僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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戻ってきたら大騒動

僕は帰ってきた

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 人形の国、ヘイムダルの騒動から数日が経ち僕たちは、無事に神の国、フェーリス国に戻ってきました。
 この数日の間に何があったかは後の機会に語るとして、今は帰ってきた報告を皇帝や家族に行うべく馬車でお城へと向かっていた。

 お城に登城するのはこれで2回目になるのだが、僕としては1回目よりめ不安や緊張が大きい。今回、隣街でバルスさんが早馬で帰る有無の手紙を出していたので、父様や母様も来ていることは安易に想像がついた。

 別れの際、悪気は無かったとは言え父様を襲っているので顔を合わせずらいのが本心である。騎士団を出してくれようとはしていたけど本当は嫌われていたらどうしよう。

 嫌われていなくても何気に仲の良い皇帝様と父様が何かやらかすのでないかと心配してしまう。
 兄上はもっと気楽な気持ちでいても大丈夫だと言うが、シシリーの宝玉から得た記憶と名称を持った身としてはとても気楽にしてはいられないのだが。

 一刻一刻と徐々に近寄るお城に、憂鬱な気分になりながら城下街を見ていると、光を反射する真っ白な衣を身に纏った腹が風船よ様に膨らみ肥えている中年だろう男が人々を自らの周りに集めて何かをしていた。

 その光景に何となく何処かで見た事があるなと過去の記憶を引きずり出し考えて、あれに似ているのを思い出した。そう、前世で良く駅前で見た選挙演説だ。
 買い物とか帰宅途中の人々を呼び止め、その歩みを止めさせて熱心に理想を語りかけている姿にそっくりだ。

 何をそんなに熱心に語りかけているのか気になって、その人物を取り囲む人々の塊の脇を馬車が通る際に、街の喧騒に耳を傾けてみた。
 

『聖女』


 おっさんの演説で気になったワードはこれだった。
 どうやら何処かで聖女様が現れなさったらしい。

 聖女、それはファンタジーでは馴染みの美少女ヒロイン。
 人々を助け、癒し、その身をにしながら人々を思いやる優しい存在。
 
 僕としてはしっかり者の巨乳のロリっ娘様だと嬉しいな。
 ちなみにドジっ子は駄目です。人助けもする心優しい聖女様がドジっ子ってなんかそれ、死亡フラグ満載なんだもん。
 いざというときにドジっ子じゃないのはそれは演技のドジっ子でしょ。それはそれで嫌だもの。

 げふんげふん、まあ、とにかく僕達が出掛けていた数日の間に聖女様がこの国に現れた。それは神のお導きなとだと熱弁していたのだ。

 僕と同じように聞き耳をたてていた兄上は思案顔をした後、面白いのか面白くないのかよく分からない微妙な表情をしながら、僕の柔らかねこっ毛へアーをナデナデ。

 さすが兄上です。テクニシャンやでー。ぐう……。



 記憶があったとしても身体は幼児。
 色々とあった長期の旅の疲れか、頭を撫でられる心地よさか、先程の緊張を忘れて寝入ってしまった。そして、目覚めたのは懐かしき謁見の間の皇帝様のお隣であった。

 意識が途切れている耳に、喧嘩している様なドスの効いた声が聞こえて、暗闇をさ迷う意識が浮上してくる。
 背中に感じる暖かいぬくもりに包まれて、そのぬくもりをもっと感じていたく、さらには起きたくなくてみじろいでいると、ひときわ大きな声が聞こえきた。
 びくりと飛び上がる勢いで起きてしまった。今思うと起きないほうが平和だったのだが。

 目が覚めてまず始めに視界に入ってきたのは、冷淡で美しいコウにぃの下アングルのお顔であった。その美しい顔に触れたくて手を伸ばせば、室内が一瞬だけ殺気に包まれて部屋の温度が何度か下がった気がする。
 その殺気にまだ残っていた眠気が飛んでゆく。ばっと、身体をお越して辺りを見回すと、此処が謁見の間であることがわかり自分より下の位置で青筋立てた笑顔のディーレクトゥス兄弟が魔法を繰り出すぞ状態でいるのが見えた。

 そのお姿にヒィッと声を上げて、コウにぃに抱きついたが、それが火に油を注ぐ結果となり詠唱を始めた二人に慌てて、ストップをかける。


「兄様、せっかく直したのに壊れちゃう!」


 そう言えば、二人の動きが止まり魔法も引っ込む。
 よくよく辺りを見れば、壁際で控えるように立つ安堵の息を吐くバルスさんを発見。
 シヤさんやアキさんもその脇に揃っていた。


「目が覚めた様だね。」
「あっ、皇帝陛下。お見苦しいものを済みません。」
「この息子が勝手にしたことだ。気にすることはない。」


 あぁ、まさに紳士なおじ様な方。
 
 その皇帝陛下の紳士な姿に感動しつつも兄上の膝の上からいそいそと降りるとてくてくと兄様の背後にいる両親の元にいく。
 両親の前に立つと震える手を隠しながら深々とお辞儀をした。


「只今、帰りました。行くときの無礼は申し訳っ……ふぎゅっ。」
「ああ、シンリ。無事に帰ってきてくれたのだな。」
「旦那様を隙をついたとはいえ、倒したのよ。大丈夫に決まっているわ。」


 行くためとはいえ、倒した事を気にしていたがどうやら杞憂の様だ。暖かな家族団子に包まれて幸せです。


「怪我はしていない?」
「記憶は戻ったのかい?」
「はい!無事に。」


 兄様達の心配の声に元気に返事を返して、自分からもその誰一人包み込めない手を伸ばして抱きついた。
 隙間から見えた兄上の満足げな顔に目覚める前からの喧嘩は兄上の計画であるのを察した。
 もう、コウにぃ大好き。


「家族の団欒は微笑ましいが、人形の国の詳細をたのむ。」
「不粋な王様だな。もう少し待っていろよ。」
「父様!」
「……その団子のままで良いから話してくれないか?」


 本当にごめんなさい皇帝陛下様。

 身体に家族団子を引っ付けながら人形の国で有ったこと、残っている国の人々の事等を思い出せるだけ話した。途中途中で、兄上やバルスさん等がフォローをしてくれて、最後に自分の瞳の変化を説明する。


「……その、シシリーからの宝玉で記憶を取り戻すと共にとある名称を得ました。瞳の変化はその名称から来ているのではと。」
「その名称とは一体……。」
「『魔神の愛し子』それが名前です。」





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