僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

文字の大きさ
216 / 245
残り幾日かの狂騒曲

僕と再び相見えるグランドオール

しおりを挟む




 鬱蒼と茂る木々によって陽の光が入りにくかった森は、この異常事態のせいで更に暗くどんよりとしていた。相変わらず方向感覚が狂わされる感覚に獣の声が木霊する。変わったことと言えば、以前は不気味な鳴き声が聞こえていたのにそれがなく、どことなく獣達が怯えて居るようだということだ。

 僕たちが堂々と歩いていても襲いかかるよりも様子を見ている。
 そんな獣達を、気にしつつも森の中を進みあの洞窟に向かってゆく。無論糸での索敵は欠かさないようにした。やはりというか森に住んでいるはずの獣達の気配が恐れて我々の行動の様子を見ているようだ。


「静かだな。」
「そうだね。」


 以前来たときは帰るときに砂クジラの森の主に乗せてもらったので、入り口から洞窟までの道のりは実のところわからないのだけど、別に闇雲に動いているわけではない。
 あの洞窟には何者かの痕跡があった。
 あれぐらい強いのであればこの異変で怯える獣達とは違い、活動しているはず。砂クジラに会えば代償を払って道案内をお願いしてもらえる筈。そう、僕たちは彼等を探しているのだ。

 このような状況でも遅いくるモンスターをいなしながら順調に奥に踏み入って行くと、遠くで見たことのある巨木が、見えた。前回の時もそうだったが砂クジラの主殿曰く、巨木の倅はここいらがテリトリーなのかもしれない。
 とにかく、運が良い。

 一度、兄上と父様に巨木の方を目指す事を告げれば、それが最良だろうと言うことだった。広大な森の中を闇雲に探すのはやはりよろしくないと思っていたのだろう。僕としては闇雲の感覚とは違ってたのだけどね。


 数分の後に巨木のところに着く。
 あの時と同じ安心感のある開けた場所にしか見えないセーフティエリアだ。実際は砂クジラの子供の背中なのだけど。

 それをしってから乗るとどうやってあの巨木が植わっているのか気になるところだけど今はそれどころではない。

 僕は巨木のすぐ下辺りに手を添えて話し出す。この間も思いっきりの大声では無かったが主に伝えてくれたようなので耳は良いと判断して語るような声にする。


「久しぶり。主殿に会いたいのだけど案内してくれないか?」
『ぐぅ~ん』


 この土地が生き物だと知っていることをわかっているのかくぐもった声を出して返事をしてくれる。だけどもその声には覇気がない。悲しそうな声にどうしたのか訪ねてみても言葉が通じないので回答を知ることはできない。主に会わせてくれるのかどうかも怪しくなってきた。


「その主殿が何者かと戦っているらしい。」


 僕には分からないぐぬぐぬ鳴く砂クジラの子供の言葉に父様がそう答えた。
 その言葉に正解だという様に一際甲高い声をだしてすなクジラが反応する。


「父様は砂クジラの言葉が分かるのですか?」
「‥…砂クジラというより魔獣の言葉は何となくな。辺境の地にも多いから自然と身についたようだ。」
「え、僕にはわからないけど。」
「お前は‥…大抵がアシュレイ公爵といるからな。」


 なんと言うことでしょう。
 僕の家族はやっぱりチート。
 魔獣と意思疎通が出来るらしい。


「話しが通じる魔獣にはそのままにしている。そのほうが辺境の地のヒエラルキーも崩さないしな。流石にモンスターは理性もないから速攻滅す。」
「うぐぐ。今度、お家で学ばせてね。」
「勿論だ。この事態が終わったらな。」


 別に羨ましくなんてないんだからね。

 という事で砂クジラのお話を父様に聞いて貰うことにした。
 家族の知らない一面を見ることができて嬉しいような寂しいような気分になりながらキュイキュイと話し込む父様を見つめる。

 そんな僕の頭をいきなりガシガシと撫でるのは兄上で手が離れた時には髪がボサボサになっていて酷い有様だ。寂しがっている僕を慰めてくれたのは嬉しいけど、やりすぎやりすぎ。


「有難う。コウにぃ。」
「撫でやすい頭があっただけだ。」
戯れっ子じゃれっこ達、主のもとに行くぞ。」
「結局なんて?」


 どうやら主の元に漆黒の獣が襲いに来たのだという。
 森に住む生物としては強いほうだが砂クジラの主殿には到底かなわないはずだったらしいが、数年前からおかしくなりまるでの様になったらしい。最初は無視をしていたが今回の異常事態の際にその獣から異質な力が放たれあの向こうの世界を映す空に伸びているそうだ。さらには獣は本当に人の言葉を話し始めたのだとか。

 魔法がどうだあちらの世界はどうだがどうだと語っている。

 今は森の主が対峙しているがどうも不思議な技を使い苦戦しているみたいで、この巨木の倅は心配なのだと。


「間違いないみたい。人の怨念のしつこさを忘れていたよ。」
「だからお前は甘いといつも言っているんだ。」
「まさか僕への恨みはあれど死んでまでムラキの言いつけを守るなんて思わなかったよ。」
「乗せていってくれるらしいから行くぞ。」


 行くぞも何もこのまま背に乗っていれば良いんじゃないの?


「地中を行くらしいから体内に入らせてもらうんだ。」
「体内‥…。」


 父様は先頭になって歩き出して草木を避けて穴らしき物の所についた。
 え、その穴って入って良いの?

 人ひとり入れそうな穴ではあるが本来ここはクジラでいう水が出るところではないだろうか。


「これは目印だそうだ。」
「なん‥…の。」


 僕の声はそこで途切れた。
 地面に巨大な切れ目が出来てその中心から一気に割れ、その中に落ちていったのだ。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

処理中です...