Four Seasons

ていし

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日常の終わり

3.Four seasons

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ジリリリリリリ ……カチッ

春    「もう朝か…」

昨日は緊張してあまり寝れなかった。

春    「起きるかっ」

俺は布団を足で下に飛ばし、飛び起き、着替えた。

そういえば当日の服しか持ち込めないって言ってたな。

そのままの服でやることになるだろうから、動きやすい格好にするか。

俺はジーパンにTシャツだけの簡単な格好に着替えリビングに向かった。

リビングに入るとすでに秋が準備万端で待っていた。

秋人「春!遅いぞ!」

何でこいつ元気いっぱいなんだよ…。

俺は秋が羨ましいよ…。

春  「おはよ。こんな早く起きてるなんて珍しいな。」

秋人「わくわくしちゃってよ~。目がすぐに覚めちまった。」

わくわく?
こいつは遠足か何かと間違えてるのか?今から死ぬかもしれないゲームをやるんだぞ?

春  「あ‥あきくん?遠足じゃありませんよ?」

秋人「ばーか、わかってるっつの!」

春  「死ぬかもしれないんだぞ?」

秋人「でも、ゲームの世界に入れるなんて夢みてーじゃん。」

あぁ‥こいつわかってない‥

秋人「春も一度は夢見たことあるだろ?」

春  「そりゃあるけど…」

今回はわけが違うだろ~。

秋の目はキラキラと輝いている。

ツッコミにも疲れたよ…

秋人「そんなしけた面すんなって!何事も楽しまないとつまんねーぞ!ほらっしゅっぱーつ!」

秋は俺の腕を引っ張りながら玄関を飛び出していく。

指定された場所までは自転車で10分ほどの所にあった。

俺たちは自転車に乗り目的地まで飛ばした。

あっ
着くまでに自己紹介しとこう。

俺は藤本春(ふじもとはる)
身長175、体重56
何をしても中の上という特技を持っている。
髪の毛は黒色、あとは…そんなもんか。

これといって誇れるものもないんだよな~
変わりたいと思いつつも、なんだかんだ満足してる自分がいる。

秋人「着いた~。」

おっと。いつの間にか着いてたか。

秋人「ボーとしてたけど大丈夫か?」

10分間無言で走り続けたからか、秋が心配そうに聞いてきた。

俺は忙しかったけどな!
言うとまた頭がおかしいとか何とか言うんだろうな~

春  「ちょっと緊張してただけだよ。」

俺は自己紹介の事は秘密にしておいた。
めんどくさいからね。

指定された場所は意外にもキレイなホテルだった。

自動ドアを通るとロビーがあり、ソファーにはすでに岡本さんと北条が座って待っていた。

真冬「おっっっそい。か弱い女の子を待たせるなんて!」

かよわい?

秋人「かよわい?」

あっ
こいつ口に出しやがった。

もちろん北条のビンタが飛んでくる。

バッチーーンッ

あーあ、心に秘めとけよ笑

昨日と同じ光景がロビーで行われた。

また秋は左の頬を押さえてる。

そこに

夏生「2人ともおはよ!よく眠れた?」

岡本さんが笑顔で話しかけてくれた。

春  「うん、よく眠れたよ。」

女の子の前では、弱音は吐けない。

夏生「そっか。よかった!」

岡本さんは手を前で合わせて笑顔で答えた。

あー可愛いな~。天使みたいだ。

俺が岡本さんに見惚れてると

バッチーーンッ

いきなり左頬に激痛が走った。

真冬「デレデレしてんじゃないわよ!」

これはいてー。

男2人が左頬を押さえて、ホテルのロビーでうなだれている光景は、他人から見たら笑いもんだ。

すると

女  「岡本様ですね?」

茶髪でキレイなお姉さんが話しかけてきた。

夏生「あっはいっ。そうです。」

女  「案内致します。」

そう言うと俺らを応接間らしき部屋まで案内してくれた。

女  「どうぞ。」

案内された部屋の入り口はホテルの1室と変わらない。

ガチャッ

中に入ると真っ暗で何も見えない状態だった。

夏生「何にも見えないね‥」

秋人「ああ。」

全員が部屋に入ると

バタン

後ろのドアは閉まってしまった。

その瞬間に一気に部屋の明かりが着いた。

真冬「まぶしい!」

明るくなった部屋には何もなく白の壁で囲まれていた。

いや、誰かいる。

回復した視界をその誰かに向ける。

立っていたのは案内役のお姉さんだった。

女  「ようこそ【Rush About】へ。私は岡本様御一行の案内役に選ばれました、アンと申します。」

案内役、そんなのがいるのか。

アンと名乗る女性は淡々と話し続ける。

アン「では、ゲームの案内をさせていただきます。まず、パーティーの名前をお決めください。」

秋人「名前ね~。いきなり言われても難しいな。」

全員が腕を組み同じポーズで考えてる。

夏生「あっ!私たちと言えば!季節じゃない?」

岡本さんが人差し指を上に立てて閃いたって顔をしている。頭の上に電球が見えそうだ。

秋人「季節?」

夏生「うん!私達ってみんな季節の名前が入ってるでしょ!」

春  「確かに…」

夏生「だから、【チーム春夏秋冬!!】っていうのはどう!?」

秋人「いいね!わかりやすくて、覚えやすい!」

春  「俺もそれでいいと思うよ。」

と3人が賛成のなか。

真冬「私はいや!何で私が最後なの!」

ここでお嬢様が出てきたか。

北条は何でも1番にならないと気が済まない負けず嫌いだ

春  「じゃあ【Four Seasons】でいいんじゃない?英語なら全部含まれてるから順番なんてないしさ。」

秋人「わかりにくい!覚えにくい!言いにくい!」

秋は英語できないからな

夏生「そう?私はいいと思うよ!」

真冬「私もさんせー。」

お前のワガママだからな。

秋人「みんながそう言うなら異論なし。」

秋はしぶしぶな顔をしているが、北条は満足そうな笑みをこぼしている。

アン「では、パーティー名は【Four Seasons】で登録します。リーダーはどうしましょう?」

ここはもちろん。

春  「北条がやってくれるよな?」

真冬「当たり前よ!私についてきなさい!」

北条は誇らしげに胸を張っている。

アン「ではリーダーは北条真冬様で。次にこの端末式腕時計をはめてもらいます。」

アンは床に置いてあったアタッシュケースを開け、赤い腕時計1つと白い腕時計3つを取り出し俺らに渡した。

アン「リーダーの北条様は赤をその他のみなさまは白をお付け下さい。」

そう言われ付けてみると、全く重みを感じなかった。

夏生「えっかるーい!」

真冬「ほんとね、つけてないみたいだわ。」

アン「この腕時計は最新式なので、重さを感じることはありません。また、何をしても壊れることはありませんので安心してください。」

秋人「へぇー、すごいもんだな。」

全員物珍しそうに腕時計とにらめっこしている。

アン「この腕時計は、パーティー内での通話、メール、メンバー情報、ヘルプなどが見れます。」

真冬「メンバー情報?」

アン「はい。詳しくはまた後ほど説明させていただきます。では腕時計をタップしてください。」

タップしてみる。

すると白くひかっている。電源がついたみたいだ。

ん?ガチャを引く?

端末の画面に【ガチャを引く】と表示されている。

アン「では今からゲーム内での職業を決めてもらいます。尚1パーティーに1人必ず【魔法使い】が必要ですので、お決めください。」

秋人「魔法使いね~。俺パス!」

秋が真っ先に否定した。

俺のイメージだと岡本さんが似合いそうだな~

何てことを考えてると

真冬「私やりたいわ!」

北条か~。でもそれはそれでありかな。

夏生「さんせーー。絶対真冬可愛いよ!」

春  「俺もいいと思うよ。」

秋人「意義なーし。」

アン「では腕時計をお出しください。」

真冬「はい。」

北条が腕を出すと、アンは自分の腕時計と北条の腕時計をくっつけた。

ピロン

アン「これで【魔法使い】となりました。」

えっそんだけ?

春  「北条、何か変わったか?」

格好も何も変わったようには見えない。

真冬「いや、変わった様子はなさそうだけど。」

アン「もちろんです。ゲームが始まってからしか何も起こりません。」

秋人「なーんだ。じゃあ俺もさっさと職業決めてやら。」

秋は画面をタップした。

ガチャガチャポン!!

陽気な音楽だけが聞こえてきた。

秋人「おおーーー。俺にぴったりじゃねーか!」

秋は拳を上げて喜んでいる。

夏生「何になったの~?」

秋人「じゃん!」

秋はこっちに腕時計を見せてきた。

画面には【槍使い】と書いてある。

春  「おおー。確かにぴったりじゃん!」

岡本さんは不思議そうに首を傾げながら聞いた。

夏生「何でぴったりなの?」

俺が説明しようとしたら、北条が遮るように説明した。

真冬「こう見えて薙刀で全中準優勝してるのよ。」

夏生「え~~!準優勝!すごいね!」

秋人「まぁな!俺にもちゃんと取り柄があるんだ!」

秋はハナタカになりながら胸を張って笑っている。


そろそろ俺も回すか。

俺は画面をタップした。

ガチャガチャポン!!

あー。ありがちだな。

秋人「おっ!春何になった?」

俺は黙って画面を見せた。

秋人「【剣士】か。何かありきたりだな。」

春  「俺もそう思う。」

やっぱり俺はありきたりが似合うのかもな。

すると、

夏生「でも、漫画の主人公とかって、みんな剣士だから、当たりだよ!」

岡本さんがフォローしてくれた。

何て優しい子なんだ…。

真冬「夏も引いたら?」

夏生「うん、そうする!」

そう言うと岡本さんは画面をタップした。

ガチャガチャポン!!

夏生「きゃー!かわいい!」

岡本さんは嬉しそうに声をあげた。

真冬「何になったの?」

岡本さんが画面を見せる。

画面には【動物使い】と書いてある。

動物使いって何だろ。

真冬「夏にぴったりだね。」

夏生「うん!」

岡本さんは満足そうに微笑んでる。

アン「ゲーム内での職業の変更はできませんのでご理解下さい。」

アンは唐突に説明をくわえた。

まぁ俺は変えれなくてもいいな。

みんなも変える気が無いのか、説明をあまり聞いていない。

アン「では、先ほど質問があったのでメンバー情報について説明しますが、実際見られるのはゲームが始まってからです。画面に【メンバー情報】というアイコンが表示されていると思います。ゲームが始まってから、そのアイコンをタップすると、メンバーのステータスを見ることができます。」

腕時計にはガチャ画面は消え、スマホのような画面に変わっている。

画面には【通話】【メール】【メンバー情報】【ステータス】【ガチャ】【ヘルプ】のアイコンが表示されていた。


アン「そして、クリア条件ですが、【願いのかけら】と呼ばれる星を50個見つけてください。すべて集まれば最後のクエストが出てきます。そしてそのクエストのクリアがゲームのクリアとなります。」

【願いのかけら】か。

アン「以上が主な説明となります。ご質問ありますか。」

真冬「はい、どうやってその【願いのかけら】を集めるの?」

確かに、どこにあるのかもわからないのに探すのは骨がおれそうだ。

アン「【願いのかけら】はクエストをクリアするともらえます。しかし、必ずもらえるわけではないので、もらえるまで色々なクエストをこなすしかありません。また、他のプレイヤーから奪うこともできます。」

秋人「他のプレイヤー?」

アン「はい。このゲームには他の参加者もいますので。」

という事は俺らの他にプレイヤーが何人もいるのか。

夏生「奪う場合はどうするの?」

アン「相手プレイヤーを戦闘不能にすると、相手プレイヤーのアイテムが全て手に入ります。尚【願いのかけら】はリーダーしか所持できません。」

真冬「人を…殺さないといけないの?」

北条は震えながら聞いた。

しかも北条はうちのパーティーのリーダーだから、もちろん相手から狙われる確率が高い。

アン「はい。奪う場合は殺すしかありません。」

ん?でも…

春  「別に奪わなくても揃うんだよな?」

アン「はい。奪う方が早く集まる事が多いですが、奪い合わなくても、クエストだけで揃います。」

春  「じゃあ殺し合わなくてもすむな!」

北条は安心した顔をしている。

アン「そろそろゲームを始めたいのですが、大丈夫ですか?」

夏生「真冬、行ける?」

岡本さんは北条の隣まで行き、話しかけた。

真冬「夏、ありがと。もう大丈夫!みんな、絶対クリアするわよ!」

秋人「さすがリーダー!ついてくぜ!」

北条が頼もしく見え、俺も岡本さんも秋と同じ思いだった。

アン「では、入ってきたドアを抜ければゲーム開始となります。また詳しい説明は腕時計の【ヘルプ】をご覧ください。」

後ろを振り向くと、ドアが開いており白い光で包まれている。

アン「洞窟を真っ直ぐ抜けていけば町が見えてきます。そこがあなた方のギルドとなるので、ギルドの質問はそこでまた聞いてください。では健闘を祈ります。」

そういうとアンは俺たちにお辞儀をした。

真冬「行くわよ。」

夏生「うん。」

春秋「ああ。」

俺らは白い光に包まれながらドアを抜けた。





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