僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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精霊たちの秋祭り

僕と‥…。

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 蕪のランプがランランと輝いているけど、この世界に、このハロウィンもどきを広めたのはもしかしてドルイド教の方の人かなと考えた。

 このハロウィンもどきの元は古代ケルトのドルイドの信仰でかがり火を焚き、作物と動物の犠牲を捧げる祭りだった。ドルイド祭司たちが火のまわりで踊り、ドルイド祭司は、各家庭にこの火から燃えさしを与えたという。
 各家族は、この火を家に持ち帰り、かまどの火を新しくつけて家を暖めれば悪い存在などが入らないと考えていたようだ。1年のこの時期には、この世と霊界との間に目に見えない「門」が開き、この両方の世界の間で自由に行き来が可能となると信じられていたからである。その大切な火を運ぶ器が蕪のランタンであったと。

 この蕪っていうのが白いから頭蓋骨に見えて厄除けになるとも言われている。実際、この収穫祭には陽気な害を及ぼさない人ならざる者が来ているようだ。
 カボチャを使っている所もあるけどそれは蕪よりかぼちゃの生産があるからと聞いたことがある。

 まあ、雑学はここまでにして僕は今とある者を連れて王城に来ていた。タオシャン達にはシヤ先生が合流してくれたので、ご令嬢は気軽に近づけないだろう。


「おや、シンリ殿。」
「あ、皇帝陛下お会いできて光栄です。」
「うむ。してどうした。」


  街一望できてなおかつ雰囲気までわかるテラスが城にある。建国の王が国民の声を聞きたいと要望し出来た場所だと説明された。今日のようなお祭りの日にはそこにいるだろうという兄上の言葉通りだった。


「ノアさんを探していたのですが。」
「そうなのか。ノア殿ならここにいるよ。」
「お探しですか?シンリくん。」
「はい。」


 ノアさんが椅子に座ってひょっこりと皇帝陛下の背後から顔を出す。顔を赤らめてはいたがまだまだ理性が残っているようだ。そのノアさんの隣では精霊王も多分ワインかなをあおっている。
 よくよく見るとテーブルや地面には空き瓶がいくつも散らばっていた。
 その瓶を間違えて踏まないようにノアさん元に行くとその膝の上に乗る。


「ど、どうしたのシンリくん。」
「見せたいものが有るんだ。チート魔王コウラン皇子も出来ないから僕がやるしか無いのだけど。」


 両の手で印を組む。面白そうだと真似したあの兄上もここまでの効果は無かったみたいだった。


「『化生ものか 魔生ものか 正体現せ』」


 印の中心が一瞬だけ光る。
 そしてそこから見えるのは一人の髭面の男。白髪交じりのワイルドなその男はこちらを向いてニカリ。
 その姿を見てノアさんが驚いた顔をしている。それもそのはず、彼はノアさんを拾ったダリオさんだからだ。

『よう!』
とそんな感じに言っている様な格好をしている。流石に生声までを届けることは出来ないけど、通訳位はできる。


「ダリオさん。」
「『久しぶりだな。元気なのはいつも見ているから知っているけどな。』」


 ダリオさんの口の動きに合わせて内容を伝えればノアさんの目から透明な雫が頬を流れおちる。
 目を伏せる度に雫の量が増えて彼は声を押し殺して泣く。ギュッと抱き締められながら頭が冷たくなってくるけどここで払い除けるなんて事は出来ない。

 精霊王がそんな姿を見て無言で頭を下げる。


「『事情は聞いた。子殺しにならなくて本当に良かったよ。』」


 本当に優しい人であったのだろうな。
 自分の命が奪われたのを理解しているのに精霊王を責める事もせずに、豪快に笑ってノアさんに被害が出なかったことを喜んでいる。

 しんみりとしてしまった雰囲気に困った顔になり頬を掻く。来たことは間違いだったか?なんて僕に聞かないでよ。どうにかしろって?
 辺りを見回して使えそうな物を探す。だけど視界に入るのは先程大人達が飲み散らかしたワインの空き瓶ばかり。


「ノアさん、ダリオさんはワイン呑みます?」
「え、あ、はい。呑めると思います。」
「ほら、皆でグラス持って。せっかくの祭りだよ。しかも珍しいお客様もいるんだよ。」
「そうだ。会いに来てそんな悲しい顔をしていたら来たことを後悔するぞ。」
「ほら、乾杯しよう。」
「シンリ殿はジュースだね。」


 ちっ。
 まあ、後で兄上と隠れて呑もう。
 雰囲気が明るく戻ってきた。結局は死んだ人は戻らないのだし、こうして会えるのだからそれだけでも良かったじゃないか。
 
 散らばっている瓶はいつの間には侍女が片付けてくれて新しいワインが用意された。ダリオさんの前にグラスを置いてワインが注がれる。明るめの色合いを見るに今年のワインかな。
 
 一旦印を解いて魔法を使わせて貰う。この魔法はウツシミの世界に再現する魔法。
 ワインをあの世に移動させる。そして、また印をつくりノアさんにダリオさんの姿を見せると、ご機嫌にワインを手に取った姿が見えた。

 
「それじゃあ乾杯!」


 皇帝陛下の音頭でワインを煽る大人達。
 僕は印を継続しないといけないからそのままで待機する。この宴が終わるぐらいは付き合ってあげるか。

 因みに精霊王は最初からダリオさんの姿は見えていたりする。ノアさんが覚醒すればこんなおまじないに頼らなくても酒を飲み交わす事は出来るだろう。
 そしたら好きなだけ話し合えば良いさ。

 収穫祭の街を照らす月がワインに映り込む。とても綺麗でこれからの運命を示しているかの様に揺らめいている。

 


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