127 / 245
精霊たちの秋祭り
僕と‥…。
しおりを挟む蕪のランプがランランと輝いているけど、この世界に、このハロウィンもどきを広めたのはもしかしてドルイド教の方の人かなと考えた。
このハロウィンもどきの元は古代ケルトのドルイドの信仰でかがり火を焚き、作物と動物の犠牲を捧げる祭りだった。ドルイド祭司たちが火のまわりで踊り、ドルイド祭司は、各家庭にこの火から燃えさしを与えたという。
各家族は、この火を家に持ち帰り、かまどの火を新しくつけて家を暖めれば悪い存在などが入らないと考えていたようだ。1年のこの時期には、この世と霊界との間に目に見えない「門」が開き、この両方の世界の間で自由に行き来が可能となると信じられていたからである。その大切な火を運ぶ器が蕪のランタンであったと。
この蕪っていうのが白いから頭蓋骨に見えて厄除けになるとも言われている。実際、この収穫祭には陽気な害を及ぼさない人ならざる者が来ているようだ。
カボチャを使っている所もあるけどそれは蕪よりかぼちゃの生産があるからと聞いたことがある。
まあ、雑学はここまでにして僕は今とある者を連れて王城に来ていた。タオシャン達にはシヤ先生が合流してくれたので、ご令嬢は気軽に近づけないだろう。
「おや、シンリ殿。」
「あ、皇帝陛下お会いできて光栄です。」
「うむ。してどうした。」
街一望できてなおかつ雰囲気までわかるテラスが城にある。建国の王が国民の声を聞きたいと要望し出来た場所だと説明された。今日のようなお祭りの日にはそこにいるだろうという兄上の言葉通りだった。
「ノアさんを探していたのですが。」
「そうなのか。ノア殿ならここにいるよ。」
「お探しですか?シンリくん。」
「はい。」
ノアさんが椅子に座ってひょっこりと皇帝陛下の背後から顔を出す。顔を赤らめてはいたがまだまだ理性が残っているようだ。そのノアさんの隣では精霊王も多分ワインかなをあおっている。
よくよく見るとテーブルや地面には空き瓶がいくつも散らばっていた。
その瓶を間違えて踏まないようにノアさん元に行くとその膝の上に乗る。
「ど、どうしたのシンリくん。」
「見せたいものが有るんだ。チート魔王も出来ないから僕がやるしか無いのだけど。」
両の手で印を組む。面白そうだと真似したあの兄上もここまでの効果は無かったみたいだった。
「『化生ものか 魔生ものか 正体現せ』」
印の中心が一瞬だけ光る。
そしてそこから見えるのは一人の髭面の男。白髪交じりのワイルドなその男はこちらを向いてニカリ。
その姿を見てノアさんが驚いた顔をしている。それもそのはず、彼はノアさんを拾ったダリオさんだからだ。
『よう!』
とそんな感じに言っている様な格好をしている。流石に生声までを届けることは出来ないけど、通訳位はできる。
「ダリオさん。」
「『久しぶりだな。元気なのはいつも見ているから知っているけどな。』」
ダリオさんの口の動きに合わせて内容を伝えればノアさんの目から透明な雫が頬を流れおちる。
目を伏せる度に雫の量が増えて彼は声を押し殺して泣く。ギュッと抱き締められながら頭が冷たくなってくるけどここで払い除けるなんて事は出来ない。
精霊王がそんな姿を見て無言で頭を下げる。
「『事情は聞いた。子殺しにならなくて本当に良かったよ。』」
本当に優しい人であったのだろうな。
自分の命が奪われたのを理解しているのに精霊王を責める事もせずに、豪快に笑ってノアさんに被害が出なかったことを喜んでいる。
しんみりとしてしまった雰囲気に困った顔になり頬を掻く。来たことは間違いだったか?なんて僕に聞かないでよ。どうにかしろって?
辺りを見回して使えそうな物を探す。だけど視界に入るのは先程大人達が飲み散らかしたワインの空き瓶ばかり。
「ノアさん、ダリオさんはワイン呑みます?」
「え、あ、はい。呑めると思います。」
「ほら、皆でグラス持って。せっかくの祭りだよ。しかも珍しいお客様もいるんだよ。」
「そうだ。会いに来てそんな悲しい顔をしていたら来たことを後悔するぞ。」
「ほら、乾杯しよう。」
「シンリ殿はジュースだね。」
ちっ。
まあ、後で兄上と隠れて呑もう。
雰囲気が明るく戻ってきた。結局は死んだ人は戻らないのだし、こうして会えるのだからそれだけでも良かったじゃないか。
散らばっている瓶はいつの間には侍女が片付けてくれて新しいワインが用意された。ダリオさんの前にグラスを置いてワインが注がれる。明るめの色合いを見るに今年のワインかな。
一旦印を解いて魔法を使わせて貰う。この魔法はウツシミの世界に再現する魔法。
ワインをあの世に移動させる。そして、また印をつくりノアさんにダリオさんの姿を見せると、ご機嫌にワインを手に取った姿が見えた。
「それじゃあ乾杯!」
皇帝陛下の音頭でワインを煽る大人達。
僕は印を継続しないといけないからそのままで待機する。この宴が終わるぐらいは付き合ってあげるか。
因みに精霊王は最初からダリオさんの姿は見えていたりする。ノアさんが覚醒すればこんなおまじないに頼らなくても酒を飲み交わす事は出来るだろう。
そしたら好きなだけ話し合えば良いさ。
収穫祭の街を照らす月がワインに映り込む。とても綺麗でこれからの運命を示しているかの様に揺らめいている。
0
あなたにおすすめの小説
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる