼女が少し訝しげな目を柊司に向けた。


「…って、聞いてる?」
「ああ、すまない。それで電話って?」


少し思考に意識を傾け過ぎたようだ。
目の前の少女に謝りながらも、その柔らかな髪を撫でて続きを促す。

すると、雫は気持ち良さそうに目を細めながらも、口を尖らせた。


「もう。すぐそうやって誤魔化すし…。仕方ないな~」


―そうは言っても若干嬉しそうに見えるぞ?
まあ、口には出さんが。

「あのね、さっきグランさんから電話が来たの」
「グランの爺さんから?」


グランと言うのは、この町を束ねる町長の名前だ。

町長なんて呼び名ではあるが、本人はかなり気さくな性格であり、その人柄を表すように町民からの人望もかなり厚い。

まあ、町長なんて呼んだ事は俺自身数少ないがな。


「ん~、何かね~、渡したいものがあるんだって」
「渡したい物?何を渡す気だ?」
「解らないけど…。でもちょっと声が弾んでたかも」
「う~ん…。嫌な予感がする…」


そう呟くと、雫もアハハと苦笑いを溢した。それも仕方がない。


このグランというシジイは、うちのクライアントの中でもかなりの頻度で仕事を依頼してくるお得意様なのだが。

だが、お得意様だからと言って必ずしも良いクライアントとは言えない。

何故なら、ジジイが寄越す依頼はハッキリ言って、トラブルが付いてくる。


何時だったかは、ジジイの知り合いとか言う変な科学者の護衛をした事があった。

ただ、とある会議に行くまでの間という事だったのに、会場に着くまでに色んな勢力のマフィア共には全力で追いかけられるわ、警察は動き出すわ。
その捕り物にガッツリ巻き込まれてしまう、と散々な目にあった。

アイツら容赦なんてしないから、町中で戦闘始まって死ぬかと思ったぞ。


そんな迷惑なクライアント筆頭が、俺に渡す物。
絶対にただじゃ済まない。


「シズク?それは受け取り拒否だ」
「駄目よ。奥さんに家に寄ってって言われたの忘れて帰ってきたでしょ?」
「あ…」


そういやさっき家に寄ってけって声があったな。
忘れてたわ。


思い当たる節があった俺に、雫は微笑む。


「やっぱり言われたのね。もう、駄目だよ?」
「すまない。だが、それとこれとは別だろ。トラブルは御免だ」
「そう言わないの~。大体渡す物があるくらいで、どうにかならないでしょ?」


いや、そうじゃねーんだよぉぉぉぉぉ?!
あのジジイは歩くトラブルメーカーだ!
お前はいいが、毎回巻き込まれる俺は死にそうだぞ!?


「もう、大袈裟なんだから~」


俺の思考を読むな!?
どんだけスペック高いんだよ、お前は!?

困惑にも似た視線を送ると、安心させるかのように彼女は言う。


「大丈夫よ、今回は。依頼とかじゃないそうだから安心して」


そう言いながら、俺をそっと抱き締める。

雫の髪が俺の頬に当たって、若干くすぐったい。

雫の腰に手をあて抱き寄せると、雫の口から小さな吐息が溢れた。

「シズク…」
「っン…なぁに?シュウジ」

雫の首筋に唇を這わせて呟くと、我慢しているのが解る。
だが、敢えて惚けた様に俺の名を呼んだ。

―どんだけ小悪魔なんだよ、お前は…。

そう思いつつ、雫の柔らかな唇に啄むようにキスを落とす。
すると雫もその気になってきたのか、俺の首に腕を回してきた。


それを合図に俺は雫の唇に深いキスをする。
舌で歯筋を刺激して、口を開けさせ素早く舌を雫の中へ入れる。


絡み合わせる様に雫の舌を弄び、口内を刺激すると、「…ゥン」と甘い声が聞こえてくる。


淫靡な音が部屋中に響く中、そっと目を開けると、目の前の彼女は瞼を震わせながら、首筋まで真っ赤にしている。

でもその表情は、とても幸せそうだ。
―こんな表情をされて、我慢出来る男がいるのか?
いる訳ないだろう。


ゆっくりと唇を離すと、名残惜しそうにしている雫の唇との間には銀糸が光る。 

指で濡れた雫の唇を優しく拭い、微笑むと、さらに雫の顔が真っ赤に染まった。 
―更に赤くなるのか、お前は。


そんな事を思いながら、素早く雫の膝下に手を入れる。
重心を後ろに倒させて腕を背に回すと、持ち上げた。

いわゆる『お姫抱っこ』って奴だ。

急な動きに驚いた雫だったが、満更でも無い様子。


「…まだ昼間だよぉ」
「気にするな」
「ん、もぅ…」


そこで、会話が途切れた。雫を見ると固まっている。
―…?どうしたんだろうか。


固まっている雫の目線を追うと、対面のソファーにとある人物がニヤニヤしながら座っていた。


ギギギギと鈍い音が鳴っているが如く、ゆっくりと首を動かしながら視線の先にいるジジイに聞いてみた。


「…イツカラ、イタ?」
「いつからってなぁ…。盛り上がって来た頃じゃないか?いやぁ、いいもん見たなぁ」


―うん、よし。殺ろう!!


「ちょっ、シュウジ!?それは駄目だってば!?」


素早く懐に手を突っ込んで中身を取ろうとすると、顔を真っ赤にしたままの雫が慌てた様子で俺を抑える。


「いやだ離せコイツが生きてるとろくなことがない一気に逝かすトドメ指す」
「何をテンパって物騒な事を言ってんの!?」
「ダメだ生かしちゃおけない」
「ハァッハッハー」
「ちょっとグランさんも、笑ってないで逃げてよ!?」


―そんなこんなで5分後―


「ちょっと待て、シュウジ。ワシが悪かった」
「シュウジ!ダメだってば!」


肩で息をしながら、両手を挙げているジジイの眉間に銃を突き付けている自分が居たのは言うまでもない。


「…ったく。このクソジジイ」
「ハッハッハ。脳味噌飛ばされるとこだったわい」
「依頼があれば何時でも飛ばしてやるよ」


笑いながら雫が出したお茶を飲むこのジジイが、先程の会話に出てきた、グラン・マグリット町長である。

事ある毎に人の神経を逆撫でる上に、トラブルを持ってくる厄介なジジイだ。


しかも今日の服装何だよ。
真っ黄色にマ○○ァナプリントのアロハって。
年考えろよ。


「…それで?何の用事だったんですか?グランさん」


どうやら埒が空かないと思ったらしい雫が会話に入ってきた。


「…おお、そうじゃった。そうじゃった」


―このジジイ、ぜってー忘れてたろ。
雫にそんな視線を送ると、苦笑してるのが見えた。

持っていたバッグの中をゴソゴソ探して、ようやく目当ての物が見つかったようだ。
それをテーブルの上に置く。


―エアメール?


雫の頷く仕種を見つつ、それを手にとってみる。
差出人を見て、俺の表情が固まってしまった。


「それは、ゲンジュウロウが寄越したものに入っていたお前宛の物だ」
「…中を、見ろってか?」
「ああ。その為に持ってきたんじゃからな」


―まぁ、確かにな。


静かに封を開けて、中を確かめてみる。


―ゲンジュウロウ。俺の祖父からの手紙、だった…。
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