僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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春の訪れと新入生

僕と新入生

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「何で冒険者登録ができないのだ!」


 冒険者ギルドに戻ってきた僕達五見たのは、僕僕と同じぐらいの子供が受付で騒いでいる姿だった。その格好は僕達の通う学園の制服姿で護衛なのか兵士を二人ほど侍らかしている少年だ。

 近くで腕を組み不機嫌そうな冒険者さんの服をツンツンと引っ張り存在を気付いてもらうと何があったのか教えてもらう。

 丁度こな冒険者さんは騒動の最初から見ていたようで色々と教えてくれました。
 最初は僕達の様に冒険者登録をしに来た学生だと思っていたらしい。この時期なると学生服で登録をしに来る人が増えるのである意味風物詩的な感じみたいだ。そのため生暖かい目で新しい冒険者の門出を見守っていたら受付と揉め始めたという。


「彼等はだそうだ。」
「ああ。」


 冒険者になるには年齢が何歳からと決まっている。それは生存確率を上げるための最低限の事だ。しかし、偶に特例と言うものがある。ここは転生者や異世界者等が公認でいる世界だ。数人の国から信頼されている者の認可が降りれば登録ができるのだ。そして反対に登録ができない特例もある。それが『新入生』なのである。
 新入生は新しい魔法や色々を習いたてであるため今までの状態と異なっている。そのため自意識過剰で痛い目を見る生徒が多数出たのだ。その経緯から現地実習が終わるまでは冒険者登録は出来ないのだ。

  騒ぎを起こしている少年は今年度の新入生、僕達の後輩と言うことだ。
 確か入学説明会でも学園長が説明をしているはずのだが、いったい何を聞いていたのか。


「そこの小娘は冒険者なのだろ!この伯爵子息のぼくが何故できない!」
「爵位など冒険者ギルドでは意味を持ちません。何よりも彼等は新入生ではありませんので。」


 僕達を見つけた途端に指を指して叫んでいる少年を制したのは、タリスさんだった。
 震える受付嬢と場所を交換し彼女のケアを他の職員に手信号で任せて、視線は少年から話さない。

 きっちりとしたギルドの制服姿を身にまとい、優男ながらその威圧感は流石は副ギルドマスターと言ったところか。

 少年もその威圧に怯んで勢いを無くして、こちらに向けられている指がへにょへにょと下に落ちてゆく。


「爵位など冒険者ギルドでは意味を持ちませんって格好いいですね。副ギルドマスター殿。」
「ありがとうございます。」


 こちらが野次を飛ばしても見据える姿は変わらず。護衛なのか不明の兵士はオロオロとしているばかりだ。
 確か伯爵子息と言っていたけどまだ燻っている貴族はいるということかな。
 全ての腐った果樹を取り除けるとは思っていないけど、貴族がこんな所で騒ぎを起こすのは我々も困るのだけど。


「ちなみに何処の伯爵家です?」
「ヘタリーチェ伯爵です。そこの第二子息のようですよ。」
「い、いかにもぼくはかの有名なヘタリーチェの家の者だぞ。」


 ヘタリーチェ伯爵は確かに有名である。正義感が強くてそれでいて頭の柔らかい人だ。頑固で無いので戦術なども長けている方である。臨機応変はまさに彼の事を言っているのではないかと噂される人である。

 それだけ優秀な人だから今回の浄化計画で我先にと自らの一族を洗い出し末端まで反省させた話は平民達も面白おかしく語っていた。そのヘタリーチェ伯爵の子供がこんな感じとは。


「教育を間違えているな。」
「ですよね。」
「な、貴様ら!」
「僕達は君の先輩に当たるのだけど?」
「小娘は黙っていろ!」


 もう慣れたけど小娘って言い方酷くないか。
 冒険者達もこの高圧的な少年にイライラしている様だ。兄上に視線を向けて見れば頷かれたので、ここは目には目を身分には身分でも使いますかね。
 タリスさんに目線を送り頷けば、タリスさんの笑みが深まる。まるで水を得た魚の様だ。


「貴方がもし爵位を気にするのであればその二人には最高級の敬意を払わなくてはならないですよ。」
「はあん?何故こんなひょろいのと小娘に‥…。」
「コウラン殿下とディーレクトゥス辺境伯子息ですから。」


 タリスさんの言葉に周りから音が無くなった。
 それはそうか、まさかこんなところにそんな立場の人が居るとは思わないよね。
 最初に状況を説明してくれた冒険者さんも顔を青くさせてカタカタと震えている。
 他の冒険者も呆然自失していてこちらを凝視していた。

 何処からかだから執務室に行ったのかとか、アキンドの奴が見違えて見えるのは彼等のせいかなどがきこえてくる。


「副ギルドマスターが申した通り、冒険者に爵位など関係ない。どうか、冒険者の先輩としてご指導を頼みます。」
「俺も同じく意見だ。」


 頭を冒険者達に下げて、止めとばかりに母様直伝の微笑を浮かべれば野太い声が上がる。
 なんか地鳴りの様になって2階からクロスさんが覗いているけど、僕達を見たらなんだみたいな顔で戻ってゆく。

 流石に相手が悪かったのにやっと気が付いた新入生の少年は舌打ちをして冒険者を押しやって出ていった。
 

「ヘタリーチェ伯爵への抗議をする際は僕達の名は伏せて下さい。」
「ええ。絶対に抗議は入れます。うちの職員の精神ダメージがありますので。」


 正義感の強い伯爵なら説教をして受付嬢に謝罪もしてくれるだろう。そしてきっとあの少年はわざわざ僕達の名を伏せているのに口に出して墓穴を掘るんだろうな。
 趣味悪いとか好きに言うがいいさ。身分を盾にやらかした事を自分で口を滑らして怒られるがいい。


「丁度来てくれて良かったよ。それで、依頼は終わったのかな。」
「はい。薬草採取とモンスター駆除完了です。」
「じゃあ、見てみようか。」


 タリスさんがこのまま受付業務をしてくれそうなのでそちらに向う。並んでいる人が居ないのはゴタゴタのせいだと思っておこう。 



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