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トラブルを呼ぶ探偵
忘れてた
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sideシュウジ
「…ジ」
「…ュウジ」
―何か声が聞こえる。
どうやら誰かが呼んでいるようだ。
だが生憎と俺の意識は、また夢の中へと沈んでいく。
すると寝ている俺の上に、何か軽い重さの物体が乗ってきた。
これで起きると思ったのだろう。
だが、残念。
微かに意識が夢から戻ってきた感覚があるが、まだ半分は寝たままである。
そんな俺に観念したのか、唇に何かが当たる感触を感じた。
―柔らかくて、少し湿り気のあるものが当たって…。
目をゆっくりと開けて、焦点を合わせる。
すると、やはり雫だった。
「シュウジ、おはよ」
「おはよう、シズク」
頬を赤く染めて、雫がはにかむ様に笑った。
朝からこんな笑顔を見せてくれるのなら、たまに寝坊するのも悪くない。
そんな事を思った朝だった。
*****
「そういえば」
「ん~?どうかしたの?」
朝食を食べ終え、コーヒーを飲んでいた時、ふと思い出した。
そうだ、何かが足りないと思ったら―
「ウィプスって、どこ行った?」
「え~?たまちゃん?どこ行ったって…」
雫がゆっくりと、こちらに向く。
「もしかして、あんた…」
「…かもしれん」
―自分の契約精霊の存在、忘れてた。
「普通、自分の契約精霊忘れてくる契約者いるっ!?」
―いや、お前も気が付いて無かったろ。
「すまん…」
「すまん…じゃない!さっさと探しに行ってきなさい!」
「あ、ああ」
もの凄い見幕で言う雫に急かされる様に玄関に向かうと、ドアが開いた。
すると、その拍子に室内に何かが入ってきて、俺にぶつかった。
「ん?」
「あるじのぉぉ」
「「あ…」」
ぶつかった物体を見て、思わず俺と雫の声が重なる。
「ど阿呆ーっ!」
「うげっ」
鳩尾に衝撃を食らい、流石の俺もぶっ倒れた。
恐る恐る、衝撃を食らわした原因を見ると、プルプル震えている。
「帰ってくるの、辛かったんやで!?」
「す、すまん」
「すまんじゃあらへんわーっ!」
空中にふわふわと浮かぶ、円らな瞳と小さな手の様なものが付いた、火の玉みたいな球体。
何故か、関西弁で喋るこの物体こそが、俺が忘れてきた契約精霊。
名前はウィプスと言う。
「本当に、悪かった」
「ここまで帰ってくる道中、えらい目におうたわ!」
絶賛お怒り中らしく、プルプルと震えている。
「道は解らへんし、犬には食われそうになって」
「あ~」
「挙げ句にハグレと出くわして、散々追いかけ回されたんやで!?何で、あんなんが彷徨っとんのや!」
何だか、悲惨な目にあったようだ。
―ん?ちょっと待て?
「お前、何に会ったって?」
「せやから、犬に…」
「違う、その後だ」
「へ?その後って、ハグレやけど?」
「―っ!シュウジ」
「ああ。お前の睨んだ通りだ」
「何をお二人で話進めてるん?状況が読めへんよ」
俺と雫の様子に異変を感じたのか、ウィプスが怪訝な目をした。
―まぁ、球体だからあんまり表情はわからんが。
「帰ってきたばかりで済まんが」
「へ?」
「そのハグレ絡みで、MABに行く」
「はぁ!?」
「シズク、鍵をくれ」
「いや、ちょっ、待ちぃ!」
「はい」
「ああ、ありがとう」
雫から鍵を受け取り、ウィプスに視線を向ける。
「早く準備しろ。もうそろそろ行くぞ?」
「~っだぁ!!行けばええんやろ!?」
「だから、そう言ってるだろう?」
「もうええわ…。ぐすん」
「?」
「たまちゃん、ごめんね~。多分シュウジに言っても解んないよ?」
「ええんですよ、雫様。いつもですもん」
半べそになった相棒に首を傾げたら、雫に酷い事を言われてた。
―俺の人権はどこだ。
「あ、シズク悪い。ウィプスにTNU持たせてくれ」
「え?たまちゃん、昨日持ってかなかったの?」
「ええ、昨日は必要あらへんかと」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
そう言って、パタパタとリビングへと戻って行く。
「昨日、TNU持たせとけば良かったな」
「ほんまですわ。自分転送出来た思いましたよ」
「あれ…?でもお前あれが無くても逆召喚出来たよな…?」
「…自分が精霊やって事に疑問を持ち始めましたわ…」
「いや、まぁ置いて行った俺が悪い。すまん」
パタパタ。
「ん?どうしたの、二人とも」
「「いや、何でも」」
「まぁいいや。はい、たまちゃん。付けたげる」
「あ、ありがとうございます。雫様」
カチャリとウィプスのボディに付けられた、小さな機械。
TNU―転送通信媒体という、指定した所に物を転送したりする機能と、通信機能を備えた機械。
要は、某四次元ポ○ッ○の機能が付いた、ちょっとハイテクなパソコンみたいな物だ。
「今日の予定とかのデータ、全部入れて来たから確認して」
「ああ、解った。ありがとう」
そう言って雫の頭を撫でて、玄関のドアを開けた。
バイクに跨がり、エンジンを掛けた。
ウィプスは指定席である、ハンドルの真ん中に座っている。
まぁ、座っているという表現があっているかは解らないが。
ウィプスもどうやら準備万端な様なので、俺は雫へと視線をやった。
「それじゃあ、行ってくる」
「いってきますー」
「いってらっしゃい。気を付けてね~」
笑顔で見送ってくれた雫に手を上げて答え、俺はバイクを出した。
「なるほろな~。ふぁてんはいきまひたわ」
「だろう?」
ーーモグモグ
「へも、ほーしてあるひのほこにってかんひはひまふな~」
「うん、取り敢えず食うか喋るかにしろよ。このパチンコ玉」
ー何かイラッとしたので、取り敢えずあたってみた。
どうやら雫がTNUに入れた依頼書の確認をしていたらしい。
それをハンドルの上で、しかも雫が持たせたサンドイッチを食いながらやるのは勘弁してほしいが。
結構反省したのか、ウィプスは食べるのを止めて俺を見上げる。
「ほんで、主殿はどんなふうにお考えなんです?」
「この話には何か裏があるだろう?」
「そらぁ...。まぁそうですわ」
「それを洗いざらい話させないと、動けない」
「...ほんなら」
走り出して20分。
まだ目的地に向かう途中だ。
「まずは、コイツらどうにかせんとあきまへんな」
ウィプスの言葉に同意しながら周囲に目をやる。
鳥型のハグレが十数体、俺達を追いかけて来ていた。
「…ジ」
「…ュウジ」
―何か声が聞こえる。
どうやら誰かが呼んでいるようだ。
だが生憎と俺の意識は、また夢の中へと沈んでいく。
すると寝ている俺の上に、何か軽い重さの物体が乗ってきた。
これで起きると思ったのだろう。
だが、残念。
微かに意識が夢から戻ってきた感覚があるが、まだ半分は寝たままである。
そんな俺に観念したのか、唇に何かが当たる感触を感じた。
―柔らかくて、少し湿り気のあるものが当たって…。
目をゆっくりと開けて、焦点を合わせる。
すると、やはり雫だった。
「シュウジ、おはよ」
「おはよう、シズク」
頬を赤く染めて、雫がはにかむ様に笑った。
朝からこんな笑顔を見せてくれるのなら、たまに寝坊するのも悪くない。
そんな事を思った朝だった。
*****
「そういえば」
「ん~?どうかしたの?」
朝食を食べ終え、コーヒーを飲んでいた時、ふと思い出した。
そうだ、何かが足りないと思ったら―
「ウィプスって、どこ行った?」
「え~?たまちゃん?どこ行ったって…」
雫がゆっくりと、こちらに向く。
「もしかして、あんた…」
「…かもしれん」
―自分の契約精霊の存在、忘れてた。
「普通、自分の契約精霊忘れてくる契約者いるっ!?」
―いや、お前も気が付いて無かったろ。
「すまん…」
「すまん…じゃない!さっさと探しに行ってきなさい!」
「あ、ああ」
もの凄い見幕で言う雫に急かされる様に玄関に向かうと、ドアが開いた。
すると、その拍子に室内に何かが入ってきて、俺にぶつかった。
「ん?」
「あるじのぉぉ」
「「あ…」」
ぶつかった物体を見て、思わず俺と雫の声が重なる。
「ど阿呆ーっ!」
「うげっ」
鳩尾に衝撃を食らい、流石の俺もぶっ倒れた。
恐る恐る、衝撃を食らわした原因を見ると、プルプル震えている。
「帰ってくるの、辛かったんやで!?」
「す、すまん」
「すまんじゃあらへんわーっ!」
空中にふわふわと浮かぶ、円らな瞳と小さな手の様なものが付いた、火の玉みたいな球体。
何故か、関西弁で喋るこの物体こそが、俺が忘れてきた契約精霊。
名前はウィプスと言う。
「本当に、悪かった」
「ここまで帰ってくる道中、えらい目におうたわ!」
絶賛お怒り中らしく、プルプルと震えている。
「道は解らへんし、犬には食われそうになって」
「あ~」
「挙げ句にハグレと出くわして、散々追いかけ回されたんやで!?何で、あんなんが彷徨っとんのや!」
何だか、悲惨な目にあったようだ。
―ん?ちょっと待て?
「お前、何に会ったって?」
「せやから、犬に…」
「違う、その後だ」
「へ?その後って、ハグレやけど?」
「―っ!シュウジ」
「ああ。お前の睨んだ通りだ」
「何をお二人で話進めてるん?状況が読めへんよ」
俺と雫の様子に異変を感じたのか、ウィプスが怪訝な目をした。
―まぁ、球体だからあんまり表情はわからんが。
「帰ってきたばかりで済まんが」
「へ?」
「そのハグレ絡みで、MABに行く」
「はぁ!?」
「シズク、鍵をくれ」
「いや、ちょっ、待ちぃ!」
「はい」
「ああ、ありがとう」
雫から鍵を受け取り、ウィプスに視線を向ける。
「早く準備しろ。もうそろそろ行くぞ?」
「~っだぁ!!行けばええんやろ!?」
「だから、そう言ってるだろう?」
「もうええわ…。ぐすん」
「?」
「たまちゃん、ごめんね~。多分シュウジに言っても解んないよ?」
「ええんですよ、雫様。いつもですもん」
半べそになった相棒に首を傾げたら、雫に酷い事を言われてた。
―俺の人権はどこだ。
「あ、シズク悪い。ウィプスにTNU持たせてくれ」
「え?たまちゃん、昨日持ってかなかったの?」
「ええ、昨日は必要あらへんかと」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
そう言って、パタパタとリビングへと戻って行く。
「昨日、TNU持たせとけば良かったな」
「ほんまですわ。自分転送出来た思いましたよ」
「あれ…?でもお前あれが無くても逆召喚出来たよな…?」
「…自分が精霊やって事に疑問を持ち始めましたわ…」
「いや、まぁ置いて行った俺が悪い。すまん」
パタパタ。
「ん?どうしたの、二人とも」
「「いや、何でも」」
「まぁいいや。はい、たまちゃん。付けたげる」
「あ、ありがとうございます。雫様」
カチャリとウィプスのボディに付けられた、小さな機械。
TNU―転送通信媒体という、指定した所に物を転送したりする機能と、通信機能を備えた機械。
要は、某四次元ポ○ッ○の機能が付いた、ちょっとハイテクなパソコンみたいな物だ。
「今日の予定とかのデータ、全部入れて来たから確認して」
「ああ、解った。ありがとう」
そう言って雫の頭を撫でて、玄関のドアを開けた。
バイクに跨がり、エンジンを掛けた。
ウィプスは指定席である、ハンドルの真ん中に座っている。
まぁ、座っているという表現があっているかは解らないが。
ウィプスもどうやら準備万端な様なので、俺は雫へと視線をやった。
「それじゃあ、行ってくる」
「いってきますー」
「いってらっしゃい。気を付けてね~」
笑顔で見送ってくれた雫に手を上げて答え、俺はバイクを出した。
「なるほろな~。ふぁてんはいきまひたわ」
「だろう?」
ーーモグモグ
「へも、ほーしてあるひのほこにってかんひはひまふな~」
「うん、取り敢えず食うか喋るかにしろよ。このパチンコ玉」
ー何かイラッとしたので、取り敢えずあたってみた。
どうやら雫がTNUに入れた依頼書の確認をしていたらしい。
それをハンドルの上で、しかも雫が持たせたサンドイッチを食いながらやるのは勘弁してほしいが。
結構反省したのか、ウィプスは食べるのを止めて俺を見上げる。
「ほんで、主殿はどんなふうにお考えなんです?」
「この話には何か裏があるだろう?」
「そらぁ...。まぁそうですわ」
「それを洗いざらい話させないと、動けない」
「...ほんなら」
走り出して20分。
まだ目的地に向かう途中だ。
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