僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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はじまりと記憶

僕は切り札を使う

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 目の前には浄化中の空間の中で苦しむ青年がいる。
 青年の身体には黒いもやの様なものがまとわりついていた。黒いもやからは嫌な雰囲気をかもちだしており、青年はその黒いもやが触れる度に苦悶の表情を浮かべ、額には脂汗を滲ませている。

  ポッケをまさぐりはっと床に無惨に落ちた僕の身代わりになった紙を一瞥した後、どうしようか辺りを見回して傍観するように腕を組んで立っている兄上と目線が合い手を差し出した。


「コウにぃのヒトガタ頂戴?」
「ん?ああ。いいぞ、ほら。」


 兄上はあっさりと懐に仕舞っていた全員に渡した特別に力を込めた紙を渡してくれた。
 先程の事で分かったと思うが、この紙は身代わりになってくれるのだ。僕は分身として活用したが本来なら、攻撃を受けたとき致命傷ぐらいなら肩代わりしてくれる優れものである。さすがに一撃必殺の攻撃は防げないが。
 それでもまさに切り札である。


「そんな、あっさりと。」
「別に、俺にはシンが居るから大丈夫だ。」
「コウにぃは呪いこういうの は効きにくいから大丈夫でしょ。」
「呪いという内容的には大好きなんだがな。」


 少しだけしょんもりしている様に見える兄上の頭を背伸びしてなでなでした。
  さすが王族か。短期間とはいえろくな手入れもなかった髪の毛なのにさらさらだった。
 ふぉ、指に髪が引っ掛からないぞ。

 髪の毛を少しだけ堪能したら、受け取ったヒトガタに向き直り兄上に教わったロキ王の名前を刻む。
 ロキ王の正確の名は、ロキディア・ヘイムダム。
 まさか、王族・貴族名鑑を暗記してるとは思わなかったけどさすが、兄上だ。

 ヒトガタに向かって名を呟けば淡く光輝く。
 
 そのヒトガタを持って青年に近寄る。手を伸ばせば届くだろう位置までくると、青年の意識がこちらに向いた気がした。アキさんが警戒して剣を握る手に力を込めたがそれを制してから、すがられている気がして無意識に意識を安心させるように声をかけてしまった。


「今、終わるよ。お兄さん。」


 心なしか青年が目を見開いた様に感じた。

 僕はヒトガタに人差し指と中指を当てて口から歌うように呪文のようなものを唱える。そうすれば黒いもやはヒトガタへ吸引されるかの如く移動しはじめた。もやは、青年から離れるのを嫌がるように抵抗するが、青年からの拒絶も合わさり順調に吸い込まれて行く。 

 もやが薄くなりヒトガタが徐々に黒く汚れはじめ、最後には白かった紙が真っ黒になってしまった。それを予め用意していた口広瓶に入れる。蓋を閉めて封印を施す手技をする準備を整えていると、明かり取りの窓を通して空から一筋の光が蓋に当たる。光が消えるとそこにはに封印が何気に豪華な紋様で施されていた。


彼奴あいつらだな。」
「まあ、助かったけど。」
「愛されているな。」
「コウにぃもね。」


 瓶を見つめて夢で会った彼らを思い出しながら、思わず笑みを浮かべる。

 青年はシヤさんに支えられているがその意識は無いに等しい。

 長い期間、ロキ王の怨霊にさらされていた身体は疲労の色が強く、人々を殺めるという普通は体験しない事をした精神も彼の髪が白くなっているのが余程の事があったのだと示していた。


「取り敢えず、終わったかな。」
「そうだな。」


 瓶をコロコロ手のひらで転がして、息を吐く。


「それ、どうするんですか?」
「うーん。どうしようかな。」
「燃やしてしまえばいい。そのための紙なんだろ?」
「そうなんだけど。そうすると転生出来なくなるんだよね。」
「構わないだろ。そんな悪霊。」
「うーん。一応、彼らこの世界の創造主にお伺いしとこうかなって。」


  国に帰ったら神殿にでも寄れば会えるかな。
 それとも夢にまた出て来てくれるだろうか。


「ところで、この身代わりの紙はどうしましょう。」
「ああ、返さなくて良いよ。」
「ですが、異常性能なものですし……。」
「まあ、僕の血が混じってるから特別に高能力だけど、所詮は紙だから返されても使いきる前にボロボロだよ。」


 確かに、今考えるとやり過ぎた感が半端ない代物だ。だからこその切り札なのだが、今回はこの身体幼児だししょうがないよね。それに、言ったように紙だからもったとしても数年が限度である。だったら、兄上と僕には家に帰ったら適当な宝石にでも形式を刻んでピアスとかにした方がいい。
 いわゆる今回のはその場しのぎなのだ。


「シヤさんやアキさんは確実に持っておいて正解だろうし、バルスさんはお兄様対策で持っておいて。」
「……ありがたく頂戴します。」


 なまじ僕がバルスさんになついちゃったから、帰ったらお兄様達がなんかしそうな予感なんだよね。
 バルスさんもそれが分かったのか懐から出そうとしていたものをしまい直していた。


「これ、大量生産は無理ですよね。」
「うん、集中力もいるし致命傷を肩代わりする性能を維持は出来ないね。」
「総団長にも持たせたかったのですが。」


 なにっ、総団長とな。

 兄上が耳元でシヤさんが第5騎士団長であることを教えてくれた。
 ぐぬぬ、帰ったらお勉強しないとだめだ。
 僕ぐらいの年齢ではそこら辺は分からないと、自己紹介では第5をはぶいたのだそうだ。そりゃそうだ。
 

「私のを差し上げても?」
「好きにするといいよ。」
「総団長、血気盛んなんだよな。」
「その話は後で詳しく教えて。取り敢えず今はここから出ようか。」


 すごく和やかに話してたけど、場所はあの倉庫のままである 。浄化したとはいえ肉片とかはそのままであるため、生臭さは半端ない。兄上からロキ王の凶行としての証拠を残したほうが良いとは聞いていたからこの現場と国中の人形でも置いておこうかなとおもっている。
 シヤさんが人形師の青年をおぶり、みんなして洞窟に移動する。

 洞窟には傷だらけの女性とシシリーしかいなかった。




 





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