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春の訪れと新入生
僕とグランドオールの主
しおりを挟む「でも、良かったのですか。」
「何が。」
「奴らを放っといて。ムラキの狙いはシシリーでしたよね。」
「僕は今はシンリだし関わるのはどうかと思ったのだけど不味いかな。」
ここの主に出会えたら忠告すれば良いかなって思っていたけど、これから私と関わってくるなら今のうちに潰すのも手か。
一度空まで飛んでみたがやはり出口は分からず、遠目で拓けた場所に騒いでいる奴らがいるのは見えた。どうやら仕込んでいたものが上手く行っていたようだ。
地面に降り立ち出口が見当たらなかった事を伝え、彼らと更に距離を取るために移動する。
そんなときに出た話が先程のものだ。
相手がどんな手練かわからないが、あの連れてきた男を見るにムラキの息が掛かっているのは間違いない。
今の所はシシリーと僕と結びついていないようだが万が一がある。だがわざわざ仕掛けるのも面倒くさい。
「私が一掃してきます。」
「全滅させたほうが後腐れないか。」
「はい。」
「予定変更だ弟君。」
「悪者退治をするんだろ。」
「いや、まだ悪者とは言いきれないからただの人殺しかな。」
ムラキの息が掛かっているとはいえ目的の大元がわからないから、一概に悪者とは言えない。そんな人を殺るのはただの人殺しと同じ事。大義名分なんてものもない行いだ。
人というのはたまにそんなことをするものなんだよ。きっかけは些細でもこんなことができるんだ。
僕達は先程の広場まで踵を返した。
そこには想像通りにフードで顔を隠した人々が血溜まりの場所で何かを探している様だ。
ちゃっちゃとすべての者に鑑定をかけるとほとんどが無能力者の烙印が押されていて、メンバーの中には強盗や殺人を犯した人も混ざっている様だ。本当に何をしようとしているのか。
アキさんは右半分を殺るとサインしているので、僕は左側を目標とする。ここ以外にメンバーもいると考えられるので惨状のあとは先程のように隠しておかなくては。今回は食われたじゃなくて襲われたで良いな。
さて動くかとなったときにドシンドシンと振動が遠くから聞こえてきた。聞こえてきただけでなく振動もだんだんとこちらに向かっている。慌てて弟君を抱えて丈夫そうな木の上に移動する。アキさんも別の木の上に移動して様子を見ていると、山が動いていた。
何を馬鹿なことを言っているんだと思うかもしれないが、山が少しずつ動いているのだ。と言うことはそれだけ大きな何かがいると言うこと。
とっさにその動く方の木の上に移動する。直ぐ側にアキさんも移動してきていた。
「これは、砂クジラですね。」
「知っているのか。」
「はい。前に旅をしていたときに砂漠の国で見ました。その時はこんなに大きくなかったですが。」
この砂クジラという生き物はモンスターではないのだという。普段は地中に潜み土魔法を駆使して地上に影響を与えずに泳いでいる。地上出るのは餌のときのみで砂漠の国では観光の名物にもなっているとの話だ。
まさかこんな森の中でスナクジラが居るとは思わなかったが良く考えれば、あの巨木のあった地もこの砂クジラの仲間が居たのではないか。そう考えると移動している理由がわかるし、他の生き物が寄り付かないのもわかる。
そしてこの砂クジラ、何か怒っているようだ。
B集団に向かって移動をしている。B集団の彼らはあまりの大きさに逃げるようにその場を離れた。砂クジラはその姿を見て口を大きく開いた。森の中から肉色の洞窟が出てくるなんてなんとも恐ろしいことであろう。
何人かが飲み込まれる。
とっさのことで動けない奴らはどんどんと人数を減らしていった。最後にはただの森の風景が広がっているだけだ。
砂クジラの動きが止まったことを確認して地に降りた。恐らくは彼がこの森の主であるだろうから出口を教えて貰わなくてはならない。
これだけの巨体に成長したのなら知能も高いだろう。
「魔の森グランドオールの主とお見受けする。」
『まだ生き残りが居たか。』
「いえ、彼らとは縁もゆかりもないです。」
『ほお。それを信じろと?』
「信じてくださいとしか言えませんね。」
『面白い。不思議な気配の少年とドラゴニュートの男に残りはただの子供か。なにをしにこんなとこに来た。』
やっぱり知能は高いようだ。
アキさんがドラゴニュートだと言うことはとても興味があるが今は深堀りしないでおこう。砂クジラの目が僕達を見るために地上に出てきたようだ。その片目だけでもへたり込むモンド位の大きさはあるのではないだろうか。
『もしかして忠告をしてくれた者たちか?』
「忠告?」
『倅の巨木の奴に忠告してくれただろ。』
あ、あの子はこの方の息子さんでしたか。もしかしてその忠告を又聞きして不審な動きをする奴らを襲ったのかな。
思い当たりがあって頷くと地面に響くような笑い声があがった。
恩返しとは言わないがお節介は人の為ならずだったな。
砂クジラはひとしきり笑ったあとに我々の言葉を待っていた。
「この森を出たいのです。」
『用は終えたのか。』
「はい。この子供の母親の為の薬を手に入れました。」
『それは僥倖だな。では人の国に出れる場所まで運んでやろう。』
「本当ですか。嬉しいです。」
砂クジラの背中にまた乗り込むと不思議な感覚だが風景が動き出した。実際は地面が動いているのだか、そうは感じさせない静かな動きだ。先程は恐怖心を植え付けるためにわざとやっていたのだろう。
乗りごちはとても最高である。
こうして順調に入ってきた入り口まで連れて来て貰った。
入り口には兄上とウォルターが装備を整えて今から入ろうとしているところでちょうど会えて良かった。
砂クジラにお礼を伝えて分かれると地面に潜り込んでいく。
さて、国に帰ろうかな。
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