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トラブルを呼ぶ探偵

ハグレ狩り

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お気に入り登録ありがとうございます!
つまらない物ですが、続きをどうぞ(笑) 

*****


まだ大きな街から離れているから、周りには何もない。
バイクを路肩に止めて降りると、それを待っていたかの様に彼等が集まってくる。
その声はまるで餌に群がるカラスの様だ。


「それじゃ、少し黙らせるか。ウィプス」
「はいな」


ウィプスがTNUを使い、魔方陣から銃を出した。
普段使っている大きな銃だ。
それを取ると、彼等に目を向ける。


「ほら、来いよ」


掌を上に向けてクイッとやると、挑発に乗ったかのように奇声を上げて襲い掛かってくる。


『ガアアアアッ!!!!』
「っ!!」


体当たりや鋭い爪が俺を襲う。
それを引き付けて、すれ違いざまに銃を放つ。
喧しい発砲音が響き、打たれたハグレが地に落ちた。


ーまずは2体だな。


基本的に急所を外して無力化するようにしている。
どんな場合でも、精霊や魔族を殺す事は人を殺す事と同義。
魔法士達が最低限守らなければならない法律だ。

その為、俺も普段撃使う銃弾は非殺傷のもので、当たると麻痺して数時間動けなくなる物にしている。


続けざまに発砲音が響き、続々とハグレが落ちていく。


『ガアッ!!』
『ギャアアアッ!!』
「チッ...。あと10体位なのに怯まないな」


だが、それでも彼等の様子は普通じゃない。
仲間が簡単にやられれば、多少の動揺はあると思うのだが。
どうやらハグレ化すると、思考能力が低下するというのは本当らしい。
さっきから発せられるのは奇声だけだ。


『ガアアアアッ!』
「うぉっと。危な、って!?」


ちょうど体当たりしてきたのを避けた瞬間、それを見計らう様に、ノータイムで雷撃魔法を放つハグレが2体。


ーマズった、直撃コース!?


「主殿!!」


ハグレの魔法に気が付いたウィプスが、咄嗟に俺の周りにシールドを張る。
シールドにはじかれて行き場を無くした魔法は、地面を激しく削っていく。
それを見て、若干ため息が出た。


「やっぱり、精霊の魔法は厄介だな」
「何を落ち着いとるん!?」


何だかウィプスが騒いでるが、無視して
俺は一度距離を取る為に離れた。


「ぼーっとしとったらあかんで、主殿」
「...悪かったな。助かった」
「なんやあのハグレ、雷属性だったんかい。真っ黒やって、よう解らんわ~」


普通精霊達は、霊布と呼ばれる様々な色に染められた羽衣のような物をその身に纏う。
霊布は属性の色を基調としているので、普通ならそれを見れば属性が解る。

だが、ハグレになると基調の色が漆黒に染まるようで、色が解らなくなる。
しかも精霊達は人間の様に魔法を使う際に、
長い呪文の詠唱が必要ない。
結果、どんな属性かが解らないという。


ーなんともまぁ、面倒な。


「だから、精霊相手は嫌なんだ」
「まあ、そう言わんと」


悪態を吐きながらも、俺は引き続き撃つ。
ハグレが悲鳴を上げて次々と地面へ落ちていく。


ー喋りながらも手を動かさないな。


「ったく、俺を狙ったから良いものの...」
「ほんまですわ」
「あと7体。さっさと終わらせるか」
「ほな、行きましょか」


あまり長引かせて、誰かを巻き込む訳にもいかない。
俺は気合いを入れ、銃を握り直した。


*****


「ご協力、感謝します」
「ああ」


戦闘終了10分後、通報を受けたMAB局員達が動けなくなったハグレを逮捕、収容に来た。
どうやら、ウィプスが呼んだらしい。
駆け付けた局員はケヴィン・テーラと名乗っていた。
見た感じまだ若く、階級は2等陸士だという。
恐らく、まだ学校を卒業したばかりだろう。 


「お噂は予々お伺いしていましたが、まさかこの数をお一人で制圧とは」
「いや、連れの精霊もいた。それに、lowクラスの推定Bが沢山いただけだ。あなた方でも問題ないだろう」
「いやいや、lowクラスのBと言えども、この数ですから」


精霊や魔族にはその強さでクラスがある。
基本的にlow、middle、highの3段階。
クラスが上がるにつれて、属性がより純粋になる為に使用する魔法も強力なものになるのだ。
ちなみに、先程のBというのは魔法士のランクの事。
要は、Bランクの魔法士と同等の強さだという意味である。


ーBランクがどの位強いかって?
例えば、重火器で武装した兵士だったら普通に50人位を相手して撃破出来る位か。
一般人と比べて化け物に近い。


煙草に火を付け、吸い込む。
しかし、どうも魔法が絡む事件ってのは。
色んな意味で疲れるとしか言えない。


ーまぁ、金にはなるからいいが。


「それじゃライセンスはお返しします」
「ああ。報酬はMABの事務課に、いつもの所へって伝えてくれ」


ライセンスを受け取りながら言うと、目の前の局員が驚きに表情を染める。


「特例のライセンス発行だけでなく、MABから報酬を貰ってるって噂が本当だったとは」
「当たり前だ。俺は別にボランティアじゃない。まして、これは俺が解決した事件だろ」
「ま、まあ、確かに。それで今からどちらにお出掛けですか?」


煙草を消してバイクに跨がった俺に、そんな事を聞いてくる局員。


「ああ。今からあんたらの巣に行って、狸狩りだ」
「はあ...?」
「それじゃ、後はよろしくな」


皮肉混じりに言ってやり、俺はその場を後にしたのだった。
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