117 / 245
精霊たちの秋祭り
僕とダリオ探し
しおりを挟むまだ日が高いのでギルトからの帰り道にそのままダリオの家に向かうことにする。
ロキ王の始末のときにも訪れた事のある表通りとは異なる道を歩いて、似た様な住宅が広がる道に出る。同じ形で家を作ることで生産コストが減り安く質の良い家が提供できる様に兄上が提案した地区だ。
ボロボロで外観もとなると犯罪率が高くなるとは誰がいっていたが雰囲気は大事なんだね。
この区画に30年前に赤子を拾った冒険者が住んでいるようだ。
教えて貰った住所はここらへんなんだけど。
ガチャン!
眼の前の家の中でガラスの割れる音がして体が跳ねる。家主にはもうしわけないが気になって窓から中を覗くと、中に緑色が見えた。それが人間で、倒れているのだとわかったら身体が、扉を開けていた。鍵?後で弁償するよ。
緑色の正体は倒れた人の髪の毛で、数日は洗っていないようでベタベタしている。恐らく二十代後半から三十代の男の体の線は細く手首など子供の僕と同じぐらいしかない。
栄養不足というよりは病的な細さだ。
先程のガラスの割れた音はどうやら食事が入っていた器の音のようで破片が男の身体のしたじきになっている。
「宵月、この人を寝台に戻して。」
隠すように腕から首元に召喚獣の証を移動しておいた宵月に頼むと、無言で作業をしてくれる。ガラスの破片で怪我をしているようには見えないのでとりあえず一安心。
宵月が作業を終えてまた首元に戻ってきたので感謝の意を込めて頭を撫でる。それにすり寄るように反応を示す姿に少し癒やされた。
さて、この男の処置をしようか。
生活感を見る限り男以外にも住んでいるものがいるようだ。
介助をしやすいためか一部屋に台所や寝台と一緒くたにされている。二階もある家なのに下だけで完了しているような部屋はこの男のためなのだろう。
「どう見る?」
「これは病気じゃないな。覚えがある俺もよくなった症状だ。」
「それはいつ?」
「前世だ。」
「ということは障り系か。」
コウにぃの前世では遺物やオカルト系が大好物でそれらのものを集めていた。謎の耐性を発揮して大事にはならなかったが、それなりに障りを起こして気怠げにしていたのを覚えている。
実際体験したコウにぃがそういうのだから間違いないだろう。
僕の目にも嫌なモヤをまとっているように見える。
そっと寝台に横たわる男に手を当てると、黒いもやからは憎しみの怨念が伝わってくる。カエセカエセと何度も繰り返してくる声が聞こえて来そうだ。
そしてその恨みはこの家系の大人に対してかけられているよう。
とりあえず、浄化できそうだからしてしまおうかと考えていると壊れた扉に驚く声がきこえてきた。
同居者か。
兄上が様子を見に行ってくれた。
「こ、コウラン殿下!」
なんか聞いたことがある声がする。
「し、シンリ様まで居る!」
姿を見せたのはタオシャンだった。その両手には荷物を持ち、壊れた扉とこちらを交互に見ている。
うん。これがタオシャンじゃなければ壊れた扉に飛散したまま片付けられていない食器に、同居人に手をかける子供。
犯罪の匂いしかしないね。
「やあ、ちょっとお邪魔しているよ。」
「あ、はい。一体何が。」
「部屋で倒れていたから押し入っただけだ。」
「え、父さんは大丈夫なの?」
ああ。この処置しているのはタオシャンの話でよく出でくる元冒険者の父親なのか。
確かに言われたらこの緑の髪に顔立ちは似ているかもしれない。
この時期に体調が悪くなると言う話だし、この感じだと悪化していっているのだろう。
黒いモヤは大元に返しても良いが、辿るのに使わせて貰うか。
気持ちを切り替える為に深呼吸をする。
吸って吐いて心を落ち着かせるのは癖の様なもの。大きく息を吐き出したあと、口からは呪を唱える。この触りを別の対象、形代に移動させて引き剥がす。
男が息を荒げ苦痛の表情を浮かべる。
黒いモヤはがすべて剥がれるとその表情も消えて落ち着くが、なんとなく穢が溜まっているように感じたので、そちらも浄化しておいた。
そしたら、身体の汚れも消えたのだけど髪が先程よりも明るくなって当に新緑のよう。
「お父さんを治療させてもらったよ。」
「え。」
「もう、大丈夫と言うことだ。」
「本当に?」
「うん。でもまさかダリオを探してタオシャンのお父さんに行き着くとは。」
「ダリオ?それは亡くなったお祖父ちゃんの名前だよ。」
「え?」
床に散らばった破片や壊した扉の片付けをお手伝いしながら詳しく話しを聞くとどうやら、赤子を拾ったというダリオはこの父親と似たような症状で亡くなったらしい。で亡くなった翌年からタオシャンの父親が病に発症したようだ。
それは当に呪詛だと思う。この障りに触れたときにこの家系の大人が対象になっているようだった。
「ちなみにお父さんの名前は?」
「父さんはノアだよ。」
「ちなみに養子?」
「うん。よく知っているね。そう言えばなんのよう?」
何と言えば良いかな。
この髪色に穢を払ってからの気配、多分、いや確実にタオシャンの父親が彼だと思う。
やっぱり精霊族のちょっとは当てにならない。マイペースで片付けて良いものじゃないだろ。
この今は穏やかに眠っている男にも話さないといけない事なので目覚めてからすべてを話すことにしよう。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる