僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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海の国と泡と消えゆく想い

僕と寂しがり屋の魔王様

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 あれから応援部隊と合流し、時間が許す限り辺りを捜索したがあの女の姿はなかった。あたりが暗くなってきたし自害した男達の血に惹かれた肉食の魚たちが集まり始めたので、これ以上は危険だと判断されて捜索を打ち切ったのだ。クレバスの下の方に封じられているという魔獣も無事の様でとりあえずは宿に戻ることとなった。

 パーティーはイリヤのせいで騒ぎが起こっていたがそれ以外は何事もなく外では戦いがあったなんてことも知られずに平和的に客を帰らせることができて、改めてラメール夫妻は王様に感謝されたそうだ。僕達は帰る途中で遭遇したと言うことにしてもらい王からの褒美は断り、のんびりと陸上にバルスさんと二人で帰ってきた。
 
 ウォルターはポリプスさんの家で魔法の実験を続行してもらっている。本人は色っぽいお姉さんと一緒で喜んでいることだろう。
 フェンとアクアには女神様から祝福というなの水の中だろうと地上だろうと暮らせる能力を手に入れたし、魔法がいらなくなったので解除した。そして返却されたブローチとあのムラキの配下が持っていた宝石にしか見えない石を手のひらでアソビながら、宿屋に戻ってくると見知った姿の男が部屋の前で立っていた。
 相変わらず鍛えているのに痩躯に見える身体に、闇と表現しても良さそうな漆黒の髪、不機嫌そうな表情はバルスさんに悲鳴を上げさせるには十分な迫力がある。 


「コウにぃ?」
「‥…。」
「こんなところまでどうしたの?」
「‥…。」
「バルスさんちょっと散歩してきてくれる?」
「分かりました。」


 バルスさんは理由など聞かずにまた外に出ていってくれた。
 残った僕達はベッドと必要最低限の物しかない部屋に入ってゆく。フェンに教えてもらった料理の美味しい宿屋の部屋はシンプルでとても気に入っている。ベッドに腰掛け兄上に向かって両手を広げて相手の行動をまつ。暫くは沈黙が続き、そろそろ腕がつかれたなと思っていた頃にのそのそと兄上が僕の腕の中に入ってきた。

 どうやら兄上は寂しかった様だ。

 この世界に転生して記憶が戻ってからは連絡もしないで一週間も離れた事は無かったからな。色々とあったから連絡事項もウォルターやバルスさんに任せていた。僕との接点がなくなって一週間も離れていたのが気に食わないようだ。


「落ち着いた?」
「‥…まあな。」
「ゴメンね。色々あってさ。」
「連絡は聞いた。何度海の国に乗り込もうとしたか。」
「国際問題になるよ。」


 洒落にならない事をいう。
 僕の肩に頭を立てかけて存在を確認するかの様にスリスリしてくる彼の頭を優しく宥めたあと、全くというほどに動かないので手持ちぶたさになってしまった。なので目の前にある黒味の強い漆黒に輝く髪の毛をいじることにした。


 数時間もの時間を開けて戻ってきたバルスさんの口があんぐりするぐらいの傑作が出来てしまったのはここだけの話だ。


「そうだ。コウにぃ、これわかる?」


 コウにぃのメンタルも戻ったようなので、例の宝石を取り出す。地上でみても青黒い石だ。見た目はどこにでも有りそうな宝石なのだけど。
 ムラキの作ったものみたいだから僕の案件かと思ったけど見たことのない術式が組み込まれている。
 兄上ならこういうの好きそうだから何か知っていると思ったのだけど。


「捕まえたあの手下に聞けばよろしいのでは?」
「アイツはフェーリス国まで持っていくよ。」
「捕まえた?」


 兄上は今回の騒動は無関係だったので簡単ながらに説明をする。パーティーで起こったことはほぼ原型がないほどに簡潔にまとめてしまったので、よくわからないだろうけど重要なのはその後だから。


「ちょと石を見せてみろ。」
「ん。」


 簡単な説明でも理解した様子のチートな兄上は石を受け取ると光に翳してみている。そしたら、眉間に皺を寄せた。水の中に届く光も限りがあるから確かに光に翳すということはしなかったな。
 兄上が石を返してくれて同じようにやってみるように促す。
 そっと石を部屋の電灯の光に翳すと中には細かな魔法陣の欠片の様な物が見えた。それが何を示すのかまでは判断できないが、一部のそれが異界を示しているのは読み取れた。


父上魔神案件だね。」
「そうだな。早く帰るぞ。」
「うん。そのほうが良さそうだ。」


 水中で活動するための魔法は神の国フェーリスでも出来るからね。嫌な予感が拭えない。一人逃してしまったしたしかもう一箇所あると言っていたようだしな。
 

「でも、今日は疲れたから。帰るのは明日でも良いかな。」


 実は眠気が限界だったりする。
 負荷のある海の中で一日中動き回りなおかつ戦闘までしたのだ。身体のほうが限界を迎えていた。目がシパシパしてちゃんと開かなくなっている中で兄上の温もり。
 緊張の糸も緩んだせいでもう駄目だ。


「せめて、お着替えを‥…って眠りました。」
「‥…。」
「ど、何処に?」
「風呂。」


 ぼくが兄上に寄りかかり寝息を立てていたら、抱き上げてどこかに連れて行こうとしたらしいのでバルスさんが声をかけると、一言だけ返ってきたそうだ。

 確かに海の中で過ごしていたから海水で髪はパサパサになっていて身体も磯臭い。翌日目が覚めたときにさっぱりしていたのには助かった。













 
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