僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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記憶を求めて奥底に

僕と囚われの姉御

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「『なんで、こんな面白そうな事を教えてくれないのさ!』」
「お前は居なかったじゃん。」
「『名前だって‥…。』」
「ユダだろ?」
「『その名前は嫌だって言ってるじゃん!』」


 先程から僕に絡みついているのは残りの式神である土の属性を司る男だ。月の様に煌めくウルフカットの銀糸の髪にアースアイと呼ばれる少し変わった瞳を持つ、残念なイケメンだ。
 服装も少し変わった着物の様な物で、この世界では浮いている様な感じだが、彼が着ていると様になっているのがちょっとだけ妬ましい。

 彼はダンジョンの一番奥いあった他の式神も居た部屋で目が覚めた。周囲が安全であることを確認して、部屋の直ぐ側に僕だけど僕じゃない者を見たあと、ダンジョンから抜け出して地上で遊び呆けて居たのだそう。

 気分晴れやかに帰ってみればダンジョンは消滅しているし、他の皆の気配のそばには僕がいるしで直ぐに飛んできたらしい。文字の通り飛んで。


 城の人達は飛んできた男に魔王を重ねて大パニック。こちらの魔王が召喚の儀で召喚したのも魔王だったので何か報復がみたいに思ったらしい。
 そこで、コウにぃを守るぞとなるのがこの城の人達の良いところだよね。

 城と言ったら早速白夜が良い意味でやらかしてくれている。明るい小柄な少女を早々に受け入れてくれたここの人達を『何か嫌な人。』『ムカつく。』なんて形容したした人は調べると裏で色々と持っていたようで、急に辞めさせはしないけど、重要な所から遠ざけてゆっくりと処分するとの事だ。『あの二人良い雰囲気ね。』『あの男は駄目よ。』なんて言った人達は付き合いが始まったり、実はダメ夫だったなんて事もなってたり。
 まさかの効果だ。


 話は戻るがこの絡みついている男は他の四人と比べて少し特殊なのだ。彼は、一人で陰陽を持つ稀有な存在で異世界では麒麟と呼ばれて恐れられていた存在だ。

 愉快犯でお茶目で意外と気難しい。
 修行だとか言って大勢の敵の中に置いてかれた事もある。その時に思ったのは『こいつは裏切者ユダだ。』と。



「『ねぇ、名前を付けてよ~。』」
「‥…分かった。唯墮ユダで。」
「『変わらないじゃん!』」


 これ以上ぎゃあぎゃあ言われても迷惑しかないか。
 

惶麟おうりん。」
「『あはん?』」
「名前は惶麟だ。」
「『何それ、格好いいじゃん。』」


 オレの名前は惶麟だね。
 ととてもはしゃぐ姿に白夜と同じ反応じゃないかと呆れる。これで実は最年長なんですけどね。本当に残念なイケメンだよ。

 せっかく惶麟とも再会したし、色々と手伝ってもらおうかな。人手は足らないことはないからね。
 黙っていればイケメンだしどうせならその顔を利用しよう。


「ちょっとお願いがあるんだけど。」
「『なになに?』」
「人妻をナンパしてきて。」
「『え、遊んできて良いの?オッケー!』」


 このノリは助かる。
 
 今日、ウォルターの姉が珍しく貴族のお茶会に参加するらしい。本当は僕が出ようかと思っていたけど、ウエイターとして惶麟を侵入させてナンパして連れて来てもらおう。念の為にお手紙も渡しておくから渋ったら渡してくれれば、弟想いの彼女は来るのでは無いかな。

 取り敢えずお話をしてみたい。



 この数時間後、ウォルターに雰囲気が似た美女をホクホクとした顔で惶麟が連れてきた。
 彼女のナンパは失敗したようだが、他のお姉様達なねちやほやされて楽しかったのだろう。

 問題の彼女はいきなり王城に連れて来られて戸惑っている様子だが、どうやら手紙を読んでくれたみたいで僕を見つけると緊張した面持ちでこちらを見てくる。


「私に用があるそうですね。」
「はじめまして。僕はシンリと申します。」
「私はグレイシア・スマラルダス。スマラルダスの妻です。」


 ウォルターと同じハニーブロンドの髪のスレンダーな清楚な雰囲気の美女だ。

  グレイシアは手紙を握り胸に抱えている。


「私の弟のウォルターがお世話になっているようで、有難うございます。」
「まあ、うん。」
「いったい何が‥…。」
「グレイシアさんが何も知らないとは思えません。」


 僕がグレイシアさんに渡した手紙はネイキッド・スマラルダスがウォルターに命じた手紙だ。実はこの時には一度だけスマラルダス家を探索済だったりする。そこで屋敷の隠し部屋も含めて色々と探した結果、ウォルターに宛てた手紙の書き間違えのゴミと、野望の独り言を聞いておいた。


 手紙の内容は、姉の待遇を酷くされたくなかったら娘とコウラン皇子の繋がりを持たせろや、シシリーの始末をしろという事。ウォルター自身の保身は無いことの記載があった。


「私は弟さんの助けになっていたと思っていたのに、枷となっていたのですか。」
「ウォルター自身は心の支えてだと思いますよ。」
「そうだと良かったです。」


 目を伏せて、しばらく自分の中の考えを纏めて居るのだろう。
 しばらく時間が過ぎるのを待っていると、スッと顔を上げて悲しげに微笑んだ。


「私は何をしましょうか。」
「種は巻いていますので少しだけ手引してくれますか?」
「分かりましたわ。」


 種とは僕の側から消えている朱冥のことなんだけど、頭のいい彼女はきっといい感じにやってくれていることだろう。彼女に頼んだのはネイキッド・スマラルダスの籠絡。ハーフエルフの美しさを利用しようと考えた男なら朱冥の神秘的な美にも食いつくだろう。

 まあ、朱冥を隠れ蓑にグレイシアと娘さんを遠ざけるのが目的だ。何なら、離縁をけしかけても良い。


 で、僕がグレイシアに接触したのはこの朱冥の事を知らせる為と、ウォルターの事はもう心配しなくて良いと言う話をするためだ。





 
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