僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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勇者という存在がもたらすもの

僕も想像はしていたこと

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「あのサラート夫妻は子供を探しているのではないでしょうか。」


 食事か終わり、早速僕はセシリアさんの自室にお呼ばれした。客間でも思ったがこの家の家具にしろ雑貨にしろセンスが宜しいようで見ていて楽しい。
 とりあえずお茶を入れてもらったので部屋に友人を呼んだときにでも使うのだろう椅子に腰掛けた。
 口の中を濡らすためか一口お茶を飲んだ彼女が発したのはそんな言葉だった。

 それは僕も思っていたこと。
 ポッカリと抜け落ちた何かを探している妻を支える夫。その身体に合わさってしまった手の位置はまさに子供を宿す位置だった。さめざめとなくのはその場所の者が気になっているから。


「僕も同意見です。」
「そうか。だが君はこの街に連れてきたのは何故ですか。子供はきっと‥…。」
「まだ生きていますよ。」
「え。」


 あのサラート夫妻はこの国に向かっている時に襲われた。
 だけどあの魔法でわかる実力と冒険者に指導できるというほどの者ならただ襲われるわけがない。ということは何か緊急事態が起こっていたと言うこと。
 この国に向かう途中に色々と思い出せることを聞いたがその中に子供の思い出だけはなかった。だけど彼等が嘆いているのはきっと子供のこと。なら緊急事態というのは産気づいたと言うことではないだろうか。
 それなら隙だらけだし、妻を庇おうと夫はその場を離れた。子を産んで隠したらその夫を助けに産後の辛い体で向かったと言うのなら、返り討ちに出来ずに‥…。

 さどかし無念だっただろう。その身が幽霊に変わり無念だけが残っても無意識に腹に手を当て探しているのかもしれない。

 僕だって最初は子供は駄目かもしれないと思っていたけどどうも生きているようなのだ。死んでいるなら黄泉返りの法をして一目見せてあげれたのだけど反応が皆無なのだ。ということは生きていると言うこと。
 セシリアさんに説明しても説明しきれないのでただ生きていると伝えるしかないが、もしも生きているのなら近かったここではないかと判断できる。

 もしかしたら観光しているうちにそれらしき子供に会えるかもしれないでしょ。


「僕には分かるんです。生きてますよ。」
「そ、そうですね。そう思いましょう。」
「ええ。きっと黒髪で奥さんに似た可愛い子だと思います。」
「貴方はそこまで見えるのですか。」
「はい。」


 確かに皆から見える姿は恐ろしい化け物の様だと思われているかもしれないけど、僕には槍についてから二人の姿が見えている。嘆きが軽減されるにつれて本来の姿が戻ってきたのだ。
 二人共、綺麗な黒髪に少し茶味掛かった瞳の素朴だけど優しそうな人だった。それがあんな姿になるまで嘆くなんて襲ったやつがわかったら呪ってやるわ。

 
 それにしても何で僕だけ呼んだのだろうか。


「こういった話しはまずは通ししたほうが良いかと思いまして。」
「‥…セシリアさん、僕は男です。」


 部屋の空気が固まったように感じる。
 実は居た侍女の方も僕のことを凝視しているのを見て、確かシス兄が弟と紹介していたのはクラウスさんだけだったかと遠い目をしてしまった。
 お陰様で僕の性別は男の娘のままなんだよね。もう少し、大きくなったらちゃんと男っぽくなって欲しい。父様の血筋があるから大丈夫だよね。


「ごめんなさい。わたしったらてっきりボクっ娘だと思っていました。」
「ボクっ娘ってゴゾンジなんですネ。」
「ゆ、友人に聞いたのです。」


 魔神父さんや本当にこの世界に来る人の選別をそろそろ真面目にして欲しい。
 カトレア様にすべてを投げてたらもう二度とそちらに遊びに行かないからな。


「まあ、有意義なお話ができました。」
「そう言ってもらえると助かります。そうですよね。男の中に女性一人なんてまず親が許しませんよね。」


 たまに乙女ゲー脳の方々の親は許すどころか位の高い人を落とす娘を褒め称えていますよ。あれってなんでなんだろうね。確かに位の高い人と接点ができて万々歳かもしれないけど周りから軽蔑される可能性もあるのに。
 やっぱり何かしらの不思議な力が発生しているのだろうか。


「とりあえずこの話しはサラート夫妻にも可能性として話しておこうと思います。その際はセシリアさんの名前を使っても構いませんか?」
「ええ。そうですね。男の方が気付くよりはわたしが気付いたことにしたほうが良さそうですね。」
「はい。それとお願いが‥…。」
「わかりました。その願いはわたしのすべてを使っても叶えます。」


 こうして話が終わって客室に戻ると当然ながら何があったのか聞かれた。そこで先程の相談通りに説明をしてサラート夫妻のそのお腹の可能性を示唆するとサラート夫妻は静かに涙を溢し、子供が元気に生きているように願い始めた。その姿を見ているとこの国にいる間にどうにかしないとと思ってしまう。
 
 ここまで彼等に肩入れしてしまうのは前世の神王が愛した僕の思い出せない母親を考えてしまうから。前にコウにぃが言っていた辛い記憶には何があるのだろうか。

 ちょっとしんみりと考えて見たが今は思い出せることなど何もないので気分を切り替えて明日の観光のための準備をすることにする。
 用意するのは小さな匂い袋の様なものと木片に紙である。
 あとは術式に変換した魔法を仕込むのみ。術式発動の対価はあれで良いかな。



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