僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

文字の大きさ
21 / 245
はじまりと記憶

僕は切り札を使う

しおりを挟む



 目の前には浄化中の空間の中で苦しむ青年がいる。
 青年の身体には黒いもやの様なものがまとわりついていた。黒いもやからは嫌な雰囲気をかもちだしており、青年はその黒いもやが触れる度に苦悶の表情を浮かべ、額には脂汗を滲ませている。

  ポッケをまさぐりはっと床に無惨に落ちた僕の身代わりになった紙を一瞥した後、どうしようか辺りを見回して傍観するように腕を組んで立っている兄上と目線が合い手を差し出した。


「コウにぃのヒトガタ頂戴?」
「ん?ああ。いいぞ、ほら。」


 兄上はあっさりと懐に仕舞っていた全員に渡した特別に力を込めた紙を渡してくれた。
 先程の事で分かったと思うが、この紙は身代わりになってくれるのだ。僕は分身として活用したが本来なら、攻撃を受けたとき致命傷ぐらいなら肩代わりしてくれる優れものである。さすがに一撃必殺の攻撃は防げないが。
 それでもまさに切り札である。


「そんな、あっさりと。」
「別に、俺にはシンが居るから大丈夫だ。」
「コウにぃは呪いこういうの は効きにくいから大丈夫でしょ。」
「呪いという内容的には大好きなんだがな。」


 少しだけしょんもりしている様に見える兄上の頭を背伸びしてなでなでした。
  さすが王族か。短期間とはいえろくな手入れもなかった髪の毛なのにさらさらだった。
 ふぉ、指に髪が引っ掛からないぞ。

 髪の毛を少しだけ堪能したら、受け取ったヒトガタに向き直り兄上に教わったロキ王の名前を刻む。
 ロキ王の正確の名は、ロキディア・ヘイムダム。
 まさか、王族・貴族名鑑を暗記してるとは思わなかったけどさすが、兄上だ。

 ヒトガタに向かって名を呟けば淡く光輝く。
 
 そのヒトガタを持って青年に近寄る。手を伸ばせば届くだろう位置までくると、青年の意識がこちらに向いた気がした。アキさんが警戒して剣を握る手に力を込めたがそれを制してから、すがられている気がして無意識に意識を安心させるように声をかけてしまった。


「今、終わるよ。お兄さん。」


 心なしか青年が目を見開いた様に感じた。

 僕はヒトガタに人差し指と中指を当てて口から歌うように呪文のようなものを唱える。そうすれば黒いもやはヒトガタへ吸引されるかの如く移動しはじめた。もやは、青年から離れるのを嫌がるように抵抗するが、青年からの拒絶も合わさり順調に吸い込まれて行く。 

 もやが薄くなりヒトガタが徐々に黒く汚れはじめ、最後には白かった紙が真っ黒になってしまった。それを予め用意していた口広瓶に入れる。蓋を閉めて封印を施す手技をする準備を整えていると、明かり取りの窓を通して空から一筋の光が蓋に当たる。光が消えるとそこにはに封印が何気に豪華な紋様で施されていた。


彼奴あいつらだな。」
「まあ、助かったけど。」
「愛されているな。」
「コウにぃもね。」


 瓶を見つめて夢で会った彼らを思い出しながら、思わず笑みを浮かべる。

 青年はシヤさんに支えられているがその意識は無いに等しい。

 長い期間、ロキ王の怨霊にさらされていた身体は疲労の色が強く、人々を殺めるという普通は体験しない事をした精神も彼の髪が白くなっているのが余程の事があったのだと示していた。


「取り敢えず、終わったかな。」
「そうだな。」


 瓶をコロコロ手のひらで転がして、息を吐く。


「それ、どうするんですか?」
「うーん。どうしようかな。」
「燃やしてしまえばいい。そのための紙なんだろ?」
「そうなんだけど。そうすると転生出来なくなるんだよね。」
「構わないだろ。そんな悪霊。」
「うーん。一応、彼らこの世界の創造主にお伺いしとこうかなって。」


  国に帰ったら神殿にでも寄れば会えるかな。
 それとも夢にまた出て来てくれるだろうか。


「ところで、この身代わりの紙はどうしましょう。」
「ああ、返さなくて良いよ。」
「ですが、異常性能なものですし……。」
「まあ、僕の血が混じってるから特別に高能力だけど、所詮は紙だから返されても使いきる前にボロボロだよ。」


 確かに、今考えるとやり過ぎた感が半端ない代物だ。だからこその切り札なのだが、今回はこの身体幼児だししょうがないよね。それに、言ったように紙だからもったとしても数年が限度である。だったら、兄上と僕には家に帰ったら適当な宝石にでも形式を刻んでピアスとかにした方がいい。
 いわゆる今回のはその場しのぎなのだ。


「シヤさんやアキさんは確実に持っておいて正解だろうし、バルスさんはお兄様対策で持っておいて。」
「……ありがたく頂戴します。」


 なまじ僕がバルスさんになついちゃったから、帰ったらお兄様達がなんかしそうな予感なんだよね。
 バルスさんもそれが分かったのか懐から出そうとしていたものをしまい直していた。


「これ、大量生産は無理ですよね。」
「うん、集中力もいるし致命傷を肩代わりする性能を維持は出来ないね。」
「総団長にも持たせたかったのですが。」


 なにっ、総団長とな。

 兄上が耳元でシヤさんが第5騎士団長であることを教えてくれた。
 ぐぬぬ、帰ったらお勉強しないとだめだ。
 僕ぐらいの年齢ではそこら辺は分からないと、自己紹介では第5をはぶいたのだそうだ。そりゃそうだ。
 

「私のを差し上げても?」
「好きにするといいよ。」
「総団長、血気盛んなんだよな。」
「その話は後で詳しく教えて。取り敢えず今はここから出ようか。」


 すごく和やかに話してたけど、場所はあの倉庫のままである 。浄化したとはいえ肉片とかはそのままであるため、生臭さは半端ない。兄上からロキ王の凶行としての証拠を残したほうが良いとは聞いていたからこの現場と国中の人形でも置いておこうかなとおもっている。
 シヤさんが人形師の青年をおぶり、みんなして洞窟に移動する。

 洞窟には傷だらけの女性とシシリーしかいなかった。




 





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

処理中です...