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海の国と泡と消えゆく想い
僕と謎残る石
しおりを挟む僕達がラメール夫妻の証言のとおりに南に向うと3人の者がいるのが見えた。その近くには魔獣の姿は無いため、近くの岩の後ろに身を潜ませて様子を見ることにした。
3人の手には魔獣を制するためか倒すためかこの海の国にそぐわない得物を手に持っている。
なぜそぐわないのかと言うのはバルスさんがウォルターに会場に伝えるように指示を出したことにも繋がる事だ。海の中、もとい水の中では陸地よりも負荷抵抗がかかる。たしか、数百倍は違っていたのではないだろうか。ウォルターの様な大剣使いはもとより、僕達だって負荷抵抗がかかっている。それは人間ほどでは無いとはいえ人魚達もでありそのため彼らは自分たちの爪で戦うのだ。
先程のムラキの配下も戦いでそれを学び短剣などのわりかし負荷の少ない得物に変更していたはずだ。
僕達はこの水中に居るための魔法に含まれている保護の魔法のお陰で多少の不便は感じるが抵抗を受けにくはなっているがそれでも大剣や双剣などで戦うには筋肉がたりない。
僕の前世の世界から来たムラキがそれを知らないということは無いと思うのだが、彼らの武器を見る限りはけして水中で使ってはならないものばかりだ。
まあ、ムラキが札などを渡している可能性もあるから気をつけるに越したことは無いな。
「札って水中で使えるのですか?」
「まあ、ムラキの奴が何を企んでいるか知らないけど海の国に行くように指示はしただろうし対策もしてあると思うよ。」
得物はあれだけど。
目の前の3人は水中で邪魔になるマントなどは脱いでおり、足元の何処までも続くような亀裂を眺めていた。
3人のうち一人がスレンダーな女性で他の二人の男が何やら意見を聞いたりしているようなのでどうやら今回のムラキの配下でリーダー格を任されているのは彼女の様である。
海に揺蕩う銀糸の髪と少し長い耳。整った顔つきに似合わないゴツいクレイモアがその手に握られている。なんと彼女はエルフ系統の種族の様だ。
「確かにこの下に魔獣が居るようだ。」
「これでムラキ様の言っていたように世界が変わるのだな。」
「あとは彼奴等が石を持ってくれば。時間はギリギリだ。予備がないのは痛いな。」
「もう一つは我々では行きにくい場所だ。ここで終わりにしたいとこだな。」
時間を気にしていると言うことは水中に居るために魔法薬を使っているようだ。 そしてやはり石を気にしていると言うことはこの石には何か事情があるということ。
さらにはもう一つの場所と言う言葉がでてきたと言うことは候補はもう一箇所あり、石はその場所ごとに用意されている。今分かったのがそのくらいか。
「まだ魔獣に触れて無さそうですね。」
「うん。さっさと確保しよう。バルスさんは拘束の魔法をお願い。」
「わかりました。」
バルスさんが呪文を唱え始めて僕はスピードアップの魔法を自分にかけて3人の元にゆく。
3人が僕に気づく頃にはバルスさんの魔法が発動し、いち早く反応した女の人以外の確保が完了した。
女はこっちに向き直ると僕の暗器の一つである小刀をクレイモアで受けた。水中の中での行動の割には動きは早い。
なるほど。ゲームであるように速さ、筋力アップの魔道具を使用したのか。
彼女の手首に輝く腕輪を見てそう判断した。
陸上では脅威になり得る性能だが今の水中ではちょっとしたプロ並みである。海を守る人魚を敵に回してはいけないのはこうした対戦では彼らのスピードに普通なら敵わないからだ。ラメール夫妻が7人という人数差でも致命傷もなく戦えたのもそれがあるからだ。
実際僕も水の中での戦いはもどかしい。
女は僕の顔を認識すると驚いた様に目を見開いた。そして口が音を発せずに何かを呟く。その何かは僕も驚愕するにふさわしい内容であった。
『シシリー様。』
確かに彼女はそう呟いた。
確かに僕とシシリーの顔立ちは同じだ。だけども彼女は今は表舞台からは姿を消している。それなのに顔を知っているということはムラキから見せてもらったことがあるということであり、近しい存在ということだ。
彼女のことはぜひとも捕まえたい。
僕を弾き飛ばした彼女は先程までの男達に指示を飛ばしていたときと比べておどおどとしているようにみえる。
「貴方達、ムラキの配下でしょう?」
「やはり、シシリー様ですか。怪我はっ。」
「一体何を企んでいるかは知らないけど石なら来ないわよ。」
少し高めの声色で話しかければ彼女の反応は焦りだ。
あの程度で傷つくようなやわではないのだが。シシリーが彼女のウィークポイントなら使わせてもらうに限る。
「なぜ私を知っているの?」
「ああ。シシリー様。ムラキ様の言うとおりお美しい。」
「ムラキが私の顔が分かるものを持っているのね。彼は何処。」
「あの方の居場所は教え出来ません。お前達!」
「ぐっ!」
「がぁっ!」
暫くの小競り合いの中でうっとりと僕を見つめる女。
そして遠くでがやがやとウォルター達がこちらに来ているのが見えた途端に女の指示でバルスさんが捕まえた者たちが隠し持っていた札を使い、自害した。
辺りが血によって視界が遮られるなか下の方で魔獣の唸り声が聞こえてくる。
女もそのすきに逃げたようで気配がない。
仕方なく暗器をしまいバルスさんと応援に駆けつけた者たちを待つ。手には彼らの企みの要の石がある。
とりあえずは兄上に相談だな。
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