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その者、戦場を駆ける
しおりを挟む改めて紹介しよう。私の名はルーベン・アトラス。
花も恥じらう麗しき少女だ。
父譲りの黒髪に母に良く似た美しい顔立ち、皆とは言わないが十中八九誰もが見とれる美しさを持つと自負している。
そんな女が身の丈以上の大きな槍を、軽々と操るなんて誰が想像しようか、いや、しないだろう。
さらには戦闘姫という乙女には不名誉な二つ名まで持ち、男達に混じり槍を振るう。
私がこうして大人の男に混ざり武器を操りだしたのは、約3年前の事がきっかけだ。
あの時、この世界は2つの勢力に分断していた。一つは魔王が筆頭にいる派閥で、分かりやすくグループ陰とする。相対するは人の王が指揮をとる派閥、グループ陽だな。
この二つの勢力はお互いを憎しみあっていた。
グループ陰は主に魔族や魔獣、獣人など人と多少見た目が異なる者が多く、彼等は人間等に見下されたり捕らわれて奴隷以下の扱いをうけていた。その扱いについて彼等を統べる魔王は何度も抗議をしたが、返事をすることさえもせずに、追い討ちをかけるように冒険者が十も満たない魔王の娘を捕まえて悪の根源とうそぶき処刑した 。
グループ陰はもう限界だった。
彼らは人を傷付けまいと封印していた自らがもつ大きな力を使い人間等に襲いかかる様になった。
グループ陽は人間やエルフ、神人と呼ばれる者達の集まりだ。彼らはグループ陰の姿が動物に似た者達がいたため、人と同じような生活をしているのが不満だったし、彼らがその身に隠し持つ力が恐ろしく、歯向かわない今の内に排除しておきたかった。
ある日、何故か王宮にいた魔獣に王宮で遊んでいた幼き王子とその従者が殺された。
グループ陽はこれをきっかけとし、グループ陰を排除する動きとした。
二つの勢力がぶつかるとき、私はその間にいた。
言葉通り間に。二つの勢力が戦場とした場所には小さな町がある。そこは魔族、魔獣、獣人、人間、エルフ、神人が平等に生活する地外奉献のような場所であり、心優しき少年が納める町だった。少年の父は魔族で母はエルフ。少年は今の時代のおかしな情勢が好きではなかった。その思いに共感するものは何処にでもいる。しかし、そんな考えの者達が住める場所は少なく、下手に口にしてしまえば、村八分にされたのだ。彼等は生まれた場所を捨てしぜんとその町に住み、お互い協力して暮らすようになった。
その町を納める少年こそ私のマイ ダーリンこと、エレン・ディー。
エレンは生まれた時から身体が弱かった。
風邪をひけば肺炎になるし、ちょっとした怪我でも化膿する。そんな身体でもこの町のためと車椅子で出掛けては様子をみて改善のために動く。その姿はまさに儚げ天使!
そんな彼を誰もが慕い、彼のためならこの町の人達は何でもする。私だってそうだもの。
そんな大事な場所が戦場になって消えるなんてあってはならないのだ。だから私は戦争をぶっ潰してやった。
早く言えば、私もこの戦に参戦したのだ。
町を守るため、エレンを助けるため、ムカつく魔王と人間の王を殴るため。一人対大勢対大勢でやってやったわよ。
その姿を見られて、どちらからも勧誘がきたけど私はエレンのもの。勿論、どちらも断った。
そのうちに、小さな町を守る女神なんて呼ばれだしたのだが、その女神が戦闘姫に変わるのにさほど時間はかからなかった。
彼らは私の地雷を踏んだ。
両勢力はいつの間にか私と言う共通の敵を倒すべく一時的に手を組み、エレンに手を出した。
私の目の前でエレンが倒れて、目に鮮明な赤が見えた。意識の遠くで醜い笑い声が聞こえるなか、その愚かなる選択に私は全員を半殺しにした。
ここで両親の正体を教えておこう、私の父は魔族達が崇拝する存在で世界を作ったと謂れのある邪龍で、母は人間達が神と崇めて世界を作ったと言われている聖龍である。
そんな、私がキレたのだから戦場がどうなったのか想像できるだろ?
そう、うめき声がいたるところでする戦場で立っているのは私一人だけ。足元には引きずりながら連れてきた魔王と人間の王。
彼らの目の前に黒い槍を突きつければ、か細い悲鳴を上げた。
そして、この町を二度と戦に巻き込まない様に約束させて、なおかつ裁判所並の大岡裁きを見せてやった。
魔族達を不当な扱いをし、幼き者の命をうそぶき消した人間達に、これから100年は児の成しずらい呪いを与え、同情感が半端ないがこの罪のなき町を人間達と同じく消そうとした魔族達には、これから100年は多少の障気がないと生きられない呪いをかけた。
それと、此度の戦いはちゃんとした記録に残すことを命じ、残さなかった場合や忘れて同じことが起こった際は私直々に制裁を加えると伝えた。
その言葉に二人の王は身体を震わせて快い返事をくれる。
その時から私は戦闘姫と呼ばれる様になった。
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